Azure AI Foundry Agent Service(旧 Azure AI Agent Service)とは?メリット・始め方・AutoGPTとAgentGPTとの違いを徹底紹介!
最終更新日:2025年05月21日

AIエージェントが企業での業務効率化の切り札として注目されていますが、開発や運用には専門知識や複雑な環境構築、そしてセキュリティの確保が不可欠です。そこでマイクロソフトが提供するのが「Azure AI Foundry Agent Service(旧 Azure AI Agent Service)」です。
本記事では、Azure AI Foundry Agent Serviceのメリット、導入手順を解説するとともに、同様の注目ツールであるAutoGPTやAgentGPTとの違いを紹介します。
AIエージェントの開発基盤を検討中の企業担当者は、必見の内容です。
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目次
Azure AI Foundry Agent Serviceとは?

Azure AI Foundry Agent Serviceとは、Microsoftが提供するエンタープライズ向けAIプラットフォーム「Azure AI Foundry」の中核を担うサービスです。
LLM(大規模言語モデル)、ツール群、ポリシー、ネットワーク、ID認証といった多様な要素をつなぐ運用の接着剤として機能します。
関連記事:「Azure AI Foundryとは?生成AIアプリ開発統合ツールの特徴・活用法・注意点を徹底解説!」
企業向けのAzure AIサービスのなかの、Azure AI Foundryの一部として提供されており、Azure AI Foundry Agent Serviceを利用することで、複雑なリソース管理の負担を気にすることなく、効率的かつ安全にAIエージェントの構築からデプロイ、スケーリングまで行えます。
また、開発できるAIエージェントの柔軟性が高く、例えばソースを元にした質問への回答(RAG)や各種アクションの実行、複雑なワークフローの完全な自動化など、幅広いビジネスシーンで適用可能です。
したがって、Azure AI Foundry Agent Serviceは、汎用性の高いAIエージェントを迅速に実装・展開できる理想的なプラットフォームと言えます。
関連記事:「AIエージェントとは?自律型?生成AIとの違いや特徴、種類」
参考:Azure AI Foundry Agent Service とは
Azure AI Foundry Agent Serviceの主な構成要素

Azure AI Foundry Agent Serviceは、LLM、ツール、ネットワーク、ID、ポリシー、モニタリングといった要素を1つのランタイムで結合し、企業のAIエージェント導入・運用を支える「中枢的なサービス」です。
PoC止まりのエージェントではなく、実業務に耐えるセキュアで可観測性のあるエージェント運用を目指す企業にとって、非常に有力な選択肢となります。
Foundry Agent Service(中核)
プラットフォームの中心に位置し、以下の機能を提供します。
- Managed orchestration:ツール実行やプロンプト処理の自動制御
- Managed threads:スレッドベースの会話管理
- Network isolation:仮想ネットワークによる安全な実行環境
- OBO-auth integration:On-Behalf-Of(代理認証)対応でセキュアなID統合
開発フレームワークとツールキット
Foundryは柔軟なエージェント開発のために、以下のSDKやツールを統合しています。
- Microsoft系:Agents SDK、AutoGen、Semantic Kernel
- OSS系:LangGraph、LangChain、LlamaIndex、CrewAI など
観測機能:Foundry Observability
実行中のエージェントの状態や信頼性を評価・改善するための仕組みが揃っています。
- Tracing(トレース)
- Logging(ログ出力)
- Monitoring(監視)
- Evaluation / Experimentation(評価と実験)
対応モデル:Foundry Models
以下の多様なAIモデルに対応しています。
- Direct Models(Azure OpenAIなど)
- Ecosystem Models(Llama, Mistral など)
- Fine-tuned Models(微調整済みモデル)
- BYO-Models(Bring Your Own:独自モデルの持ち込み)
連携ツール:Knowledge & Tools
エージェントは、以下の社内外の情報源や実行ツールと接続できます。
- 情報収集:Bing、Azure AI Search、OpenAPI Tools、MCP Tools
- 社内システム:SharePoint、Microsoft Fabric
- アクション実行:Logic Apps、Azure Functions
エージェント間連携:Agent Integrations
他のエージェントと連携し、より高度なオーケストレーションが可能になります。
- Assistants API:LLMベースの対話APIとの統合
- A2A(Agent-to-Agent):異なるフレームワークのエージェント連携
ガバナンスとセキュリティ:Azure AI Content Safety
エンタープライズ利用に必要なポリシー・コスト管理・コンテンツ保護機能が提供されています。
- Content filters(不適切な出力の制御)
- Cost management(コスト統制)
- Governance(運用ポリシーの適用)
- Enterprise Security(企業レベルのセキュリティ設計)
Azure AI Foundry Agent Serviceの活用例
Azure AI Foundry Agent Serviceを活用することで、各部門におけるさまざまな業務シナリオに対応するAIエージェントを構築可能です。具体的には、以下のようなエージェントを実装できます。
エージェントの種類 | できること |
---|---|
調査 | 市場動向や業界の最新情報を継続的に監視し、レポート作成を自動化 Azure AI SearchやBingなどのツールを活用して情報を収集し、レポート作成をサポート |
営業 | 営業チームが最も有望なターゲットに注力できるように、見込み客の調査と自動選別 営業チームが最も有望なターゲットに注力できるように、見込み客の調査と自動選別 |
顧客サービス | 顧客へのパーソナライズされたメッセージを自動で送信し、積極的なフォローアップをサポート |
開発サポート | コードベースのアップグレードやコードリポジトリの開発をサポート |
生産性アップ | 電子メールを自動で送信して会議をスケジュールするなど日常的なタスクの自動化 |
Azure AI Foundry Agent Serviceは多岐にわたる業務プロセスを自動化し、企業全体の生産性向上に大きく寄与します。
関連記事:「AI開発の手順は?システム構築の流れを徹底解説!費用・人材探し・失敗予防注意点完全ガイド」
Azure AI Foundry Agent ServiceとAutoGPT・AgentGPTの違い
MicrosoftのAzure AI Foundry Agent Service、OpenAIのAutoGPTとAgentGPTはいずれもAIエージェント構築プラットフォームですが、それぞれ強みや適した用途が異なります。
それぞれの特徴や優位点は、以下のとおりです。
比較項目 | Azure AI Foundry Agent Service | AutoGPT | AgentGPT |
---|---|---|---|
開発環境 | Azure AI Foundry SDK/ポータル | GitHubで公開されているオープンソース | Webブラウザベース |
AIモデル | GPT-4、Llama3、Mistral、Cohereなど | GPT-4、GPT-3.5 | GPT-4、GPT-3.5 |
セキュリティ | エンタープライズグレードのセキュリティ | ユーザーが自己管理 | Next-Auth.jsによる認証 |
インターフェース | コードベースとポータルベース | コマンドラインインターフェース | インタラクティブなWebインターフェース |
コスト | Azureの料金体系に基づく | 無料(ただし、OpenAI APIキーが必要) | 無料(ただし、GPT-4アップグレードには追加費用) |
サポート | Microsoftによる公式サポート | コミュニティサポート | カスタマーサポートあり |
特徴 |
|
|
|
主な用途 | 企業ユースレベルの安全性と柔軟性を兼ね備えた開発基盤が必要なシーン | コンテンツ作成や分析、データ処理など、自律的な作動が望ましいシーン | パーソナライズなセールスやマーケティングなど、ユーザーの介入が必要なシーン |
上記より、個人向けやプロトタイピングを目的とする場合はAutoGPTやAgentGPT、一方企業全体での大規模なシステム統合や高い信頼性が求められる場合ではAzure AI Foundry Agent Serviceがより適した選択肢と言えます。
Azure AI Foundry Agent Service以外にAIエージェントをスクラッチから開発できるプラットフォームについてこちらの記事で詳しく解説しています。
参考:Introducing Azure AI Agent Service|Azure AI services Blog
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Azure AI Foundry Agent Serviceの活用メリット

Azure AI Foundry Agent Serviceは高度なAIエージェントを迅速に実現できるように環境が整えられています。以下では、Azure AI Foundry Agent Serviceのメリットを紹介します。
AIエージェント開発が簡単に
Azure AI Foundry Agent Serviceは、「OpenAI SDK」や「Azure AI Foundry SDK」を利用することで、わずか数行のコードでAIエージェントの構築から実行まで可能です。
OpenAI SDKとはGPT-4などOpenAIのLLMなどをシンプルなAPI呼び出しで利用できるライブラリです。Azure AI Foundry SDKはAzure AIプラットフォームの各種機能を統合し、エンタープライズ向けAIアプリケーションの構築基盤を提供するツールチェーンです。
例えば、Azure AI Foundry SDKでは以下のシンプルな流れでAIエージェントを容易に構築できます。
- LLMの指定
- タスクの実行方法に関する具体的な指示
- 他のサービスへアクセスできるツールを定義
このように、Azure AI Foundry Agent Serviceを活用すれば短いコードで高度なAIエージェントを構築できるため、従来の複雑なエージェント開発プロセスを大幅に簡略化できます。結果として開発時間の短縮につながります。
主要な生成AIと連携
Azure AI Foundry Agent Serviceは、Microsoftをはじめ、OpenAIやMeta(旧Facebook)、Mistral、Cohereなど、生成AI業界をリードするパートナーのLLMを一元的に統合しています。
具体的には、以下の主要な生成AIモデルを利用できます。
- GPT-4oシリーズ(音声/画像/テキストに対応したマルチモーダルモデル)
- GPT-4シリーズ(高精度な自然言語処理が可能)
- GPT-3.5シリーズ(低コストモデル)
- DALL-E(画像生成特化)
- Whisper(音声認識特化)
- Meta Llama 3.1 405B(膨大なパラメータを持つ高性能モデル)
- Mistral large 2407(軽量ながら高速な生成が可能)
- Cohere Command R+(長文コンテキストのタスク向けに調整したモデル)
上記にあるように、テキスト生成だけでなく、画像生成や音声生成、コード生成に対応するモデルも選択できます。Azure OpenAI Serviceを通じて、GPT-4やGPT-3.5などのOpenAIモデルも利用可能であり、これらを組み合わせることで、より幅広いタスクに対応するエージェントを構築できます。
豊富なラインナップにより、用途に応じた最適なモデルを選択でき、タスク固有のエージェントの構築や総所有コストの最適化が可能です。
外部システムとの高い連携性
Azure AI Foundry Agent Serviceは、「Azure Logic Appsコネクタ」を通じて1,400以上の外部システムと連携することが可能です。
以下が、連携できるシステムの一部です。
- Microsoft TeamsやExcelなどのMicrosoft製品
- Dropbox
- Gmail
- SAP
- Bing Search(リアルタイムのWebデータを取得)
- Microsoft Fabric(構造化データを統合したデータ分析プラットフォーム)
- SharePoint(社内のプライベートデータが格納されたプラットフォーム)
- Azure AI Search(エンタープライズ向けの高度な検索機能)
- ローカルファイル
- トリップアドバイザーなどの独自ライセンスデータ
Azure AI Foundry Agent Serviceを通じて、上記のような社内の多様なシステムやデータソースと統合することで、AIエージェントの回答精度の向上や適用範囲の拡大を実現します。
企業使用を前提にした高い高度なセキュリティ
Azure AI Foundry Agent Serviceは、企業が規制要件を満たしながら機密データを保護できるよう、エンタープライズ向けの高度なセキュリティ機能をパッケージ化しています。
以下が、具体的なセキュリティ機能です。
セキュリティ機能 | 機能の詳細 |
---|---|
企業独自ストレージへの直接連携 | Assistants APIとは異なり企業のデータソースに直接接続しエージェントが安全にデータへアクセスできるよう設計 |
専用の仮想ネットワーク | パブリックへのデータ出力を厳格に禁止し、内部ネットワーク内での通信を維持する |
認証の簡素化 | キーレスセットアップや代理認証(On-Behalf-Of)を活用 |
無制限のスケール | 無制限のパフォーマンスとスケーリングを活用でき、予測可能な待機時間と高スループット |
エージェントの出力を常時監視 | パフォーマンスと信頼性を評価するために、監視ダッシュボードへOpenTelemetry互換のメトリックを組み込める |
コンテンツフィルタとプロンプトシールド | カスタムのコンテンツフィルタなどで有害コンテンツを検出 プロンプトシールドによりクロスプロンプトインジェクション攻撃からエージェントを保護 |
これらの機能により、Azure AI Foundry Agent Serviceは、AIエージェントがアクセスする社内の機密情報や顧客情報のプライバシーを確保しています。
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Azure AI Foundry Agent Serviceの始め方
Azure AI Foundry Agent Serviceの使用を開始するには、「Azure AI Foundryハブ」と「AIプロジェクト」を作成する必要があります。
以下が、具体的な手順です。
- Azureのサブスクリプションを契約します(無料で作成可能)。
- Azure AI Foundryポータルにアクセスし、[+ プロジェクトの作成] を選択します。
- ハブがない場合は「新しいハブの作成」オプションを選び、プロジェクトと同時に作成します。既存のハブがある場合はドロップダウンから選択可能です。
- プロジェクトが作成されたら、[エージェント] セクションに移動し、使用するモデル(GPT-4oなど)を選択してデプロイします。
- モデルが未デプロイの場合は、その場で [Deploy a model(モデルをデプロイ)] を選択し、デプロイ設定を行います。
- GUIベースで試作・テストを行いたい場合は、「エージェント プレイグラウンド」を使用することで、コーディング不要でエージェントの作成・検証が可能です。
- コードベースでの制御を希望する場合は、「Azure Foundry SDK」を使用してAPIベースでエージェントを作成・管理することも可能です。
Azure AI Foundry Agent Serviceは分かりやすいUIになっているため、難しい操作なく簡単にエージェントを作成できます。
詳細は公式サイトをご確認ください。
クイック スタート: 新しいエージェントを作成する (プレビュー)
Azure AI Foundry Agent Serviceの利用枠
Azure AI Foundry Agent Serviceは、安全性を確保するためにいくつか利用制限を設けています。以下が、現在の利用枠です。
制限項目 | 制限値 |
---|---|
エージェント / スレッドあたりの最大ファイル数 |
|
エージェントの最大ファイル サイズ | 512MB |
エージェント用にアップロードされた全ファイルの最大サイズ | 100GB |
最大エージェントトークン数 | 2,000,000トークン |
参考:Azure AI Foundry Agent Service のクォータと制限
上記の制限により、利用形態や業務規模に合わせた最適な設定が可能なため、さまざまなシナリオでのAIエージェント活用を促進します。なお、利用枠は変更になる場合もあるため、利用前にAzure AI Foundry Agent Serviceで最新情報を確認するとよいでしょう。
関連記事:「Microsoft Azureの料金の仕組みは?費用を抑える方法」
Azure AI Foundry Agent Serviceについてよくある質問まとめ
- Azure AI Foundry Agent Serviceの主な特徴は何ですか?
最新のLLMや多様な生成ツールを統合し、チャット、画像生成、音声認識など複数のAI機能を単一プラットフォームで提供する点が特徴です。
また、柔軟なカスタマイズ性とエンタープライズ向けの高いセキュリティ・コンプライアンス機能も備えています。
- AutoGPTやAgentGPTとどのような違いがありますか?
AutoGPTは自律的に複数タスクを実行するシステム、AgentGPTはユーザーがインタラクティブに操作・カスタマイズできる環境を提供します。
一方、Azure AI Foundry Agent Serviceはこれらの長所を取り入れつつ、エンタープライズ環境での統合性、スケーラビリティ、セキュリティを強化しており、企業向けの柔軟なAIエージェント開発を実現します。
まとめ
Azure AI Foundry Agent Serviceは、Microsoftが提供するエンタープライズ向けAI開発エージェントツールです。
具体的には、GPT-4oやLlamaをはじめ主要なLLMと、SharePointなどの1,400種類以上の多様な外部ツールを統合し、RAGや複雑なワークフローに対応する高度なAIエージェントを開発できます。
また、AI開発のノウハウに依存することなく幅広い企業で活用できるように、開発を簡略化できるローコードの仕組みと堅牢なセキュリティ機能を搭載している点も特徴です。
さらに詳細な活用方法や、貴社固有の課題解決への適用について検討されたい場合は、AIエージェント開発に精通した専門家にご相談いただくことをお勧めします。
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