NEC、中外製薬とAI活用でがん治療薬組み合わせ予測実証実験を実施、作業時間50%短縮
最終更新日:2025年06月19日

NECと中外製薬が2024年12月から2025年3月にかけて実施したAI活用によるがん治療薬組み合わせ予測の実証実験で、従来の検索方法と比較して作業時間を約50%短縮する可能性が確認された。
グラフベースのAI技術を用いて膨大な論文や臨床試験データから治療効果を高める薬剤の組み合わせを迅速に予測するシステムを構築し、予測精度と根拠の納得性の高さを実証した。
- NECと中外製薬がAI技術でがん治療薬の組み合わせ予測システムを開発し、作業時間50%短縮を実現
- グラフベースAI技術により臨床試験データベースから薬剤併用療法の効果的組み合わせを迅速予測
- 約400組のがん治療薬データで検証し、予測精度と根拠の納得性が基準を上回ることを確認
実証実験の背景と課題解決について、がん治療における薬剤併用療法は単剤投与と比較して高い治療効果が期待される重要な治療選択肢だが、従来は薬剤の組み合わせを予測するために膨大な論文や臨床試験データを手作業で調査・分析する必要があり、多大な時間を要することが課題となっていた。
NECは約60年のヘルスケア・ライフサイエンス分野の知見を活かし、医療データの利活用事業を展開する中で、この課題解決に向けた実証実験を中外製薬と共同で実施した。
実験期間は2024年12月から2025年3月までの4か月間にわたって行われ、AI技術による効率化の可能性を検証した。
AI技術とシステム構築の詳細では、NECが臨床試験データベースAACTや生化学データベースChEMBLで公開されているがんや薬剤に関する膨大な情報を、自社が有する独自のグラフベースのAI技術に学習させることで、治療効果を高める薬剤の組み合わせを予測するシステムを構築した。
このシステムは、がん治療に投与する対象薬剤名を入力するだけで、対象薬剤の有効性を高めるための組み合わせ候補を迅速に提示する機能を持つ。
さらに、組み合わせ候補の予測根拠も同時に提示することで、予測結果の理解や妥当性検証を補助することが可能となり、研究者の意思決定支援にも貢献する設計となっている。
実証実験の評価結果と成果として、臨床試験データベースから約400組のがん治療薬の組み合わせ情報をランダムに抽出し、片方の薬剤情報をシステムに入力してもう一方の治療薬を予測できるかを評価した。
その結果、システムが提示した薬剤の組み合わせ候補予測の精度は事前に規定した基準を上回り、予測根拠の納得性も高いことが確認された。
これにより、薬剤の組み合わせ予測に要する作業時間を約50%短縮できる可能性があることが実証された。この成果により、研究者が効率的かつ迅速に薬剤の組み合わせ候補を発見することを支援し、データに基づく薬剤の組み合わせ候補の予測に大きく貢献できることが示された。
今後の展開と医療業界への影響については、NECが本実証実験の成果をもとに、ソリューションの開発と実用化を進めていく方針を表明している。
同社は質の高い医療・健康データが安心・安全に循環する世界を実現することで、医療機関、医療従事者、製薬企業、医療機器メーカー、患者といった医療に関わる関係者をはじめ、国や自治体、国民などあらゆるステークホルダーへ価値を提供・還元していくとしている。
このAI技術の実用化により、従来手作業で行われていた薬剤組み合わせの調査・分析プロセスが大幅に効率化され、新たながん治療法の開発加速や治療選択肢の拡大に寄与することが期待される。
AI Marketの見解
今回のNECと中外製薬による実証実験は、製薬業界におけるAI活用の具体的な成果を示す重要な事例である。
グラフベースのAI技術を用いた薬剤組み合わせ予測システムは、従来の手作業による調査・分析プロセスを50%短縮するという定量的な効果を実証しており、技術的な実用性の高さが確認されている。
特に約400組という大規模なデータセットでの検証により、予測精度と根拠の納得性を両立させた点は、医療分野におけるAI導入の課題である説明可能性の問題を解決する重要な進歩と評価される。
ビジネス的な観点から見ると、薬剤併用療法の効率的な探索は製薬企業にとって研究開発コストの削減と開発期間の短縮に直結する価値の高い技術である。
がん治療薬の開発には通常10年以上の期間と数百億円の投資が必要とされる中で、AIによる予測精度向上と作業効率化は、製薬業界全体の競争力向上に寄与すると想定される。
参照元:日本電気株式会社
がん治療薬組み合わせ予測に関するよくある質問まとめ
- このAI技術はどのような仕組みで薬剤の組み合わせを予測するのか?
NECの独自グラフベースAI技術により、臨床試験データベースAACTや生化学データベースChEMBLの膨大な情報を学習し、薬剤間の相互作用や疾患との関連性をグラフ構造で表現することで組み合わせを予測します。対象薬剤名を入力すると、AIが最適な併用候補を予測根拠とともに提示する仕組みです。
- 作業時間50%短縮の効果は実際の医療現場でどの程度の価値があるのか?
従来手作業で数週間から数か月かかっていた薬剤組み合わせの調査・分析が半分の期間で完了できるため、研究開発のスピードアップと人的リソースの効率活用が可能になります。これにより製薬企業は新しい治療法の開発を加速し、患者により早く効果的な治療選択肢を提供できるようになると期待されます。

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