AIによる動画認識・動画解析とは?活用・導入事例7選!仕組みとメリット・デメリットを完全解説!
最終更新日:2024年11月17日
従来の動画解析は人の手で事前処理をする必要がありましたが、AIの発達により、自動で動画解析をビジネスに取り入れることが増えてきています。工場やオフィス、事務所や商店の作業効率化のために導入する企業が増えていますし、スポーツの動作(フォーム)解析などでも活用されています。
最近では、大きな社会問題となった回転寿司などを始めとする外食産業での迷惑行為を解決するための手段としても注目(後述)を浴びています。
この記事では、AIを活用した動画解析についての解説をします。仕組みやメリット、デメリット、実際に研究・導入が進んでいる事例を紹介して詳しく説明していきますので、最後まで御覧ください。
AI Marketでは、
目次
AIによる動画認識・動画解析とは?
AIによる動画解析は、機械学習やディープラーニングにより学習したAIが、動画解析に必要な処理を全て自動で行うことができる技術です。動画解析では、映像を分析・処理して、すべての物や人を認識して、必要な特定の情報を取り出します。
1枚の静止画像から情報を抽出し、分析する画像解析、または連続する画像フレーム間での物体や表面の動きを捉えるオプティカルフローに対し、動画解析は動画全体から情報を抽出し、分析する技術です。
従来の映像の解析では、ノイズの除去やコントラストの強調などのさまざまな処理を人が行わなければ目的の情報を取り出せませんでした。また、人がコンピューターを使って行う動画解析には処理時間や手間などの課題があり、スピードや精度が不安定でした。
しかし、近年のAIの急速的な発展により、動画解析にAIが活用されるようになりました。AI動画解析は、動画解析のために人が行っていた処理を学習したAIが行います。
映像をリアルタイムで解析することができるようになりスピードや精度が格段に向上しました。
AIによる動画解析でできること
動画解析は多くのシステムに使用されており、例えば以下のようなことをリアルタイムで行うことができます。
- 映っているモノを特定すること
- 人間の動作を分析すること
- 不良品を検知すること
- 未来を予測すること
AIを活用することで、効率良く解析するだけでなく、AIが得意とする未来予測といったこともできるようになります。
AIによる動画解析の仕組みとは?
AIによる動画解析の仕組みは、実はAIによる画像認識の連続作業です。そもそも動画とは画像の連続であり、動画解析は動画を構成する画像を繰り返し認識するというものです。
機械学習やディープラーニングで学習したAIを活用して行う画像認識の連続が、AIによる動画解析なのです。
AIによる画像認識の仕組み、種類についてこちらの記事で詳しく解説していますので併せてご覧ください。また、画像認識に強いAIシステム開発会社をこちらの記事で特集しています。
画像認識は何をしている?
画像認識とは、画像に映っている物体をコンピューターが識別することができる技術を言います。例えば、猫の写真をコンピューターが見て「猫である」と識別することできます。
元々、コンピューターは画像認識が苦手でした。猫以外にも毛で覆われた四足歩行の動物が存在しています。また、猫であっても様々な色や大きさの個体がいます。コンピューターではその違いを見わけることができなかったのです。
ところが、AIが登場し、画像データをAIに学習させることでコンピューターが猫の画像を「これは猫である」と判断できるようになりました。
画像認識の連続である動画解析も、従来はコンピューターで判断ができず人が1枚1枚の画像を見て解析していましたが、AI画像認識の技術を活用することで自動解析できるようになりました。画像認識との大きな違いとしては、前後の画像(コマ)を元に、どちらへ移動しているのか、どのような変化が起きているのか、なども解析しているという点です。
AI動画解析のメリットとは?
AI動画解析には以下のようなメリットがあります。
- 処理時間の短縮
- 人材不足の解消と人的コストの削減
- 作業精度の向上
それぞれを説明します。
処理時間の短縮
AIを活用した動画解析では、機械学習やディープラーニングの技術によって、検出・識別・処理までをすべて自動化できます。また、AIで人の動作を解析すれば作業者の動作が正しいか、効率的な動作なのかを解析することができます。
こうした活用で、従来の動画解析で作業時間がかかる課題を解決することができる他、効率的な動作の指導やマニュアルの作成などの時間を短縮することも可能です。
機械学習とディープラーニングの違い、使い分けるポイントをこちらの記事で解説しています。
人材不足の解消と人的コストの削減
AIを活用した動画解析は、人が目視や手作業で行っていた作業を自動化することができ、人手不足の解消や人的コストの削減に繋がります。
例えば、以下のような場面での活用が考えられます。
- 製造ラインでの不良品を取り除く作業
- 小売店でのレジの無人化や導線を解析した人員配置の適切化
- 定期的な監視業務
上記作業は、基本的には単純な確認の繰り返しです。しかし、従来は人の目できちんと確認をして作業しなければ品質を保つことはできませんでした。
事業規模が大きく、拠点の数も多ければ物理的に上記作業に必要な人員の数が多く必要になります。それに応じて人的コストも上がっていきます。
これをAIによる映像解析を使うことで、人の目で見なくてもAIが確認・判断をして自動で処理をすることができるようになり、無人化・省人化に繋げることができます。
作業精度の向上
AIを活用した動画解析により、ヒューマンエラーを防止することや作業品質の均一化をはかることができ、精度を向上させることができます。
見落としや勘違いなどヒューマンエラーはどんな仕事にもつきものです。いくらマニュアルやルールを整えても、知識や経験値、性格など人によって左右される部分は避けられません。そうなると、作業の精度にバラつきがでてしまいます。
AI動画解析を使えば、学習した中から一律の判断基準でAIが作業を進めていきます。人と違い知識や経験値の偏りもなく、疲れることもないため精度を保ったまま作業を行うことができます
AI動画解析のデメリットとは?
AI動画解析には以下のようなデメリットもあります。
- 解析精度が完璧でない場合がある
- 導入コストがかかる
それぞれを説明します。
解析精度が完璧でない場合がある
AIによる動画解析は、どんな条件でも高精度で解析できるわけではありません。特に与えられる動画の画質は、解析精度に大きく影響します。
AIは、低品質の動画でも問題なく解析してくれる魔法の杖とはなりません。AI動画解析は、映っている動画や画像を解析するものであり、元となる画質が荒いと精度が落ちてしまう可能性があります。
この点については、導入の目的を明確にした上でAIのシステム会社と十分な打ち合わせを重ね、どのくらいの画質が必要か事前に確認して設備を整える必要があります。
導入コストがかかる
AI動画解析には、以下のような設備に対する初期投資が必要になります。
- AIシステム
- 画質の良いカメラ
- スペックの高いPC
AIシステムだけでなく、解析の精度にも影響するため画質の良いカメラや高度な処理に対応できるスペックの高いカメラが必要です。また、動画解析システムと他の機械や設備と連携するための仕組みや維持管理コストも含めて考えておく必要があります。
長期視点で、人件費との兼ね合い、高精度の解析が可能になった場合の見込み利益、そうしなかった時の機会損失を勘案することが重要です。
AIシステムの開発にかかる費用の相場、見積もるポイントをこちらの記事で解説しています。また4,AWSのAmazon Rekognitionを用いた動画解析の始め方をこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
AI Marketでは、
AI動画解析の活用事例7選
AIによる動画解析は以下のような事例で活用されています。
- 外食店内での迷惑行為をリアルタイム解析(くら寿司)
- 製造過程での動作分析(NEC)
- 建設現場での施工管理(コマツ/ドコモ)
- ハウス農作物の生産量を予測(近鉄不動産/NTT)
- 顧客が商品を手に取る映像を解析(キヤノン)
- 製造ラインの不良品検知
- 介護現場での行動観察
それぞれの事例を解説します。
外食店内での迷惑行為をリアルタイム解析(くら寿司)
回転ずし大手くら寿司は、店内での迷惑行為を防ぐために「新AIカメラシステム」を導入することにしました。回転レーン上に設置されたAIカメラが流れる寿司のカバーの不審な開閉を検知します。
検知した連絡は、中央本部経由で店舗へ届きます。連絡を受けた店舗では、異常が検知された寿司皿をすぐに撤去し、怪しい行動をした来店者への声がけを行ないます。すでに導入されている「店舗遠隔支援システム」を活用することで、事案発生時の録画映像や対応中の店舗の様子も確認できます。
すでに導入されていた、回転レーン上で取られた寿司皿を自動的にカウントするシステムを拡張する機能となります。回転寿司を始めとするセルフサービス形式の飲食店利用に対する不安を払しょくできるのではないかと期待されています。
製造過程での動作分析(NEC)
日本電気株式会社(NEC)は、AIカメラで手指の動きを捉えて数十種類の細かい作業を高精度に識別することで、全工程の流れを見える化する技術を開発しました。一般的なカメラで撮影した数回分のお手本映像だけで学習モデルを作成します。作業で用いられる部品や道具を事前登録せずとも作業を識別できる技術開発は国内初です。
これまでは、工場での組み立て等の人手による作業において手指を使う細かい作業をAIで識別して分析するために、各工程で用いられる部品や道具を事前に登録した大量の教師データが必要でした。AIを活用した映像解析により手指の動きを捉えて「電動ドライバーでネジを締める」などの数十種類の細かい作業を高精度に識別できます。
この技術により数十種類の細かい作業を高精度に識別を簡単に行うことができるようになります。
建設現場での施工管理(コマツ/ドコモ)
コマツ、NTTドコモ、SAPジャパン、オプティムの4社が設立した合弁会社「ランドログ」は、リアルタイム動画解析による新しい建設施工管理技術を開発しました。建設現場の建機やダンプ、作業員の動きなどのデータを定点カメラで測定し、車両や地形情報、稼働状況などをAIでリアルタイムで分析できます。
リアルタイムで集められたデータから、どの建機や人員が何の作業に従事しているか確認可能です。また、作業時間、稼働率といった多様なデータを「見える化」できます。
得られた知見を以下に役立てることができます。
- 建設機械や人員の適切な配置
- 作業の効率化や施工時間の短縮化
- 労務単価の算出
生産性の向上や労働力不足の解決が期待されています。
ハウス農作物の生産量を予測(近鉄不動産/NTT)
近鉄不動産、NTT東日本、NTTアグリテクノロジーの3社は、AI動画解析の技術を活用しハウス全体の農作物の1週間先の収穫量を予測する実験を行いました。ハウス内をカメラで撮影し、農作物の大きさや色付きかた、葉の状態を解析します。
ハウス内の環境と動画解析の結果を合わせることで、AIが1週間先の収穫量を予測することができます。これにより、取引先への出荷量の調整や人員の調整といったことができるようになることが期待できます。
顧客が商品を手に取る映像を解析(キヤノン)
キヤノンITソリューションズは、商品棚のカメラ映像から顧客が手に取った商品をリアルタイムに自動認識するAI商品認識プラットフォーム「StoreMotion」を開発しました。商品棚をカメラで撮影し、手に取った(または戻した)商品を映像でリアルタイムに認識します。
消費者の商品接触行動を可視化することやレジレス無人決済化を実現することができます。消費者の行動を解析して、店舗のレイアウトや売上につながる導線の設定などの店舗マーケティングツールとして活用されています。
また、バーコードをスキャンしなくてもカゴの商品を認識して決済できる仕組みや、レジ自体をなくすレジレス店舗の運営など店舗のDX化を進めることができます。
製造ラインの不良品検知
製造ラインでのAI動画解析を不良品検知に使用する例が多くあります。目視の場合、不良品の判断が人によって違うことや体調やモチベーションによってバラつきが出るなど作業の質を一定に保てないというデメリットがあります。
AI動画解析を活用すれば、目視で行っていた検査業務を自動化できるようになり、見落としや判断ミスが生じる心配がなくなります。むしろ、学習データを蓄積させるごとに検査の精度が向上していくため高いパフォーマンスを保つことが期待できます。
介護現場での行動観察
介護施設の居室をAIカメラで見守り、リアルタイムで映像を解析する技術があります。AIでの映像解析により、以下が可能になっています。
- 職員の見回り人数や回数を減らす
- 異常動作を検知して連絡する
- 健康状態の把握とケアプランの変更
夜間に見回りをせずに入居者のストレスを減らすことや、介助中に他の呼び出しがあった場合の優先度の判断などに役立ちます。人手が少ないと言われる介護現場の課題解決ができるでしょう。
他にも、最近ではスポーツ分野でも多く活用されています。スポーツにおけるAI活用事例を詳しく知りたい方はこちらもご参考ください。
AIによる動画解析についてよくある質問まとめ
- AIによる動画解析の主なメリットは何ですか?
AIによる動画解析の主なメリットは以下の通りです。
- 処理時間の短縮: 自動化により解析が高速化
- 人材不足の解消と人的コストの削減: 手作業や目視作業の自動化
- 作業精度の向上: ヒューマンエラーの防止と品質の均一化
- リアルタイム解析: 即時の異常検知や対応が可能
- 24時間稼働: 疲労や集中力低下のない継続的な監視
- AIによる動画解析はどのような分野で活用されていますか?
AIによる動画解析の活用分野と事例は以下の通りです。
- 小売業: くら寿司の迷惑行為検知システム
- 製造業: NECの手指動作分析技術
- 建設業: ランドログの建設施工管理システム
- 農業: 近鉄不動産とNTTのハウス農作物生産量予測
- 小売業: キヤノンのAI商品認識プラットフォーム
- 製造業: 製造ラインでの不良品検知
介護: 介護施設での入居者行動観察
- AIによる動画解析を導入する際の主な課題や注意点は何ですか?
AIによる動画解析導入の主な課題と注意点は以下の通りです。
- 解析精度の限界: 低画質動画での精度低下
- 高い導入コスト: AIシステム、高性能カメラ、PCの初期投資
- データの質と量: 精度向上のための十分な学習データの確保
- プライバシー配慮: 個人情報保護への対応
- システム連携: 既存システムとの統合や維持管理
- 運用体制: AI解析結果の適切な活用と人間による監督
- 継続的な改善: 新たな状況や環境変化への対応
まとめ
AIを活用した動画解析は、様々な商品・サービスの研究開発や導入が進められています。従来の動画解析と違い自動で処理することができ、既存のシステムや機械と組み合わせることで一連の作業を完全な自動化・無人化することも可能です。
加えて、AIの得意とする膨大なデータから未来を予測する研究も進められており、今後様々なサービスが出てくるでしょう。
これまで人の手や目視でしかできなかった単純作業をAIに置き換えることで人手不足を解消できる他、人の動きを解析したサービスの向上や標準作業の仕組みづくりといったことにも活用でき、大幅な生産性の向上が期待できます。
「単純作業だけど人手が必要である」「標準マニュアルが必要だけど作る時間がない」といったことでお悩みの方は、AI動画解析を検討してみてはいかがでしょうか。
AI Marketでは、
AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
𝕏:@AIMarket_jp
Youtube:@aimarket_channel
TikTok:@aimarket_jp
運営会社:BizTech株式会社
掲載記事に関するご意見・ご相談はこちら:ai-market-contents@biz-t.jp