Vertex AI Agent Builderとは?ADK、RAG、マルチエージェント対応まで、最新エージェント開発基盤を詳しく紹介
最終更新日:2025年05月29日

- Vertex AI Agent Builderは、Google Cloud製のAI開発基盤で、自然言語理解や検索機能を活用したエージェントを直感的に構築できる。ADKやマルチエージェント対応で業務自動化を支援する。
- 対話型UIやRAGによる要約・検索、ユーザー行動に応じたレコメンド最適化など、多彩な機能を備える。UIパーツのWeb統合も簡単で、迅速に導入できる。
- Geminiなどの最新モデルやAgent2Agent通信、MCP連携により、業務に即した柔軟なエージェント開発が可能。料金は従量課金で、目的に応じて選べる。
Googleが提供する「Vertex AI Agent Builder」は、生成AIを活用したエンタープライズ向けAIエージェントアプリケーションを構築できる開発基盤です。
MLスキルが未熟な開発者でも、Googleの基盤モデルや検索技術を活用して、検索、対話、レコメンドなどの多機能なAIエージェントを迅速に開発・展開できます。
本記事では、Vertex AI Agent Builderの概要をはじめ、ADKによる高速なエージェント開発手法、検索・レコメンド機能との統合ポイント、マルチエージェント設計の勘所、料金体系と導入プロセス、そして最新モデルを活用した具体的なユースケースまでを網羅的に解説し、導入検討に役立つ実践的な知見をご提供します。
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目次
Vertex AI Agent Builderとは?
Vertex AI Agent Builderは、Google CloudがVertex AIサービスで提供するAIエージェントアプリケーション構築プラットフォームであり、特に自然言語理解や検索技術、レコメンデーション機能を組み込んだAIエージェントの開発に特化しています。
従来は高い機械学習スキルが求められたこれらの機能を、直感的かつ効率的に活用できるようにすることで、開発者の生産性とスピードを大幅に向上させます。
このプラットフォームの中核を成すのが「Vertex AI エージェント」と「Vertex AI Search」で、前者は大規模言語モデルを基盤とした会話型UIの構築を支援し、後者は構造化・非構造化データに対してGoogle品質の検索エクスペリエンスを提供します。
ユーザーが閲覧中の情報に基づいて類似のコンテンツを提示するレコメンデーションアプリも構築でき、業務効率化やユーザー体験の向上に貢献します。
また、エージェント開発キット(ADK)により、数十行のPythonコードで本格的なエージェントを設計でき、双方向音声・動画によるインタラクションにも対応しており、エンタープライズシステムとの接続やデータ連携が容易で、セキュリティやガバナンス要件にも柔軟に対応可能です。
関連記事:「Vertex AIとは?機能やできること・メリット・料金・連携できるGoogleサービスを解説!」
柔軟で拡張性の高いエージェント開発キット「ADK」とは?
ADK(Agent Development Kit)は、AIエージェントの開発とデプロイをよりソフトウェア開発に近い形で実現するために設計された、柔軟かつモジュール化された開発フレームワークです。
GoogleのGeminiやVertex AIとの親和性が高く最適化されている一方で、モデルやデプロイ環境に依存せず、他のフレームワークとの互換性を持つ設計となっています。
このADKを利用することで、シンプルな単機能エージェントから複雑なワークフローを司るマルチエージェント構成まで、幅広いスケーラビリティを持つアーキテクチャを直感的に構築できます。
開発者は、既存のソフトウェア開発スキルを活かして、タスク分割、推論、オーケストレーションなどの処理を明確に記述でき、現実の業務フローに即したエージェントの設計と運用が可能となります。
参考:What is Agent Development Kit?
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Vertex AI Agent Builderでできること・主な機能
自然言語による会話型エージェントの設計と統合
Vertex AI Agent Builderを使うことで、自然言語を理解し、ユーザーと対話するエージェントを直感的に設計できます。
これらのエージェントは、モバイルアプリやウェブアプリ、IoTデバイス、IVR(自動音声応答)システムなど、さまざまなプラットフォームに組み込むことが可能です。
ユーザーが音声やテキストで指示を出すだけで、業務の実行や情報の提供を行うUIとして機能し、従来のボタン操作やフォーム入力を代替するインターフェースを実現します。
AI検索とレコメンデーション機能を備えたアプリの構築
Vertex AI Searchを活用することで、自社のデータに基づいた検索機能やコンテンツ推薦機能を迅速に実装できます。
検索アプリでは、キーワードマッチだけでなく、セマンティック検索やスペル修正、類義語対応、サジェスト機能も備えており、ユーザーに対して直感的かつ精度の高い検索体験を提供します。
複数のエージェントによるマルチエージェントワークフローの構築
複数のAIエージェントが連携し、役割分担しながらタスクを遂行するマルチエージェントワークフローを構築できます。
Agent2Agent(A2A)プロトコルを使用すれば、異なるフレームワークやシステムで作成されたエージェント同士が共通言語で通信し、協働できるようになり、たとえば一つのプロセスにおいて「ユーザー問い合わせ対応」「在庫確認」「レポート生成」といった異なる機能を持つエージェントが連携して動作し、業務の自動化と複雑なタスク処理が実現します。
関連記事:「【Google】Agent2Agent(A2A)とは?AIエージェントを繋ぐプロトコルの特徴や仕組み、MCPやAutoGen、LangGraph、CrewAIとの違い、活用事例を徹底解説!」
ユーザー行動に応じた学習とランキング最適化
エージェントはユーザーのクリックストリームなどの行動ログを通じて自己学習し、表示コンテンツの順位や推奨結果を動的に最適化します。
これにより、ユーザーが求める情報をより高精度に予測し、パーソナライズされた体験を提供できるようになります。ランキングは独自のアルゴリズムで調整可能であり、特定のビジネス目的に応じて柔軟に最適化されます。
ドキュメント要約と会話型検索を実現する生成AI機能
生成AI及びRAG(検索拡張生成)技術を活用して、非構造化ドキュメントの要約や、ドキュメント内容に基づいた対話形式の検索体験を提供することが可能です。
たとえば、長文の業務マニュアルや契約書の内容を要約し、ユーザーの質問に対して要点を抽出して回答することで、業務理解や意思決定の支援に活用できます。
直感的なウィジェットによるWeb統合
検索バーやレコメンドウィジェットは、事前構築済みのパーツとして提供されており、ウェブページに数クリックで簡単に統合できます。
エージェントの検索機能や推薦機能を、追加の開発負担なく自社サイトに導入することができます。
企業システムとのシームレスな連携とMCPの活用
Vertex AI Agent Builderは、ApigeeによるAPI管理、Application Integrationによるワークフロー接続、100種類以上のコネクタといった豊富な連携手段を備えており、既存のERPやCRM、SaaS製品とエージェントを容易に統合できます。
MCP(Model Context Protocol)を活用することで、複数のエージェントやツール間で文脈を共有しながら情報を扱うことが可能になります。
MCPに対応したエコシステムでは、エージェントが既存の構造化・非構造化データや企業システムの機能を効率的に活用でき、より高度な判断と応答が可能になります。
医療・メディア向けに最適化された専用機能
FHIR準拠の医療データ検索や、動画・音楽などのメディア検索/推薦機能といった、特定業種向けの最適化機能も提供されています。
これにより、医療従事者による患者データの活用や、エンタメ業界における視聴体験のパーソナライズなど、用途に応じた専門的なエージェントアプリケーションの開発が可能です。
参考:Google Cloud Documentation
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Vertex AI Agent Builderの特徴
開発者に優しいADKとサンプル群
エージェント開発キット(ADK)は、Pythonコード100行未満で本格的なエージェント構築を可能にし、Agent Gardenから豊富なテンプレートも利用できます。
高い相互運用性
Agent2Agent(A2A)プロトコルにより、異なるベンダーやフレームワーク間でもエージェント同士の通信が可能です。Google製に限らず、LangChain、LangGraph、AG2、Crew.aiとの連携も実現します。
柔軟なデータ接続
Apigee API、100以上のコネクタ、Google Drive、Slack、Jiraなど、豊富なデータソースに接続可能で、エージェントの判断能力を強化します。
強力なセキュリティとガバナンス
コンテンツフィルタ、ID管理、アクティビティの監視、権限の制御により、安全かつ信頼性の高い運用が可能です。
利用可能なモデル
Google Cloudの「Model Garden」では、Googleが提供する基盤モデルをはじめ、外部プロバイダーのモデルも含めて多数の機械学習モデルが利用可能です。
たとえば2025年5月時点で最新である「NVIDIA TensorRT-LLM」「MedGemma」「Qwen3」「Llama 4」「DeepSeek」など、最新の高性能モデルへの対応が強化されています。
「Gemini」「Imagen 4」「Veo 3」などのGoogleの提供モデルに加え、タスクに応じてHugging FaeやMistral AIなどが提供する代表的なモデルも利用可能で、自然言語処理からマルチモーダル生成、画像生成、動画生成、音声認識や音声合成等の音声処理まで幅広い用途に対応しています。
また、「Gemini 2.5 Flash」「Gemini 2.5 Pro Preview」「Gemini 2.0 Flash」「Gemini 1.5 Pro」などのバリエーションモデルも選択でき、処理速度と推論性能のバランスや、リアルタイムAPI対応、コード生成の最適化など、利用目的に応じてモデルを使い分けることが可能です。
Model Gardenは単にモデルを選ぶ場ではなく、SDKやCLI、APIを通じてエンドポイントにデプロイし、業務環境に即したカスタマイズや実運用を前提とした柔軟なモデル管理が行える点も大きな特長です。
参考:Model Garden
Vertex AI Agent Builderの料金プラン
以下は、Vertex AI Agent Builderの主要な料金項目です。
項目 | 説明 | 価格 |
---|---|---|
Agent Engine | コンピューティングリソース(vCPU) | $0.00994 / vCPU-Hr |
メモリ | 使用量に応じた課金 | $0.0105 / GiB-Hr |
モデル利用 | 入力・出力トークン数に基づく | モデルにより異なる |
ツール利用 | BigQueryなどツール使用料 | 使用ツールにより異なる |
Vertex AI Agent Builderの使い方
Vertex AI Agent Builderは、Google Cloud Consoleの「Agent Builder」ページまたはAPI経由で利用開始できます。
ADKを用いてエージェントを構築し、必要に応じてApigeeやApplication Integrationでエンタープライズデータと連携し、Agent Engineで本番環境にデプロイします。
検索バーやレコメンドウィジェットも数クリックでWebサイトに組み込むことができます。
Vertex AI Agent Builderについてよくある質問まとめ
- Vertex AI Agent Builderを使うのにプログラミングスキルは必要ですか?
基本的な構成はGUIベースでも可能ですが、本格的なエージェント設計やADKを活用するには、Pythonなどのプログラミングスキルがあるとスムーズです。
- Vertex AI Agent Builderでは自社の既存システムと連携できますか?
はい。ApigeeやApplication Integration、100種類以上のコネクタを通じて、ERPやCRMなどの既存システムと簡単に連携できます。
- Vertex AI Agent BuilderではどのようなAIモデルが利用可能ですか?
GoogleのGeminiシリーズをはじめ、ImagenやVeo、Llama、Qwen、DeepSeekなど多数の最新モデルに対応しています。用途に応じて最適なモデルを選択できます。
まとめ
Vertex AI Agent Builderは、Google Cloudが提供する生成AIアプリ開発のための包括的なプラットフォームです。自然言語理解、検索、レコメンド、マルチエージェント設計を統合的に実現し、柔軟性と拡張性を両立しています。
業務効率化から高度なAIサービス構築まで、さまざまな用途に応じて導入が進められる注目のサービスです。
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