Genie 3とは?世界モデルとしての特徴、機能、性能、ライセンス・料金、Genie2との違いを徹底解説!
最終更新日:2025年08月13日

- Genie 3は、Genie 2を大幅に上回るリアルタイム操作性・視覚整合性・世界構築能力を備えた3D仮想世界を構築する「世界モデル」
- 一人称視点での探索、自然現象のリアルな応答、幻想的スタイル表現まで対応し、没入感の高い仮想世界を実現
- 教育・創作・AI訓練など多分野に応用でき、プロンプトによるイベント生成やエージェント連携も可能
2025年8月にGoogle DeepMindが公開したGenieシリーズのGenie 3は、単なる動画生成AI、3DCG生成AIではありません。環境の物理特性を学習・再現する「世界モデル」としての機能を大きく進化させたAIモデルです。
ユーザーの操作やプロンプトに応じてリアルタイムに世界を変化させるダイナミックな応答性や、物理的な一貫性を維持した映像生成、幅広いスタイル表現への対応力が特長で、教育・シミュレーション・ゲーム開発・映像制作など多様な分野での活用が想定されています。
本記事では、Genie 3の特徴、機能、性能、ライセンス・料金、Genie2との違い、ビジネス活用の可能性を網羅的に解説します。
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目次
Genie 3とは?
Genie 3は、Google DeepMindが開発した汎用型の世界モデルです。テキストプロンプトをもとに、リアルタイムでユーザーが操作可能な3Dの仮想世界を生成できます。
Genieシリーズは、物理法則や環境変化を学習・再現するAIとして設計されており、AGIに向けた基盤技術と位置づけられています。
中でもGenie 3は、Genie 1・2と比べて、視覚的な一貫性、リアルタイム性、ユーザー操作への反応といった点で大幅に強化されています。
世界モデルとは?
世界モデル(World Model)とは、環境の物理法則や因果関係を理解し、その変化を時間軸に沿って予測・再現できるAIモデルです。
人間は、「ボールを投げたら放物線を描いて落ちる」「コップを倒せば水がこぼれる」といったことを、過去の経験から学習し、無意識に予測しながら行動しています。世界モデルは、この能力をAIで再現しようとするアプローチです。
これまでAIは、膨大なデータからパターンを学ぶことは得意でしたが、「なぜそうなるのか」という世界の根本的なルールを理解しているわけではありませんでした。世界モデルは、エージェントの学習や行動シミュレーションを可能にする基盤技術として、より人間らしい知能、汎用人工知能(AGI)に向けた重要なステップとされています。
Genie 3以外にも、以下の主要プレイヤーがそれぞれのアプローチで世界モデルを定義しようとしています。
- NVIDIA Cosmos:「世界基盤モデル(World Foundation Model)」と銘打たれ、特に物理AIの開発や産業用デジタルツインの構築に焦点を当てています。
- OpenAI Sora:単なる動画生成AIではなく、世界モデルとしての側面を強く持っています。Soraは、生成される動画内でオブジェクトの一貫性や、物理的な相互作用をリアルに表現しようと試みています。
- Meta V-JEPA 2:映像から世界の構造や物理法則を自己教師あり学習で学び、「次に何が起こるか」を予測することに特化。AIエージェント、特にロボットに物理世界での「直感」を身につけさせることを目的としています。
Genie 3のライセンス・料金体系
Genie 3は現在(2025年8月)、「限定的な研究プレビュー」として一部の研究者やクリエイターのみに提供されており、一般ユーザー向けのライセンス形態や料金体系に関する情報は公開されていません。
また、APIの提供、商用利用の条件、SDKの配布などについても明示的な言及はなく、現段階では開発者や一般利用者が自由に利用できる状態には至っていません。
今後、正式な公開や提供範囲の拡大が行われる際には、ライセンスや価格に関する詳細が発表される可能性がありますが、現時点では未定です。
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Genie 3の特徴
Genie 3の特徴は以下の通りです。
- 長時間一貫した映像表現と過去の状態の記憶
- 現実から空想まで幅広い世界観に対応
- 環境に即応する自然現象のリアルな再現力
- スタイル表現の柔軟性と創造性
長時間一貫した映像表現

Genie 3は、秒間24フレーム・解像度720pのインタラクティブな描画に対応し、リアルタイムで世界を生成しながら、自動回帰的にフレームを更新し続けます。
これにより、1分以上前の状態を正確に参照しつつ、環境の一貫性を保ったまま仮想空間を長時間にわたって探索できます。
上記の画像では、建物の左側にある木々が、視界に入ったり消えたりしても、インタラクション全体を通じて一定のまま表現されています。
以前に通った場所の木々や構造物が再訪時にも同じ状態で表示され、リアルな空間体験が損なわれません。他手法と異なり、明示的な3D構造なしで高い整合性を実現している点も特徴です。
現実から空想まで幅広い世界観に対応
実在する自然環境から想像上の世界に至るまで、極めて多様な世界観をリアルに再現できます。
例えば、上記動画は以下のプロンプトで生成されています。
この動画は、火山地帯の真ん中にある困難な地形を移動する人物の一人称視点です。これは、地形を横断する必要がある車輪付きロボットの視点で撮影された現実世界の動画です。車両は、黒くなった岩の下でザクザクと音を立てる、分厚いオフロードタイヤを装着しています。カメラは車両に取り付けられた自己中心的カメラで、カメラのすぐ下にロボットの胴体と前輪が映っています。遠くには、火山から噴き出す煙と溶岩が見えます。他に生命の兆候は見当たりません。エージェントが避けようとしている溶岩溜まりと、ランダムに現れる岩層があります。空は鮮やかな青です。引用:Genie 3: A new frontier for world models
火山、深海、氷河、熱帯雨林といった極地的環境だけでなく、古代ギリシャの神殿、インドの断崖道路、ベネチアの運河といった文化的・歴史的背景をもつ地形にも対応しています。
単なる背景ではなく、風景の質感・重力感・光の反射など物理的性質も一貫して保たれ、臨場感のある表現が可能です。
さらに、虹の橋を駆ける動物、空に浮かぶ都市、魔法の渓谷など現実では存在しない空想世界の構築にも優れており、創造性に富んだ映像体験を提供します。
環境にインタラクティブに即応するリアルな再現力
Genie 3は、風や波、雨、煙、水の反射、光の挙動などの自然現象をリアルかつ直感的に描写します。また、風で木々が揺れたり、波が打ち寄せたりといった変化にもリアルタイムで応答し、車や動物の出現など環境のダイナミズムを自然に表現できます。
ユーザーの行動や視点の変化に即座に反応することで、常に新しい状況が生まれる没入感の高い体験が実現します。これには、DeepMindの映像生成モデル「Veo」で培われた物理理解も活かされています。
多様なスタイルと空想世界の表現力
Genie 3は、写実的な映像だけでなく、アニメ調、折り紙風、絵本風、低ポリゴン風など、さまざまなビジュアルスタイルに柔軟に対応できます。
このスタイル変更もプロンプトベースで制御可能で、ユーザーは用途や作品の雰囲気に合わせた独自の世界観を創出できます。
また、実在する風景にとどまらず、空想上の都市や生物、魔法の世界、童話の舞台など、現実には存在しないビジュアルコンテンツも描写できます。 これにより、創作、アート、映像演出、ゲーム設計、メタバース体験など、あらゆる創造的分野での活用が可能となります。
参考:Genie 3: A new frontier for world models
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Genie 3の主な機能
Genie 3の主な機能は以下の通りです。
- 仮想空間を自由に移動・観察する機能
- プロンプトで環境を自由に変化させる機能
- AIエージェントによる自動行動と環境操作
仮想空間を自由に移動・観察する機能

上記の画像は、Google DeepMindの「Genie 3」が生成した仮想空間内を探索している様子を示したものです。
画面左下には、移動操作用のインターフェース(矢印キー型のUI)が表示されており、ユーザーが仮想空間内を一人称視点やドローン視点で自由に移動できることを示しています。具体的には、上向き矢印が前進を意味しており、このインターフェースを使って、ユーザーは道を歩いたり空を飛んだりといったナビゲーションが可能です。
道路や森林、小道、建物内など多様な空間を、没入感を保ちながら探索できます。視点によって環境の反応も変化し、状況に応じた描写が行われます。
プロンプトで環境を自由に変化させる機能
Genie 3では、ユーザーが入力したテキストプロンプトに応じて、仮想世界内の天候、地形、登場人物などの要素をリアルタイムに変化させることができます。たとえば、「雨が降る」「キャラクターが現れる」「地面が崩れる」などのイベントを瞬時に反映でき、世界全体に動的な変化をもたらします。
こうしたイベント生成は、静的な映像では実現できなかった「物語の進行」や「訓練シナリオの分岐」などに活用でき、ゲーム開発や教育・研究環境などインタラクティブ性が求められる多様なシーンに対応します。
また、エージェントと組み合わせることで、プロンプトに基づいた環境変化に対し、AIが学習・適応していく高度なシミュレーションも可能です。
AIエージェントによる自動行動と環境操作
Google DeepMindのSIMA(多用途AIエージェント)のようなエージェントをGenie 3内の世界に接続し、目標に向けた行動を実行させることで、AI訓練環境として活用できます。
エージェントは世界の構造を知らずに行動を通じて学習し、Genie 3はそのアクションに基づいて世界を変化させます。これにより、強化学習や汎用人工知能(AGI)に向けた応用が進められています。
Genie 3と他モデルの比較

この画像は、Google DeepMindが公開した4つのモデル(GameNGen、Genie 2、Veo、Genie 3)の主な仕様を比較した図です。解像度や操作性、インタラクションの持続時間、リアルタイム性などにおいて、Genie 3がどの点で優れているかを視覚的に示しています。
以下は、その比較表を日本語に翻訳したものです。
GameNGen | Genie 2 | Veo | Genie 3 | |
---|---|---|---|---|
解像度 | 320p | 360p | 720p〜4K | 720p |
対象ドメイン | ゲーム特化 | 3D環境 | 一般 | 一般 |
操作 | ゲーム特化 | 制限付きのキーボード/マウス操作 | 動画単位の記述 *参考・スタイル・カメラなどの追加コントロールも可能 | ナビゲーション、プロンプトでの世界イベント制御 |
インタラクション持続時間 | 数秒 | 10〜20秒 | 8秒 | 数分 |
インタラクション遅延 | リアルタイム | リアルタイムではない | 該当なし | リアルタイム |
Genie 3は、先行モデルや関連モデルと比較して、リアルタイムでの応答性と長期的な環境一貫性の両面で大きく進化しています。インタラクションの持続時間は数分に及び、1分以上前に生成された環境情報を踏まえたまま、整合性を保って描写し続けることが可能です。
また、NeRFsやGaussian Splattingのような3D再構成手法とは異なり、明示的な3Dモデルに依存せず、逐次的なフレーム生成でダイナミックな仮想世界を構築できます。これにより、事前に環境全体を構築する必要なく、ユーザーの行動に応じて柔軟に変化する空間体験が実現されます。
さらに、ナビゲーション操作に加えて、プロンプトによるイベント制御(例:天候を変える、キャラクターを登場させるなど)も可能となっており、より豊かで自由度の高いインタラクティブ体験を実現しています。
Genie 2との違い
項目 | Genie 2 | Genie 3 |
---|---|---|
入力 | 画像、テキスト(画像を生成するため) | テキストのみ |
生成される世界 | 2D/2.5Dのゲーム風空間 | インタラクティブな3D世界 |
次元 | 平面的・限定的 | 立体的・没入型 |
リアルタイム操作 | 短時間(10〜20秒程度) 限られたアクション | 対応(秒間24fps) 数分間の連続操作 |
一貫性維持 | 短時間のみ | 数分間の物理的整合性 |
コンセプト | アクションが可能な動画生成 | 汎用世界モデル(World Model) |
Genie 2は、ゲーム環境や3D仮想空間でのエージェント訓練を目的としたモデルで、一定の整合性や物理表現に対応していました。しかし、操作性は限定的で、リアルタイム性や長時間の持続性には課題がありました。
一方、Genie 3はユーザーのナビゲーション操作やプロンプトにリアルタイムで反応し、数分にわたって一貫性のある世界を維持できます。さらに、自然現象や都市風景だけでなく、空想世界や歴史的場面、キャラクターなど幅広いスタイルに対応しています。
製品の3Dシミュレーション、デジタルツインに加えて、さらに創造的な用途への活用も視野に入れたモデルへと進化しています。
Genie 3がビジネスにもたらすインパクトと具体的な活用事例
Genie 3の登場は、特に以下のような業界に大きな影響を与えると予想されます。
ゲーム・エンターテイメント業界
ゲームの背景やステージを自動生成することで、開発プロセスを大幅に効率化します。
また、プレイヤーの選択や入力に応じて、動的に新しい世界を生成する、これまでにないゲーム体験の創出が可能になります。
不動産・都市開発
顧客の要望に応じたデザインの物件をリアルタイムで生成し、バーチャルで内覧できるようにします。
また、新しい都市計画や建築物の影響を、人々が実際に歩き回れる3Dモデルでシミュレーションし、合意形成に役立てることができます。
製造・小売業
新製品のバーチャルな試作品を作成し、使用感をテストしたり、従業員向けのトレーニング環境を構築したりできます。
また、顧客が自由に商品を手に取って試せる、没入感の高いオンラインストアの実現が可能です。
Genie 3についてよくある質問まとめ
- Genie 3とはどのようなAIですか?
Genie 3は、Google DeepMindが開発した「汎用世界モデル」です。主な特徴は以下の通りです。
- テキストの指示(プロンプト)だけで3Dの仮想世界を生成します。
- 生成された世界は、ユーザーがリアルタイムで自由に操作できます。
物理法則や環境の一貫性を保つように設計されており、汎用人工知能(AGI)に向けた基盤技術とされています。
- Genie 3は誰でも使えますか?
いいえ、Genie 3は現在、一般ユーザーが自由に使用することはできません。
本モデルは「限定的な研究プレビュー」として提供されており、一部の研究者やクリエイターのみにアクセスが許可されています。
- Genie 3にはどのような特徴がありますか?
Genie 3は、以下の4つの主要な特徴を持っています。
- 長時間の映像一貫性: 1分以上前の状態を記憶し、矛盾の少ない長時間の探索が可能です。
- 幅広い世界観への対応: 現実の自然環境から、歴史的な街並み、空想上の世界まで多様なシーンを再現できます。
- インタラクティブな応答性: ユーザーの操作や指示に合わせ、風や波といった自然現象がリアルタイムで変化します。
- 柔軟なスタイル表現: 写実的な表現だけでなく、アニメ調や絵本風など、プロンプトで様々なビジュアルスタイルを指定できます。
- 前モデルのGenie 2とは何が違うのですか?
Genie 2からの最も大きな進化は、生成する世界の「次元」と「コンセプト」です。
- 入力と出力: Genie 2が主に画像から2D/2.5Dのゲーム風空間を生成したのに対し、Genie 3はテキストから直接インタラクティブな3D世界を生成します。
- リアルタイム性と一貫性: Genie 3は、より長時間の連続操作に対応し、世界の物理的な一貫性を高く保ちます。
- コンセプト: Genie 2が「アクション可能な動画生成」に近かったのに対し、Genie 3はより汎用的なシミュレーション環境を提供する「世界モデル」として設計されています。
まとめ
Genie 3は、Google DeepMindによる世界モデルであり、リアルタイム性と長期一貫性を両立する初のモデルとして注目されています。
自然・空想・歴史的環境など幅広い仮想空間をリアルタイムで生成・探索でき、プロンプトによる動的変化にも対応することで、教育、創作、エージェント訓練など多岐にわたる応用可能性を秘めています。
記事を通じて、Genie 3がいかにしてリアルな仮想空間を構築し、それがどのような価値を持つかをご理解いただけたかと思います。しかし、こうした先端技術の可能性を自社の事業価値へと実際に転換させるには、「どの業務に適用すれば最も効果的か」「導入に向けた具体的なステップは」「費用対効果はどうか」といった専門的な分析と計画が不可欠です。
もし、Genie 3のようなAI技術の自社ビジネスへの導入を具体的に検討したい、あるいは何から始めればよいか分からないという場合は、ぜひ専門家にご相談ください。
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