画像認識アルゴリズムとは?各種類の特徴・選定ポイントを徹底解説!
最終更新日:2024年11月21日
製造現場での品質管理、セキュリティ、医療診断など、画像認識技術の活用は急速に広がっています。しかし、数多くのアルゴリズムの中から、自社の課題に最適なものを選ぶのは容易ではありません。
本記事では、画像認識アルゴリズムの基本的な仕組みから、ディープラーニングを活用した最新の手法まで体系的に解説します。特に、用途別の最適なアルゴリズム選定や、必要なデータ量、計算リソースの見積もりなど、実務で直面する具体的な課題に焦点を当てて説明していきます。
画像認識システムの導入をご検討の方が、技術選定から実装時の注意点まで、実践的な知識を得られる内容となっています。
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目次
画像認識アルゴリズムとは?
画像認識アルゴリズムは、デジタル画像をコンピュータが解析可能な形式に変換し、その中から特定のパターンや特徴を検出する技術体系です。
主に以下の機能を果たします。
- 画像内の物体や特徴の検出・分類
- ノイズ除去や画質向上
- 画像の圧縮や変換
- 特徴抽出や強調
特に、特徴量抽出は画像認識の基礎となる重要な工程です。画像から特徴を抽出する際には、輝度分布、色の出現率、物体の位置関係、エッジなどの要素が考慮されます。
これらの特徴は、画像の拡大縮小や回転などの幾何学的変化の影響を受けにくい形式で抽出されます。代表的な特徴抽出手法としてHaar-Like特徴量やSIFT特徴量があり、それぞれが異なる用途や特性を持っています。
この技術により、人間の目が自然に行っている認識作業を機械的に再現することが可能となります。
テンプレートマッチングによる従来の画像認識アルゴリズム
テンプレートマッチングは、事前に用意された参照画像(テンプレート)と入力画像を比較し、類似度を計算することで対象を認識する手法です。この手法は、製品の品質検査や位置決めなど、条件が明確な場合に特に有効です。
ただし、対象物の大きさや角度がテンプレートに比べて大きく変化する場合には精度が低下します。そのため、複数のテンプレートを用意するなどの工夫が必要となります。
ディープラーニングによる画像認識のメリット
AIを活用した画像認識は、従来の手法と比べて大きな優位性を持っています。特に、ディープラーニングの進歩によって、AIの画像認識の精度は人間以上の緻密さになりました。
従来の手法では人手による特徴設計が必要でしたが、ディープラーニングにより大量の教師データから自動的にパターンを学習できる点が特徴です。畳み込みニューラルネットワーク(CNN)などのアルゴリズムにより、複雑な特徴の抽出や高精度な認識が可能となりました。
製造業での品質管理や医療分野での画像診断など、幅広い実用化が進んでいます。テンプレートマッチングなどの従来手法と比較して、より高度で柔軟な認識能力を持ち、幅広い分野での活用が期待されています。
関連記事:「機械学習とディープラーニングの違いや使い分けについて解説して、ビジネスへの活用事例も合わせて紹介」
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ディープラーニングによる画像認識アルゴリズムの種類と発展
画像認識の歴史において、ディープラーニングの登場により、画像認識アルゴリズムの精度は飛躍的に向上し、その後の技術発展を大きく加速させることとなります。
AlexNetの登場
2012年、トロント大学のチームが開発したAlexNetは、画像認識コンテストILSVRCにおいて、従来の画像認識アルゴリズムと比べて圧倒的な性能を示しました。AlexNetの画像認識アルゴリズムの特徴として、ReLU活性化関数の導入、ドロップアウトによる過学習の抑制、そして大規模なGPU並列計算の活用が挙げられます。
この成功により、コンピュータビジョン分野の画像認識アルゴリズムは従来の手作り特徴量からディープラーニングベースの手法へと一気にシフトしていきました。
VGGNet:深層構造の確立
VGGNetは、シンプルながら効果的なネットワーク構造を確立し、画像認識アルゴリズムの性能をさらに押し上げました。3×3の小さな畳み込みフィルタを重ねることで、より少ないパラメータ数で効率的に特徴を抽出することを可能にしました。
この画像認識アルゴリズムの設計思想は、その後の画像認識モデルの基本構造として広く採用されることとなります。現代の画像認識技術の基礎を築き、その後の技術発展を大きく加速させたと言えます。
層が深くなったことによって勾配消失問題が発生することになり、これは次世代の画像認識アルゴリズムであるResNetのスキップ接続によって解決されることになりました。
Single Shot Detector (SSD)
SSDは、2016年に提案された単一ステージの物体検出アルゴリズムです。単一のディープニューラルネットワークを使用して、物体の位置と分類を同時に予測します。
CNNを基盤としていますが、物体検出タスクに特化した設計になっています。VGGNetをベースネットワークとして使用し、その上に追加の畳み込み層を積み重ねています。
複数のスケールのフィーチャーマップを使用して、様々なサイズの物体を検出します。デフォルトボックス(アンカーボックス)を使用して、物体の位置を効率的に予測します。
ResNet:超ディープラーニングの実現
ResNetは、残差学習というアプローチを導入して勾配消失問題を効果的に解決することで、100層を超える超深層ネットワークの学習を可能にしました。この画像認識アルゴリズムにより、モデルの表現力が大幅に向上し、より複雑な視覚的特徴を捉えることが可能となりました。
ResNetの登場は、画像認識アルゴリズムにおけるもう一つの重要な転換点となり、その後の物体検出やセグメンテーションなど、様々な応用分野の発展にも大きく貢献しています。
関連記事:「ResNetの特徴や仕組み、応用されたニューラルネットワーク手法などを紹介」
YOLO(You Only Look Once)
YOLO(You Only Look Once)は、物体検出の分野で非常に重要なアルゴリズムです。YOLOは、単一のニューラルネットワークを使用して画像全体を一度に処理し、物体の位置とクラスを予測する「シングルステージ」検出器です。
ResNetからインスパイアされた残差接続が導入されており、これにより深いネットワークでも学習が安定しています。
このアプローチは、リアルタイムでの処理が可能であるため、多くの応用分野で利用されています。
関連記事:「YOLOの概念、物体検出速度が早い理由、従来手法との違い、メリット・デメリットについて詳述」
Vision Transformer
近年では、自然言語処理で成功を収めたTransformer(トランスフォーマー)アーキテクチャを画像認識に応用したVision Transformer(ViT)が注目を集めています。このモデルは画像を小さなパッチに分割し、それらの関係性を自己注意機構によって学習します。
従来のCNN(畳み込みニューラルネットワーク)とは全く異なる画像認識アルゴリズムで高い認識性能を実現しています。
特に、Segment Anything Model(SAM)のようなViTを拡張した最新のモデルでは、高品質な物体セグメンテーションを実現し、様々な実用的なアプリケーションに活用されています。
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画像認識アルゴリズムの選定ポイント
画像認識アルゴリズムを導入する際は、プロジェクトの目的や要件に応じて適切なアルゴリズムを選択することが重要です。最適なアルゴリズムの選定は、プロジェクトの成功を大きく左右する要因となります。
用途別の最適なアルゴリズム選択
画像認識の用途によって、最適なアルゴリズムは大きく異なります。
製造業での品質管理では、高速で正確な判定が求められるため、軽量な畳み込みニューラルネットワークが適しています。また、特定の用途ではYOLOやSSDなどの単一ステージ検出器も効果的です。これらは高速で正確な物体検出が可能です。
一方、医療画像診断のような高度な判断が必要な場合は、より深層的なアーキテクチャを持つResNetやVision Transformerが推奨されます。また、Capsule Networksも注目されています。これらは小規模なデータセットでも高い性能を発揮し、複雑な解剖学的構造の解釈に優れています。
セキュリティ分野における顔認証システムでは、特徴点抽出に優れたFaceNetやDeepFaceなどのアルゴリズムが使われ、高い認識精度が要求されます。
必要なデータ量と計算リソース
画像認識システムの構築には、適切な量の学習データと十分な計算リソースが必要です。一般的な顔認識システムでは少なくとも数千枚単位の画像データが必要とされ、その他の用途でも1万〜6万枚程度のデータが必要となります。
計算リソースについては、GPUやクラウドコンピューティングの活用を検討する必要があります。特にディープラーニングモデルでは、トレーニング時に大量の計算リソースを必要とするため、事前に必要なリソースを見積もることが重要です。
関連記事:「画像認識のためのデータセットの特徴と代表的なデータセットを紹介」
精度とコストのバランス
画像認識システムの導入では、必要な精度とコストのバランスを慎重に検討する必要があります。高精度なモデルは一般的により多くの計算リソースと学習データを必要とし、それに伴いコストも増加します。
例えば、不良品検出システムでは、見逃しを最小限に抑えつつ、過剰な検出を防ぐ必要があります。別の言い方をすれば、偽陽性(過剰検出)と偽陰性(見逃し)のバランスを取ることが重要です。
また、システムの運用コストを考慮し、定期的なモデルの再学習や更新のための予算も確保する必要があります。実際の導入に際しては、プロジェクトの予算制約内で最適な精度を達成できるアルゴリズムを選択することが重要です。
転移学習の活用も検討できるかもしれません。事前学習済みモデルを使用することで、少ないデータと計算リソースでも高い精度を達成できる可能性があります。
画像認識アルゴリズムの最新動向と今後の展開
画像認識技術は急速な進化を遂げており、新しいアプローチや応用分野が次々と開拓されています。
CNNとTransformerの長所を組み合わせたハイブリッドモデル
Swin Transformerは、CNNとTransformerの長所を組み合わせたハイブリッドの画像認識アルゴリズムです。
Swin Transformerは画像を小さなパッチに分割し、それらを徐々に大きなパッチに統合していきます。これにより、CNNのような階層的な特徴抽出が可能になります。
画像全体ではなく、局所的な「ウィンドウ」内で自己注意を計算します。そして、ウィンドウをシフトさせることで、異なるウィンドウ間の情報も統合できます。これにより、Transformerのようなグローバルな関係性把握能力を実現しています。
Swin Transformerのようなハイブリッドのアルゴリズムは、CNNの局所的な特徴抽出能力とTransformerのグローバルな関係性把握能力を効果的に組み合わせることで、より柔軟で効率的な画像認識を実現しています。
マルチモーダル学習の応用事例
マルチモーダル学習は、画像、テキスト、音声などの異なる種類のデータを組み合わせて画像認識アルゴリズムの性能を向上させるアプローチです。例えば、画像とテキストを組み合わせた学習により、画像の内容をより深く理解し、自然な説明文を生成することが可能になっています。
例えば、監視カメラシステムでは、画像認識アルゴリズムに音声情報を組み合わせることで、より正確な異常検知が実現されています。
関連記事:「マルチモーダルAIについて詳しく解説し、実際のビジネスで活用されている事例」
自己教師あり学習の実用化
自己教師あり学習は、画像認識アルゴリズムの学習効率を大幅に向上させる手法です。大量のラベル付きデータを必要としません。
この手法では、画像に対して様々なデータ拡張を適用し、それらの関係性を学習することで、効果的な特徴表現を獲得します。例えば、画像の一部を隠してその部分を予測する課題や、画像の色付けを行う課題などを通じて、モデルは画像の本質的な特徴を学習することができます。
この技術により、少量のラベルデータでも高精度な画像認識アルゴリズムの構築が可能となっています。
エッジAIにおける効率的なアルゴリズム設計
エッジAIの実装では、限られた計算リソースで高い認識精度を実現する画像認識アルゴリズムが求められます。特に監視カメラなどのエッジデバイスでは、リアルタイム性とデータ秘匿性を両立させる必要があります。
この課題に対して、モデルの軽量化や量子化、プルーニングなどの技術が活用されています。また、デバイスごとに最適化されたAIをインストールする「個別AI」アプローチも採用されており、より効率的な画像認識システムの構築が可能となっています。
これらの技術により、エッジデバイス上でも高性能な画像認識アルゴリズムの実装が実現されています。
関連記事:「エッジAIを導入し、活用している事例・応用例やユースケースを紹介」
まとめ
画像認識アルゴリズムは、デジタル画像から意味のある情報を抽出し、コンピュータが画像の内容を理解・分類する技術として、製造業の品質管理から医療診断まで幅広く活用されています。従来のテンプレートマッチングから、機械学習、そしてディープラーニングへと進化を遂げ、認識精度は飛躍的に向上しています。
導入に際しては、用途に応じた適切なアルゴリズムの選択、必要なデータ量と計算リソースの見積もり、そして精度とコストのバランスが重要なポイントとなります。特に、コストと精度のバランス調整には画像認識の専門家による詳細な検討が重要です。
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画像認識アルゴリズムについてよくある質問まとめ
- 画像認識システムの導入コストはどのように見積もればよいですか?
導入コストは、必要な精度、計算リソース(GPUやクラウド利用料)、データ収集・整備費用、そしてシステムの運用・保守費用を考慮する必要があります。特に深層学習モデルでは、トレーニング時の計算リソースと、定期的なモデルの再学習・更新のための予算を確保することが重要です。
- 従来型のテンプレートマッチングとAI型の画像認識では、どちらを選ぶべきですか?
テンプレートマッチングは、製品の品質検査や位置決めなど、条件が明確で変化が少ない場合に適しています。一方、AI型は対象物の大きさや角度が変化する場合や、より複雑な認識タスクに適しています。用途に応じて、精度とコストのバランスを考慮して選択することが重要です。
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