NTT、熟練者のノウハウを見える化する世界初のAI技術を発表
最終更新日:2025年08月07日

NTTは2025年8月、セキュリティ事故対応やコールセンター業務における問い合わせ履歴から熟練者の判断プロセスを約9割の高精度で見える化する世界初のAI技術を開発したと発表した。
この技術により新人でも熟練者レベルの対応が可能となり、業務ノウハウ継承の課題解決と問い合わせ対応の品質向上・効率化を目指す。
- LLMを活用した問い合わせ履歴分析により熟練者の判断プロセスを約9割の精度で抽出・フローチャート化する技術開発
- セキュリティ事故対応やコールセンター業務での人材不足問題に対し新人による熟練者レベル対応実現への貢献
- 抽出した判断プロセスのAI活用による自動応答システム構築と問い合わせ業務の品質向上・効率化推進
NTTが開発した技術は、LLMを用いた3段階のプロセスで構成される。第1段階では、問い合わせ履歴から「質問」と「提案」を抽出し、同一内容のものを統合して「統合質問リスト」「統合提案リスト」を作成する。
第2段階では、各問い合わせ履歴において質問から回答、提案に至るフローを構造化し、すべての問い合わせ履歴を構造化フローに変換する。
第3段階では、各フローにおける質問・提案間の遷移頻度をカウントし、出現回数の多いものを上位とするツリー構造へ変換することで質問・判断フローチャートを生成する。
技術検証では、自然言語処理技術評価用の公開データセットFloDialを使用した実験を実施した。
本技術で作成したフローチャートと正解フローチャートを比較検証した結果、正解フローチャートの質問・提案のツリー構造を約9割の精度で再現することを確認した。
これにより、明確な構造を持たない自然言語による対話から熟練者の判断フローを高い解釈性と視認性を備えたフローチャート形式で精度よく抽出できることが実証された。
現在セキュリティ事故対応やコールセンター業務では、専門性の低い人材への業務アウトソースやLLMによる対応自動化のニーズが高まっている。
一方で熟練者は独自の思考やノウハウに基づく対応を行っており、その判断プロセスが見えづらいため業務ノウハウの継承が進まず人材不足が深刻化している。
本技術はこうした課題に対し、新人でも熟練者レベルの対応を再現可能にする解決策を提供する。
今後の展開として、実業務における問い合わせ履歴を用いた精度向上や、抽出した判断プロセスを活用した自動応答システムの構築を目指す。
フローチャートは解釈性が高く人手での修正も容易なため、業務ノウハウ継承だけでなく問い合わせ対応の自動化への応用も期待される。
システムの応答根拠が明確となることで、より安心して問い合わせ業務を委ねることが可能になると想定される。本成果は2025年7月開催の国際会議ACL 2025にFindingsとして採録されている。
AI Marketの見解
本技術は暗黙知の形式知化という古典的な経営課題をAI技術で解決する画期的なアプローチである。LLMの自然言語理解能力を活用し、非構造化データである対話履歴から判断プロセスを構造化フローとして抽出する技術的特徴が注目される。
約9割の精度は実用レベルに達しており、熟練者のノウハウをフローチャート化することで属人化解消と業務標準化を同時に実現している。
ビジネス的には、人材不足が深刻化するコンタクトセンター業界やセキュリティ運用分野での活用価値が高い。新人教育コストの削減、対応品質の均一化、24時間対応の実現など複合的な効果が期待される。
また抽出されたフローチャートの解釈性の高さは、AI判断の説明可能性要求が高まる現在の市場ニーズと合致している。
参照元:NTT株式会社
熟練者ノウハウ見える化技術に関するよくある質問まとめ
- この技術はどのような業界で活用できるのか?
セキュリティ事故対応やコールセンター業務を中心に、医療相談、技術サポート、法務相談など専門知識を要する問い合わせ対応業務全般での活用が想定される。
特に熟練者のノウハウに依存する度合いが高い業界での効果が期待できる。
- 約9割の精度というのは実用上十分なレベルなのか?
公開データセットでの検証結果であり実用上は十分なレベルだが、実業務では情報の欠落や対話の飛躍などがあるためさらなる精度向上が必要とされる。
NTTも今後実業務データを用いた精度改善を進める予定としている。

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