パナソニックHDがAI自己改善型画像生成技術「Reflect-DiT」を開発、生成効率を5倍向上
最終更新日:2025年10月22日

パナソニックホールディングスは2025年10月17日、UCLAと共同で推論時にAIが自らの生成結果を振り返って改善する画像生成技術「Reflect-DiT」を開発した。
視覚言語モデルによるテキストフィードバックを活用し、従来手法と比較して約5分の1の生成回数で同等品質の画像生成を実現、AI分野のトップカンファレンスICCV 2025に採択された。
- 推論時にAIが自己評価・改善する新技術により学習不要で品質向上を実現
- 視覚言語モデルのフィードバックで従来比5分の1の生成回数で同等性能達成
- 住宅レイアウト・照明デザインカタログ作成など実用化へ向けた展開を計画
パナソニックR&Dカンパニー オブ アメリカ(PRDCA)およびパナソニック ホールディングスは、UCLA研究者らとの共同研究により、画期的な画像生成AI技術「Reflect-DiT」の開発に成功した。
この技術は、推論時にAIが生成した画像を自己評価し、改善点をテキスト形式でフィードバックすることで、追加学習なしに生成品質を向上させる仕組みを実現している。


従来の画像生成AIは大規模データと大規模モデルによる学習で性能向上を図ってきたが、膨大な計算資源と学習時間が必要となり開発負担が大きいという課題を抱えていた。今回開発されたReflect-DiTは、この課題を推論時の自動改善という新たなアプローチで解決を図る。
技術的な特徴として、Reflect-DiTは画像生成AIの入力部分に新たなフィードバック処理ネットワークを追加した独自のアーキテクチャを採用している。視覚言語モデル(VLM)が生成された画像とテキストプロンプトを比較分析し、改善すべき点をテキストで記述して画像生成AIに入力する。
このプロセスにより、AIが自らの生成結果を振り返り、次の生成に活かす完全自動の改善ループを構築した。従来の主流手法であるBest-of-N方式では、数千枚もの画像を生成してから最良のものを選定する必要があったが、Reflect-DiTは効率的な改善により生成回数を大幅に削減できる。
評価実験では、物体の個数、属性、位置など様々な項目において画像生成の正確性を検証した結果、Reflect-DiTを搭載したシステム(SANA-1.0-1.6B+Reflect-DiT)は、従来手法(SANA-1.0-1.6B+Best-of-20)と比較して全ての評価項目で優れた性能を示した。

特に注目すべき点は、同等の性能を得るために必要な画像生成回数が従来手法の約5分の1に削減されたことだ。
この成果は、計算効率と生成品質の両立を実現した点で高く評価され、AI・Computer Vision分野のトップカンファレンスであるIEEE/CVF International Conference on Computer Vision(ICCV)2025への採択につながった。
同カンファレンスは2025年10月19日から23日まで米国ハワイで開催され、研究成果が発表される。
今後の実用化に向けて、パナソニックHDは住宅事業における顧客提案資料作成への応用を検討している。具体的には、住宅レイアウトや照明デザインカタログの作成において、営業担当者が手元のPCで簡単に編集作業を行えるようになることで、業務効率化が期待される。
また、同社はReflect-DiT以外にも、スタンフォード大学との共同研究による一人称視点映像からの動作推定・生成技術「UniEgoMotion」もICCV 2025に採択されるなど、AI技術の研究開発を積極的に推進している。
パナソニックHDは今後もAIの社会実装を加速し、くらしやしごとの現場へのお役立ちに貢献するAI技術の研究・開発を継続していく方針だ。
AI Marketの見解
Reflect-DiT技術は、画像生成AIの効率化という産業界の重要課題に対する実践的な解決策を提示している。推論時の自己改善メカニズムは、計算資源の制約がある環境でも高品質な画像生成を可能にする点で技術的意義が大きい。
特に視覚言語モデルを活用したテキストフィードバックという手法は、マルチモーダルAIの発展において新たな方向性を示すものと想定される。
実用面では、住宅設計や建築分野での応用が示されているが、ECサイトの商品画像生成、広告クリエイティブ制作、ゲーム開発など幅広い産業への展開が期待できる。
生成回数を5分の1に削減できる効率性は、企業のAI導入コストを大幅に低減し、中小企業でも高品質な画像生成AIを活用できる環境を整える可能性がある。今後は他社の追随技術の登場や、さらなる効率化手法の開発により、画像生成AI市場の競争が加速すると想定される。
Reflect-DiT技術に関するよくある質問まとめ
- Reflect-DiTは従来の画像生成AIと何が違うのですか?
従来の画像生成AIは大規模なデータセットと膨大な計算資源を使った学習により性能向上を図っていたが、Reflect-DiTは推論時にAIが自らの生成結果を評価し、視覚言語モデルからのテキストフィードバックを受けて改善する仕組みを持つ。
これにより追加学習なしで生成品質を向上でき、従来手法と比べて約5分の1の生成回数で同等の性能を達成できる点が最大の違いだ。
- この技術はどのような場面で活用できますか?
パナソニックHDは住宅事業での活用を計画しており、具体的には住宅レイアウトや照明デザインカタログの作成において、営業担当者が手元のPCで簡単に編集作業を行えるようになる。
将来的にはECサイトの商品画像生成、広告制作、ゲーム開発など、高品質な画像生成が必要とされる様々な産業分野での応用が期待される。計算資源が限られた環境でも効率的に動作するため、中小企業での導入も現実的になると想定される。

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