川崎フロンターレ、エフィシエントのユニフォーム転売抑止AIシステムを導入

IoTやAIを融合したソフトウェア開発を手掛ける株式会社エフィシエントは、サイン入りグッズの画像判定を行う「転売抑止AIエンジン」を独自に開発し、2022年5月23日より川崎フロンターレでの導入・運用を開始したことを発表した。

本転売抑止AIエンジンでは、サイン入りユニフォームの画像からサイン箇所の抜き出しと特徴量抽出を行うことで、保存している元画像から97％の精度で自動判定を可能にする。これによって営利目的での転売を抑止し、サイン入りグッズを適正なプロセスでファンへ届けることを実現するとしている。

＜本ニュースの10秒要約＞

• エフィシエントが開発した「転売抑止AIエンジン」を川崎フロンターレが導入し、運用を開始
• 本AIは、取り込み画像から選手のサイン部分を識別でき、フリマサイト等の商品から転売商品を特定
• 今後は、スポーツ領域以外にも、エンターテイメント領域での展開も検討

概要

サッカークラブやプロ野球チームが公式に提供するサイン入りグッズの営利目的で入手し転売する行為は、スポーツ業界において重要な課題となっている。コロナ禍で選手のサインが直接もらえないことに起因し、高額転売につながっていることもあるという。

スポーツ選手本人が言及するSNSも散見されるなど、転売仲介サイトやフリマアプリ等でグッズが適正なプロセスでファンに届かない現状は、ファン、選手、スポーツ団体全体に損失をもたらしているだけでなく、フリマサイトなどに流通するサイン入りグッズの中には、偽物も混在しているなど、サインを識別するための新たな対処策が急務となっている。

今回、同社が開発した独自の転売抑止AIエンジンでは、取り込んだ画像からサイン部分を識別・判定できるようになっており、配布前に撮影した画像データベースと照らし合わせすことで、検出を行うもの。サイン入りユニフォームを利用した実験で97％以上の精度を達成しており、本技術を2022年5月23日よりサッカーJ1リーグに所属する川崎フロンターレで導入、運用を開始する。

川崎フロンターレでは、転売仲介サイトやフリマサイトなどで転売されているサイン入りグッズを特定し、転売の状況を把握したうえで今後の対策に役立てるという。

転売抑止AIエンジンの概要

• システム：AIを活用したディープラーニングエンジンを独自に開発。
• 学習モデル：類似度計算するモデル構築のため生成画像82,000枚、サインを検出するモデル構築のために実画像1,000枚、生成画像1,000枚の合計2,000枚以上を学習させることで、精度を向上。
• 判定方法：取り込んだ画像からサイン部分を検出して、データベース上から類似度が高い画像を10枚特定。サイン入りユニフォームを使った実証実験の結果では、正解率97％。
• 対応範囲：ユニフォームの柄などサインが被るケースも識別が可能。斜めに撮影された画像にも対応できる。
• 解析対象例：サイン入りユニフォームやサイン色紙など。

転売抑止AIエンジンのデモ動画はYouTubeにて閲覧ができる。

知財について

同社と川崎フロンターレの共同で、早期審査での特許出願をしているという。

今後の可能性

同社と川崎フロンターレで実運用を開始し、共同で検出精度の向上および出品者特定を実施。今後も類似度検索の精度向上を進めていくとしており、加えて、今後はNFT(※)技術を導入することで、グッズの所有者を管理しながら適正なプロセスでグッズの価値を担保していくことを検討している。

転売抑止AIエンジンは、スポーツ領域に限らず、著名人からサインが行われるエンターテイメント領域などにおいても活用が可能。他の領域に転用し、転売を抑止し、営利目的ではなく本来のファンが適正なプロセス、価格でサインを手に入れることができる社会を目指す。

※NFT（Non-Fungible Token：非代替性トークン）
「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ」。ブロックチェーン上で発行および取引が管理されることで、コピー・改ざんが不可能となる。

開発背景

本システムは神奈川県が行うオープンイノベーション事業「BAK」（ビジネスアクセラレーターかながわ）の「BAK PARTNERS CONNECT」の支援により実現した。

川崎フロンターレの協力のもと、5度にわたるAIエンジン構築実験を繰り返し、運用の開始が実現できた。今後もより良い社会の実現、新たな価値の創出に向けて協働していくとしている。

参照元：PR TIMES