COBOL解析のChatGPT活用方法とは?メリット・注意点・他ツールとの比較も徹底解説!
最終更新日:2025年08月11日

- ChatGPTはCOBOLコードのコメント生成、処理フローの要約、仕様書作成支援などを通じて、ブラックボックス化したシステムの解析を大幅に効率化
- 解析精度やセキュリティには注意が必要で、機密情報はマスキングし、Azure OpenAI Serviceなどのセキュアな環境で利用することが重要
- 目的に応じてGeminiやClaudeといった他のAIと使い分けたり、複数のAIを組み合わせたりする
近年、COBOLシステムの解析にAIのコード生成能力の活用が注目されています。COBOLで構築されたレガシーシステムの解析に、特にChatGPTが新たな解決策を提示します。
本記事では、ChatGPTがCOBOLコードをどのように解析し、コメント生成や仕様書作成を支援するのか、具体的な活用法を解説します。さらに、GeminiやClaudeといった他のAIとの違いも比較し、貴社の状況に最適なツール選びの指針を示します。
COBOL資産の可視化やモダナイゼーションを検討している企業担当者・技術者の方は必見です。
AI Marketでは
目次
COBOL解析におけるChatGPTの活用法
ChatGPTは自然言語処理の強みを活かし、COBOL解析の現場で多様な支援が可能です。以下では、特に有効な活用例を紹介します。
COBOLコードのコメント自動生成
古いCOBOLコードは、当時の開発者しか理解できない部分やコメントが不足しているケースも少なくありません。ChatGPTを活用することで、各処理ブロックの内容や意図を解析し、注釈コメントを日本語で生成可能です。
例えば、以下のようなCOBOLコードがあったとします。
IF SALE-AMOUNT > 100000
PERFORM APPLY-DISCOUNT
END-IF
これに対してChatGPTは、以下のような日本語コメントを自動生成できます。
売上金額が10万円を超える場合、割引処理を適用する
このように、単にコードの内容を直訳するのではなく、「何を意図した処理か」を自然な日本語で注釈として付与できます。これにより、当時の開発者しか分からなかった暗黙の意図や業務ロジックが可視化され、保守・改修作業が効率化されます。
処理フローの要約
長年の改修によりブラックボックス化したCOBOLプログラムの解析は、その制御構造の複雑さから手作業でのリバースエンジニアリングに多大な工数を要します。特に、PERFORMの多重ネストやGO TO文によって処理の流れが追いづらくなったスパゲッティコードの解読は、熟練技術者にとっても困難な作業です。
ChatGPTのような生成AIは、この静的解析プロセスを自動化し、プログラムのロジックを可視化するための強力なアシスタントとして機能します。単なる要約に留まらず、ソースコードの構造を深く理解し、以下のような専門的なアウトプットを生成できます。
- 制御フローの構造化: PROCEDURE DIVISION全体を解析し、主要なセクションやパラグラフがどのような順序でPERFORMまたはCALLされているか、その階層構造をリストアップします。
- ビジネスルールの抽出: IF文やEVALUATE文などの条件分岐ロジックを特定し、「顧客ランクが’A’かつ年間購入額が100万円以上の場合、優待割引率を適用する」といった具体的な業務ルールを抽出します。
- データフローの追跡: 特定のファイル(FD句)やデータ項目(01レコード)が、どの処理ブロックでREAD(参照)、WRITE(書き込み)、REWRITE(更新)されているかを特定し、簡易的なCRUD(Create, Read, Update, Delete)分析を行います。
仕様書・設計書の作成補助
ドキュメントが整備されていないレガシーCOBOL資産では、仕様や要件をコードから読み解いて文書化する作業が必要です。
ChatGPTを活用することで、既存コードから処理内容や入力・出力要件を抽出し、仕様書や設計書のドラフト作成を支援できます。
例えば、以下のようなCOBOLコードがあったとします。
READ CUSTOMER-FILE
AT END
MOVE 'Y' TO END-OF-FILE
END-READ
IF CUSTOMER-STATUS = 'ACTIVE'
ADD 1 TO ACTIVE-COUNT
END-IF
ChatGPTはコードをもとに、以下のような仕様書・設計書のドラフト内容を生成できます。
機能概要:
顧客マスタファイルを読み込み、ステータスが「ACTIVE」の顧客件数をカウントする。
処理概要:
- 顧客マスタファイルを順次読み込む。
- ファイル終端に達した場合、終了フラグ(END-OF-FILE)を「Y」に設定する。
- 顧客ステータスが「ACTIVE」の場合、カウントを1加算する。
このようにChatGPTは業務要件に基づいた仕様要素を整理し、文書化を補助できます。
そのため、ドキュメントが不足しているCOBOL資産の棚卸しや移行計画の基盤整備が効率化されます。
リファクタリング対象の特定
古いCOBOLコードには、冗長な処理や非効率なロジック、スパゲッティ化した構造が残されていることがあります。ChatGPTはコード全体を解析し、無駄な繰り返し処理や重複部分、複雑すぎる条件分岐などの改善ポイントを抽出できます。
例えば、同じデータ変換処理が複数箇所に散在している場合、「共通関数化を検討」「処理をまとめて一元化可能」といった具体的な指摘をコメントや要約で提示します。また、非効率なデータアクセスや可読性の低いネスト構造なども検出し、改善の優先順位を検討する際の要素も抽出可能です。
ChatGPTは「どこを・なぜ直すべきか」を自然言語で分かりやすく伝えることで、エンジニアのリファクタリング作業を効率化します。
COBOLコードを他言語に変換
モダナイゼーションの一環として、COBOLコードをJavaやPythonなどのモダンな言語に変換するニーズが増えています。
ChatGPTはコード全体の構造や処理内容を解析し、他言語での実装例を提案できます。変換のたたき台や参考実装を生成することで、ゼロから実装を起こす必要がなくなり、変換作業の効率化やミス削減につながります。
特に、大量のモジュールを段階的にモダナイゼーションする現場で有効です。
新人エンジニア向けの教育補助
ChatGPTは、COBOLの基本文法や構造、業務処理の流れを分かりやすく解説できます。例えば、実際のCOBOLコードをもとに「この部分は何をしているのか?」「なぜこの処理が必要なのか?」といったQA形式で学習をサポートすることも可能です。
また、各処理ブロックの業務上の役割や重要性を整理し、新人が業務知識とコードを結びつけて理解できるよう支援します。結果として、教育の効率化や標準化が図れます。
特に、COBOL資産の保守・改修に必要なナレッジの継承に役立ちます。
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COBOL解析でChatGPTを活用するメリット
ChatGPTを活用することで、COBOL解析の効率化やコスト削減などさまざまなメリットが期待できます。以下では、具体的なメリットを紹介します。
リファクタリング・最適化による品質向上
ChatGPTは、冗長なコードや非効率な処理を特定し、よりモダンで効率的なコードへのリファクタリング案を提示します。これにより、プログラムの可読性や保守性が向上し、将来の改修コストを抑制できます。
解析・開発スピードの向上
ChatGPTを活用すると、COBOLコードの内容理解や影響範囲の調査、仕様・要件の抽出がスピーディに行えます。人間がコードを一行ずつ読み解く必要が減り、解析や開発にかかる時間を短縮できる点がメリットです。
特に複雑な業務ロジックや複数のモジュールが絡む大規模システムでは、従来の手作業の場合、膨大な時間と労力を要します。一方、ChatGPTを活用することで、初期分析や全体把握が効率化され、作業着手までのスピードが大幅に向上します。
コスト削減
ChatGPTにより手作業の工数を減らせるため、解析にかかる人件費を削減できます。また、外部のCOBOL技術者やコンサルタントへの依頼頻度を削減でき、外注コストも抑制可能です。特に人材不足が深刻なCOBOL分野では、外部依存の低減は大きなメリットです。
また、保守フェーズでは定常的な小規模改修や影響調査が発生します。そのため、ChatGPTを取り入れることで日々の保守コストを継続的に削減でき、長期的なコスト最適化が期待できます。
属人化の解消
古いCOBOLシステムでは、特定の熟練開発者しか仕様やコードを理解しておらず、ブラックボックス化する傾向にあります。
ChatGPTを使えば、ベテラン技術者の頭の中にしかなかった「暗黙知」をコード解析を通じて可視化・文書化でき、属人化リスクを緩和できます。結果として、チーム内での知見共有が容易になり、引き継ぎや教育の負担軽減、保守体制の強化につながります。
非COBOLエンジニアでも理解できる説明力
ChatGPTは高度な自然言語処理能力を活かし、COBOL特有の構文や複雑な業務処理の内容を分かりやすい言葉で説明が可能です。そのため、COBOLの専門知識を持たないエンジニアやマネジメント層でも、システムの概要や問題点を正確に理解できます。
結果として、プロジェクトの意思決定や部門間のコミュニケーションがスムーズになります。教育や引き継ぎの場面でも役立ち、属人化リスクの緩和にも貢献します。
意図の解釈して情報可視化
ChatGPTは設計や業務の意図まで推測し、自然言語での要約が可能です。そのため、仕様書が存在しないシステムや開発当時の背景が不明なシステムでも、現場担当者が理解しやすい形式で情報を整理・可視化できます。
業務全体の流れや処理の目的を正確に把握でき、改修計画や影響分析の質が向上します。
対話形式での柔軟な深掘り
ChatGPTの強みは、単方向の出力にとどまらず、ユーザーの追加質問や指示に応じて説明内容をリアルタイムで深掘りできる点です。例えば「さらに詳しく教えて」「この分岐の条件は何?」といった日本語の質問に回答できるため、解析や調査の効率が向上します。
また、やり取りを通じて必要な情報を段階的に引き出すことも可能です。一度の出力で理解が難しい複雑な処理内容や業務要件も、会話を重ねることでより具体的・実践的な知見に落とし込めます。
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ChatGPTでCOBOLを解析する際の注意点
ChatGPTをCOBOLの解析で活用する際は、精度や安全性の面で注意すべきポイントがあります。以下では、特にChatGPT利用時のリスクを抑えるうえで重要な注意点を紹介します。
100%正確な解析結果は難しい
COBOLはJavaやPythonなど他の主要言語に比べ、学習データが少なく、特に独自の表現はChatGPTの誤解釈リスクが高まります。
COBOLでは、FD(File Description)や01レコード構造、COMPやPICといったデータ型定義を用いて細かくデータ仕様を記述する必要があります。また、ゾーン10進数やEBCDICなど、古い表現や業務特有の記法も多くあります。
そのため、COBOL解析に活用する際は、ChatGPTに接続するRAG(検索拡張生成)基盤を社内で構築する方法が一つの対策です。RAGを活用して過去の仕様書や設計書、ナレッジデータと連携すると、ChatGPTが参照できる情報の範囲が拡大し、解釈精度が向上します。
さらに、GoogleのGeminiやAnthropicのClaudeなどは、大きなコンテキストウィンドウ(一度に処理できる情報量)を持っています。これにより、RAGを構築せずとも、関連する仕様書や複数のソースコードを丸ごとプロンプトに含めて分析させるというアプローチが可能になりつつあります。
小〜中規模の解析であれば、この方法がRAGよりも手軽な選択肢となる場合があります。
また、学習用のコードに社内独自の略語や業務用語をまとめたラベルを付与する(アノテーション)ことも有効です。アノテーションにより、AI(人工知能)の文脈理解をサポートできます。
例えば、プロンプト内で「この部分は売上計上のための独自ロジックです」といったコメントをコードに追記したり、 few-shotプロンプティング(いくつかの具体例を提示する手法)を用いたりすることは、AIの解釈精度を高める上で現在も非常に有効です。
機密データ・個人情報の徹底管理
COBOLシステムに、以下の機密データや個人情報が埋め込まれている場合には取り扱いに注意が必要です。ChatGPTにそのまま投入すると、情報漏えいやセキュリティ事故が発生するリスクがあります。
- 顧客の氏名や電話番号などの個人情報
- 銀行口座や保険契約といった業務データ構造
- 暗号キーやパスワード生成ロジック
そのため対策として、Web版を利用する際はまずデータマスキングを行い、個人情報や機密情報はダミー値に置換しておくと安心です。
また、よりセキュアなAzure OpenAI Service上でChatGPTを運用し、データ流出のリスクが低いツールを活用することも重要です。
提案内容は補助的に活用
ChatGPTが生成する改善案やリファクタリング案は、あくまで補助的な参考情報として活用しましょう。AIの出力内容は、現行システムの仕様や業務要件を必ずしも完全に満たしているわけではありません。そのため、提案をそのまま実装すると、業務停止など重大なトラブルを引き起こすリスクがあります。
実装前には、COBOLに知見のあるエンジニアがコードレビューと十分なテストを実施し、仕様などを満たしているかの確認が不可欠です。AIの提案はあくまで作業効率化の一助と位置づけ、人の判断とセットで活用することが重要です。
大量のコード処理は段階的に行う
ChatGPTには、扱えるテキスト量(トークン数)に限界があります。最大トークンに近い大量のコードを入力すると、論理的飛躍が生じる場合や解析精度が低下する傾向にあります。
特に数万行規模の大規模なCOBOLコードを扱う場合は、モジュール単位や機能単位に分割し、段階的に解析を進めることが重要です。分析と結果確認を部分的に実施することで精度を維持しつつ、全体の可視化や改善作業を安全かつ効率的に進められます。
COBOL解析に最適な生成AIは?ChatGPT vs Gemini vs Claude
COBOL解析に活用できる生成AIは、ChatGPTだけではありません。GoogleのGeminiやAnthropicのClaudeなど、さまざまな生成AIが候補に挙がります。
以下の表にて、COBOL解析における各ツールの強みや向いている用途を紹介します。
項目 | ChatGPT | Gemini | Claude |
---|---|---|---|
強み |
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|
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法人向けセキュリティ | Azure OpenAI Serviceによるセキュアな環境 | Google Cloud Vertex AIによるエンタープライズ対応 | AWS BedrockやGoogle Cloud Vertex AI経由でのセキュアな利用 |
向いている用途 |
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|
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結局どれを選ぶべきか?
各AIにはそれぞれ得意な領域があります。したがって、「どのAIが一番優れているか」という問いに対する答えは一つではありません。「自社のどの課題を解決したいのか?」という目的によって、最適なAIは変わります。
- 汎用性と対話的な解析を重視し、スモールスタートしたい → ChatGPT (Azure OpenAI Service)
- システム全体の構造を解明し、巨大なブラックボックスに挑みたい → Gemini (Vertex AI)
- 解析結果を正確なドキュメントとして資産化したい → Claude (Enterprise)
また、単一のAIに絞るのではなく、複数のAIを組み合わせる「ハイブリッドアプローチ」も非常に有効です。
例えば、まずGeminiでシステム全体の構造を把握し、次に個別のプログラムの改修方針をChatGPTと対話しながら練り、最後にその結果をClaudeで公式なドキュメントにまとめるといった活用法が考えられます。
さらに、IBM watsonx Code Assistant for Zのような、COBOLやメインフレーム環境に特化した生成AIソリューションも存在します。これらは汎用AIよりもさらに専門的な知識を持ち、コード変換などで高い精度を発揮する場合があります。
COBOL解析におけるChatGPTについてよくある質問まとめ
- ChatGPTをCOBOL解析に使う際の注意点は何ですか?
便利な一方で、ChatGPTの利用には精度とセキュリティの観点から以下の注意が必要です。
- 精度の限界: 学習データが少ないため、100%正確な解析は困難です。必ず専門家が結果をレビューしてください。
- 機密情報の管理: 個人情報や機密データを含むコードは、そのまま投入すると情報漏洩のリスクがあります。データマスキングやAzure OpenAI Serviceのようなセキュアな環境の利用が不可欠です。
- 提案の過信は禁物: AIの提案は補助的なものと捉え、実装前には十分なテストとレビューを行ってください。
- 段階的な処理: 一度に大量のコードを入力すると精度が落ちるため、モジュール単位で段階的に解析を進めるのが効果的です。
- ChatGPTはCOBOL解析で具体的にどのように役立ちますか?
ChatGPTは、その自然言語処理能力を活かしてCOBOL解析を多角的に支援します。
- コメント自動生成: 古いコードに日本語でコメントを付与し、可読性を高めます。
- 処理フローの要約: 長大なプログラムの全体像や主要な処理を要約し、非エンジニアにも理解しやすくします。
- 仕様書・設計書の作成補助: 既存コードから要件を抽出し、ドキュメントのドラフトを作成します。
- リファクタリング対象の特定: 非効率なロジックや重複部分を指摘し、コード品質の向上を支援します。
- 他言語への変換: JavaやPythonなどへのモダナイゼーションのたたき台を生成します。
- 新人教育: QA形式でコードの意味を解説し、技術継承をサポートします。
- COBOL解析にChatGPTを使うメリットは何ですか?
ChatGPTの活用には、品質、スピード、コスト、体制の面で多くのメリットがあります。
- 品質向上: リファクタリング提案により、プログラムの可読性や保守性を高めます。
- スピード向上: 人手による解読作業を短縮し、解析や開発の速度を上げます。
- コスト削減: 解析工数の削減により人件費や外注コストを抑制します。
- 属人化の解消: ベテランの持つ「暗黙知」を可視化・文書化し、チームで共有可能にします。
- コミュニケーション円滑化: 専門家でなくても理解できる言葉で説明するため、部門間の意思疎通がスムーズになります。
まとめ
この機会にChatGPTをCOBOLの解析に活用し、システム保守・改修の効率向上につなげましょう。
しかし、AIの解析が100%正確とは限らず、特に機密情報を扱う際のセキュリティには専門的な知識が不可欠です。また、GeminiやClaudeなど、目的によって最適なAIは異なります。
自社のシステム環境や解決したい課題に最適なAIを選び、安全な導入計画を立てるためには専門家の知見が役立ちます。
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