銀行業でのAI導入事例6選・メリット・デメリット徹底解説!【2024年最新】
最終更新日:2024年11月14日
銀行は時代とともに大きく変化しており、今、銀行業界は厳しい逆風にさらされ経営不振にあえいでいます。苦戦の主な要因は長く続く低金利時代によるもので、ビジネスモデルの転換が求められており、収益の改善のためにさまざまな取り組みが実施されています。
特にITとの融合は大きな期待がされ、金融とテクノロジーを結びつけることで革新的な動きを見せています。本記事では、AIを導入・活用することで得られるメリットを、実際の事例を交えて紹介します。
また、銀行業以外でもAIシステム開発に強い会社のお探しの場合は、AI開発に強い開発会社厳選記事をご参考ください。
なお、AI Marketでは
目次
なぜ銀行業界でAI導入が急がれるのか?
金融機関は厳しい環境に直面しており、銀行業界も例外ではありません。長く続く低金利、少子高齢化、異業種からの銀行業への参入、など問題は多岐にわたります。
それでは、具体的にどのような課題や問題があるか詳しく見ていきましょう。
銀行業界を含む、証券業や保険業などの金融業界のAI導入の動きについてはこちらの記事で分かりやすく解説しています。
多大なコストが嵩む
銀行の経営には多大なコストがかかるものがさまざまあります。特に、支店運営に占めるコストの大半は、店舗の賃料や人件費です。店舗は立地の良さが重要で、書類の保管や金庫など広いスペースが必要なので、賃料は高額になってしまいます。人件費は多数の銀行員が所属しているために負担は大きくなります。
また、サイバー攻撃や不正送金などから防ぐためのセキュリティ対策にも多大なコストがかかります。年々大規模で巧妙化する手口に対処が追いつかなくなってきています。
金利情勢に左右されるビジネスモデルの弱さ
マイナス金利下において融資が伸び悩んでいます。超低金利社会が続いており、お金を貸し出して利息を受け取るビジネスモデルの維持は困難になりました。
国内の貸出金利の向上は見込めず、人口も減少し続けているため資金需要も後退しています。企業の資金繰りが厳しいことや、融資先の倒産や業績悪化が増えており、備えのために引当金も大幅に積み増さなければなりません。
AI Marketでは
銀行業でAIを活用するメリットは?
AIを始めとしたテクノロジーを活用することにより、窮地に立たされた銀行業界の助けとなることがあるかもしれません。銀行業務でAIを活用するとどのようなメリットがあるのでしょうか。
AI技術を活用した業務効率化
業務効率化のために店舗や人員削減が積極的に行われています。数を減らしても、運営を維持するためにはテクノロジーの利用が欠かせません。そこで、事務や窓口業務を中心にAIの活用が行われています。
主なものには、音声認識によるコールセンターの業務等の支援。チャットボットを利用した自動応答。AI OCRを活用した帳票類の読み取り。RPAを利用した事務的作業の自動化による効率化。などがあります。
AIを使った融資。信用評価の補助・精度向上
法人営業の業務は、企業向けの融資、預金取引、事業継承やM&A(合併・買収)の助言など幅広い分野に渡ります。但し、融資の審査には煩雑な手続きや、時間がかかるという問題があります。
そこで、AIの活用で信用力をスコアリングし、融資の可否の判断をするサービスが行われています。決算書の書類だけでなく、銀行が蓄積する入出金取引などの多くの情報を加味して、より迅速な融資条件の提示が可能となります。
サイバー攻撃や不正送金の防止をAIによるセキュリティ強化
お金を扱う銀行は特にセキュリティの強化には重点を置く必要があります。
サイバー攻撃や不正行為などリスクとなる事象はたくさんあり、さまざまなものに対応しなくてはなりません。
攻撃手法や対処法については世界中の専門機関で情報共有されていますが、膨大な情報量で次から次へと新たな情報が出てくるため、AIを利用して抽出することで、よりスピーディーに対策を講じることが可能です。
銀行業でAIを活用するデメリットは?
AIは多くの種類のデータを使い、プログラム構造も大変複雑でブラックボックス化しています。そのため臨機応変な判断は行いにくく、なぜそのような判断に至ったのかを理解することは容易ではありません。
しかし、すべての判断はAIに任せることはせずに、最終的な判断や重要な決断は人の目で行い、補足的な確認対象の絞り込みや煩雑な業務の削減に使うことが望ましいでしょう。
また、AIを導入すると仕事をすべて奪うのではないかという議論がたびたび起こります。もちろん奪う仕事が増えていくことは間違いありません。
しかしながらすべてを奪うことはないと考えられています。単純だけれども時間のかかる作業はAIに任せて、人の力でしかできない業務に注力することにより、効率が格段に上がるはずです。
AI Marketでは
銀行業でのAI導入事例6選
各銀行が取り入れているAI活用の事例をいくつか挙げていきます。メガバンク3行と大手地銀、海外の銀行についてそれぞれの事例をご紹介します。
三井住友銀行の自然言語によるサイバー攻撃の検知
サイバー攻撃は年々、大規模化・巧妙化しており、コストや技術の観点から企業が自組織だけで対策しようとしても限界になりつつあります。
三井住友銀行ではAIを活用して、サイバーセキュリティの強化に取り組んでいます。サイバー攻撃に関する共有された膨大な情報を、AIの一分野である自然言語処理技術を用いて分析し、セキュリティ対策に有用な情報を抽出し、新たなサイバー攻撃の防御や検知に用います。
また、監視システムで検知した不審な通信や挙動と、世界中の文献や専門家が作成したブログ等の情報源からAIが学習を行うことで蓄積したセキュリティ情報から、対処方法の判断のための支援情報を抽出・検索が可能です。
三菱UFJ銀行の大量の帳票読み取りの効率化
多くの銀行員を抱えるメガバンクにとって人件費は高コストで、経営体力が弱りつつある銀行にとっては大きな悩みの種です。
三菱UFJ銀行では、印鑑票などの紙帳票の電子化をロボットやAI技術を用いて進めています。導入した書類読み取り機は自動でホチキス留めを外したり、一枚ごとに分けてスキャンが可能です。2,000人強の人手で約1年かかる作業が、30人ほどで約5年で完了できる見込みとのことです。
電子化済みの書類は破棄予定なので、保管のための倉庫利用料も抑えられます。
今後、その他の融資契約書や入出金伝票などの書類も電子化を検討しています。
みずほ銀行のオンライン完結型のレンディング
みずほ銀行はAIを活用したレンディング(融資仲介)サービスの「みずほスマートビジネスローン」を提供しています。
特徴は、中小企業を対象に、オンラインで申込みから契約までを完結できることです。申込手続きから回答までの期間が長いことや、手続きが煩雑という点が資金調達を困難にしていました。
口座の入出金記録の情報などを分析して、AIによる融資の可否を判断します。従来のような決算書の提出などの手続きが不要でスピーディーな審査が可能です。
横浜銀行での不正検知の効率化
横浜銀行はマネーロンダリングや特殊詐欺などの取引モニタリング業務の高度化を目的に、NECの 「AI不正・リスク検知サービス for Banking」を活用しています。
金融犯罪が複雑化して巧妙になっており、膨大な情報から不正を効率的かつ精緻に検知することが求められています。
銀行員が調査対象とする口座数をあらかじめAIによって絞ることにより、負担を減らして詳細な調査に専念できるようにしました。30〜40%の調査対象を削減できたということです。
七十七銀行の業況変化検知システムによる与信管理
七十七銀行は、JSOLと三井住友銀行が共同開発した「業況変化検知システム」を、NTTデータのクラウドプラットフォームの「OpenCanvas」に構築した「Fincast」を稼働しています。
業況変化検知システムとは、入出金などの取引先企業の口座情報の動きをAIが分析することで、企業の業況変化を早期に検知できるシステムのことです。三井住友銀行の保有する過去の取引データを学習して構築したAIモデルから、未来の業況が予測可能となります。
人手による与信管理業務作業が削減でき、銀行員の負担緩和となり、ノウハウの属人化防止や品質の均一化も期待できます。
Bank of AmericaのAIアシスタントを搭載したモバイルアプリの導入
Bank of Americaは、AI搭載の仮想アシスタント「Erica」をモバイル端末向けアプリに導入顧客に提供しました。アプリを利用して、音声認識、テキスト、ジェスチャー操作が可能です。
急速に普及したスマートフォンなどのモバイル端末を活用して、いつでもどこでも利用ができるようになりました。
具体的には、以下のような取引や操作が可能です。
過去の取引検索、主要情報へのアクセス、対面予約の相談、請求確認や支払い予約、デビットカードのロックやロック解除、口座間振替・個人間(P2P)送金サービスを利用した知人への送金。
さらに最近は、毎月の支出平均額は?自動引落されている出費は?クレジットカード取引の苦情受付。ATMカードのロックにも対応できるようになりました。デジタルサービスの利用は増加を続けており、銀行の支店への来店やATM取引が減少したという効率化の成果が出ています。
東京スター銀行のVRラウンジ接客
株式会社東京スター銀行は、AIで作り出した「VRラウンジ」をオープンし、実店舗に行かなくても取引できる仕組みを作りました。担当オペレータの画面を利用者のPCに表示できる仕組みを採用するなど、金融業界としては新しいデジタルツインの導入を試みています。デジタルツインとは、現実世界をリアルタイムでシミュレーションする新しいAI技術です。
デジタルツインの定義、メタバースとの違いやメリットについてはこちらの記事で特集しています。
東京スター銀行のVRラウンジでは、ATMや窓口、セミナーといった実店舗と変わらないサービスを受けることが可能です。VRゴーグル等は必要なく、スマホ1台で簡単に口座開設や相談など行うことができます。
銀行業でのAI導入についてよくある質問まとめ
- 銀行業界でAIを導入するメリットには何がありますか?
銀行業界でAIを導入するメリットには以下があります。
- 業務効率化(事務作業の自動化、コールセンター業務の支援など)
- 融資審査の迅速化と精度向上
- サイバーセキュリティの強化
- 顧客サービスの向上(AIチャットボット、仮想アシスタントなど)
- 銀行業界のAI導入事例にはどのようなものがありますか?
銀行業界のAI導入事例には以下のようなものがあります。
- 三井住友銀行: 自然言語処理によるサイバー攻撃の検知
- みずほ銀行: AIを活用したオンライン完結型レンディングサービス
- 横浜銀行: AI不正・リスク検知サービスによる不正取引の検出
- Bank of America: AIアシスタント「Erica」を搭載したモバイルアプリ
- 東京スター銀行: VRラウンジによる仮想店舗サービス
- AIの導入により、銀行業務にどのような変化が期待できますか?
AIの導入により、銀行業務には以下のような変化が期待できます。
- 人手による作業の大幅な削減(例:三菱UFJ銀行の帳票電子化)
- 融資審査のスピードアップと精度向上
- 24時間365日対応可能な顧客サービスの実現
- サイバー攻撃や不正取引の早期検知・防止
- 新しい形態の銀行サービス(VRバンキングなど)の登場
まとめ
銀行業界のAI導入事例をご紹介しました。劇的な環境の変化を背景に、経営体力の低下を招いている銀行は効率化やビジネスモデルの転換が迫られています。
AIをはじめとした数々の技術を活用することで、負担を減らすことができる業務は任せてしまい、人間の手によって時間をかけて判断したほうがよい仕事に注力することで、効率的に生産性を上げることが可能となるでしょう。
◆AIの活用についてお悩みなら
AI Marketでは
また、AI MarketがオススメするAI開発会社をこちらの記事で紹介していますので、AI開発をご検討中の方はぜひご参考ください。
AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
𝕏:@AIMarket_jp
Youtube:@aimarket_channel
TikTok:@aimarket_jp
運営会社:BizTech株式会社
掲載記事に関するご意見・ご相談はこちら:ai-market-contents@biz-t.jp