【人材業界AI活用事例4選】AIによるマッチング精度の向上から書類処理の効率化まで
最終更新日:2024年09月23日
新卒社員の入社や中途社員の転職といった社員雇用から、短期で仕事を行いたい求職者の斡旋など、求職者と企業との間を取りもつのが人材紹介や人材派遣などの人材業界です。人材ビジネスは比較的景気に左右されやすい業界であるために、不透明な見通しとなりやすい業界と言われています。
景気によって雇用が落ち込むこともありますが、日本では慢性的に人手不足となっているところが多いため、求職者と企業をうまく結びつける必要性がより高まっています。そのため、ITの活用によって、企業内のさまざまな業務が効率化されてきましたが、人材関連の業務は複雑で多岐にわたるため、これまであまり効率化が進めづらい範囲でした。
最近では、求職者と企業のマッチングや、人材関連業務をAI(人工知能)によって効率・自動化を可能にする製品やサービスが続々と開発されています。
AI Marketでは
人材業界の業務内容
まずは人材業界の業務内容について簡単にご紹介します。人材サービスを提供する企業によって扱うサービスはそれぞれ異なりますが、大まかに以下の業務を行います。
人材採用を予定している企業への営業
人材業界の営業には、主に営業職とコンサルタントがあります。
このとき、企業側を担当するのが営業職で、営業担当者は、採用に困っている企業の課題解決支援のために、求人情報や採用計画をヒアリングし、求人票を作成します。
求職者の募集
企業の求人情報をウェブサイトや雑誌などのメディアに掲載して求職者を集めます。
求職者を集めるための広告を出す採用サービスを主にしている人材ビジネスもあります。
求職者と企業の求人をマッチング
営業によって集められた求人と、募集した求職者を結びつけるのがコンサルタントです。
コンサルタントは転職希望の求職者に対して、職歴やスキル、志向性をヒアリングし、その上で、営業が集めてきた求人情報にマッチするものを探して紹介します。
キャリア相談を始めとして、内定から入社までのサポートも全般的に支援します。人手不足の中で、人材の確保を確実にするためにはマッチングが適切になされることが重要といえるでしょう。
マッチングシステムに強いAI開発会社はこちらで特集していますので併せてご覧ください。
AIを活用することで、どのようなメリットがあるのか?
人材業界の実際の業務にAIを活用することによって、どのようなメリットがあるのでしょうか?
この記事の冒頭部分でも述べたように、IT技術の活用が人材分野にはあまり広がっていませんでしたが、AIの活用によってこの分野においても生産性の大きな改善や、精度の向上が見られるようになりました。
以下に挙げるような業務について、AIを活用できると考えます。
マッチング精度の向上
求職者と企業との間のマッチングをコンサルタントの人の手で行うことは、膨大な量のデータから候補を見極める必要があるため、非常に時間がかかる作業です。また、コンサルタントによる主観や雰囲気も含まれてしまうため、客観性・公平性が欠けてしまうことも考えられます。
経験や勘に頼っていた部分をAIによる候補の絞り込みを行うことによって、冷静な判断と効率化が期待できるようになります。
また、しばしば雇用のミスマッチも起こっています。求職者の持っているスキルや希望する勤務地や職種などと、雇用者が求めるものとが乖離してしまうことが起きてしまうということです。
最近はどこの業界でも人手不足であることから、雇用のミスマッチは人材業界にとっても、また求人を出した企業や求職者にとっても大きな機会損失になってしまいます。
AIを使った統計分析や機械学習の技術を適切に用いることで、膨大なデータを処理することができ、ミスマッチがなるべく起こらないよう質の高い適材適所の雇用を生み出せる可能性があります。
人材業務におけるさまざまな業務の効率化
自社における業務の効率化を進めることもできます。
営業で募集した求人や、求職者の履歴書やエントリーシートに書かれている適性やスキルといった膨大なデータを入力することは大変時間のかかる作業です。
採用や教育の段階にあっても、膨大な数のエントリーシートや履歴書を採用担当は読まなくてはならなかったり、試験の解答もしなくてはならないために負担が重く、大幅に作業時間がかかるものでした。
AIを活用した文字認識システムであるAI-OCRを用いて、手書き入力のものでも自動で読み取ることが可能であれば、大幅にデータ入力の業務は削減できます。またデータ化することによってその後の処理も効率的に進めることが可能です。
社員のシフト表や勤務表の作成にもかなりの時間がとられてしまう場合もあります。特に柔軟な働き方を取り入れている企業ほど、全員の希望を考慮する必要があるために複雑になります。それでも最低限仕事が回るように組み合わせたシフトを作らなければならないことは大変なことでしょう。
AIは膨大な計算を処理することが得意ですし、過去の情報を学習させることで精度を上げることもできます。
このように人材分野でもAIを活用した自動化の動きが広まっていきました。
AIサービスを活用している事例
では実際に、人材紹介や人材派遣サービスなどの人材サービスを提供する企業が実際にAIサービスを活用している事例を見ていきましょう。
株式会社アイデムによるマッチングプロの導入事例
人材採用大手の株式会社アイデムは、ポーターズ株式会社が開発した「マッチングプロ」を導入しました。マッチングプロは人材探しをAIで支援し、効率化できるシステムです。業務効率化や生産性向上のためにアイデムではRPAを導入していましたが、RPA単体では自動化できない業務もありました。
そこで、マッチングプロとRPAを連携させることにより、RPA単体では自動化できなかった業務にも対応できるようになったということです。
具体的には、スカウト作成をRPAによる自動化で進めていましたが、即戦力人材に対してのスキルマッチは求人内容をコンサルタントが特に読み込む必要がありました。読み込んだ上で、経歴や希望職種をどのような人に送ればよいか、文面のキーワードはどうすればいいか、などの部分が属人的になっていたので、それらの作業で忙殺されていたということです。
マッチングプロによって、候補者の経歴を読み込んでスコアリングし、マッチ度が高い順に表示できるようになったので、スカウト作成に費やす時間を削減できるようになりました。
フォーラムエンジニアリング株式会社によるInsight Matching®の構築事例
技術者派遣大手のフォーラムエンジニアリング株式会社は、日本IBMと共同で「Insight Matching®」を構築しました。IBMの自然言語解析システムの「Watson」を搭載しています。
自然言語処理と高度な検索によって、営業担当者の自然言語の問い合わせに対して最適な候補者の提案ができ、数千人単位の技術者情報から、顧客となる企業が求める人材をAIによって選び出すことが可能です。
これにより、時間的コストと属人的なスキルの問題を解消することができ、公平性、正確性は保ちながらよりスピーディーな人材マッチングを実現しました。また、導入によって人材紹介のマッチング率が83%改善し、顧客満足度も大幅に改善しました。
株式会社パソナグループによるDX Suiteの導入事例
総合人材サービス大手の株式会社パソナグループは、AI inside株式会社の「DX Suite」を導入しました。
DX SuiteはAI-OCR製品で、独自開発した文字認識AIを搭載しており、パソナグループでは自社の新卒採用の業務効率化に活用しています。
パソナグループの新卒採用では、筆記試験の採点業務や面接や面談におけるコメント入力など、人の手で行うデータ化業務が多くなってしまいます。新卒採用選考会が全国で行われ、一回あたり50〜100人ほどの学生が集まる選考会を週に3、4回行うためにデータ量が膨大でした。筆記試験の採点だけで1回あたり3〜4時間かかっていたものが、導入後は15〜30分に大幅に短縮できたということです。
この改善により、新卒採用のメイン業務である「魅力を学生に発信すること」に注力できるようになり、コンテンツの作成など、人が考えて行うクリエイティブな仕事に時間を使うことができるようになりました。
freee株式会社によるLAPRAS SCOUTの活用事例
人材サービスの会社ではありませんが、自社の採用にAIの人材サービスを導入した例をご紹介します。
クラウド会計開発大手のfreee株式会社は、AIによる人材マッチングサービスを手掛けているLAPRAS株式会社の「LAPRAS SCOUT」を活用しています。これはAIによるヘッドハンティングサービスで、技術情報共有サービスや公開されている個人の情報などのオープンデータを収集・取得します。スキルや志向を分析してプロフィールをAIによって自動生成して、最適な人材を企業に対してスカウトできるというサービスです。
今まで活用していた求人媒体にいないような層の人たちとも出会うことができ、転職潜在層にもいち早く情報を伝えられることがメリットです。
人材業界AI活用についてよくある質問まとめ
- 人材業界でAIを活用するメリットには何がありますか?
人材業界でAIを活用するメリットには以下があります。
- 求職者と企業のマッチング精度の向上
- 膨大なデータ処理による効率的な候補者の絞り込み
- 書類処理(履歴書、エントリーシートなど)の自動化
- 客観的で公平な評価の実現
- 採用担当者の業務負担軽減
- 人材業界でのAI活用事例にはどのようなものがありますか?
人材業界でのAI活用事例には以下のようなものがあります。
- アイデム:「マッチングプロ」導入によるスカウト作成の効率化
- フォーラムエンジニアリング:「Insight Matching®」構築によるマッチング率83%改善
- パソナグループ:「DX Suite」導入による新卒採用業務の効率化
- freee:「LAPRAS SCOUT」活用による潜在的人材の発掘
- AIを活用した人材マッチングシステムはどのような技術を使用していますか?
AIを活用した人材マッチングシステムは以下のような技術を使用しています。
- 自然言語処理:求人票や履歴書の解析
- 機械学習:過去のデータを学習し、マッチング精度を向上
- AI-OCR:手書き文書の自動デジタル化
- ビッグデータ分析:大量の求職者・求人データの処理
- スコアリングアルゴリズム:候補者のランク付けや適合度の算出
まとめ
人材業界においてのAI活用のメリットと、サービスの導入事例をご紹介しました。
求職者と企業とのマッチングの精度向上や、自然言語処理による求人票や履歴書の読み取りなど、AIを使った業務効率化や正確さの向上は大きな発展を見せています。
人材業界でのAI活用に、ぜひお役立てください。
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