AGV(無人搬送車)とは?メリット・デメリット、AI活用の可能性を徹底解説!
最終更新日:2024年10月29日
「AGVは聞いたことがある」
「AGVの導入を検討しているが、自社でうまく活用できる?」
「AGVを導入したいが運用がうまくいっていない同業他社を知っている」
人手不足が慢性化、かつ深刻化しているなかで、解決策としてロボットの活用を検討している企業も多いのではないでしょうか。今回は、資材や商品の搬送をロボット化できる「AGV(無人搬送車)」についてご紹介します。AGVは、省人化に対する関心の高さ、新型コロナウイルスの流行以降の急激な物流需要の拡大、不要な接触を避けたいといった要望が増えているといった理由から、様々な業界で注目され導入が進んでいます。
この記事では、AGVの基礎知識や、導入することで得られるメリットと発生するデメリットを説明します。記事の後半では、最近注目されてるAIを搭載したAGVについて従来製品との違いについて説明していきます。
AI Marketでは製造業・非製造業を問わず、
目次
AGV(無人搬送車)とは
AGVとは、Automated Guided Vehicleの略で「無人搬送車」や「自動的に誘導される車両」と訳されます。材料や工作物、部品、商品などを所定の場所に運ぶ搬送用台車型の移動ロボットで、従来の搬送手段に代わるものとして注目されています。一般的には、床面に磁気テープや磁気棒を敷設し、それらにより誘導されて無人走行します。
AGVは1980年代に開発され、様々な現場で使用されるようになりました。当初の製造業現場から、製品の保管・出荷を担う物流センターや病院といった非製造業へも広く導入されています。
AGVの走行方式
AGVには様々な走行方式があり、それぞれの特徴を知った上で自社に合った方式を導入することが大切です。以下で走行方式について説明します。
磁気誘導方式
主に磁気テープを床に張り巡らし、AGVが走行するルートを決める方式です。磁気センサーでルートを正確に読み取り、磁気テープの上を走行します。高い精度を誇り、国内で最も普及している方式です。
光学誘導式
磁気誘導に似た方式で、光学センサによって誘導テープからの光の反射を認識しながら走行する方式です。光を反射させるテープは、専用テープでなく一般的なビニールテープも使用できます。そのため、比較的低コストで導入できるのがメリットです。
画像認識方式
床や天井にQRコードやARマーカーを設置し、搭載されてるセンサーで読み取ることで、自分の現在位置を把握しながら走行する方式です。Amazonの物流倉庫で導入されたことで注目を集めました。リアルタイムなルート変更が可能なため、磁気誘導式や光学誘導式に比べ柔軟性が高い方式といえます。
AGVとAMRの違い
最近は「SLAM誘導方式」を活用した「AMR(自律型協働ロボット)」も導入されています。AMRがAGVと大きく違うのは、カメラやセンサー等で自己位置推定と移動環境の地図を作成し、人や障害物を避けて移動できる点です。これにより、ルートが固定されず決まった動きをしない作業員との協働が可能となります。しかし、自己位置推定がうまくいかずに目的地に到着しないといったこともあるなど、まだまだ完全ではありません。
AGVのメリット3点
AGV導入によるメリットを紹介します。
- 搬送作業者の負担軽減
- ヒューマンエラーの削減
- 省人化による人件費の削減
それぞれのメリットについて説明します
搬送作業者の負担軽減
AGVが資材や商品を自動で搬送することで、人が搬送をする必要がなくなるため、作業者の負担を軽減できます。所定の場所に大量の資材や商品を運ぶのには、人が何度も往復する必要があり、重量があるものを運ぶ場合はさらに負担が大きくなります。AGVを導入することで、こういった肉体的な負担を軽減でき、他の生産的な作業に集中できます。肉体的な負担を理由にした離職を減らすことにもつながります。
また、フォークリフトの資格や操作技術を持つ人でなければできない作業をAGVが行えます。そのため、特定の作業者に負担が集中することもなくなります。
ヒューマンエラーの削減
AGV導入することでミスを軽減することが期待できます。人が作業する場合は、同じ作業であっても作業者の勤務年数や性格、その日の体調などによって作業精度にはばらつきがでます。ベテランの作業者であっても小さなミスが発生する確率は避けられません。搬送作業のミスが出荷ミスや仕分け間違いなどにつながり、企業の信頼性にも大きく関わってくる場合もあります。
それに比べて、AGVはプログラムされた命令を確実に繰り返して行うことが得意です。疲れることも、日によって体調が変わることもなく、導入すればすぐに命令通りの仕事をこなします。搬送作業という単純な仕事をAGVに任せることで、ヒューマンエラーを削減することができ、企業の信頼性の向上や、人にしかできない仕事に時間を充てることによる生産性向上につながります。
省人化による人件費の削減
AGVを導入することで省人化でき、単純に作業者の人件費(給料)を削減できます。その他にも以下のようなコストを削減できます。
- スタッフ教育にかかる費用
作業を覚えるための時間だけでなく、経験者が教育に割く時間も節減できる - 採用にかかる費用
採用サイトなどの掲載費用のほか、担当者が面接する時間、面接者の交通費負担など - 入社手続きにかかる総務部門の費用
人が搬送作業をこなせるようになるまでには、上記のような多くの人件費や他のコストがかかります。しかし、もしそのスタッフが退職すれば、また一からやり直しとなりさらなる費用が発生します。AGVで省人化できれば、単純な給料だけでなく、様々なコスト節減できます。
AGV2つのデメリット
AGVを導入することによるメリットを紹介しましたが、逆にどんなデメリットがあるのか紹介します。
1. レイアウトの変更が必要
2. 安全対策が必要
それぞれのデメリットについて説明します。
レイアウトの変更が必要
AGVを初めて導入するにあたっては、AGVに合わせたレイアウトの変更が必要になります。人であれば臨機応変にルートを変更しながら搬送することが可能ですが、AGVは基本的に決められたルートしか進むことができません。まず、効率性や障害物の有無を考えながらAGVのルートを決めます。そして、AGVのルートに合わせてレイアウトを変更する必要があります。
また、AGVは基本的に誘導体が必要です。どの走行方式を選択するかによって誘導体が変わり、走行方式によっても最適なレイアウトを考えなくてはなりません。導入の際にはよく検討する必要があります。
さらに、工場でAGVを導入する場合は、製造ラインに合わせて細かな変更が必要な場合があります。特に、近年増加している多品種少量生産の製造ラインでは、生産する製品の変更に応じて、使用する資材・部品、工具も変更します。製品によって工程の順路変更がある場合は、搬送経路が変わる可能性もあります。AGVは、基本的にはA地点からB地点に搬送するロボットです。そのため、頻繁に搬送ルートの変更がある場合はAGVの導入がうまくいかない可能性もあります。
安全対策が必要
AGVは、JIS規格「無人搬送車及び無人搬送車システム-安全要求事項及び検証」において安全性を確保することが定められています。障害物接触検知装置や、警報装置、接近検出装置など安全装置の取り付けが定められています。しかし、安全装置で検知できる範囲や高さには限度があります。それで、進路上での飛び出しや突発的な落下物に対して素早く反応できないことがあるでしょう。AGVの進行中に不容易に飛び出してきた作業者に接触することで作業者がケガをするだけでなく、荷物やAGVの破損といった二次被害が発生する可能性もあります。
また、AGVが非常停止した場合は、異常が解除されても安全が確認されない限り再び動き出さないようにすることが定められています。安全性が確保されていない状態でAGVが停止することで、搬送作業が止まり生産性が低下する恐れがあります。AGVの効果を最大限発揮するためには、安全性を確保し、事故による故障やAGVが停止しないような状態にすることが大切です。
AGVの課題をAIが解決
最近では、AI(人工知能)を搭載したAGVの開発が進んでおり、レイアウトの変更や安全性などのAGVの課題を解決できます。カメラとAIの組み合わせにより画像認識機能を持つことで、作業エリアに進入する前にAGVがリアルタイム状況に応じた判断をできます。
AIによる画像認識の仕組み、活用方法についてはこちらの記事で分かりやすく解説しています。さらに、AIによる画像認識システムの開発に強いベンダーをこちらの記事で特集していますので、ぜひご覧ください。
例えば、以下のような判断をAIが行えるようになります。
- 他の荷物の移動時や作業員が複数人いる場合に混雑している箇所を避けるように走行
- 複数のAGV同士が衝突しない経路で走行
- 最短で搬送可能なルートをする
こうしたAIによる機能で、誘導体を必要としない走行が可能となるほか、人やAGV同士で衝突しないように安全な走行をできるようになります。
AGV起点で始まるAI活用ネットワーク
AGV周辺でもAIを包括的に活用することで、さらなる作業効率化にもつながります。例えば、ピッキング用ロボットにAIを搭載すれば、AGVを止めることなくAGVが運んでいる製品から指定の製品だけをピックアップすることも可能となります。このようにAGVと他のロボットで複数のAIを組み合わせることで、効率性を上げ自動業務の幅が広がります。
また、IoTセンサーを活用して予知保全の精度アップや作業効率化を実現しているスマート工場も増えています。
製造業でのAIの活用事例、導入に当たっての注意点はこちらの記事で分かりやすく解説しています。また、製造業でのAIシステム開発に強い開発会社をこちらの記事で特集していますので、ぜひご覧ください。
AGVについてよくある質問まとめ
- AGV(無人搬送車)の主なメリットは何ですか?
AGVの主なメリットは以下の通りです。
- 搬送作業者の負担軽減
- ヒューマンエラーの削減
- 省人化による人件費の削減(教育費用、採用費用なども含む)
- AGVの走行方式にはどのようなものがありますか?
AGVの主な走行方式には以下があります。
- 磁気誘導方式:床に張られた磁気テープをセンサーで読み取り走行
- 光学誘導式:光学センサーで誘導テープからの光の反射を認識して走行
- 画像認識方式:QRコードやARマーカーを読み取り、現在位置を把握しながら走行
- AGVにAIを搭載するとどのようなメリットがありますか?
AGVにAIを搭載することで以下のメリットが得られます。
- リアルタイムの状況に応じた最適ルートの選択
- 混雑している箇所や障害物の回避
- 複数のAGV同士の衝突回避
- 誘導体を必要としない走行の実現
- 他のAI搭載ロボットと連携した効率的な作業の実現
まとめ:AGV+AIでさらなる競争力獲得!
人材確保が難しい現在において、AGVを導入することで省人化やヒューマンエラーの削減、人件費削減といった効果を期待できます
しかし、AGVを導入することで、現場レイアウトを変更する必要もあるでしょう。工場の場合は、生産する製品の種類なども考慮する必要があります。自社の状況をよく把握した上で、AGVの走行方式を決めましょう。
AI搭載型のAGVであれば、安全性を考慮しながら、最適なルートを学習し走行できるため、従来のAGVが抱える課題も克服できる可能性があります。自社にとってAGVをどういった役割とするのか、AGVのデメリットがどこまで大きいのかなどを検討したうえで、AGVの導入を考えてみてください。
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