【徹底解説】デジタルトランスフォーメーション(DX)推進方法と活用事例
最終更新日:2024年10月15日
昨今話題に上がっている「デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital transformation)」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
デジタルトランスフォーメーションとは、「データやデジタル技術を活用し、ビジネスを変革する」ことを指しており、多くの環境変化の中で、企業にとってデジタルトランスフォーメーションの重要性が急激に増大しています。
本記事では、デジタルトランスフォーメーションの定義やテクノロジー、効果、事例について解説していきます。
目次
そもそもデジタルトランスフォーメーション(DX)とは一体何なのか?
デジタルトランスフォーメーションとAI活用の重要性を理解する上で、まずは、デジタルトランスフォーメーションとは一体何なのか?を整理していきましょう。デジタルトランスフォーメーションを正しく理解することで、適切なAIの活用を検討することが可能となります。
デジタルトランスフォーメーションの由来
デジタルトランスフォーメーションという言葉は、米インディアナ大学のエリック・ストルターマン氏が、2004年に発表した論文「情報技術とよりよい生活について(英語名:INFORMATION TECHNOLOGY AND THE GOOD LIFE)」の中で「Digital Transformation」と記載したことまで遡ります。
ストルターマン氏はデジタルトランスフォーメーションを「全ての人々の暮らしをデジタル技術で変革していくこと」であり、「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念として語られています。
経済産業省におけるデジタルトランスフォーメーションの定義
日本においては、デジタルトランスフォーメーションという言葉は、経済産業省が令和元年7月にまとめた「「DX 推進指標」とそのガイダンス」で、以下のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
この定義により、今まで概念的であったデジタルトランスフォーメーションという言葉が、企業にとって少し具体的なイメージとして固まってきたのではないでしょうか。
日本はデジタルトランスフォーメーションの推進が遅れている!?
2020年9月に、マッキンゼー・アンド・カンパニー社が発表したレポート「【マッキンゼー緊急提言】デジタル革命の本質:日本のリーダーへのメッセージ」において、日本がデジタル化が遅れていることを示しています。
特に、「COVID-19以降のデジタル・非接触型サービスの利用状況」の表では、諸外国と比較したときの日本のデジタルサービスの活用が遅れていることを如実に表しています。
なぜデジタルトランスフォーメーションが必要なのか
では、一体なぜデジタルトランスフォーメーションが今必要とされているのでしょうか?
この背景には、
①世の中の消費行動の変化(「モノ」消費から「コト」消費への移行)
②既存システムの老朽化、複雑化
が挙げられています。
①の「世の中の消費行動の変化」において、企業は今まで構築していたビジネスの変革が必要となっており、世の中の流れに適応したビジネスを推進するためには、最新テクノロジーの活用や、これまでのシステムの見直しが必要となっています。アメリカのGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)といった企業に代表されるように、テクノロジーを適切に活用した企業が急激に成長を見せており、これらの企業はデジタルトランスフォーメーションを最もよく体現している企業と言えるでしょう。
②の「既存システムの老朽化、複雑化」はより現実的な問題として挙げられており、現在企業が利用しているシステムのサポートの終了などが予定されているなど、経済産業省が2019年9月に発表した「DXレポート 〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜」では、「2025年の崖」として警笛を鳴らされています。
そのため、今後のビジネスを強力に推進するためには、デジタルトランスフォーメーションの推進が不可欠と言われています。
このように、デジタルトランスフォーメーションとは、広義の概念としては、「デジタル化によって生活をより良くする」ということを指しますが、ビジネス視点では「デジタル化を推進することで、企業のビジネスを変革し、利益を生む構造を作ること」として捉えることができます。
しかし、日本ではこのデジタルトランスフォーメーションの推進が遅れているため、より多くの方が概念を理解し、そして推進していくことが求められています。
デジタルトランスフォーメーション推進に必要な5つのテクノロジー
では、具体的にデジタルトランスフォーメーションを企業において進めるためには、どのようなテクノロジーが有効なのでしょうか?
もちろん、デジタルの活用という観点では決められたものはありませんが、ここでは、デジタルトランスフォーメーションを推進する上で欠かせないと言われている5つの重要なテクノロジーについて解説していきます。
AI(人工知能)
デジタルトランスフォーメーションを推進するための重要なテクノロジーとしてまず挙げられるのが、AI「人工知能」です。
2012年にヒントン教授率いるトロント大学が、AIの競技大会「ILSVRC」おいて圧勝したことから、DeepLearningが改めて注目され、実際に、AIを活用したサービスが世の中を変え始めています。
AIを活用することで、今まで人が行っていた「識別(判断)」「分析、予測」といった業務は、多くが自動でできるようになっています。
これにより、今まで人が行っていたことをAIが代替することで、生産性の向上やコストダウンに大幅に寄与することが可能になり、後述するビッグデータと組み合わせることで、よりパワフルにテクノロジーを活用したデジタルトランスフォーメーションの推進が期待できます。そのうえで、今後、企業における人の労働価値は、AIを適切に活用する、といった役割の変化が求められるでしょう。
なぜ企業はAIとIoTを組み合わせてDXを実現すべきか、AIとITの違いについてこちらの記事で解説していますので併せてご覧ください。
IoT
IoTとは、Internet of Thingsの略語であり、「モノがインターネットにつながる」というテクノロジーを指します。
モノがインターネットに繋がることで、モノの「操作」「位置情報の把握」「検知」などがインターネットを通して容易に可能となり、例えば、持っているスマートフォンを通して自宅のエアコンを操作する、といったことも可能です。
このテクノロジーを活用することで、監視業務の効率化や、生産性の把握など、まさにデジタルトランスフォーメーションに求められることが可能となります。
ビッグデータ
ビッグデータとは、「大量のデータ」という考え方だけではなく、「様々な種類・形式の非構造化データ・非定型的データ」「日々生成・記録される時系列性・リアルタイム性のある」データであり、これらを適切に保管、分析することで、ビジネスに活用していくことが求められています。特にAIとは密接に連携しており、保管したデータをAIを活用して分析することで、今までにないビジネスデータを発見することが可能になります。
例えば、日々の受発注データを保管し、AIを活用して分析することで、今後の需要予測を行うことで、在庫の最適化を図るといったことなどが可能になります。
このようなビッグデータを企業が活用することで、これまで以上にビジネスに活用することが可能な示唆を得たり、新たなビジネスを創り出すことが可能になると言われています。
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クラウドサービス
クラウドサービスとは、実際にサービスを活用する方が、「物理的にモノを保有しなくても、インターネットを経由してサービスを必要な分だけ利用することが可能」になるサービスを指します。
クラウドサーバを提供するAWS(Amazon Web Services)や、GmailかGoogleカレンダーを提供するGCP(Google Cloud Platform)、また昨今注目されているSaaS(Software as a Service)もクラウドサービスとなります。
クラウドサービスを活用することで、企業は自社専用のサーバ環境を構築したり、ソフトウェアをインストールする、といった初期コストが多く発生していましたが、クラウドサービスでは、製品提供企業が用意する環境に、インターネットを通じてアクセスすることで、いつでもサービスを利用することが可能となるため、初期コストを押さえられるだけでなく、完成した製品を活用しているわけではないため、スピーディーに提供企業のバージョンアップを受けることが可能になり、常に最新サービスを活用することができるようになります。
クラウドサービスを適切に活用することは、初期コストを押さえながらデジタルトランスフォーメーションを進める上で、非常に重要な施策の1つとなるでしょう。
5G
5Gとは、LTE-Advancedの次の世代となる第5世代移動通信システムのことを指しており、2020年から順次提供が開始されています。
「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」という3つの特長を持っており、これまで以上に快適なインターネット通信が実現します。
このテクノロジーの浸透により、これまで以上に映像を活用したビジネスの増加・多様化(VR/ARや4K配信など)、遠隔医療の浸透、IoTの加速、などのビジネス上の便益が得られるとされています。
各企業においては、5G通信になることで実現が可能なビジネス、を改めて検討することは、デジタルトランスフォーメーションを考える上で必要な要素の1つと言えるでしょう。
ここでは、デジタルトランスフォーメーションを推進する上で重要な5つのテクノロジーを紹介しました。
どれも必要なテクノロジーとなっており、また、これ以外にも重要なテクノロジーは複数ありますが、これらの技術革新を適切に把握し、自社のビジネスでの活用を検討することは、デジタルトランスフォーメーションを推進する上で非常に重要となってきます。
デジタルトランスフォーメーションを推進したときの効果
デジタルトランスフォーメーションとはなにか、重要なテクノロジーはなにか、を紹介しましたが、具体的に、どのような効果があるのでしょうか?
ここでは、デジタルトランスフォーメーションを推進したときの具体的なビジネスへの効果、を見ていきましょう。”
生産性向上
企業における生産性の向上は、デジタルトランスフォーメーションを推進する上で非常に多く挙げられる効果です。
例えば、今まで活用できていなかった営業のセールスデータ(電話内容や往訪回数といった複数のデータ)を音声認識機能のついたクラウド型ビジネスフォンで登録し、その情報をSFAやCRMに登録することで、ブラックボックスだったデータを可視化し、営業戦略を定めることなども可能になり、結果として営業活動における無駄をなくし、営業生産性の向上に繋げることが可能です。
他にも、導入する企業が増えたであろうテレワークシステム(WEB会議システム)を活用することで、今まで往復の移動時間を含めて3時間かかる商談が、実際の商談時間の1時間だけに集中することができる、といった移動時間の削減にも繋がっています。
業務効率化・コストダウン
業務効率化によるコストダウンは、デジタルトランスフォーメーションを推進する上で、非常に見やすい効果の指標の1つと言えます。
AI OCR(文字認識)を活用して、今まで紙帳票で受け取り、手動でシステム登録していた情報を自動でシステム登録を可能にしたり、AI議事録サービスを活用することで、議事録作成の時間を短縮したりすることが可能になります。
他にも、最近ではAIによる契約書の自動チェックサービスで法務の方が苦労していた労力を減らしたり、AIチャットボットを活用することで、コンタクトセンターや営業部署の問い合わせ対応コストの減少などにも役立っています。
また、果物の収穫時期の見極めをAIが自動で行ったり、建築物のサビ・劣化をドローンによる空撮とAIによる認識により自動判定するなど、オフィス外においても多くの業務効率化によるコストダウンを実現できます。
マーケティング効果の最大化
デジタルトランスフォーメーションにおけるマーケティング効果の最大化でまず重要になるのは、マーケティング活動のデジタルシフトと言えるでしょう。
今までチラシ広告や新聞広告に頼っていた広告を、例えばGoogle広告やFacebook広告、ヤフー広告(YDN)等に一部変更するだけで、これまで取得できていなかった顧客属性データの取得など、新たなデータの獲得が見込めるだけでなく、それらのWEB広告では、顧客属性に合わせた広告の配信が可能となるため、購入見込みの高い属性のユーザーのみにターゲット配信をすることなども可能です。
広告以外においても、サービスの販売データを活用し、ダイナミックプライシングのように需要予測に合わせた価格の自動設定なども可能となっており、これにより、収益の最大化も見込むことができます。
このように、デジタルトランスフォーメーションを推進することは、システムの老朽化への対策といった負の側面ではなく、プラスの側面が非常に大きく存在しており、今までのビジネスを変革し、収益を最大化することにも繋がります。
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デジタルトランスフォーメーションの事例
テクノロジーや効果を紹介してきましたが、具体的にどのような企業が、デジタルトランスフォーメーションを推進し、効果を上げているのでしょうか?
ここでは、具体的な事例をもとに、効果を紹介していきます。
静岡県藤枝市:AIによる道路の劣化具合の自動診断
静岡県藤枝市は、日本電気株式会社(NEC)社と連携し、ドライブレコーダーとAIによる道路の劣化具合の自動検知の実証実験を行いました。藤枝市が管理する道路は1,000km以上にも及び、限定的なリソースでこれらをすべて適切に管理することが難しくなっていたためです。結果として、市内23路線の内、12路線がヒビ割れを検知し、その精度も非常に高かったとのことです。
日本水産株式会社:水中にいる魚の正確な把握
日本水産株式会は、日本電気株式会社(NEC)と共同で、「養殖魚のサイズ測定」のAIによる自動化の実証実験を実施しました。
これまでは、人が実際に手で測定していたものの、それでは非効率であるだけでなく、測定の正確性の問題や、魚を痛めてしまう危険性を持っていました。
そこで、水中ステレオカメラで撮影した魚群映像から、AIによって測定対象となる魚と測定点を自動抽出し、サイズ測定を行う、という方式を採用し、結果としては、測定可能なサンプル数の数を3倍、精度が2倍に向上する、という結果が出ています。
関連記事:「ステレオカメラとは?仕組み・メリット・デメリット・活用方法を徹底紹介!」
トヨタ自動車株式会社・JapanTaxi株式会社:AIによるタクシー需要予測
トヨタ自動車株式会社とJapanTaxi株式会社は、KDDI株式会社およびアクセンチュア株式会社と共同で、タクシーの需要予測をAIで行う配車支援システムを構築し、実証実験を行いました。
タクシーの運行情報に加え、人口動態予測だけでなく、気象情報、公共交通機関の運行状況、イベント開催情報等もデータとして分析し、最適な配車を実現する仕組みです。
これにより、ドライバーの売り上げが、前月比で1日当たり20.4%増えたという結果が出ています。
AIによる需要予測の導入方法、具体的な予測手法、導入の注意点についてはこちらで分かりやすく解説しています。
KDDI株式会社:トイレ空室管理
KDDI株式会社は、IoTを活用し、トイレ (個室) の扉に開閉センサーを設置することで、リアルタイムにトイレの利用状況を可視化し、他にもトイレ待ち時間の短縮とトイレ清掃タイミングの最適化など、効率的な運用に実現するサービスとして「トイレ空室管理」を提供しています。
すでに鉄道会社や住宅関連設備メーカーなど、多くの企業にて活用されています。
株式会社トライグループ:映像授業サービス「Try IT」の提供
株式会社トライグループは、30年に及ぶ指導ノウハウと人財を活用し、ハイクオリティな映像学習サービス「Try IT」の提供を開始しました。
これにより、場所にとらわれずに、いつでも、どこでも授業が受けられるサービスを実現しています。
公式の会員登録者数は100万人を超えるほどの人気となっています。このような取組は、5Gの普及が進むに連れ、より一般的なものになっていくと考えられます。
ここでは、デジタルトランスフォーメーションを推進している企業の事例をいくつか挙げましたが、実際にはもっと多くの企業がデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいます。
自社に役立つ事例を探してみるのはいかがでしょうか?
デジタルトランスフォーメーションについてよくある質問まとめ
- デジタルトランスフォーメーション(DX)とは何ですか?
デジタルトランスフォーメーション(DX)は以下の通りです。
- データとデジタル技術を活用して、ビジネスモデルや組織を変革すること
- 顧客や社会のニーズに基づいて、競争上の優位性を確立すること
- DXを推進するために重要なテクノロジーには何がありますか?
DXを推進するために重要なテクノロジーは以下の通りです。
- AI(人工知能
- Io
- ビッグデー
- クラウドサービス
- 5G
- 日本企業のDX事例にはどのようなものがありますか?
日本企業のDX事例は以下の通りです。
- 静岡県藤枝市:AIによる道路の劣化具合の自動診断
- 日本水産株式会社:AIによる養殖魚のサイズ測定
- トヨタ自動車・JapanTaxi:AIによるタクシー需要予測
- KDDI:IoTを活用したトイレ空室管理
- トライグループ:映像授業サービス「Try IT」
デジタルトランスフォーメーションは世界の共通課題
本記事では、デジタルトランスフォーメーションに関する由来や定義、AI等のテクノロジーの活用から事例まで、様々な紹介をさせて頂きました。
デジタルトランスフォーメーションの推進は、世界中、どの企業にとっても喫緊の課題となっています。
DXを推進することで、オフィス勤務を絶対としなくなることから、リモート業務なども可能となります。そういった観点では、副業やフリーランスの方の活用に限らず、在宅勤務やバーチャルオフィスでのビジネス展開など、よりフレキシブルな働き方も可能になるかもしれません。
本記事が、自社での活用に、少しでもお役立ちできたら幸いです。
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