YOLOv9とは?特徴・v8との性能比較・各モデルの違いを徹底解説!
最終更新日:2024年11月27日
ディープラーニングによる物体検出の最新モデル「YOLOv9」が2024年2月に登場し、企業のAI活用に新たな可能性をもたらしています。特に計算リソースを49%削減しながら検出精度を向上させた点は、限られたITインフラでAI活用を検討する企業にとって重要な進展といえます。
本記事では、YOLOv9の特長と実務での活用価値を具体的なユースケースとともに解説します。また、システム選定の判断材料として、各モデルの特性と実装時の考慮点を詳しく説明していきます。
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目次
YOLOv9とは?
2024年2月に発表されたYOLOv9は、リアルタイム物体検出の分野で大きなブレイクスルーを達成したディープラーニングモデルです。
Chien-Yao Wang、I-Hau Yeh、Hong-Yuan Mark Liaoによって発表されました。Ultralytics社(v5、v8などを開発)のYOLOv5コードベースを基盤としていますが、アーキテクチャや手法においては大きな独自の進化を遂げており、以前のYOLOバージョンの直接的な後継ではありません。
開発者のなかのChien-Yao Wangは、YOLOv7など従前の複数バージョンの開発に貢献しています。そのため、YOLOシリーズの基本概念を継承してはいますが、独立した研究チームによって開発された新たなモデルとして独自の技術を導入しています。
YOLOv9は、従来のYOLOシリーズを大きく上回る検出精度と処理速度を実現し、MS COCOデータセットにおいて最高性能(State-of-the-Art)を達成しました。YOLOv8と比較して、パラメータ数、計算量を削減しながらも高精度を保持していることから、効率性でも注目されています。
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YOLOv8シリーズとの性能比較
YOLOv9は、YOLOv8と比較して著しい効率化と精度向上を達成しています。パラメータ数を49%削減し、計算量を43%削減しながら、MS COCOデータセットでの精度を0.6%向上させました。
特に、YOLOv9-eモデルはmAP@0.5で72.8%を達成し、YOLOv8-Xの71.1%を上回る性能を示しています。
YOLOv9-eモデルは、YOLOv8-Xと比較して15%少ないパラメータと25%少ない計算量で動作し、モデルサイズも58MBと大幅に軽量化されています。これにより、より少ないコンピューティングリソースで高いパフォーマンスを実現しています。
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実環境でのベンチマーク結果
実際のユースケースにおいても、YOLOv9は優れた性能を示しています。特に小型物体の検出や遠距離からの物体認識において、YOLOv9は高い精度を維持しています。
ただし、近接物体の検出については、用途に応じて適切なモデル選択が必要となる場合があります。
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YOLOv9のアーキテクチャ注目変更点
従前のバージョンと比較して、YOLOv9は以下の新しい技術を導入した点で注目されています。これらの改善により、YOLOv9は従来のYOLOモデルと比較して、パラメータ数と計算量を大幅に削減しながら、精度を向上させることに成功しています。
プログラマブル勾配情報(PGI)の最適化
YOLOv9は、ディープニューラルネットワーク(DNN)における情報損失の問題に対処するため、プログラマブル勾配情報(PGI)を導入しました。
PGIはメインブランチと補助的な可逆ブランチを分離し、メインブランチは推論プロセスに使用され、追加の推論コストを発生させません。一方、補助的な可逆ブランチは信頼性の高い勾配生成とパラメータ更新を確保します。
そして、特徴ピラミッド階層層間に統合ネットワークを組み込み、異なる予測ヘッドからの勾配情報を集約します。これにより、深い特徴ピラミッドが重要な情報を失うという問題を軽減します。
PGIにより、極端に深いネットワークだけでなく、軽量なアーキテクチャにも深い監視を適用することが可能になりました。
一般化効率的層集約ネットワーク(GELAN)の仕組み
一般化効率的層集約ネットワーク(GELAN)は、YOLOv9のために新たに開発されたネットワークアーキテクチャです。CSPNetの勾配パス計画とELANの推論速度最適化を組み合わせています。
様々な計算ブロックを柔軟に統合できる設計により、異なる推論デバイスに適応可能です。200層以上の深さでも入力情報を保持できることが実証されています。
GELANは特に計算リソースの効率的な利用に優れており、限られたハードウェア環境でも高いパフォーマンスを発揮することができます。
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YOLOv8からの進化ポイント
YOLOv9は、前世代のYOLOv8から大きく進化を遂げ、特に実用面での改善が顕著です。その進化は単なる性能向上だけでなく、実際の運用環境を考慮した実践的な改良となっています。
小規模物体検出の精度向上
YOLOv9は小規模物体の検出において、特筆すべき性能向上を達成しています。MS COCOデータセットでの評価では、小規模物体に対するAP(Average Precision)スコアが40.2%を記録し、YOLOv8と比較して著しい改善を示しています。
この向上は特に交通監視システムや医療画像分析など、微細な物体の検出が重要となる実用シーンで大きな価値を持ちます。遠距離からの物体認識においても優れた性能を発揮し、従来のモデルでは見落とされがちだった細部の検出が可能となりました。
計算リソースの最適化
YOLOv9は従来モデルと比較してパラメータ数を49%削減し、計算量を43%低減させながら、精度を0.6%向上させるという画期的な成果を上げました。この最適化は、GELANアーキテクチャとPGI(Programmable Gradient Information)の採用により、効率的な特徴抽出と処理の高速化を両立させた結果です。
特に組み込みシステムやエッジデバイスでの運用において、この最適化の効果は顕著に表れています。
機能面での違いと選定ポイント
YOLOv9とYOLOv8の選定においては、用途に応じた適切な判断が重要です。YOLOv9は物体検出に特化したモデルとして設計されており、特に小規模物体の検出と遠距離からの認識において優れた性能を発揮します。
一方、YOLOv8はセグメンテーションなど多様なタスクに対応可能という特徴があります。実装の容易さという点では、両モデルともにPythonパッケージとCLIベースの実装を提供しており、開発者にとって扱いやすい設計となっています。
選定の際は、プロジェクトで必要とされる具体的な機能要件と、利用可能な計算リソースを考慮した総合的な判断が求められます。
YOLOv9のモデルバリエーションと性能比較
YOLOv9シリーズは、nano(n)からextended(e)まで5つの主要なモデルバリエーションを展開しています。各モデルは異なる性能特性を持ち、実用面での柔軟な選択が可能となっています。
YOLOv9t (nano) | YOLOv9s (small) | YOLOv9m (medium) | YOLOv9c (compact) | YOLOv9e (extended) | |
---|---|---|---|---|---|
パラメータ数 | 2百万 | 7.2百万 | 20.1百万 | 25.5百万 | 58.1百万 |
モデルサイズ | 7.7 MB | 26.7 MB | 76.8 MB | 102.8 MB | 192.5 MB |
mAP@50-95(物体検出の精度指標) | 38.3% | 46.8% | 51.4% | 53.0% | 55.6% |
特徴 | 最小のモデルで、高度に制約された環境に最適 | 計算効率と精度のバランスが取れた軽量モデル | 高い精度とリアルタイムパフォーマンスのバランスが取れたモデル | 高精度と計算効率の最適化を実現 | 最高の精度を誇る大規模モデル |
用途 |
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上記の特性により、YOLOv9シリーズは幅広いアプリケーションに対応し、リソース制約のある環境から高性能コンピューティング環境まで、様々な用途に適用できる柔軟性を提供しています。
まとめ
YOLOv9は、特に小規模物体の検出精度向上と計算リソースの効率化で注目される物体検出モデルです。導入検討の際は、既存システムとの統合や運用体制の整備など、技術面以外の要素も重要となります。
システム更新を検討されている方は、まずはYOLOv9-mのような中間モデルでの実証実験から始めることをお勧めします。既存システムの性能向上とコスト削減の両立を目指す上で、YOLOv9は有力な選択肢となるでしょう。
具体的な実装方針の策定には、AIシステム開発の実績をもつベンダーやコンサルタントに相談することをお勧めします。導入目的や環境に応じた適切なモデル選定により、効果的なAI活用が実現できます。
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YOLOv9についてよくある質問まとめ
- YOLOv9とUltralytics系統のv5、v8とはどのような違い?
YOLOv9は新たな独立した系統として位置づけられます。パラメータ数を削減しつつ精度が向上しているのが大きな特徴です。
v5、v8と言ったUltralytics社開発バージョンの系統は、実用性と使いやすさに焦点を当て、PyTorch実装や簡単な学習・推論インターフェースを提供しています。
YOLOv9はUltralyticsのYOLOv5によって提供された堅牢なコードベースを基盤としていますが、アーキテクチャや手法においては独自の進化を遂げています。
- YOLOv9の精度向上は実務でどのように活かせますか?
YOLOv9は特に小規模物体の検出において著しい性能向上を達成しており、AP(Average Precision)スコアが40.2%を記録しています。特に監視カメラでの遠距離物体の検出や、医療画像での微細な異常検出など、小規模物体の認識が重要な業務での効果が期待できます。また計算リソースが削減されているため、エッジデバイスでの処理が必要な製造ラインの検査などにも適しています。
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