NVIDIA Omniverseとは？料金体系、世界モデルを実現する中核技術、活用事例、特徴、使い方まで徹底解説！

最終更新日：2025年10月30日

NVIDIA Omniverseは、デジタルツイン作成を支援する産業用開発プラットフォーム
OpenUSD・RTXレンダリング・生成フィジカルAIを既存のツールやシミュレーションワークフローに統合可能
リアルタイム共同編集やデジタルツイン構築、AIトレーニング環境の生成など、産業DXを加速する多彩な活用が可能
NVIDIAのGPU環境が必要だが、個人なら無料で利用を開始できる

デジタルツインの開発現場では設計、デザイン、AI開発で使うツールがバラバラで「データのサイロ化」が課題になっています。さらには、AIエージェントに現実世界を理解させ、安全に行動を訓練させるための高忠実度な世界モデルの構築も確固としたプラットフォームが求められています。

これら両方の課題に応えるために設計された開発プラットフォームがNVIDIA Omniverseです。SDK・API・サービスとして、産業用デジタルツイン開発を支援するプラットフォームとして期待されています。

本記事では、NVIDIA Omniverseの概要、料金体系、出来ること、中核技術であるOpenUSD、物理エンジン「PhysX」の役割、そして具体的な産業活用事例までを徹底的に解説します。

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1 NVIDIA Omniverseとは？
- 1.1 なぜNVIDIA Omniverseが必要なのか？
2 NVIDIA Omniverseの料金は？
3 NVIDIA Omniverseは何に使える？
4 NVIDIA Omniverseの特徴
5 NVIDIA Omniverseの使い方
6 NVIDIA Omniverseについてよくある質問まとめ
7 まとめ

NVIDIA Omniverseとは？

NVIDIA Omniverseは、3Dデータのレンダリングとシミュレーションを行うためのAPI、SDK、サービスを含む開発プラットフォームです。単なる3Dレンダリングソフトではなく、「3DコラボレーションとシミュレーションのためのOS（オペレーティングシステム）」と呼ぶにふさわしいプラットフォームとなっています。

開発者が産業・ロボティクス向けユースケースに対して、OpenUSD、NVIDIA RTXレンダリング技術、そして生成フィジカルAIを既存ソフトウェアツールやシミュレーションワークフローに統合できるよう設計されています。

具体的には、ローカルワークステーションまたは仮想ワークステーション上で「Omniverse Kit SDK」を用いてカスタムアプリケーションやツールを構築・展開できるほか、クラウドサービスプロバイダーからアプリケーションをストリーミング可能です。

また、Omniverse Cloud／DGX Cloud上で完全管理型プラットフォームとして、産業デジタル化とフィジカルAIシミュレーションのためのスケーラブルなデプロイを実現しています。このように、単なる3D作成ツールではなく、3D／物理シミュレーション、AI、データ相互運用性を統合するための「開発プラットフォーム」として位置付けられています。

なぜNVIDIA Omniverseが必要なのか？

デジタルツインが、製造ラインの最適化、都市計画のシミュレーション、そしてAIロボットの訓練で活用されています。

特にAIロボットの訓練のようなユースケースでは、現実の物理法則を正確に模倣し、AIが「もしこう動いたら、現実はどうなるか」を予測するための世界モデルが不可欠です。Omniverseは、まさにこの高忠実度な世界モデルを構築・実行するための基盤となります。

しかし、従来の開発プロセスでは、建築家が使うCADデータ、デザイナーが使うCGデータ、AIエンジニアが使うシミュレーションデータは、それぞれ異なるソフトで作成されていました。データの変換（インポート/エクスポート）に膨大な時間がかかり、リアルタイムでの連携は困難でした。

そこで、データを統一し、リアルタイムで動かすためにNVIDIA Omniverseが活用されようとしています。

公式サイト

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NVIDIA Omniverseの料金は？

NVIDIA Omniverseは商用利用せずに個人的に利用する場合は、無料で使用することができます。

商用・大規模運用向けにはEnterprise版が用意されており、料金表は以下のようになります。

プログラム種別	期間・価格（USD）	概要
一般向け	1年：$4,500 3年：$13,500	Omniverse Kit SDK、RTX Renderer、PhysX、App Streaming API、Enterprise Nucleus Servicesを含む。エンタープライズ技術サポート込みで、契約期間満了時に更新が必要。
教育機関向け（EDU Program）	1年：$1,125 3年：$3,375	教育・研究目的専用プラン。技術サポート込みで利用可能。サポートなしの無償ライセンスも別途申請可能（NVIDIA公式サイト経由）。
Inception Program （スタートアップ支援）	1年：$1,125	NVIDIA Inceptionプログラム会員向けの割引価格。 12か月ごとに最大64ライセンスまで購入可能。技術サポート込み。

上記は2025年10月時点での情報です。最新の情報は、公式サイトをご確認ください。

NVIDIA Omniverseは何に使える？

NVIDIA Omniverseの活用事例をご紹介します。

産業デジタルツインの構築と最適化

NVIDIA Omniverseでは、工場や都市などの産業インフラを仮想空間上に再現し、AIエージェントやロボットを統合したシミュレーションを行うことができます。

これにより、運用や設計の最適化をリアルタイムに検証でき、都市運営・製造・物流など多分野でデジタルツインによる意思決定を実現します。

ロボットや自動運転車両のシミュレーション

Omniverse SDKやNVIDIA Isaac Simを通じて、ロボットや自動運転車両の仮想トレーニング環境を構築可能です。実機を使わずに模倣学習を行い、人間の動作データから合成モーションを生成することで物理的な実験コストを削減します。

合成データ生成とAIトレーニング

生成フィジカルAIを活用し、実際のセンサー環境や物理挙動を再現した合成データを大規模に生成できます。これにより、知覚AIモデルの学習データを拡張し、AI精度の向上とデータ収集コストの削減を両立します。

より多くの活用事例をご覧になりたい方はこちらをご参照ださい。

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NVIDIA Omniverseの特徴

以下では、NVIDIA Omniverseの特徴を4つご紹介します。

OpenUSDを核とした相互運用性

Omniverseは、Universal Scene Description（OpenUSD）を基盤とすることで、異なる3Dソフトウェア間でのシーンデータの交換を容易にしています。

USDは、もともと3D映画製作のピクサー（Pixar）が開発し、オープンソース化された3Dシーン記述フォーマットです。Adobe、Autodesk、Unreal Engineといった業界標準ツール群の「共通言語」として機能します。

Omniverseは、USDを介して各ソフトの元データを「参照」することで、コピーや変換することなくリアルタイムで同期します。建築家がCADソフトで壁を動かせば、即座にOmniverse上のデジタルツインに反映され、同時にデザイナーが別のソフトで照明のシミュレーションを行えるのです。

Maya、Blender、Revitなどの既存ツールとも互換性を保ち、これらで作成したモデルをOmniverseにインポートし統合するというワークフローが可能になります。

開発者はSDK（ソフトウェア開発キット）を使い、Omniverseの機能を呼び出す自社専用のアプリケーションや拡張機能を開発できます。

これにより、部門や企業をまたいだリアルタイム・コラボレーションが可能になります。

物理的に正確なレンダリング

Omniverseは、NVIDIAが誇る高性能な物理エンジン「PhysX」を内包しています。

PhysXは、重力、摩擦、流体力学、剛性（物体の硬さ）、衝突検出などを、単なるアニメーションではなく、すべて数式に基づいて精密に「計算」します。特に、布やゴムのような「柔らかい物体（ソフトボディ）」の変形や、粒子のシミュレーションもマルチGPUで高速に処理できるようになりました。

PhysXがあるからこそ、ロボットアームのシミュレータは「掴んだ部品が滑り落ちる」「アームが想定外の場所に衝突する」といった現実の物理現象を正確に再現でき、AIはそれを学習できます。世界モデルの実現と、実世界での運用には欠かせないプラットフォームとなるでしょう。

リアルタイム共同作業とデータ共有

NVIDIA Omniverseでは、複数ユーザーが同じ3Dシーンをリアルタイムで操作・編集できます。従来はフォトリアルなCGの「レンダリング（描画計算）」に、1フレーム数分〜数時間かかるのが当たり前でした。

Omniverseは、NVIDIA RTX GPUのパワーをフルに活用し、光の反射や屈折を物理的に正しくシミュレーションする「レイトレーシング」をリアルタイム（毎秒30フレーム以上）で実行します。

これにより、フォトリアルな製品設計レビューやデジタルツインの可視化をリアルタイムで実現しています。変更は即座に全参加者に反映され、モデル構造・照明・物理挙動などを同時に確認しながら調整できます。

バージョン管理やアクセス制御も統合されており、企業レベルのセキュリティ環境下で共同編集を安全に実施でき、産業デジタルツインの開発速度と品質を向上させることが可能です。

生成フィジカルAIによる自動生成・最適化

産業シミュレーション向けの生成AI技術が組み込まれており、AIエージェントや合成データ、仮想環境を大量に自動生成することができます。これにより、産業シミュレーションの構築時間を短縮し、より現実に近い環境を短時間で構築できます。

Omniverse Cloud APIで必要な時に必要な分だけ利用

これまでOmniverseのパワーをフル活用するには、手元（あるいは自社サーバー）に強力なNVIDIA RTX GPUを搭載したワークステーションが必須でした。しかし、

しかし、GTC 2024で発表されたOmniverse Cloud APIによって、Omniverseの核となる機能（高精細レンダリング、物理シミュレーションなど）がAPI化されました。現在Microsoft Azureなどで順次提供が開始されています。

これにより、手元のPCスペックに関わらず、必要な時に必要なだけクラウド上のGPUパワーを利用するPaaS/SaaSモデルが実現します。

Apple Vision Proへのストリーミング

Apple Vision Proのような空間コンピュータ単体の処理能力では、Omniverseが扱うような超高精細なOpenUSDデータをフォトリアル品質で動かすことは不可能でした。

しかし、GTC 2024で発表されたGraphics Delivery Network (GDN)機能によって、Omniverse Cloud APIを活用したApple Vision Proへのストリーミングが可能になっています。開発者がこの機能を実装するためのワークフローや手順も公開済みです。

重たい計算はすべてクラウド側のGPUで行い、その結果（描画された映像）だけをVision Proにストリーミングします。Vision Proはユーザーの視点や操作情報（インプット）をクラウドに送り返すだけです。

例えば、現実の会議室にいながら、目の前に新型車や建設中のプラントを原寸大で出現させることが可能になります。しかもそれは、クラウド側で物理シミュレーション（PhysX）が動作しているリアルタイムで動くデジタルツインです。

NVIDIA Omniverseの使い方

Omniverseは個人利用の範囲では無料で使うことができますが、NVIDIAのGPUを搭載しているPCを使用する必要がある点に注意してください。

また、以前はOmniverse LauncherというGUIアプリケーションからNVIDIAが提供するサンプルアプリケーションをインストールするのが主流でした。（NVIDIAが提供する標準アプリ手軽に利用する手段としては依然として存在します。）

しかし、開発者が自社専用のアプリを作る際のスタート地点としては、Kit App Templateから利用を開始する流れに提供形態が変更されました。

開発環境の準備

まず、Omniverse Kit SDKベースのアプリ開発用テンプレート「kit-app-template」をローカル環境にクローンします。

git clone https://github.com/NVIDIA-Omniverse/kit-app-template.git
cd kit-app-template

このテンプレートには、アプリケーション構築に必要なスクリプト、SDK構成、サンプルコードが含まれています。

テンプレートから新規アプリを作成

次に、ウィザード形式の設定ツールで新しいアプリケーションを生成します。

Linux：
./repo.sh template new
Windows：
.\repo.bat template new

質問項目に回答します。今回は、以下のように回答します。：

作成するもの：Application
テンプレートの選択：Kit Base Editor（他のテンプレートも含め、詳しくは後ほど解説）
.kit ファイル名：my_company.my_editor（英数字・小文字）
display name：My Editor（アプリケーション表示名）
version：0.1.0（アプリのバージョン）
アプリケーションレイヤー：No（Yesを選択するとストリーミング機能の有効化と設定が可能になる）

入力完了後、指定パス（例：source/apps/example_app）に新しいアプリケーションが作成されます。バージョン選択後に作成された場所がパスで表示されるのでご確認ください。

ビルド

構成が完了したら、ビルドを実行してアプリをコンパイルします。

Linux：
./repo.sh build
Windows：
.\repo.bat build

成功すると、以下のようなメッセージが表示されます：
BUILD (RELEASE) SUCCEEDED

アプリの起動

ビルド後、以下のコマンドでアプリを起動します。

Linux：
./repo.sh launch
Windows：
.\repo.bat launch

起動時に複数アプリが表示された場合は、作成したアプリケーションを選択します。

起動に成功すると上記のような画面になります。初回起動時はシェーダのコンパイルに5〜8分かかる場合もありますが、2回目以降は大幅に短縮されます。

アプリは起動しても、レンダリングされずエラーが出ている場合は、改めてNVIDIAのGPUを搭載したPCで使用しているかをご確認ください。

テンプレートの種類

Omniverse Kit SDKには、用途に応じたテンプレートが用意されています。新規アプリ作成の際に、適切なものを選択しましょう。

テンプレート名	概要
Kit Base Editor	OpenUSDコンテンツを読み込み、操作、レンダリングできる最小構成アプリ。
USD Composer	複雑なOpenUSDシーンを構成・編集できるアプリ。
USD Explorer	大規模なUSDシーンの共同編集・レビューに適したアプリ。
USD Viewer	ストリーミング可能なビューワ。Webブラウザからの操作にも対応。
Kit Service	GUIなしでKit SDK機能を利用できる最小限のサービスアプリ。

ストリーミングとデプロイ

作成したKitアプリは、App Streaming機能を使ってWebブラウザに直接配信できます。

以下二つの運用方法があります。

Self-Managed（自己運用）：KubernetesクラスターなどでGPU環境を構築して配信を管理。
NVIDIA Managed（クラウド運用）：NVIDIA Cloud Functions（NVCF）やGraphics Delivery Network（GDN）を利用し、グローバル配信を実現。

開発支援ツール

Omniverse Kit SDKには、開発・テスト・配信を支援するスクリプトが標準搭載されています。以下は主要なコマンドとその概要になります。

コマンド	機能
`./repo.sh -h`	使用可能なツール一覧を表示。
`./repo.sh template`	テンプレートから新規アプリや拡張機能を作成。
`./repo.sh build`	アプリをビルドして実行ファイルを生成。
`./repo.sh launch`	ビルド済みアプリを起動。
`./repo.sh test`	拡張機能やアプリのテストを実行。
`./repo.sh package`	アプリをパッケージ化し、クラウド展開や共有を容易に。

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NVIDIA Omniverseについてよくある質問まとめ

Omniverseの主な用途は何ですか？

主に以下の3点で活用されています。

産業デジタルツイン: 工場や都市を仮想空間で正確に再現し、運用のシミュレーションや最適化を行います。
AIシミュレーション（世界モデル）: ロボットや自動運転車を、安全かつ効率的に訓練します。これはOmniverseが提供する物理的に正確な**「世界モデル」**内で行われます。
合成データ生成: AIモデルの学習に必要な、現実では収集が困難なデータを仮想空間で大量に生成します。

チームでの共同作業は可能ですか？

可能です。

Nucleusサーバーを利用することで、複数人が同一3Dシーンをリアルタイムで編集・共有でき、アクセス制御やバージョン管理も自動で行われます。

NVIDIA Omniverseの技術的な特徴は？

以下の6つの特徴があります。

OpenUSD: 異なる3Dツール間のデータを「変換」せず「参照」することで、リアルタイムな連携を可能にします。
物理シミュレーション（世界モデル）: 「PhysX」エンジンにより、重力、摩擦、衝突といった物理法則を正確に計算・再現します。これはAIが未来を予測するための世界モデルの基盤となります。
リアルタイム共同作業: RTX技術により高精細なシーンを瞬時に描画し、複数人での同時編集が可能です。
生成フィジカルAI: シミュレーション用のAIエージェントや仮想環境を自動で生成します。
Cloud API: 高性能GPUがない環境でも、API経由でOmniverseのレンダリングやシミュレーション機能を利用できます。
Apple Vision Pro連携: クラウドで処理した高精細なデジタルツインを、Apple Vision Proにストリーミング表示できます。

まとめ

NVIDIA Omniverseは、産業デジタルツインやロボティクス開発を支える統合プラットフォームとして、開発を支援します。OpenUSDを基盤とする高い互換性と、RTXによるリアルタイム物理レンダリング、そして生成フィジカルAIによる自動化が組み合わさることで、設計・検証・運用の全工程を仮想空間で完結できます。

単なる3Dビジュアライゼーションに留まらず、AIが現実の物理法則を学習し、行動の結果を予測するための高忠実度な世界モデルを構築する取り組みでもあります。

さらに、Nucleusを用いたリアルタイム共同編集機能により、複数の開発者や設計チームが同時に作業を進められる点も大きな魅力です。個人開発から企業導入まで幅広く対応しており、GPUを備えた環境があれば誰でも高度な産業シミュレーションを体験できるプラットフォームとして注目されています。

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監修者

森下佳宏

AI Market 運営、BizTech株式会社代表取締役｜2021年にサービス提供を開始したAI Marketのコンサルタントとしても、お客様に寄り添いながら、お客様の課題ヒアリングや企業のご紹介を実施しています。これまでにLLM・RAGを始め、画像認識、データ分析等、1,000件を超える様々なAI導入相談に対応。AI Marketの記事では、AIに関する情報をわかりやすくお伝えしています。

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