物流MaaSの活用事例5選徹底解説!なぜ今必要?AIが果たす役割とは?
最終更新日:2024年09月23日
「物流MaaSとは?」
「なぜ今物流MaaSへの参画待ったなし?」
物流MaaSは、今日本で最も盛んに議論されている分野の一つです。政府も経産省と国交省が横断的に物流業界のMaaSを推進していることからも本気度が見て取れます。確かに、物流業界の人手不足はいよいよ深まり、環境面からも物流のシステム変革が避けられない問題であることは明らかです。
でも、なぜ物流MaaSが最良のソリューションだと言われているのでしょうか?今回は、物流MaaSのメリット、課題、国内の導入実例とAIの活用事例を徹底的に解説します。
MaaSの定義、他分野での進展状況についてはこちらの記事で解説しています。
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目次
物流MaaSとは?
物流Maas(またはロジスティクスMaas)とは、IT技術、データ等を最適に活用することで、配送ルートの最適化、労働力の最適配置等、物流に関する業務を効率的に行うことを目的とした取り組みです。
日本での物流MaaSは、2021年に経済産業省によって提唱されました。荷主・運送事業者・車両の物流データと商流データを高度連係させ、部分的に自動化することにより、物流の最適化を図り、労働力不足、CO2削減といった社会問題の解決と物流のフルオートメーション化など付加価値の向上を目指します。
以下の方向性で、実証実験が進められています。
- トラックデータ連携の仕組み確立
- 見える化・混載による輸配送効率化
- 電動商用車活用・エネルギーマネジメントに係る検証
(参照:経済産業省 物流MaaSの推進に向けて! 2021年7月26日)
物流MaaSのねらいは?
物流MaaSには貨物の配送や輸送、倉庫の管理などが含まれます。特に以下の重要ポイントでのシステム改善が期待されています。
1. 幹線輸送の効率化
2. 結節点での作業自動化
3. 支線配送の効率化(ラストワンマイル)
4. 物流システム全体の安全性向上
それぞれのポイントについて説明します。
幹線輸送の効率化
物流車両の大型化やオートメーション化により、トラック1台・ドライバー1名あたりの輸送量の最大化を目指します。具体的には、2台分の荷台を連結させた連結トラック1回あたりの輸送量を増加する取り組みや複数台のトラックの自動隊列走行を行うことでドライバー1名あたりの輸送量を増やす実証実験が進んでいます。
また、求車システムと求荷システムを導入することで、トラック実走行に対する積載走行の割合(=実車率)の上昇も期待されています。
結節点での作業自動化
結節点とは、中継地点の倉庫や物流基地を指します。結節点において輸送の情報と結節点の情報を連携することで、速やかな搬入、搬出を目指す取り組みです。
IoT、AIの進展により、移動元の倉庫と結節点の情報が共有されることで最適なルート走行をめざします。すでに、トラックバース予約システムを用いた事前予約制により、ドライバーの荷物積み替え時の待ち時間削減、倉庫内作業の効率化と自動化の実証実験が始まっています。
支線配送の効率化(ラストワンマイル)
ラストワンマイルの配送を小型EVなどを活用することで、CO2削減や労働環境の改善を目指します。小型EVを用いることで、航続距離、充電時間、静音性を高めることができます。
輸送データの共有と管理をつなげ、運行オペレーションとエネルギーマネジメントの最適化を図れます。近年のEC市場の拡大を受け、配送料の増大、配送時間の細分化が進んでいます。自動化とマネジメントの最適化により、労働者の負担軽減に繋がります。
物流システム全体の安全性向上
走行データや映像データ、ドライバーの健康情報をAIで分析することで、事故発生リスクを事前に把握し安全運行管理へつなげる試みも開始されています。必要なデータは、トラックに装備されたドライブレコーダーやセンサーにより取得可能です。
配送車もユニバーサルデザインを進め、より運転しやすく、作業のしやすい車両の製造も進められています。
物流MaaSが日本で必要な3つの理由
物流MaaSが今求められている理由は以下です。
1. 労働力不足の顕在化
2. 輸送効率の低下
3. CO2排出量削減
それぞれのポイントについて説明します。
倉庫業、検品、自動封函など物流業各業務をAIで自動化・省人化している事例についてはこちらの記事で分かりやすく解説しています。
労働力不足の顕在化
国土交通省の2019年度調査によると、物流業界において約7割の企業でトラックドライバーの不足感を持っていると回答がなされています。(参考:国土交通省:最近の物流政策について)この主要因として、電子商取引の増加に伴う宅配便取扱の増加があげられます。
物流業界の求人倍率は、全産業の2倍となっています。運送業界の年齢構成も全産業平均よりも高齢層の割合が高く、人材の新陳代謝が進んでいない業界です。ドライバーの高齢化も進んでおり、人手不足と併せて問題が顕在化しています。
輸送効率の低下
宅配便の取扱実績は、2010年代後半の5年間で20%増加し7.1億個の増加となっています。これは、EC市場が5年で約1.5倍に拡大している事と比例しています。EC市場の拡大に伴う小口宅配の増加は、長距離配送とラストワンマイルの配送回数増加につながります。営業用トラックの輸送効率の低下は、1990年代は55%前後でしたが、2019年度には約40%と15ポイント低下しています。
CO2排出量削減
2019年度、貨物自動車のCO2排出量は日本全体の6.8%を占めています。貨物自動車のCO2排出量自体は減少傾向にありますが、他の運輸部門と比較して減少率は低い状況です。輸送車の燃費性能は改善されていますが、積載率(1回の輸送で積める荷物量)が低下しているからです。積載率の低下は、配送単位や配送時間の細分化やEC(インターネット通販)の増加が主要因となります。
運輸車両の完全電動化や大幅な燃費改善などハード面での削減が急激に進むことは期待できません。それよりも、積載率の効率化がCO2削減のためには必須となります。
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物流MaaSの活用事例5選
物流MaaSが現場で活用されている以下の事例があります。
- クラウド型の車両管理システム(オプティマインド)
- 自動クロスドック(結節点)運用(NEXT Logistics Japan)
- AIによるオンデマンド配車サービス(みちのりホールディングス)
- 運行状況をリアルタイム共有(三菱ロジスネクスト)
- IoTセンサーとAIを用いて事故リスクを警告(日立物流)
それぞれの事例について説明します。
他の最新物流MaaS事例、及び観光や医療などのMaaS事例についてこちらの記事にまとめていますので併せてご覧ください。
クラウド型の車両管理システム(オプティマインド)
ドライバーアプリ「Loogia(ルージア)」は、名古屋のベンチャー企業オプティマインドにより開発されたクラウド型の車両管理システムとなります。Loogiaは、走行データ学習型の配車サービスアプリとして提供されています。
Loogiaは、以下の3つの業務を1つのアプリケーションで行うことができます。
1. 配車計画の自動作成
2. リアルタイムの位置確認による配送当日の運行支援
3. ドライバーの配送進捗の管理
例えば、どの車両が、どの訪問先を、どの順番に回るかといった配車の計画を、アルゴリズムに従い自動で計算し、最適なルートを示します。従来、ベテランドライバーや配送担当による勘と経験により行っていた配送経路や配送計画を自動化、最適化することで、配送ドライバーの業務効率化をはかることができます。
自動クロスドック(結節点)運用(NEXT Logistics Japan)
NEXT Logistics Japan株式会社は、経済産業省の「物流MaaSの実現に向けた研究開発・実証事業」実施団体として、自動クロスドック(結節点)運用による積載率の向上を目指しています。NEXT Logistics Japanは、物流の効率化と省力化を目指して日野自動車株式会社によって設立されました。自動荷役技術の企画及び課題の抽出とソリューションコンテンツの開発を、電動化・自動化・コネクティッドなどの先進技術を活用して行っています。
2019年には、ダブル連結トラックの実装実験、ドライバーに装着したセンサーや運転席設置のカメラのデータを用いて健康状態の早期把握による事故予防実験を行いました。また、荷室や貨物の状態をモニタリングすることで空きスペースを可視化し、積載効率を高めるための情報集積も行っています。
現在は20社のパートナー企業とともに進めています。豊田自動織機やアイシンと共に、クロスドッグにおける自動運転フォークリフト、自律走行運送ロボットの運用実験を進めています。
AIによるオンデマンド配車サービス(みちのりホールディングス)
2021年6月から茨城県日立市で、AIによるオンデマンド配車サービスが開始されています。「Hitachi MaaS」アプリの利用者は、オンデマンドバスやタクシーなど複数の移動手段の発着地指定の経路検索が可能です。加えて、地図検索、サービスチケットの購入、電子チケットの発券もできるようになっています。
AIによるオンデマンドサービスによって、バスの運行本数が少ないエリアでの公共交通の利便性を高めることが可能です。複数利用者のリクエストを受け取り、希望地点で乗降ができるようにAIのオンデマンド機能を用いて最適な経路を選択して小型車両を運行しています。
また、中型・小型自動運転バスの走行実装実証も行われ、アプリで予約可能です。(ただし、現在は関係者のみ乗車可能段階)地方公共交通の運行管理とエネルギー管理を一体的に実施検証を行っています。今後は、アプリを利用した商品の販売予約・購入・決済も進める予定にしています。
関連記事:「タクシー業界でのAI活用法!導入メリット・注意点・企業実例を徹底解説」
運行状況をリアルタイム共有(三菱ロジスネクスト)
三菱ロジスネクスト株式会社では、荷主と運送会社が配車状況や運行情報、積み荷の情報をリアルタイムで共有するシステムを活用しています。このシステムによって、物流の流れ全体でQCD(品質・コスト・納期)を効率化しています。
安全で効率的な物流を目指すために、位置測位デバイスとAIを用いて、結節点でフォークリフトなどが重量物の配送効率を高める実証実験も行っています。また、運行品質の見える化を進め、保険会社等と連係し、整備・運行記録等を用いた品質改善評価のスキームも開発中です。
IoTセンサーとAIを用いて事故リスクを警告(日立物流)
日立物流のSSCV-Safetyは、IoTセンサーとAIを用いた運行事故防止システムです。SSCV-Safetyは、ドライバーの疲労度や注意力の低下による事故リスクを予測し、管理者へ通知できます。注意喚起には、現在4つの方法が用いられています。
- 危険走行注意喚起(ドライバー向け)
- 有事情報注意通知(管理者向け)
- ストレスレベル見守り(管理者向け)
- 動画切り出し(ドライバー向け)
ドライバーの運転前後、運転中の心拍数などの身体的データと車両に設置したドライブレコーダーから得られるリアルタイム運行状況を独自アルゴリズムで分析します。
これからの物流MaaSに欠かせないAI技術とは?
物流MaaSの実装に向けてAI技術の活用は欠かせません。物流MaaSに用いられている、またこれからさらに用いられるであろうAI技術は以下です。
- AIによる効率的配置と安全輸送
- AIとIoTの連携による配送効率化
- エネルギーマネジメントによるCO2削減効果
それぞれのポイントについて説明します。
AIによる効率的配置と安全輸送
AIを用いれば車両配置の最適化が可能になります。物流MaaSでは、複数の物流会社の配送データを横断して収集し連携することで、異なる事業者間の運行管理の共通化が進みます。収集したデータをAIのアルゴリズムで分析し、複数の業者間をまたぐ最適な車両配置ができます。
また、AIによるマッピング機能を用いて、リアルタイムに収集した運行データから危険運転のハザードマップを生成できます。
AIとIoTの連携による配送効率化
トラックの荷台へIoTセンサーやカメラを設定することにより、リアルタイムの積載状況や位置情報を把握できます。複数の事業者間におけるリアルタイムデータをAIが分析することで、工場の出荷から顧客までの運行情報を把握し積載効率の向上を図ることができます。
IoTセンサーの種類、AIとの活用で可能になることについてこちらの記事で分かりやすく解説しています。
エネルギーマネジメントによるCO2削減効果
AIにより状況に合わせて最適化された運行オペレーションが進むでしょう。最適な運行効率が実現すれば、より高いレベルでのエネルギーマネジメントを進めることができます。特に、軽貨物EVの開発と普及を進めることでCO2削減を進めることが期待されています。
物流MaaSについてよくある質問まとめ
- 物流MaaSが日本で必要とされる主な理由は何ですか?
物流MaaSが日本で必要とされる主な理由は以下の通りです。
- 物流業界の深刻な労働力不足
- EC市場拡大による輸送効率の低下
- 環境問題に対応するためのCO2排出量削減の必要性
- 物流MaaSの活用事例にはどのようなものがありますか?
物流MaaSの活用事例は以下の通りです。
- オプティマインド:クラウド型の車両管理システム「Loogia」
- NEXT Logistics Japan:自動クロスドック運用による積載率向上
- みちのりホールディングス:AIによるオンデマンド配車サービス
- 三菱ロジスネクスト:運行状況のリアルタイム共有システム
- 日立物流:IoTセンサーとAIを用いた運行事故防止システム「SSCV-Safety」
- 物流MaaSにおいてAI技術はどのような役割を果たしますか?
物流MaaSにおけるAI技術の主な役割は以下の通りです。
- 車両の効率的配置と最適ルート算出
- 複数事業者間のデータ分析による運行管理の共通化
- IoTと連携した積載効率の向上と運行情報の把握
- 危険運転の予測と安全性向上
- エネルギーマネジメントによるCO2削減
まとめ
物流MaaSは、労働力不足の解消、CO2削減など社会問題の解決と物流の付加価値を目指す取り組みとなっています。物流MaaSの実現のためにはAIのさらなる進化やAIによるラストワンマイルの自動配送の実現は不可欠となっています。
「物流MaaSアプリにAI機能がこのように使われているの?」と驚くような開発が日々進行しています。AI×MaaSで新しい事業展開やサービス導入を検討する企業がますます増えています。
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