Apple Vision Proとは?できること・機能、特徴、性能、料金、企業活用事例まで徹底解説!
最終更新日:2025年12月11日

- Apple Vision Proは、現実空間とデジタルコンテンツを融合させる空間コンピューティングデバイス
- M5+R1チップによるデュアル構成と2,300万ピクセルのマイクロOLEDディスプレイにより、高精細かつ低遅延な映像処理とリアルタイムの空間描写を実現
- 視線・ハンド・音声入力、空間オーディオ、EyeSightなどを組み合わせ、作業・エンタメ・コミュニケーションをシームレスに行える包括的な没入体験を実現
Appleが開発した「Apple Vision Pro」は、現実空間とデジタルコンテンツを融合させる次世代の空間コンピューティングデバイスです。高精細ディスプレイと先進的なチップ構成により、アプリや映像を現実空間に自然に融合させる没入体験を提供します。
と言っても、Apple Vision Proの売りはスマートグラスとしてのきれいなディスプレイ、没入感だけではありません。現実空間にアプリや映像を広げる空間AIと、Appleが本気で仕掛ける次世代のUI/UXが新しい体験として注目されています。
本記事では、Apple Vision Proのできること・主な機能、特徴、性能、料金、注意点まで詳しく解説します。
目次
Apple Vision Proとは?
Appleが提供する空間コンピューティングデバイス「Apple Vision Pro」は、デジタルコンテンツを現実世界にシームレスに融合させる新しい体験を実現します。
従来のディスプレイやヘッドマウント型デバイスとは異なり、アプリや映像を周囲の空間に自然に広げて操作できる点が特徴です。
Vision Proを「ただのゴーグル」と見誤らないために、まずはその特異なアーキテクチャを理解する必要があります。押さえるべきは2点です。
デュアルチップ戦略

Vision ProはMacと同じMシリーズチップに加え、「R1」チップを搭載しています。
- Mシリーズ(M2、M5):アプリの実行、グラフィック描画などOS(visionOS)全体を動かす「脳」
- R1チップ(最重要):12台のカメラ、5つのセンサー、6つのマイクからの膨大な情報を処理するためだけの「専用コプロセッサ」
R1の存在意義は、遅延(レイテンシ)の徹底的な排除にあります。Appleによれば、R1はセンサーからの入力をわずか12ミリ秒でディスプレイに反映させると言われています。

VR/ARで最も重要なのは「現実との同期」です。頭を振った瞬間に映像が0.1秒でも遅れれば、ユーザーは即座に「酔い」を感じ、使い物になりません。
R1は現実世界との同期を担保するためだけの贅沢なチップであり、Appleの本気度を示しています。
専用OS「visionOS」
macOS・iOS・iPadOSを基盤に開発された専用OS「visionOS」を採用し、目・手・声による直感的な操作を可能にします。さらに、M5チップとR1チップによるデュアルチップ構成が高度なグラフィックス処理やセンサー入力をリアルタイムで制御し、極めて低遅延で高精細な空間描写を実現します。
現実空間の中で作業やコンテンツ視聴、アプリ操作を行えるApple Vision Proは、デバイスという枠を超えた次世代のコンピューティング体験として注目されています。
ディスプレイには、2,300万ピクセルを搭載したカスタムマイクロOLEDシステムを採用し、4Kテレビを超える高精細な映像をそれぞれの目に表示します。
最大120Hzのリフレッシュレートと10%向上したピクセルレンダリングにより、テキストやビジュアルのディテールをよりシャープに再現し、外付けバッテリーで最大2.5時間、ビデオ再生時は最大3時間駆動します。
空間コンピューティングに用いられる他の代表的デバイスをこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
Apple Vision Proでできること・主な機能
Apple Vision Proでは、仕事や創作、エンターテインメント、コミュニケーションなど日常のあらゆるシーンを空間の中でより自由に体験できます。できること・主な機能は以下の通りです。
無限に広がるワークスペース
Mac仮想ディスプレイを使えば、あなたのMacをワイヤレスでApple Vision Proの空間に持ち込むことができます。
拡張可能な超ワイドスクリーンと豊かなステレオサウンドに包まれ、横に並べた2台の5Kモニタに匹敵する巨大なカーブディスプレイを体験できます。映像や文字の細部まで驚くほど精細に映し出され、作業への集中を高めます。
空間を活用した作業環境をより快適かつ効率的にするための主な機能は以下の通りです。
- ウィジェット配置:写真、時計、音楽、カレンダーなどを配置し、空間をカスタマイズ
- Apple Intelligenceの活用:文章の校正、要約、スマートリプライによる効率的な作業支援
- Bluetoothアクセサリ対応:Magic KeyboardやTrackpadによる快適な操作
- 3Dオブジェクト・空間操作
写真とビデオの新体験
Apple Vision Proでは、空間写真と空間ビデオを通じて、思い出をこれまでにない臨場感で記録・再体験できます。本体上部のトップボタンを押すだけで撮影が可能です。
撮影したコンテンツは3Dの奥行きと立体感を伴って再生され、まるでその瞬間に入り込んだような感覚をもたらします。
写真とビデオに関する主な機能は以下の通りです。
- 2D写真の空間化:ライブラリ内の写真を立体シーンに変換し、自然な奥行きと没入感で再体験
- Apple Intelligenceとの連携:テキスト入力だけで写真・ビデオを検索し、自動で素材を選び出してメモリームービーを生成
- 360°ビデオ再生:GoPro・Insta360・Canonなどのアクションカメラで撮影した映像をネイティブ再生し、迫力ある瞬間を共有
- iPhoneで撮影した空間写真や空間ビデオをApple Vision Proで再生
エンターテインメント体験の拡張

片眼4K超の高解像度ディスプレイと空間オーディオにより、どんな部屋もプライベートシアターに変わります。Apple Immersive Video(180度8K 3D)や3D映画、空間ギャラリーなど豊富なコンテンツを臨場感あふれる映像で体験できます。
さらに、マルチビュー機能では、Apple TVアプリを通じてMLS Season Passや「フライデーナイト ベースボール」など最大5試合を同時に観戦できます。
メインビュー1つと最大4つのサブビューを自由に選び、切り替えやレイアウト調整も可能です。トラベルモードやAirPods Proとのシームレスペアリングにも対応しており、移動中でも快適な視聴体験を提供します。
アプリとvisionOS連携

App Storeには、visionOS専用の空間アプリが多数公開されており、iPhoneやiPad向けアプリも利用できます。Safari、写真、ミュージック、メッセージなどの内蔵アプリは空間に広がり、iCloudによってデバイス間でシームレスに同期されます。
visionOSでは、アプリがディスプレイの枠を超えて空間全体に広がり、位置やサイズを自由に調整できます。部屋の明るさや影の変化にも反応し、より自然で一体感のある表示を実現します。
さらに、ヨセミテやボラボラ、ジュピターなどの「環境」を選ぶことで、空間が360度の没入空間に変わり、作業や映像鑑賞、コミュニケーションに最適な体験を生み出します。
生成AIで3Dアバター構築
ビデオ通話で使われるペルソナ機能は、ユーザーの顔をスキャンして生成されるリアルな3Dアバターです。これは単なる3Dモデルではなく、ユーザーの表情や瞬きをリアルタイムで反映させる生成AIの一種です。
Apple Vision Proの特徴
Apple Vision Proは、デザイン性と機能性を両立し、現実空間にデジタル体験を拡張するための多くの特徴を備えています。以下に主な特徴をまとめます。
快適性とフィットの追求

新しいデュアルニットバンドはソフトで通気性に優れ、バランスを最適化する設計です。2つの機能を持つフィットダイヤルにより、頭上と後部のストラップを個別に調整できます。
これにより、長時間の装着でも安定した着け心地を実現します。
ライトシーリングはアルミニウムアロイのフレームにマグネットで着脱でき、顔にしなやかに沿って迷光を遮断します。さらに、ZEISS Optical Insertsは処方に合わせてカスタマイズ可能です。
マグネットでレンズに取り付けることで、正確な目視とアイトラッキングを可能にします。
Apple Vision Proはメガネをかけずに使う設計となっており、視力矯正が必要な場合はこのZEISS Optical Insertsを使用します。メガネや特定のコンタクトレンズを必要とするユーザーでも、自然な視界で快適に利用できます。
リアルタイムSLAM(自己位置推定と環境地図作成)
デバイスが「今、自分が部屋のどこにいて、どこを向いているか」「壁やテーブルはどこにあるか」をリアルタイムで把握する技術です。LiDARスキャナとカメラ映像をAIが瞬時にフュージョン(融合)させ、デジタル情報を現実空間にピッタリと固定します。
空間オーディオと操作性
耳の近くに配置されたデュアルドライバのオーディオポッドが、周囲の音と自然に融合しながら、立体的で臨場感のあるサウンドを再生します。さらに、オーディオレイトレーシング技術によって部屋の音響特性を解析し、反響や距離感をリアルに再現できます。
空間全体に溶け込むような没入型の立体音響を実現します。
Digital Crownを使えば、ホーム表示の呼び出しやイマーシブ度合いの調整が可能で、Siriによる音声入力や操作にも対応しています。
視線・ハンド・音声の自然入力UI
従来のVR/ARデバイスが専用のコントローラーを必要としたのに対し、Vision Proは視線と指先だけでほぼ全ての操作を完結させます。
LEDと赤外線カメラによる高精度なアイトラッキングシステムが不可視光パターンを目に投影し、見つめるだけでアプリやボタン、テキストフィールドを正確に選択できます。視線操作によりSafariなどのアプリをスクロールしたり、システム全体をスムーズにナビゲートすることも可能です。
ユーザーが「どこを見ているか」だけでなく、「次にどこを見ようとしているか」をAIが予測し、描画負荷を最適化しています。
また、2つの高画質カメラとセンサー群が毎秒10億を超えるピクセルを処理し、正確なヘッドトラッキング・ハンドトラッキング・リアルタイム3Dマッピングを実現します。膝の上やソファの上などリラックスした姿勢でも指先の動きを自然に認識します。
暗所では赤外線フラッドイルミネータが手の動きを補助し、環境を問わず高精度なトラッキングを維持します。
音声入力は、マイクボタンを見つめて話し始めるだけで起動し、Siriを使えばアプリの起動・メディアの再生・操作全般を声だけで行えます。
これは、UIを操作するための学習コストがほぼゼロになるということを意味します。この直感的な操作感こそ、デバイスを「特別な道具」から「日常の風景」に変える鍵となります。
周囲との共存と共有

EyeSightは、装着者がアプリを使用中かフルイマーシブ体験中かを周囲に示し、近くの人が状況を直感的に把握できるようにします。
誰かが近づくと、Apple Vision Proが自動的に相手を見えるようにし、同時に相手からもあなたの目が見える表示に切り替わります。
Apple Vision Proの内部ストレージと料金プラン
Apple Vision Proは本体モデルは1種類で、内部ストレージ容量(256GB・512GB・1TB)の違いによって3つの構成が提供されています。いずれも分割払いが可能で、24回払いの月額価格も用意されています。
以下の表は各モデルの価格と月額支払い例です。
| モデル | 価格(税込) | 24回払い(月額) |
|---|---|---|
| 256GB | 599,800円から | 24,991円/月から |
| 512GB | 634,800円から | 26,450円/月から |
| 1TB | 669,800円から | 27,908円/月から |
すべてのモデルはApple公式ストア(オンラインおよび店舗)で購入可能です。
AppleCare+の追加
Apple Vision Proには、追加オプションとして「AppleCare+」を付帯できます。以下の表はその概要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 料金 | 68,800円(税込)または月額3,400円(税込) |
| サービス内容 | ・過失や事故による損傷に対する修理(回数無制限)を受けられ、Apple認定技術者が対応 ・エクスプレス交換サービスで交換品を迅速に受け取ることができる |
| サポート特典 | Appleの専任スペシャリストによる優先サポートを受けることができる |
AppleCare+は購入時または一定期間内に追加可能で、製品を長期間安心して使用したいユーザーに推奨されます。
料金は、随時変更の可能性があるので、Apple Vision Pro公式購入サイトでご確認ください。
Vision Proの企業活用が始まっている
すでに以下のような企業事例や実証実験が進んでいます。
設計CADデータのシミュレーション
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3D CADデータを「実物大」で扱う 自動車のポルシェ(Porsche)やフォルクスワーゲン(VW)は、設計段階のCADデータをVision Proで実物大表示し、デザインレビューやシミュレーションを行っています。
物理的なモックアップ(粘土モデル)の製作コストと時間を大幅に削減できます。エンジニアは、内装の質感や部品の干渉を、設計データそのものを見ながら議論できます。
医療3Dデータの表示

複雑な手術のシミュレーションと支援 米国の医療技術企業Visage社は、MRIやCTスキャンから作成した患者の3DデータをVision Pro内に実物大で表示するアプリ(Visage Ease VP)を提供しています。
執刀医が手術前に、患者の臓器や血管の複雑な構造をあらゆる角度から確認できます。これは、2Dモニターでスライス画像を見るのとは比較にならない情報量です。
航空パイロットのトレーニング支援

航空機シミュレーター大手のCAE社は、Vision Proを使ったパイロット訓練プログラムを開発しました。また、製造現場では、新人の作業員がVision Proを装着し、目の前の機械に「正しい手順」や「危険箇所」がARで表示される、といった活用が期待されています。
熟練工の「暗黙知」をデジタル化し、トレーニングコストを削減します。また、遠隔地のベテランが、新人と同じ視界(Vision Proのカメラ映像)を見ながら指示を出す「リモートエキスパート支援」も可能になります。
Apple Vision Proに関するよくある質問まとめ
- 価格やストレージ構成はどうなっていますか?
本体は1モデルで、内部ストレージの違いにより256GB・512GB・1TBの3構成が提供されています。
分割(24回)払いの月額目安も用意されています。購入はApple公式ストア(オンライン/店舗)で可能です。
- バッテリー駆動時間はどのくらいですか?
外付けバッテリーで一般的な使用は最大2.5時間、ビデオ再生時は最大3時間です。
- メガネを着けたままApple Vision Proを使えますか?
いいえ。Apple Vision Proはメガネをかけずに使用するよう設計されています。視力矯正が必要な方は、ZEISS Optical Insertsの購入が推奨されます。
これはマグネットでApple Vision Proに装着でき、度付きレンズや特定のコンタクトレンズを使用している方でも、正確で快適な視認体験を得られます。
まとめ
Apple Vision Proは、視線・ハンド・音声による自然な入力や、M5とR1のデュアルチップ構成、マイクロOLEDディスプレイ、空間オーディオなどの先進技術を融合し、日常の作業からエンターテインメント、創作やコミュニケーションまでを空間の中で再定義します。
Mac仮想ディスプレイやApp Storeの空間アプリ、FaceTimeとPersona、空間写真・ビデオなどが連携し、仕事・学習・共有のあらゆるシーンで、より直感的で没入感のある体験を実現します。

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