アパレル・ファッション業界のAI活用事例6選!需要予測以外にも活用できる?導入の課題も解説【2024年最新】
最終更新日:2024年11月12日
アパレル業界やファッション業界は、新型コロナ禍の影響を大きく受けている業界の一つでしょう。従来の実店舗だけでのビジネスが難しくなったことで、ECサイトに参入する企業も増えてきています。また、もとよりアパレルやファッション業界はトレンドの変化も早く、業務効率性の向上、変化への対応がますます求められています。そこで注目されているのがAIです。
今回はよく注目される需要予測も含めて、ファッション・アパレル業界でのAI活用事例、導入の課題をご紹介します。公開事例なので大企業やグローバル企業での事例を中心に紹介していますが、中小企業や地方店舗でも適用できる事例を集めました。是非参考にしてください。
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目次
アパレル業界でAIがどうしても必要な理由
アパレル・ファッション業界は今大きな課題に直面しています。例えば、新型コロナウィルスの流行により実店舗での対面接客に制限がかかったり、消費者の購入スタイルもECサイトの利用が増えたりと大きく変化しています。
アパレル系のECサイトでは、顧客に自動応答する「AIチャットボット」を導入する企業が増えています。AIチャットボットを活用すれば、24時間365日体制で稼働できるので、カスタマーセンター・コールセンターの業務効率化や顧客満足度の向上への効果も期待できます。
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またSNSの普及なども合わさり、個人の趣味趣向を尊重する傾向が強まったり、ライフスタイルが多様化したりしています。その結果、従来からトレンドのライフスタイルが短いといわれていたアパレルファッションのトレンドがより短くなってきています。
ですから、アパレル業界では、AIを活用した需要予測が既に必須となっています。
主に以下の2つの分野のAI技術を組み合わせて活用することで、顧客の需要に関する法則性を精密に把握し需要を予測しています。
- 時系列分析
- 画像認識技術
「時系列分析」では、AIで過去の売上データを分析し、将来の需要予測を実施します。
時系列分析手法を始めとする、AIによる需要予測の仕組み・導入の際の注意点についてはこちらの記事で説明しています。
「画像認識技術」では、ECサイトなどにおいて大量の画像を解析し、個々のアイテムを素材・柄・色・カット方法・サイズ・シルエット・フィット感など細分化された要素に分類し、それぞれの売上傾向や社会的な流行予測等を基に客観的な需要予測を行います。
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アパレル・ファッションECでのAI活用事例3選
アパレル・ファッション業界のECでAIが活用されている事例を紹介します。
トピック特集記事:「AIはEC業界をどう変える?活用方法・メリット・実際の事例を徹底解説!」
SNSを活用した需要・トレンド分析(株式会社ニューロープ)
アパレル・ファッション業界において需要分析はビジネスに大きく関わります。もし、需要やトレンドの読みを外してしまうと膨大な在庫をかかえてしまったり、商品を廃棄しなければなりません。株式会社ニューロープではこのような課題に対して、SNSを解析して需要やトレンドを分析する#CBK forecast(カブキフォーキャスト)をリリースしました。
#CBK forecastでは、2014年より蓄積しているTwitterやブログ、メディアなどのファッションスナップ画像を50万点以上分析しています。分析は以下を含む約600種類のタグを設定します。
- カテゴリー
- 色
- 柄
- シルエット
- 素材
- 丈感
- 襟のタイプ
そして、上記タグと顔認識による性別・年齢などの推定情報をかけ合わせて、1,000万点以上のアイテムを分類しました。
解析したデータを活用することで、どのアイテムの着用がいつ増えているのか定量的に把握できます。それにより、余剰在庫などを避けることにもつながることが期待されています。これはECだけでなく、実店舗での活用ももちろん可能です。
AIチャットボットで売上20%増大(ナノ・ユニバース)
ナノ・ユニバース株式会社はECサイトにAIを活用したチャットボットを導入することで顧客接点を有効活用し、売上拡大に繋がりました。ナノ・ユニバースはECサイトにお問い合わせフォームがありましたが、コールセンターのオペレータによる電話受付ができない深夜などでは機械的な対応になってしまっており、機会損失につながっていました。
この機会損失を防ぐために、AIによる自然言語解析技術を用いて、顧客との問い合わせ状況の会話を解析する株式会社空色のチャットボットOK SKYを導入しました。その結果、オペレータによる電話応対が終了している時間でも顧客対応ができ、顧客満足度アップに繋がりました。また、購買意欲を見逃さないきっかけを作ることで売上20%以上アップにつながりました。
今後システムとの連携で在庫状況などとの問い合わせやコーディネートも目指しています。
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AIでパーソナルスタイリング(メチャカリ)
メチャカリとは、ファッションサブスクリプションサービスの一つでファッションレンタルサービスの中で非常に多くダウンロードされているサービスです。 「earth music&ecology」「E hyphen world gallery」などで人気のアパレル企業ストライプインターナショナルが運営しています。メチャカリではサービスの利用率を上げるための施策として、チームラボ株式会社が開発したAIを活用した「パーソナライズスタイリングAIチャットボット」を導入しました。
このチャットボットは、その顧客が今までレンタルした商品や閲覧履歴などの行動履歴をAIで解析することで、顧客に合わせたコーディネートやアイテムを提案します。新品・新作の洋服などが常時10,000種類以上あるなかで、ユーザーに合わせたコーディネートやアイテムの提案が可能になりました。「何を着れば良いのか分からない」「服を選ぶ時間がない」という悩みを解消できるとユーザー満足度の向上につながっています。
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アパレル実店舗のAI活用事例3選
実際に身につけるアイテムは実店舗で購入したいと考えるユーザーもまだ多くいます。また、洋服を買いに行く行為自体をレジャー・趣味感覚でとらえるユーザーも少なくありません。実店舗スタイルのアパレル・ファッション店でAIが活用されている事例を紹介します。
3D自動採寸(ワコール)
主に女性インナーウエアを提供している株式会社ワコールは、3Dボディスキャナーと接客AIを組み合わせた3D smart & tryを提供することで実店舗に来る顧客の満足度や売上拡大を狙っています。インナーウエアを選ぶ際には、「自身のサイズが合うアイテムを見つけるのが難しい」「他人の目が気になって落ち着いて選べない」という問題がありました。
それでも、直接身につける女性のインナーウエアは、ECへの完全移行にはまだまだ時間がかかる分野です。実際に、コロナ禍で急激にアパレル業界のEC化が進行としたとはいえ、2021年の調査でもワコールでEC比率22%、もともとECでスタートしたピーチ・ジョンでさえEC比率46%しかありません。ECと実店舗を並立しながら、顧客満足度を高めることを狙ったのが3D smart & tryです。
3D smart & tryでは、ボディスキャナーを用いることで店員にさえ見られることなく5秒程度でバスト、ウエスト、ヒップのほか、腕の長さ、二の腕、太もも、ふくらはぎを計測します。その計測データを元に、販売員のノウハウを解析したAIが体のデータにあったおすすめのアイテムをレコメンドしてくれたり、スタイルなどの要望も含めて最適化したうえで接客してくれます。
計測されたデータはインナーウェアだけでなく、洋服選びなどの参考にもなったり、お客様の満足度向上につながりました。アパレルを含む小売店舗でのコスト削減、売上向上のためにAI接客がますます活用されていくでしょう。
店舗内顧客を画像分析して行動分析(大塚商会)
実店舗ではECサイトとは異なり、非購入者に関するデータを分析することが容易ではありません。ECサイトでは、サイトを訪問したユーザーの足取りを最終の商品購入の有無に関係なくたどれます。一方実店舗では、客がどの商品を手に取り、どの商品と比較したか、何分悩んだか、結局どのアイテムは購入しなかったを見える化できませんでした。
アパレル店舗では、1つの商品が売れるまでに多くの「比較されたが買われなかった」商品が特に多い傾向があります。その結果、ビジネスの改善をするとっかかりを把握しにくい課題がありました。この課題に対して、大塚商会は店舗内の入店者数や属性などを把握するためのFieldAnalystを開発しました。
FieldAnalystでは、店舗の入り口にカメラを設置し、入店した人数をカウントするとともに、画像で人物や顔をAIで検出することで年代や性別などを解析します。どの年代がどれくらい来店するのかなどを把握することで、人数が多いタイミングにタイムセールを実施できて、適切なスタッフを配置できるなど売り上げに直結する施策に活用できます。また、カメラを複数設置することにより棚ごとの滞留人数や時間も分析できるため、レイアウトや商品の改善にも活用できます。
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AI画像分析で短期でデザイン展開(トミー・ヒルフィガー)
価値観が多様化していく中で、より自分向けの商品がほしいなどファッションのパーソナライゼーションが求められています。その結果、商品の開発スピードも短くなっています。そのような中でAIをデザインに活用した取り組みがReimagine Retailです。トミー・ヒルフィガーがIBM、ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)と一緒にテクノロジーをデザイン開発に活用しようとしています。
トミー・ヒルフィガーの1万5000の商品画像、一般に入手できる60万のランウェイの画像、そして10万件近い模様や型紙などのパターンをAIに学習させることで、人間では把握できないトミー・ヒルフィガーならではの配色やデザイン、シルエットなどを把握できます。デザイナーがこれらのデータを元に作業することで、トミー・ヒルフィガーらしいデザインでありながら独創的なデザインを短期間で作成可能です。
トミー・ヒルフィガーは、全てのデザインプロセスをデジタル化し、パターン作成・サンプル作成・ショールーム展示まですべての製作プロセスを3Dデザインで行うことを始めています。3DデザインをReimagine Retailを組み合わせれば、従来の生産工程で必要だった数万枚の手描きパターン、製品サンプル、複数カットの写真撮影などがすべて不要になり、時間・費用・資源の無駄を削減できます。
アパレル・ファッションでのAI導入の課題とは?
アパレル・ファッション業界にAIを導入している事例をご紹介してまいりましたが、AIを導入すれば必ずうまく行くわけではありません。実際需要予測を導入したけどうまく解決につながっていない事例もあります。そのため導入前にちゃんと課題を把握しておくことが大事です。
AIで全てが解決できるという勘違い
AIを導入したからといってどのような状況でも対処ができるわけではありません。例えば、需要予測やトレンド予測にしても、新型コロナウィルスの蔓延というイレギュラーは予測できませんでした。多くのAIは過去のデータを元に予測しているため、過去のパターンを大きく超えての予測はできません。
そのため、AIのデータ解析を人が活用するというハイブリッドな取り組みが必要となります。AIに頼り切らないビジネス設計をしましょう。
また、2020年に始まったコロナ禍に対する対応は、既にAIに取り込まれたとみることもできます。つまり、コロナ禍レベルの事案に対する備えは将来のためにできていると考えられます。
AIリテラシーが高い人材が足りない
IT部署やデジタルトランスフォーメーションの部署が中心にAIシステムを導入したが、現場では全く活用されないケースが少なくありません。これは、IT部署が現場での活用や導入される場面を想像せずに導入したからです。また、AIリテラシー人材が十分に足りていない、または使い切れていないことが理由です。
アパレル・ファッション業界のみならず、多くの現場でAIリテラシー人材が足りていないのが課題になっています。そのため、自社でそのような人材を採用することも難しいかもしれません。AIシステムを上手く活用するためにも、協力会社などを活用しながら自社の中に導入していくことも含めて検討しましょう。
アパレル・ファッション業界のAI活用についてよくある質問まとめ
- アパレル業界でAIを活用するメリットは何ですか?
アパレル業界でAIを活用するメリットは以下の通りです。
- 需要予測の精度向上
- 顧客サービスの向上
- 業務効率の改善
- デザイン開発の効率化
- アパレル・ファッション業界でAIはどのように活用されていますか?主な事例を教えてください。
アパレル・ファッション業界でのAI活用例は以下の通りです。
- SNSを活用した需要・トレンド分析
- AIチャットボットによる顧客対応
- パーソナルスタイリングの提案
- 3D自動採寸
- 店舗内顧客の行動分析
- AI画像分析によるデザイン開発
- アパレル業界でのAI活用の具体的な成功事例を教えてください。
アパレル業界のAI活用成功事例は以下の通りです。
- 株式会社ニューロープ: SNS解析による需要・トレンド分析ツール「#CBK forecast」開発
- ナノ・ユニバース: AIチャットボット導入で売上20%以上増加
- メチャカリ: AIによるパーソナライズスタイリングチャットボット導入
- ワコール: 3Dボディスキャナーと接客AIを組み合わせた「3D smart & try」導入
- 大塚商会: 店舗内顧客行動分析システム「FieldAnalyst」開発
- トミー・ヒルフィガー: AI画像分析で短期間でのデザイン開発を実現
AI 導入に関する相談はAI Marketへ
新型コロナウィルスに特に影響を受けていると言われているアパレル・ファッション業界において今後のテクノロジーの活用は欠かせない課題の一つです。そのため、ECサイトから実店舗まで多くの企業がAIの活用を始めています。
しかし、AI人材の不足やAIの活用方法を誤るなど、せっかくAIを導入したけど活用できていない企業が多いのも事実です。
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