産総研と北海道立工業技術センター、魚肉の鮮度を匂いで客観的に判定できるセンシング技術を開発
最終更新日:2023年08月22日
産総研(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)は、2023年8月21日、匂いから魚肉の鮮度を判定するセンシング技術を開発したと発表した。
この開発は、産総研・極限機能材料研究部門の電子セラミックスグループと北海道立工業技術センター・研究開発部の食産業支援グループが共同で行ったものだ。ブリの魚肉を分析して鮮度指標ガスを作製し、この指標ガスの計測結果を学習データとすることで、機械学習による実際の魚肉の鮮度判定を実現している。
<本ニュースの10秒要約>
- 日本の水産物輸出を支援するために、鮮度を客観的に“見える化”する鮮度測定デバイスを開発
- ブリの魚肉を分析して鮮度指標ガスを作成、そのデータで機械学習による魚肉の鮮度判定を実現
- 判定には半導体式センサーや畳み込みニューラルネットワークを活用。他の魚肉でも検証実施へ
水産物の品質を、“目利き”に代わって客観的に保証
近年、寿司/刺身といった魚の生食は世界的に受け入れられるようになった。和食がユネスコ世界文化遺産に登録されたことも追い風となり、日本から世界各国に向けて新鮮な水産物がチルド状態で空輸されている。
しかし水産物の輸出においては、鮮度の判定が大きな課題となる。日本国内ではいわゆる“目利き”が魚の品質を経験と感覚で判定し、消費者との信頼関係に基づいて生食用の水産物を販売・提供することが可能だ。しかし、“目利き”のいない海外では、生食用/加熱用の区別が難しい。この課題が、日本の水産物輸出のハードルとなっていた。
この課題を解消するには、水産物の品質を客観的に保証する指標およびその測定方法、また鮮度を“見える化”する鮮度測定デバイスの開発が必要だ。そのため産総研と北海道立工業技術センターは今回、魚肉を採取せず匂いからその鮮度を判定できるセンシング技術を開発するに至った。
畳み込みニューラルネットワークで、ブリの鮮度を判定
産総研ではこれまでも、揮発性有機化合物(VOC)向けの半導体式センサー素子や複数個の半導体式センサーを用いて、匂いを計測するポータブル測定器を開発してきた経緯を持つ。また、機械学習と組み合わせた匂いの解析技術の開発にも取り組んできた。今回の開発も、同研究所が持つこれらの知見を活かす形で行われている。
魚肉の鮮度を匂いから判定できるセンシング技術を実現するにあたり、産総研と北海道立工業技術センターはまず養殖ブリの魚肉の匂いを鮮度ごとに分析し、この結果に基づいて模擬の鮮度指標ガスを作製した。そして、この指標ガスで学習した畳み込みニューラルネットワークを用いて、養殖ブリ刺身の鮮度を判定した。畳み込みニューラルネットワークは機械学習の一種であり、画像の判定/解析で多く使用されている。
畳み込みニューラルネットワークは、養殖ブリ刺身の匂いから「購入直後は生食で可食」「1日保管後は加熱調理であれば可食」という判定を出力した。この結果から産総研と北海道立工業技術センターは、養殖ブリ魚肉の鮮度を匂いから判定できることが可能であると結論している。
他の魚肉に対しても検証を実施、干物の熟成度判定にも
今回の成果を受けて産総研と北海道立工業技術センターは、今後は他の魚肉に対しても匂いによる鮮度判定が可能かどうか検証していく予定だ。生食の可否について客観的な判断を可能にすることで、日本の生鮮水産物の輸出を後押しするとしている。
なお両者は今回開発したセンシング技術について、魚介類の干物などにおける熟成度合いの判定に適用可能かどうかも、検討を予定している。
参照元:PRTIMES
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