ディープラーニングとは?機械学習との3つの違いは?使い分け注意点、ビジネス活用事例徹底解説!
最終更新日:2024年10月29日
AI(人工知能)とともに頻繁に使われる用語に「機械学習」や「ディープラーニング」があります。AIのビジネスへの活用が広まっており、自社でも業務の効率化や生産性の向上に利用したいと考えている方も多いようです。
企業でAIシステムを開発するための手順についてはこちらの記事で解説しています。
現在の第3次AIブームをけん引し、実社会へのAI導入をもたらした原因は間違いなく機械学習、そしてディープラーニングの急速な発展でしょう。でも、実は「AI」「機械学習」「ディープラーニング」について、それぞれの用語の意味や違いがあやふやな方も多いかもしれません。
本記事では、機械学習とディープラーニングの違いや使い分けについて解説して、ビジネスへの活用事例も合わせて紹介します。
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目次
ディープラーニングとは?機械学習とどう違う?
ディープラーニング(深層学習)は、自身でルールやパターンを学習します。人間の脳の仕組みをモデル化したニューラルネットを用いてコンピュータに学習させる仕組みです。2010年代に注目され始め、音声認識や画像認識の分野で他の手法よりも圧倒的な成果を示しました。
既存のニューラルネットと比較し、神経細胞を模した関数を超多層にして構成したものがディープラーニングです。ネットワーク自身がルールやパターンを学習し、特定のタスクを高精度で実現できます。非常に複雑な問題を解決するのが得意です。大量の学習データを用いて、システム自身が試行錯誤しながら複雑なパターンを検出するために用いられます。
関連記事:「DNN(ディープニューラルネットワーク)とは?仕組み・活用メリット・活用分野・注意点を徹底紹介!」
機械学習はディープラーニングの親カテゴリーともいえる
機械学習は比較的少量の学習用データを用いて、シンプルなパターンを検出するのに使われます。機械学習はAI技術の1つの分野です。
AIには、機械学習以外にもルールベースや探索アルゴリズムなど他の技術分野が存在します。そして、機械学習の一部分野にディープラーニング(深層学習)があります。
世界を変えつつあるChatGPTの元になるTransformerもディープラーニングの成果の1つです。LLM(大規模言語モデル)の1つであるTransformerを使えば、まるで人間と話しているように会話をできるチャットボットを作成できます。
ディープラーニングによって可能になったLLMとは何か、どのような仕組みかこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
本記事ではディープラーニング以外の機械学習を総称して「機械学習」と呼ぶこととします。もう少し機械学習とディープラーニングについて詳しく見ていきましょう。
機械学習とディープラーニングの主な違い
機械学習とディープラーニングは、ともにAIの分野で用いられる手法ですが、その特徴には大きな違いがあります。ここでは、アルゴリズム、ニューラルネットワークの構造、特徴量の扱い方の観点から、両者の違いを詳しく見ていきましょう。
アルゴリズムの違い
機械学習で用いられる代表的なアルゴリズムには、サポートベクターマシン(SVM)、決定木、k-最近傍法(k-NN)などがあります。機械学習のアルゴリズムは、比較的シンプルな数学的手法に基づいており、データの特徴を捉えて分類や予測を行います。
一方、ディープラーニングで用いられるアルゴリズムは、主に人工ニューラルネットワークに基づいています。多層パーセプトロン(MLP)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)などが代表的です。これらのアルゴリズムは、複雑なネットワーク構造を持ち、大量のデータから自動的に特徴を学習することができます。
ニューラルネットワークの構造の違い
機械学習におけるニューラルネットワークは、一般的に入力層、隠れ層、出力層からなる単純な構造を持ちます。隠れ層の数も少なく、比較的浅いネットワークとなっています。このようなネットワークでは、人間が設計した特徴量を入力として扱い、それらの組み合わせから結果を導き出します。
対照的に、ディープラーニングにおけるニューラルネットワークは、より複雑で深い構造を持ちます。多数の隠れ層に加え、畳み込み層やRNN層などの特殊な層も導入されます。これらの層は、データの局所的な特徴や時系列的な特徴を捉えることに特化しており、画像や音声、自然言語処理などの分野で威力を発揮します。
特徴量の扱い方の違い
機械学習では、原則として人間が特徴量を選択する必要があります。特徴量とはコンピュータが物事を認識する際に基準となる要素です。例えば、リンゴを画像認識するためには「色→赤」「形→円に近い」が代表的な特徴量になるでしょう。
機械学習は、データ内に潜むパターンを機械(コンピュータ)に学習させて分類や予測のパターンを見つけさせる技術です。明示的にプログラミングすることなく、コンピュータに学ぶ能力を与えようとする研究分野として始まりました。比較的少量のデータをプログラムに入力し、プログラムが単純なアルゴリズムを使用してパターンを検出し、自動的に決定を下すように指示します。
機械学習の種類、用いるアルゴリズムについてはこちらの記事で特集しています。
一方、ディープラーニングでは、特徴量の設計・選択をネットワークが自動的に行います。大量のデータを学習することで、ネットワークは自ら特徴量を見出し、それらを組み合わせて複雑な判断を下すことができます。これにより、人間では気づきにくい潜在的なパターンや関係性も捉えられるようになります。
ディープラーニングが「自身で」考える仕組み
ディープラーニングは、「ラベル付けされた大量のデータ」から「何層にもわたって判断を重ねて」「特徴量を割り出し」正解を導き出す技術です。どれも難しい概念なので1つずつ解説します。
ラベル付けされた大量のデータとは?
まず「ラベル付けされた大量のデータ」ですが、これは例えば、10,000枚の猫の写真です。あらゆるタイプの猫の写真を10,000枚用意して、これに「猫」というラベルを付け(アノテーション)、ディープラーニング型AIに学ばせます。これを学習といいます。
何層にもわたって判断を重ねるとは?
猫の写真を渡して、瞬時に「これは猫である」という結論を出した場合、入力層(猫の写真を見る)と出力層(猫と結論づける)の2層しかありません。機会学習では2層で結論を出すことができないので、何層にも渡って、つまり何回も判断させます。
例えば、ある層では「茶色だから猫の可能性がある」と判断し、別の層では「大人の人間より大きいから猫ではない可能性が相当高い」と判断します。ディープラーニング型AIは層が多いほど、つまりディープになるほど、正しい答えを出しやすくなります。
特徴量を割り出すとは?
最後に「特徴量を割り出す」を説明します。猫と犬は「毛むくじゃらの4本足の動物」という特徴は同じですが、鼻の長さや体の大きさや座り方などの特徴は異なります。つまり猫の特徴の量が多いほど、そして犬の特徴の量が少ないほど、それが猫である可能性が高くなります。
ディープラーニング型AIは、猫の写真について各層で猫の特徴を探し、猫の特徴の量を計測します。そして「もう猫と判定してよい」という特徴量に達したら「猫である」と答えを出します。そして、猫の特徴の量が少なかったら「猫ではない可能性が高い」と結論づけます。
機械学習とディープラーニングの使い分け方法3ポイント
機械学習とディープラーニングをどのように使い分ければ良いでしょうか。
以下の3つの観点から説明します。
- 学習に必要なデータ量
- できること
- 要する時間やコスト
それぞれのポイントについて説明します。
学習に必要なデータ量
機械学習は、学習に使えるデータ量が多くない場合に用いられます。比較的少なめのデータ量でも分析可能です。ディープラーニングは、分析の精度を上げるためのデータを大量に準備できる場合に向いています。
学習データの収集方法を相談できるおすすめ業者をこちらの記事で特集しています。
それぞれの技術でできること
機械学習は、分析の基準が明確な場合などの比較的単純な処理に向いています。一方、ディープラーニングは、複雑な処理も可能です。通常の機械学習では結果を出すことが難しい場合にはディープラーニングが向いているでしょう。
要する時間やコスト
機械学習は比較的少ない時間で済みます。機械学習が向いているのはできる限り早期に結果が必要で、コストを抑えたいケースです。一方、ディープラーニングは多くの時間を要します。またコンピュータなどの要求スペックは、ディープラーニングは高い水準のものが必要です。コストをかけてでも膨大なデータが処理できるような高速で高性能なコンピュータを準備できる場合に用いられます。
AIシステムの開発予算の立て方、注意点についてこちらの記事で解説していますので併せてご覧ください。
ビジネスでのディープラーニング活用事例5選
ディープラーニングは、画像処理や音声認識などのパターン認識と呼ばれる分野で非常に有効な手段です。さらに、機械翻訳など文の生成を伴う自然言語処理でも活躍し、将来予測や新素材の探索にも用いられます。
ここではビジネスへの活用事例を以下に5つ解説します。
- 未来予測技術によるトマトの持続可能な生産
- 画像認識による病理標本の診断(メドメイン)
- 自然言語処理による文章の自動作成(LINE)
- 音声認識、自然言語処理、音声合成を組み合せたAIオペレーター(JCB)
- マテリアルズ・インフォマティクスによる新素材の開発(ENEOS)
それぞれの事例について説明します。
製造業での異常検知
製造ラインでの目視検査をディープラーニングにより代替できます。本来の形状と異なる不良品をAIが検出することで、生産効率を改善することに役立っているのです。特に合否の判定に限度見本を用いる不良のように熟練が必要な品質判定では、人材不足や高齢化の対策としてディープラーニングによる物体検出の導入が進められています。
物体検出に用いられるディープラーニングの仕組み、種類、具体的な活用事例についてはこちらの記事で特集していますので併せてご覧ください。
未来予測技術によるトマトの持続可能な生産(カゴメ)
ディープラーニングの活用によって、膨大なデータからパターンを学習し、未来の予測が可能です。
トマトの生産や加工食品の販売を手掛けるカゴメ株式会社は、AIを活用した生鮮トマトの収量予測システムを独自開発しました。カゴメではこれまで蓄積した栽培や管理に関する独自の膨大なデータと最先端のAI技術とによって、5週後のトマトの収量を予測するAIモデルを開発し、国内での菜園で活用を始めています。
昨今の気候変動などの要因で農作物の生産管理は困難な状況となっているため、将来の収量予測の精度を上げる必要が出てきました。収量予測の精度は、高確度の営業計画の策定基盤となるとともに、食品ロスといった社会貢献においても重要度の高い管理指標です。
AIによる予測技術の仕組み、他の活用事例についてはこちらの記事で解説していますので併せてご覧ください。
画像認識による病理標本の診断(メドメイン)
画像認識の技術は、ディープラーニングが得意としている分野の一つです。顔認証、異常検知など応用範囲が広く、医療現場での画像診断の導入も進められています。
医療ソフトウェア、クラウドの企画・開発・運営および販売を手掛けるメドメイン株式会社では、病理診断を支援するソフトウェア「PidPort」の提供を手掛けています。ディープラーニングを活用して、患者の細胞や組織のデジタル画像から疾患の有無を判別可能としています。
病理医が足りない医療機関を中心に、業務負担や心理的負荷の軽減に貢献します。「PidPort」はディープラーニングによってプレパラートのデジタル画像を分析し、疾患の有無や病名などを判断し提示します。日本国内においては、AI解析機能は薬事承認が必要であるため今後の対応を目指しています。
AIによる画像認識の仕組みについてはこちらの記事で解説していますので併せてご覧ください。
自然言語処理による文章の自動作成(LINE)
自然言語処理はディープラーニングの活用が進められる領域の一つです。GPT-3やBERTなどのモデルに加えてChatGPTは対話形式での自然な会話を可能としています。以前は英語での活用が主でしたが、日本語でもビジネス活用可能なモデルが作られています。
LINE株式会社が開発した日本語に特化した自然言語処理の基盤モデルが「HyperCLOVA」です。メールや小説に至るあらゆる文章を自然で正しい日本語で生成できます。人間が箇条書きで列挙した内容をもとに、丁寧な文面で生成します。要約も可能で、話し言葉で記述された議事録のテキストを与えれば、内容を理解したうえで会議の内容を要約します。
キーワードから広告文やキャッチコピーの生成、コールセンターでの問い合わせ内容の要約や自動応答分析など幅広い領域への活躍が見込まれています。
AIによる自然言語処理の仕組み、活用事例についてはこちらの記事で解説していますので併せてご覧ください。
音声認識、自然言語処理、音声合成を組み合せたAIオペレーター(JCB)
ディープラーニングのさまざまな分野の技術を複数組み合わせて、一つのサービスを提供している事例もあります。
株式会社ジェーシービー(JCB)では、IBM Watsonを活用した対話型の自動音声応答システム「AIオペレーター」の運用を開始しました。AIオペレーターは、ディープラーニングの技術である音声認識・自然言語処理・合成音声技術を組み合わせたシステムです。対話型で音声応答が可能で、ユーザーから発した音声を自然言語でAIが分析し、音声で回答、もしくは適切なオペレーターへ自動的につなげられます。
音声からテキストへの変換、そしてテキストの内容を分析することで回答を提供可能です。さらに応答テキストを音声へ変換する機能を備えるため、ユーザーからの電話での問い合わせに対して音声での自然な会話のやりとりを可能としています。
AIによる音声認識の仕組み、活用事例についてはこちらの記事で解説していますので併せてご覧ください。
マテリアルズ・インフォマティクスによる新素材の開発(ENEOS)
マテリアルズ・インフォマティクス(MI)は、材料に関するさまざまな実験データから、ディープラーニングなどを応用して求めている特性や機能を満たす材料の設計をおこなうことです。
ENEOS株式会社と株式会社Preferred Networksは、原子レベルのシミュレーター「Matlantis」を共同開発しました。従来の物理シミュレータにディープラーニングモデルを組み込むことで実現しました。分子や結晶などの構造や物性を非常に高速に計算でき、広範囲での新規素材の探索が可能です。
ENEOSでは再生可能エネルギー、触媒、機能材料などの分野で、高性能で低コストな革新的素材の発見や開発につなげることを目指しています。
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ディープラーニング導入での3つの注意点
ディープラーニングをビジネスへ導入する際の注意点をまとめました。
判断過程のブラックボックス化
ディープラーニングの活用において、判断過程がブラックボックス化する場合が多くなります。特に複雑な分析であるため、アルゴリズムがなぜそのような出力をしたのか説明できない状態です。ビジネスへの活用において導き出された処理結果の根拠がたとえ不明確であったとしても、どこまで許容範囲であるか検討する必要があります。
学習に必要なデータが十分にあるか
学習に必要なデータが十分に準備できるか確認しておきましょう。機械学習やディープラーニングは、十分なデータが用意できないと結果の精度は下がってしまうからです。特にディープラーニングは大量の学習用データが必要となります。
コストに見合うだけの成果を出せるか
ディープラーニングを活用するためには、機械学習と比較すると多くの費用や時間がかかります。学習用のデータの準備に時間が必要だということも考慮すると、短期間で結果を出したい場合は適していません。高価で高性能なコンピュータが必要であるため、コスト面でも多くの負担が発生します。見込み成果がコストに見合っているか、あらかじめ十分に検討しましょう。
ディープラーニングについてよくある質問まとめ
- 機械学習とディープラーニングの主な違いは何ですか?
機械学習とディープラーニングの主な違いは、アルゴリズムの複雑さ、ニューラルネットワークの構造、特徴量の扱い方です。機械学習は比較的シンプルなアルゴリズムを使用するのに対し、ディープラーニングは複雑なニューラルネットワークを使用します。また、機械学習では人間が特徴量を選択するのに対し、ディープラーニングではネットワークが自動的に特徴量を学習します。
- ディープラーニングが「自身で」考える仕組みとはどのようなものですか?
ディープラーニングは、大量のラベル付きデータを使って、多層のニューラルネットワークで特徴量を割り出し、正解を導き出す技術です。各層で特徴量を探し、その量を計測することで、最終的に判断を下します。層が多いほど、つまりディープになるほど、正しい答えを出しやすくなります。
- 機械学習とディープラーニングの使い分けにおいて、考慮すべき3つのポイントは何ですか?
機械学習とディープラーニングの使い分けにおいて、考慮すべき3つのポイントは、学習に必要なデータ量、それぞれの技術でできること、要する時間やコストです。機械学習は比較的少量のデータでも可能で、単純な処理に向いており、短時間で低コストです。一方、ディープラーニングは大量のデータを必要とし、複雑な処理が可能ですが、時間とコストがかかります。
まとめ
本記事では機械学習とディープラーニングの違いを解説しました。ディープラーニングはビジネスへの活用に大きなインパクトを与え、すでに多くの企業が導入を進めています。
自社でもディープラーニングをビジネスで活用したいとお考えかもしれません。しかし、ディープラーニングをはじめとしたAIを導入するためにはどのような業者やパートナーと組むのがいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
AIの専門用語、システム要件はわからないし、見積もりの内容チェック方法もわからない方がほとんどではないかと思います。
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ディープラーニングと機械学習の違いについては、こちらの記事もご参考ください。
参考:人工知能ブームに火をつけたディープラーニングや機械学習とは? 応用例や、AIスタートアップのM&Aの事例などを紹介
AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
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