デジタル庁が「生成AI調達・利活用ガイドライン」を策定、政府業務でのAI活用促進とリスク管理を両立
最終更新日:2025年05月27日

デジタル庁は2025年5月27日、「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」を策定した。
本ガイドラインは政府業務における生成AIの利活用促進とリスク管理を表裏一体で進めることを目的とし、各府省庁でのAI調達・利活用時の具体的なルールを定める。
- 政府業務における生成AI利活用促進とリスク管理を両立する包括的指針を策定
- 各府省庁にAI統括責任者設置義務化と先進的AI利活用アドバイザリーボード設立
- 高リスクAI判定システムと調達・契約時の詳細チェックシート提供で安全性確保
このガイドラインは、AI関連技術の急速な発展と官民でのAI活用進展を背景に、デジタル庁が経済産業省、総務省等と協力して策定した。政府情報システムのうち大規模言語モデル(LLM)を構成要素とするテキスト生成AIシステムを対象とし、令和8年度以降に調達・利活用を行う生成AIシステムから全面適用される。
独立行政法人や指定法人にも準拠した取組を期待し、地方公共団体にも参考とされることを想定している。本ガイドラインの目的は、「人間中心のAI社会原則」で掲げられた3つの基本理念の実現を目指し、行政目的の効率的・効果的な実現、企画立案能力の向上、情報収集・分析能力の向上など9つの利益実現を図ることだ。
ガバナンス体制として、各府省庁にAI統括責任者(CAIO)の設置を義務化し、デジタル統括責任者または副デジタル統括責任者級の政府職員がこの役割を担う。
政府全体では「先進的AI利活用アドバイザリーボード」を設置し、デジタル庁が事務局機能を担当する。このボードは高リスクAIの評価・助言、ベストプラクティスの発信、リスクケースの把握・再発防止助言などを行う。
また、デジタル庁内に「AI相談窓口」を設置し、各府省庁からの生成AI調達・利活用に関する相談を機動的に受け付ける体制を整備した。
リスク管理については、利用者の範囲・種別、生成AI利活用業務の性格、要機密情報や個人情報の学習等の有無、出力結果の政府職員による判断を経た利活用の4つのリスク軸で評価する「高リスク判定シート」を提供する。
高リスクと判定された場合は先進的AI利活用アドバイザリーボードへの報告が必要となる。調達時には「調達チェックシート」と「契約チェックシート」を活用し、AI事業者ガイドライン共通指針の遵守、AIガバナンスの構築、有害情報の出力制御、偽誤情報の防止など29項目の要求事項を定めている。
これらのチェックシートには基本項目と任意追加項目が設定され、案件の特性に応じた柔軟な運用が可能だ。
生成AIシステム特有のリスクケースへの対応として、偏見や差別を含む出力、攻撃的・危険コンテンツの生成、ハルシネーションによる誤情報出力、著作権侵害の可能性があるコンテンツ生成などの事例を想定した対応手順を整備する。
各府省庁のAI統括責任者と生成AIの提供者が中心となり、重要度・影響の程度を踏まえた適切な対応を行い、先進的AI利活用アドバイザリーボードにナレッジを集約する仕組みを構築した。
政府職員の利活用時には、要機密情報の適切な取り扱い、出力結果の責任ある判断、安全性・公平性・客観性・中立性の確認などを義務付けている。
AI Marketの見解
本ガイドラインは、政府による生成AI活用の包括的な制度化という点で極めて重要な意味を持つ。
技術的特徴として、大規模言語モデルに焦点を絞りつつ、リスク軸に基づく体系的な評価手法を導入している点が注目される。4つのリスク軸による判定システムは、AI利活用の複雑性を構造化し、客観的な評価を可能にする仕組みと評価できる。
ビジネス的観点では、政府調達市場におけるAI事業者への明確な要求事項設定により、事業者側の対応コスト予見性が向上すると想定される。特に29項目の詳細な要求事項は、AI事業者のガバナンス体制構築を促進し、結果として民間市場でのAI品質向上にも波及効果をもたらすと考えられる。
また、デジタル・スタートアップの公共調達参入支援やデジタルマーケットプレイス活用の明記は、国内AI産業の育成にも寄与する施策となっている。
市場への影響として、政府という大きな需要者による標準化された調達基準の設定は、AI業界全体の品質基準向上を促進すると想定される。
特に安全性、透明性、説明可能性への要求は、民間企業のAI開発指針にも影響を与える可能性が高い。ただし、要求事項の詳細度が高いため、特に中小AI事業者にとっては対応負荷が課題となる可能性もある。
参照元:デジタル庁
生成AIガイドラインに関するよくある質問まとめ
- このガイドラインはいつから適用されますか?
令和8年度以降に調達・利活用を行う生成AIシステムから全面適用されます。ただし、令和7年度の調達・利活用についても可能な限り本ガイドラインに沿った取組を実施することとしています。AI利活用促進とAIガバナンス強化の体制構築については、令和7年度から進めることになります。
- 高リスクなAI利活用はどのように判定されますか?
利用者の範囲・種別、生成AI利活用業務の性格、要機密情報や個人情報の学習等の有無、出力結果の政府職員による判断を経た利活用の4つのリスク軸で評価します。高リスク判定シートを用いて客観的に判定し、高リスクと判定された場合は先進的AI利活用アドバイザリーボードへの報告が必要となります。

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