ChatGPTの自治体・官公庁での活用事例11選!導入失敗事例の解説も!
最終更新日:2024年11月11日
ChatGPTは、現在日本企業だけでなく自治体でも導入が進んでいます。これまで手動で行っていたため多くの時間とリソースが必要だった工数を、ChatGPTの技術により自動化するなどして業務の効率化を実現している事例も多く報告され始めています。
ChatGPTとはなにか、機能や使い方をこちらの記事で、LLMについてはこちらで詳しく説明していますので併せてご覧ください。
今回はChatGPTの自治体での活用事例
AI Marketでは、
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関連記事:「ChatGPT企業活用事例!コンシューマ向け・企業向け・社内活用開発実例・注意すべきポイント徹底解説!」
目次
- 1 全庁的な活用実証(横須賀市/株式会社トラストバンク)
- 2 数千ページのマニュアル改訂や修正(農林水産省)
- 3 ガイドラインを策定し本格運用開始(茨城県笹間市)
- 4 AIが市民の問い合わせに応答(埼玉県戸田市)
- 5 制作立案や議会答弁にも活用検討(群馬県藤岡市)
- 6 いち早く条例を制定し活用(神戸市)
- 7 業務の参考程度として活用開始(埼玉県志木市)
- 8 定期的な勉強会で活用方法を模索(北海道当別町)
- 9 スマートシティ加賀(石川県加賀市)
- 10 ChatGPTとBardを試験導入(静岡県富士市)
- 11 ChatGPTの導入失敗事例からも学べる
- 12 自治体のChatGPT導入についてよくある質問まとめ
- 13 まとめ
全庁的な活用実証(横須賀市/株式会社トラストバンク)
神奈川県横須賀市の市役所では、自治体で初めてChatGPTの全庁的な活用実証を行なっています。実際には株式会社トラストバンクが提供する自治体専用のビジネスチャットツール「LoGoチャット」にChatGPTのAPI機能を連携させての活用となります。
LoGoチャットのChatGPTを活用し、すべての職員がツール内で、文章作成や要約、誤字脱字のチェックやアイデアの相談などに活用することができます。ChatGPTの導入により、職員が人にしかできない業務や仕事に注力できるようにするため、職員の業務効率化やさらなるユースケースの創出を目的としています。
note株式会社CXO 深津貴之氏をアドバイザーに迎え、職員のスキルアップに取り組んでいきます。また、ChatGPTを活用した「他自治体向け問い合わせ応対ボット」も開発して運用を開始しています。横須賀市でのChatGPT活用の取り組みに関するデータや、他自治体からの問い合わせデータを基に回答できるようにしたものです。
数千ページのマニュアル改訂や修正(農林水産省)
農林水産省は数千ページのマニュアル改訂や修正にChatGPTを活用することを報告しています。他省庁とも協議しながらの運用開始となるため、現在は準備段階となります。
従来は外部委託してマニュアルの改訂や修正作業を毎年行なっており、短納期による負担や文章表現のわかりにくさが課題となっていました。
ChatGPTの導入により、業者の負担やよりわかりやすい文章表現を利用したマニュアル作成が期待されます。すでにChatGPTの活用に関する文書公開と、入力データに関して機密情報は含まれていないことも報告されており、安全な運用の対策も行われています。
ガイドラインを策定し本格運用開始(茨城県笹間市)
茨城県内の自治体でChatGPTの試験的な導入の動きが出てきており、笹間市では業務効率化などを目指して実際に試験導入が始まっています。導入時点では機密情報や個人情報に十分配慮しつつ、事前に申請するように伝えられ、全職員の3割が利用申請しました。
広報誌やSNSの運用をしている広報戦略室では、実際に職員が用意したゴルフ大会の結果を伝える文章を、SNSで小学生でもわかりやすいように文章を書き換えるよう、ChatGPTに指示して書き直してもらったケースなどが発表されています。
第2次テスト運用まで行い、プロンプト作成能力のスキルアップ、業務効率化に資する効果的な利用方法を検証しました。セキュリティ等の懸念の解消も確認できたので生成AIの利活用ガイドラインを策定し、2023年10月から生成AIの本格運用を開始しました。
AIが市民の問い合わせに応答(埼玉県戸田市)
埼玉県戸田市はChatGPTを利用し、業務で安全に利用するためのガイドブックを作成したり、自治体の業務で自動化・効率化できそうな領域を検討し、その導入案を検討したりしています。2023年7月に行われたハッカソンではChatGPTを利用し、音声認識と音声出力に背景や人格に関するデータを追加して、人間が応答するような音声チャットを構築したことが発表されました。
また、戸田市は会議の資料やLINEと組み合わせた問い合わせ対応できるアプリを作成したことも公表されています。子育て、引越し・住所変更の手続き、ごみの出し方、住民票や戸籍、各種書類の請求など市民からの問い合わせに対して、「さくうさ」と命名されたAIが応答して必要な行政サービスを案内する「AI総合案内サービス」を行っています。
ガイドブックの作成ではChatGPTをはじめとする生成AIの安全かつ個人情報や機密情報に十分配慮した利用方法を検証した上で、業務適用範囲やルールをまとめたものを公表しています。
制作立案や議会答弁にも活用検討(群馬県藤岡市)
群馬県藤岡市では、ChatGPTの試験的な運用をはじめ、制作立案や議会答弁に必要な文章の作成などに利用できるかの検証を開始したことを公表しています。実際に2023年4月から6月末まで運用した際、社員の8割が利用継続を希望したことから7月以降も試験運用の継続を公表しています。
時間がかかる文章作成の自動化以外にもExcelなどの表計算ソフトで関数やマクロのコーディング作成などにも利用するケースがみられ、さまざまな活用シーンを模索していることが発表されました。
デジタル推進課では個人情報や機密情報を入力せず、データの裏付けを十分に行いつつ、社員の負担を軽減できるか改善を続けながら利用したいことを話しています。
いち早く条例を制定し活用(神戸市)
兵庫県神戸市では、ChatGPTをはじめとする生成AIの使用方針を定めた条例改正案が議会で可決され、2023年5月より施行されています。生成AIの条例制定はこの時点では全国で初めてで、しばらくは手探りで活用していきつつ適切な向き合い方を検討していく方針であることが報告されています。100人程度の職員を対象とし、文章の要約や翻訳、議事録や草案作成への利用が想定されます。
そして2024年2月より本格導入され、MicrosoftのCopilotが全職員を対象に導入されています。利用ガイドライン、そしてプロンプト事例集も公開され、画像生成AIの利用開始も発表されました。神戸市は2050年の神戸市のイメージ画像を生成したことも公表し、更なる活用シーンを検討しています。
業務の参考程度として活用開始(埼玉県志木市)
埼玉県志木市では、全庁を対象にChatGPTの活用を業務の参考程度にとどめつつも利用して良いことを発表し、運用を開始しています。利用にあたり、ChatGPTの回答をそのまま利用しないこと、機密性のある情報は利用しないこと、活用はあくまで参考程度にすること、回答内容を十分に精査することのルールに準じることが周知されています。
市では勉強会を積極的に行うことで、職員がChatGPTに慣れたり不安を取り除くことで庁内での利用普及を行なっています。、市議会では、ChatGPTで市長の一部答弁を生成し、「ChatGPTが作成した答弁」として盛り込みました。現在はアイデア出し、文章生成・要約・構成、プログラミングなどの領域で活用されつつも、更なる活用シーンを模索するべく継続した運用が必要であることが発表されています。
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定期的な勉強会で活用方法を模索(北海道当別町)
北海道の当別町では、2023年10月よりChatGPTの本格導入を開始しています。7月までの導入検証により職員の半数以上が効率化を実感したことが報告されたため、本格導入に至りました。利用にあたり機密情報を入力しないことやChatGPTが作成した文章は必ず職員がチェックするなどのガイドラインを作成して運用しています。
利用シーンは文書の草案が中心となっていますが、プレゼンテーションに向けた資料作成や表計算の自動化など利用領域を広げるため継続的な検証を行なっていくことが報告されています。庁内では生成AIに関するトレンドについて学ぶ勉強会が定期的に行われるなど積極的な活用を目指しています。
スマートシティ加賀(石川県加賀市)
石川県加賀市では事務の効率化を目指しChatGPTを導入しました。導入目的は文書作成や情報収集とその分析、政策立案のサポートなどが発表されています。2023年5月31日にはガイドラインも制定しています。
加賀市はデジタル技術を活用して快適にすごせるまち「スマートシティ加賀」を進めています。人口減少などの課題にデジタル技術で重点的に取り組む自治体として、国家戦略特区の一つ「デジタル田園健康特区」に指定されています。
加賀市では中学校でも生成AIの正しい向き合い方を授業で行うなど、積極的かつ安全に活用していく方針です。授業では、ChatGPTの回答内容が必ずしも正しいわけではないことなどを説明したり、体育祭のスローガンをChatGPTに質問して考えてもらったり。実際に利用してもらってより身近に感じてもらう施策も行なっています。加賀市では小中学校のICT教育のモデルケース化を目指し今後もさまざまな施策を行っていくことを発表しています。
ChatGPTとBardを試験導入(静岡県富士市)
静岡県富士市では、ChatGPTとGoogleが提供するBardの導入を開始し、全職員のアクセスを許可しています。機密情報などを扱わない、情報の正確性は自身で確認するなどのガイドラインを遵守した上での活用で、資料作成やアイデア出しのサポートに活用されることが期待されています。
実際に繁忙期の6月で窓口業務と文章生成やアイデア出しの並立は労働力や時間が非常に必要になるため、職員の業務負担を軽減できる活用も期待されています。継続的な運用により、今後どのように生成AIが取り入れられるかなどは引き続き検討されていくことが発表されています。
ChatGPTの導入失敗事例からも学べる
ChatGPTを導入使用したにもかかわらず成功には至らなかった事例もあります。失敗例からも大きな学びが得られますので解説します。
香川県三豊市
香川県三豊市では、ChatGPTを用いた市民向けの「ゴミ出し案内」サービスの実証実験を行いましたが、本格導入に至りませんでした。本格導入の条件として設定された正答率99%に対し、実証実験の結果、正答率94.1%に留まりました。
この結果を受け、市はChatGPTを「ごみ出し案内」業務に活用しないと決定しました。今後は得られた知見を活かし、市役所全体でChatGPTの活用可能性を探る予定です。
技術の精度は重要な要因です。このケースでは、正答率99%という高い基準を設定していたにもかかわらず、94.1%に留まったため、導入が見送られました。これは、現場の要求に応えるためには、高度な精度が必要であることを示しています。
また、AI導入の際は、実際の業務環境での実証実験を通して、技術の有効性を評価することが重要であるという点も明らかになりました。
導入に際しては、計画的な検証と段階的なアプローチが求められることが示されています。
自治体のChatGPT導入についてよくある質問まとめ
- 自治体でのChatGPT導入で気をつけるべきポイントは?
自治体でChatGPTを導入する際の注意点と検討事項は以下のようにまとめられます。
注意点:
- 機密情報や個人情報を扱わないようにする
- ChatGPTの回答をそのまま利用せず、必ず職員が内容を精査・確認する
- 回答は参考程度にとどめ、最終判断は人間が行う
検討事項:
- 利用目的と活用範囲の明確化(文書作成、アイデア出し、プログラミングなど)
- ガイドラインや条例の策定による適切な運用ルールの確立
- 職員への教育・研修による理解促進とスキルアップ
- 他自治体との情報共有や連携による効果的な活用方法の模索
- 継続的な運用と検証による更なる活用シーンの開拓
機密保持を徹底しつつ、明確なルールのもとで職員のスキルを向上させながら、業務効率化やサービス向上につなげていくことが重要だと考えられます。また、他自治体の事例を参考にしながら、継続的に運用方法を改善していくことが求められるでしょう。
まとめ
今回は自治体のChatGPTに関する活用事例をみてきました。本格的な導入に向けた実証段階のケースが多いですが、一部では本格的な導入が開始されたり、積極的な勉強会により導入の普及を目指すなど活用に賛成である自治体も増えてきています。
自治体のように機密情報を多く扱う場所で
AI Marketでは、
ChatGPTの導入支援を発注する会社を自力で探したい方はこちらもぜひ参考にしてください。
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