アイトラッキングとは?仕組みや活用できる分野、活用事例を徹底解説!
最終更新日:2024年09月23日
「顧客がどこを見て、何を感じているのか」が分かれば、より正確なニーズを把握できると思いませんか?
それを可能にするのがアイトラッキング技術。アイトラッキングを利用すれば、顧客がどんな商品・サービスに興味を持っているのかを、より深く知ることができます。
本記事では、
AI Marketでは、
貴社に最適な会社に手間なく数日で出会えます
目次
アイトラッキングとは?
アイトラッキングとは、人の瞳孔の動きを検知して、視線を追跡する技術です。アイトラッキングは、目を意味するeyeと、追跡を意味するtrack(ing)を接続した言葉です。
視線は人がどこに意識を向けているのかの判断材料となるため、アイトラッキング技術を活用すれば、人がどんなモノ・デザインに興味を引くのかを定量的に測定することが可能です。
アイトラッキングは、デザイン・広告・医療・マーケティングなど様々な業種で活用できる技術として開発が進んでいます。
アイトラッキングの仕組み
出典:「画像の認識・理解シンポジウム (MIRU2012)」 Reading-Life Logのプロトタイプ実装
アイトラッキングは、瞳孔と「プルキニエ像」の位置関係を解析することにより視線を判断しています。プルキニエ像とは、眼球に近赤外線 LED 照明を当てることで出現する反射光で、常に目の中の同じ座標(場所)に出現します。
プルキニエ像は、まっすぐ前を見たときに瞳孔内の下部に来るよう校正(キャリブレーション)することが多いです。このプルキニエ像と瞳孔の中心点がどの方向にどれだけ離れているかを測定することで眼球の回転角を解析し、視線を割り出します。
例えば、上記画像のように上を向いている場合、瞳孔の中心はプルキニエ像の上にかなり上に位置します。逆に、下を向いた場合には、瞳孔の中心点とプルキニエ像が近くなり、さらに下を向くと瞳孔の中心点がプルキニエ像よりも下に移動します。
プルキニエ像を活用するほかにも、以下の解析方法が用いられます。
- サーチコイル法:コイルを組み込んだコンタクトレンズを装着して眼球運動を測定し視線を割り出す
- 眼球電位法:目の周辺電極を測定することで眼球の向きを解析し、視線を割り出す
アイトラッキングを活用できる分野6選
視線は人が何に興味を示しているかを判断する重要な情報になるため、多くの分野での活用が進んでいます。ここでは、以下の6つの分野での活用方法について紹介します。
- マーケティング
- 技術伝承
- ゲーム(eスポーツ)
- スポーツ
- 自動車
- 介護
それぞれの分野について説明します。
マーケティング
アイトラッキングを活用すれば「どんな商品に視線が向かうのか」「顧客は店舗のどこを最初に見るのか」を解析できます。スーパーであれば、売りたい商品を視線が行きやすい場所に置いて購入を促進したり、陳列方法を最適化したりすることが可能です。
また、キャンペーンを行った際には、どれだけ顧客が興味を持ってくれたのかを判断することもできます。
関連記事:「マーケティング分析とは?メリットやフレームワーク解説!役立つAIツールも紹介!」
技術伝承
熟練技術者の視線を解析することで、新人技術者がどこに意識を向ければ良いのかを知ることができます。
研究職や技術職では、個人の技術が研究成果や製品の完成度に影響することがあるため、技術力の向上はより良い成果を生み出すことに繋がります。
関連記事:「製造業のAI導入・活用事例」
ゲーム(eスポーツ)
eスポーツでもアイトラッキング技術が活用されています。高い技術力を持つプレイヤーは画面上のどこに注目しプレイしているのかを解析できるため、技術向上に役立てることが可能です。
また、プロ同士の大会では、リプレイ解説でプレイヤーがどこを見ているのかを映し出すことができます。観戦者はプロの視点を知ることができたり、より踏み込んだ解説が聞けるため、今後は様々な大会での活用が期待されています。
関連記事:「ゲームAIの活用事例、概要や歴史」
スポーツ
身体を動かすスポーツでも、アイトラッキング技術が活用されています。eスポーツと同様に、プロの視線を解析することで技術向上に役立てることが可能です。
サッカーやラグビーなどの活動範囲の大きいスポーツのアイトラッキングはまだ難しいですが、卓球などの活動範囲の狭いスポーツでは既に活用されています。
関連記事:「スポーツでのAI活用事例完全解説、企業が事業参画する際の注意点」
自動車
自動車業界では、安全性向上のためにアイトラッキングが活用されています。既に実用レベルで活用されている業界の一つです。
例えば、自動車学校で熟練ドライバーの視線を学んだり、他のAI技術と組み合わせて感情分析を行います。分析結果を基に危険運転のリスクを測定するシステムが搭載されたりしています。
介護
介護業界では、経験豊富なスタッフが利用者のどこに注意を払っているかを解析し、新人や学生への指導に役立てています。
新人がより多くの利用者を見て回れるようになると、少人数で現場を回すことが可能です。個々の能力が上がれば、人手不足の現場でも利用者の安全を確保できるようになります。
関連記事:「介護業界のAI活用サービス事例!ロボット・コミュニケーション介助解説」
AI Marketでは、
貴社に最適な会社に手間なく数日で出会えます
アイトラッキングシステムの活用事例
ここからは、自動車・マーケティング・医療・eスポーツ・技術分野でのアイトラッキング活用事例を紹介します。
熟練技術者の視線映像を活用して技術継承(ナック)
株式会社ナックイメージテクノロジーは、熟練技術者の視線を解析することで無駄作業を減らし、作業効率を改善させることに成功しました。また、視線映像を利用して新人や若手を指導することで、効率的な技術伝承を実現しています。
視線の動きや停留時間は、点線やヒートマップとして表すことができるため、どの部位にどれだけ視線を向けているかも可視化できます。
一度測定すれば、熟練技術者との違いだけでなく個人特有の課題も発見できます。即効性があり、各作業工程で定量的に自らの課題を見つけることができるため、一度だけの利用でも作業スピードの向上に十分効果があるでしょう。
視線や表情を基に搭乗者の感情を分析(Affectiva)
Affectivaは、視線や表情などの情報をAI解析して搭乗者の感情を推測するシステム「Automotive AI」を構築しました。これにより、運転者がどのような心理状況で運転しているのかが予測できるようになりました。
交通事故を起こしやすい人は「カッとしやすい」特徴があります。イギリスで行われた研究では、交通事故の8割以上が「怒り」という感情を持った状態で起こっていることまで判明しています。
「Automotive AI」は、収集したデータベースから搭乗者の感情状態を予測できます。もし、運転手が「怒り」を感じていると認識すれば、すぐに知らせて休憩をとってもらうなどの対処が可能です。
このように「Automotive AI」は、視線と他のAI技術を組み合わせることで感情を予測し、人々の安全性を高めることに役立っています。
関連記事:「感情認識AIとは?種類や活用事例」
視線をAI分析することでアジサイの好みを把握(愛知県農業水産局)
愛知県の農業水産局は、アジサイの新品種開発の際に、アイトラッキング技術を用いて人々の好みを解析しました。どのような花が好まれるのかを、視線情報で分析します。
調査では、複数のアジサイ画像が表示されている画面内で、どのアジサイ画像に視線が行き、どれだけの時間眺めているかを測定されました。AIは、各アジサイに視線が向かっている時にどのような感情を持っているのかを解析し、どのアジサイが好まれているのかを予測しままs。
その結果、感情という素直な判断材料から回答を得られたほか、21日かかっていたニーズ調査が14時間で完了し時短にも繋がりました。
真剣な表情が「悲しい」などのマイナスな感情に捉えられるなどといった課題も見つかりました。それでも、AIは機械学習により精度を向上できるため、学習が進めばさらに精度の高いシステムを利用できるようになるでしょう。
同局は、AIの活用でより正確なデータを集めることに成功し、労力も削減できたため、他の花にも応用したいと考えているそうです。
視線データを基に認知機能を評価(アイ・ブレインサイエンス)
アイ・ブレインサイエンスは、タブレットに表示されたタスク映像に対する視線の動きを解析することで、認知症発見のための認知機能評価システム「MIRUDAKE」を開発しました。
これまでの認知機能評価である問診検査は、非常に煩雑であるため気軽に調査できないという問題がありました。しかし、「MIRUDAKE」であればわずか3分間で認知機能を評価できます。
「MIRUDAKE」は既に介護現場などでも利用されており、早期の認知症発見に役立っています。同社は「MIRUDAKE」を医療向けプログラムとして開発していますが、一般の方でも利用できるアプリも提供しています。
eスポーツのリプレイ解説にプレイヤーの視線を導入(Tobii AB)
アイトラッキングのグローバルリーダーであるTobii ABは、eスポーツのリプレイ解説時にプレイヤーの視線を表示させたり、リアルタイムの視線入り動画配信サービスを提供しています。
2022年7月30日から2日間にわたり開催された「X-MOMENT Rainbow Six Japan League 2022 (RJL 2022)」では、アイトラッキングによる解説コーナーが設けられました。プレイヤーの視線を可視化したことによる高度な解説が可能となり、解説時のわかりやすさが向上しています。
このようにアイトラッキングは、「プロゲーマーがどのような視線でプレイしているか」という斬新な情報をリアルタイムで届けることができ、eスポーツ業界を盛り上げることに寄与しています。
アイトラッキングについてよくある質問まとめ
- アイトラッキングとは?
アイトラッキングとは、人の瞳孔の動きを検知して、視線を追跡する技術です。視線は人がどこに意識を向けているのかの判断材料となるため、アイトラッキング技術を活用すれば、人がどんなモノ・デザインに興味を引くのかを定量的に測定することが可能です。デザイン・広告・医療・マーケティングなど様々な業種で活用できる技術として開発が進んでいます。詳しくはこちらにジャンプ。
- アイトラッキングの仕組みは?
アイトラッキングは、瞳孔と「プルキニエ像」の位置関係を解析することにより視線を判断しています。プルキニエ像とは、眼球に近赤外線 LED 照明を当てることで出現する反射光で、常に目の中の同じ座標(場所)に出現します。このプルキニエ像と瞳孔の中心点がどの方向にどれだけ離れているかを測定することで眼球の回転角を解析し、視線を割り出します。詳しくはこちらにジャンプ。
まとめ|アイトラッキングは様々な分野で活用できる
アイトラッキング技術は、ただ単に視線を捉えるだけでなく、他のAI技術と合わせて活用することで、ニーズ把握や認知機能評価などの複雑な調査も実施できます。
アイトラッキング技術を活用することで、顧客が本当に求めている商品やサービスを生み出せるでしょう。特に、アイトラッキングを用いた感情分析をすることにより、従来測定できなかったニーズ把握や心理的な分析が可能です。
AI Marketでは、
貴社に最適な会社に手間なく数日で出会えます
高専、理系国立大学にて工学・農学を専攻後、AIを中心にテクノロジー調査や記事執筆を実施中。
AI開発会社やDXコンサルファームにて、AIのビジネス活用やテクノロジーの技術調査記事などを多数寄稿している。