RAGはデータ選定が最重要?理由・選定の注意点7ポイント・手順を徹底解説!
最終更新日:2025年07月25日

- RAGは検索した情報を基に回答するため、投入するデータが不正確・古い・不十分だとLLMの性能に関わらず出力の質が低下し、ハルシネーションの原因に
- 情報の「正確性」「最新性」「網羅性」などを厳しく評価し、重複や機密情報を排除する体系的なプロセスを踏む
- 一度データを選定して終わりではなく、利用状況を分析し、定期的に情報を更新・追加・削除するデータガバナンス体制を整備
RAG(検索拡張生成)は、検索で取得したコンテンツをもとにLLM(大規模言語モデル)が回答を行う仕組みです。そのため、使用するデータがRAGの精度・信頼性・業務成果に直結します。
しかし実際には「どこまでのデータを使えば十分か」「重複やノイズはどう扱えばいいか」といった悩みから、適切なデータ選定に踏み出せない企業も少なくありません。実はその原因の多くが、LLMの性能ではなく、参照させる「データ」の品質にあります。
この記事では、なぜRAGでデータ選定が最重要なのかという理由から、ナレッジソースの種類、具体的な選定基準、そして実践的なプロセスを紹介します。自社のユースケースに最適なデータを見極めるために必要な情報を提供します。
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目次
なぜRAGはデータ選定が最重要なのか?
RAGは検索したデータをそのまま回答に反映するため、最新かつ信頼できる情報を厳選して与えることこそが回答精度を高める上で重要です。以下では、データ選定の重要性を紹介します。
回答精度の向上
RAGは、ユーザーからの質問に対して、まず社内データベースなどから関連性の高い情報を検索(Retrieval)し、その情報を基にLLM(大規模言語モデル)が回答を生成する技術です。そのため、検索フェーズで引き当てるデータの質がそのまま出力精度に直結します。
正確かつ網羅的なデータを厳選して投入すれば、モデルはより妥当で一貫性のある回答を生成でき、追加学習なしでも高精度を実現できます。LLMが学習していない最新情報や社内固有の専門的な情報に基づいた回答が可能になるのです。
一方、古い資料や信頼性の低いデータが混在していると、誤った前提に基づいた生成やハルシネーションが発生し、後工程での確認・修正コストが大きく膨らみます。誤回答が業務に波及すれば信頼性の低下にもつながります。
つまり、RAGの導入効果を最大化するには、単なる量ではなく質の高いデータを選び抜くことが精度を支える最重要工程だといえます。
関連記事:「RAGの精度を向上させる方法は?チャンキングなど手法や落ちる原因、低精度で運用するリスクを徹底解説!」
ユーザー満足度の向上
RAGを利用するユーザーに対して的確かつ最新の情報を検索対象にできれば、ユーザーは欲しい答えをワンショットで得られます。
たとえば、現場で頻繁に参照される FAQや手順書を優先投入すると、問い合わせ対応時間が短縮されるだけでなく、意思決定や作業スピードも加速します。
また、回答の正確性と一貫性が保たれていれば、ユーザーはRAGを信頼できる情報源として積極的に活用するようになり、システムへの定着とリピート利用が促進されます。
RAGに対するユーザー満足度を高めるには、的確なデータ選定が欠かせません。信頼性の高い情報を厳選することで、継続利用と業務定着を促し、RAG活用の価値を最大化させます。
運用コスト削減
データを精選し、重複や古い資料を除外した状態でRAGを稼働させれば、ハルシネーション(虚偽生成)を後工程でチェック・修正する手間を削減できます。
さらに、カテゴリ分けやメタデータ付与など初期整備を済ませた構造化データを用意しておくと、更新時の差分抽出やバージョン管理が容易になります。結果として、運用フェーズでの工数とストレージコストを同時に圧縮できます。
結果として、再インデックス作業や問い合わせ対応の人件費を含む総保守費用が下がり、RAG システムのTCOを最適化できます。
特に、クラウド上でAIを利用する場合、参照するデータの量や処理の複雑さに応じてコストが発生します。不要なデータや重複したデータを大量に読み込ませると無駄なコストがかさむだけでなく、検索速度の低下にも繋がります。
導入時のデータ選定を徹底することで、将来的な保守・改修コストを大幅に削減し、RAG運用全体のROIを着実に引き上げます。限られたリソースで最大の成果を出すためには、初期フェーズにおけるデータ品質へのこだわりが欠かせません。
セキュリティリスクの低減
データ選定段階で機密情報や個人情報を事前に排除することで、RAG運用後の情報漏えいリスクを根本的に遮断できます。これは、生成モデルが不用意にセンシティブな内容を出力するリスクを防ぐ上で重要です。
また、著作権やライセンスが曖昧なコンテンツをインデックス化しないと、後々の著作権侵害や法的トラブルの発生も防止できます。たとえば、外部から取得した文書や公開範囲が不明な資料を利用目的や出所を明確にしないまま取り込むと企業の法務リスクを増大させかねません。
したがって、セキュリティやコンプライアンス上のリスクを未然に防ぐ上でもデータ選定はRAGにおける重要な起点です。
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RAGに取り込むナレッジソースの種類
RAGに取り込むナレッジソースは、構造化データと非構造化データの2種類に大別できます。それぞれのデータを目的別に組み合わせ、「検索関連度×説明力×メンテナンス容易性」の3要素を最適化することが、RAGの導入効果を最大化する近道です。
以下では、それぞれの具体的なデータ例を紹介します。
構造化データ
構造化データとは、Excelの表やデータベースのように、行と列で構成され、各項目が明確に定義された整理済みのデータのことです。RAGに取り組む代表的な構造化データは、以下のとおりです。
ソース例 | データ例 | 主な活用シーン |
---|---|---|
Excel・CSV ファイル | 売上実績データ、経費データ、FAQリスト、アンケート結果 | 「定量情報」を正確に引用したいケース |
データベース | 顧客リスト、商品マスター、在庫管理DB、販売履歴、顧客対応ログ | リアルタイム更新が必要な業務系システム |
構造化データは、一貫したスキーマを持つため、検索ヒットの精度が高い点がメリットです。「商品コードXXXXXの現在の在庫数は?」といったピンポイントな質問に対し、データベースから正確な数値を瞬時に取得して回答する、といった用途で強みを発揮します。
また、構造化データは数値やコードがそのまま引用できるため誤写や単位ミスを防げます。事実に基づいた正確な数値や固有名詞を回答する際に不可欠なソースです。
一方、列名・カラムの意味が業務部門ごとに異なる場合は統合設計が必須です。
非構造化データ
非構造化データとは、決まった形式を持たず、文章や音声、画像など、そのままでは機械的な処理が難しいデータを指します。企業内に存在するナレッジのほとんどは非構造化データであると言われています。
RAGに取り組む代表的な非構造化データは、以下のとおりです。
ソース例 | データ例 | 主な活用シーン |
---|---|---|
ドキュメントファイル | 業務マニュアル、社内規定、研究開発レポート、議事録、研修資料、提案書などのPDF, Word, PowerPoint | 手順解説や過去経緯の説明など「文脈付き情報」を提供 |
コミュニケーション履歴 | メールの文面、ビジネスチャット(Teams, Slackなど)のログ コールセンターの通話録音 | 問い合わせ対応やセルフサポートチャットボット トラブルシューティング、顧客対応の状況把握 |
Webコンテンツ | 製品カタログや公開ナレッジベース、サポート情報 | Web上から引用したいケース |
非構造化データは、以下のような曖昧で文脈依存的な質問に対して関連する文書を探し出し、内容を要約して分かりやすく回答する、といった用途で真価を発揮します。
- 「新入社員向けのPCセットアップ手順を教えて」
- 「A社との前回の打ち合わせでの決定事項は何だった?」
非構造化データは豊富な文脈情報を含むため、回答に根拠や背景を添えられ、説明力が高まります。また、企業の暗黙知を形式知化し、ナレッジとして活用する上で中心的な役割を担います。
その一方で、前処理とガバナンスを怠るとノイズになりかねません。そのため、適切な重複除去とメタデータ付与を行うことが活用のポイントです。
関連記事:「RAGのデータ収集を成功させる方法は?目的別の考え方・コツ・ツール・外部データ収集手段を徹底解説!」
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RAGのデータ選定で注意すべき7ポイント
RAGに適さないデータを取り込むと、回答精度の低下を招きます。したがって、初期段階で除外する作業が不可欠です。以下では、RAG用データの選定時で特に注意したい観点を解説します。
情報が事実に基づいているかを確認
RAGに誤情報が混入すると、生成された回答も連鎖的に誤りを含み、信頼を大きく損ないます。そのため、投入するドキュメントが客観的な事実に裏付けられているかを厳格にチェックする必要があります。
特に、以下のようなデータは排除すべきです。
- 情報が法律や制度に基づいていないデータ
- 誤記や誤訳、曖昧な記述を含むデータ
- 根拠のない推測や主観が含まれるデータ
こうしたファクトチェックを徹底することで、RAG は正確性の高い回答を維持し、ユーザーの意思決定を安全にサポートできます。
データ同士の重複を避ける
RAGの検索品質は、重複データによっても低下します。同じ内容の文書が複数存在すると検索関連度スコアが分散し、適切な文書が上位に来ません。結果として生成モデルが似通ったチャンクを何度も参照し、回答の冗長化や矛盾を引き起こします。
そのため、以下のような重複データはあらかじめ除外しましょう。
- 内容が同一でファイル名や保存場所だけが違う文書
- 旧版のFAQや手順書の言い回しだけが異なる類似ドキュメント
重複を徹底的に排除し、代表チャンクに集約することで検索の的中率が高まり、RAGの回答は一貫性と信頼性を保てます。
最新データのみを選ぶ
RAGの検索精度を損なう最大のリスクは、古い情報による誤誘導です。データセットに古いデータが混在するとLLMは現行プロセスと食い違う回答を提示し、誤った業務判断につながります。
特に、社内規定や業務マニュアル、価格表などは常に最新の状態を保つことが不可欠です。
そのため、以下のような古いデータを徹底的に除外することが大切です。
- 作成・更新日が数年前で、現行ルールと齟齬があるデータ
- 廃止された製品・サービス・機能・制度の説明が残っているデータ
- 現在の社内体制・用語に合わない旧バージョンの資料
- 新しい版が存在する古い版のデータ
- 最終更新から長期間放置されているデータ
これらの基準を満たす新しい情報のみを取り込めば、RAGは常に正確な回答を維持できます。
対応策として、文書のバージョン管理ルールを定め、誰がいつ更新したかを明確にすることが重要です。そして、定期的にデータの内容を見直し、古い情報をアーカイブまたは更新するプロセスを構築します。
情報に偏りや不足がないを確認
RAGが的確な回答を返すには、検索対象に必要な情報が偏りなくそろっている必要があります。特定トピックが抜け落ちている場合や同じテーマの資料がバラバラに散在している場合は、LLMは断片的な根拠しか得られず回答が曖昧になります。
そのため、以下のような観点で情報の過不足をチェックしましょう。
- ユーザーが知りたい疑問を網羅し、重要トピックが抜けていないか
- 同一テーマの文書がフォルダやシステムをまたいで分断されていないか
- ある分野だけ資料が多く、別の分野は手薄といった偏りがないか
- 他部門や外部ソースと突き合わせたとき、明らかに不足している内容がないか
こうしたギャップを埋め、テーマごとに情報を集約・均質化することで、RAGは質問に対して一貫性のある根拠を提示でき、回答精度とユーザー信頼度を同時に高められます。
信頼性が高い情報を優先的に選定
RAG に不確かなソースを混入させると、生成された回答までもが信頼を失い、後工程での検証・修正コストが膨らみます。そのため、責任の所在や検証プロセスが明確な一次情報を優先し、以下のような低信頼データは初期段階で除外しましょう。
- 作成者・出所が不明で、責任の所在が曖昧な資料
- ブログ記事や SNS 投稿など、事実確認されていない二次情報
- 感想・主観・推測が多く、客観性・中立性に欠けるドキュメント
- 誤字脱字が多く、内容の正確性そのものが疑わしいデータ
- 古いルールや誤情報がベースになっているが、その旨が明記されていない資料
- ライセンスや公開権限が不明で、法的リスクを伴うコンテンツ
フィルタリングを徹底し、正式にレビュー・承認を受けた一次情報だけを採用することで、RAGは信頼性の高い回答を継続的に提供できます。
クリーンなフォーマットと構造を保つ
AIが最も理解しやすいのは、クリーンなテキストデータです。PDFに埋め込まれた画像内の文字や複雑なレイアウトの文書は、AIが正しく内容を読み取れない可能性があります。
スキャンされたPDFや画像ファイルは、OCR(光学的文字認識)ツールを使ってテキストデータに変換します。また、長大なドキュメントは、意味のあるまとまり(段落やセクション)で「チャンク」と呼ばれる小さな単位に分割し、検索対象として扱いやすくする。
さらに、文書のタイトル、作成者、トピックといったメタデータを付与することで、検索の文脈理解を助け、精度を向上させることも可能です。
アクセス権限と機密性を保持
RAGに全社のデータを無制限に参照させると、本来その情報にアクセス権限のない従業員にまで機密情報(人事情報、未公開の財務情報など)が渡ってしまう重大なセキュリティリスクに繋がります。
RAGシステムを既存のID管理システムと連携させ、ユーザーの役職や所属に応じたアクセス権限をデータソースに反映させることが重要です。また、個人情報やパスワードなどの機微な情報は、あらかじめ検出し、マスキング処理(例: ***)を施すか、参照対象から除外します。
RAG用データの選定プロセス
以下では、RAG用データの選定プロセスを紹介します。
1. 目的・ユースケースの明確化
まずは、RAGをどの業務に活用するかを決定します。
問い合わせ対応や社内検索、営業支援などユースケースを具体的に定義し、プロジェクトを絞り込みましょう。あわせて、利用部門や想定ユーザー、期待する成果を設定し、ステークホルダーの認識をそろえます。
目的やユースケースが決まれば、必要な情報の粒度や文書の種類が決まります。たとえば、即答型の問い合わせボットではFAQ集が最優先となり、経営レポート生成の場合は詳細な分析資料や会議議事録が必要です。
2. 対象データの棚卸し
プロジェクトの範囲が定まったあとは、活用可能なデータを漏れなくリスト化します。社内ファイルサーバから共有フォルダ、SaaS、紙資料まであらゆる情報源をリストアップし、所在・形式・更新頻度を整理しましょう。
棚卸しは情報システム部門だけで済ませず、総務・法務・営業・製造など現場部門にもヒアリングし、日常的に参照されている活用可能なドキュメントを特定することが重要です。
データソースを以下の観点から整理・評価し、RAGに活用する優先順位を決定します。
- ドキュメントの種類: マニュアル、社内規定、過去の問い合わせ履歴、議事録、技術仕様書など
- データの形式: テキスト(Word, PDF)、表形式(Excel, CSV)、Webページなど
- データの品質: 情報の鮮度、正確性、網羅性
これを怠ると、導入後に必要な情報が検索できないリスクが高まります。
3. 初期スクリーニング
棚卸しの完了後、まずは不適切なデータをふるい落とします。以下が、除外すべきデータの例です。
- 作成日や更新日が古すぎて現行業務と齟齬が生じている文書
- ハッシュ値やタイトルが重複しているファイル
- 作成者や出所が不明で信頼性が担保できない資料
- 著作権・機密保持の観点で公開や社内利用にリスクがあるドキュメント
- 社外広告や画像だけのPDFなど、明らかにノイズとなるコンテンツ
初期スクリーニングを丁寧に行うことで、後続の品質評価とメタデータ付与の手間を大幅に削減でき、RAGの検索精度を底上げする土台が整います。
4.データの前処理とクレンジング
選定したデータは、そのままAIに投入できるわけではありません。AIが理解しやすいように、「前処理」や「クレンジング」といった加工作業が必要になります。
- フォーマットの統一:PDFやWordなど、異なる形式のファイルを統一的なテキスト形式に変換します。
- ノイズの除去:不要なヘッダー、フッター、広告、無関係なテキストなどを削除します。
- 情報の構造化:長文を意味のある段落やセクションに分割し、AIが文脈を理解しやすくします。
この地道な作業が、最終的な回答の質を大きく左右します。
5. データ品質の評価
スクリーニング後に残った候補データは、以下の正確性・網羅性・最新性の3軸で簡易スコアリングを実施します。
- 正確性:一次情報かつ部門承認済みか、誤記や主観が入り込んでいないかを確認
- 網羅性:関連トピックが漏れなくカバーされているか、重複を避けた上で情報の偏りがないかを評価
- 最新性:更新日が明示されており現行フローやルールに合致しているかをチェック
各軸を5点満点などで採点し、合計スコアやランク(採用・要検討・除外)に振り分けることで、関係部門との客観的な合意形成が容易になります。
6. 優先順位の設定
品質評価では採用されたデータでも、いきなりすべてを投入するとインデックスが肥大化し、検索関連度が低下するリスクがあります。そのため、利用頻度が高く、ユーザー要望の強い領域を優先し、RAGへの取り込みを段階的に進めることが重要です。
具体的には、まずFAQなど費用対効果が高い文書群でPoCを行い、効果が確認できた場合に社内規定集や営業提案書へとスコープを拡大していくアプローチが有効です。
スモールスタートにより、初期投資とリスクを最小化しつつ、ユーザー体験と経営効果の両面でスピーディに成果を可視化できます。
7. 継続的な更新と評価体制の整備
RAGは、ナレッジソースを以下の手順で継続的に改善・更新してこそ大きな効果をもたらします。
- 検索ログと生成回答ログをモニタリングし、「どのチャンクがヒットしたか」「回答は正しく採用されたか」を可視化
- ダッシュボードなどで活躍しているデータとほとんど参照されないデータを分析
- 使われていないデータを削除・改訂することでノイズを削減
また、新規プロジェクトや制度改定で発生する最新資料を定期的に取り込み、古いバージョンや重複ファイルをアーカイブする運用ルールを策定することも大切です。
ポイントは、IT部門だけでなく経営層、法務も交えた「データガバナンス委員会」を設置し、月次・四半期ごとにデータの追加・削除をレビューする仕組みをつくることです。
このような評価体制により、検索精度とコンプライアンスを両立させつつ、RAGの価値を長期的に最大化できます。
関連記事:「RAG精度の壁とは?チューニングする戦略・具体的検討方法を徹底解説!」
RAGのデータ選定についてよくある質問まとめ
- 社内にドキュメントが大量にありますが、すべてRAGに入れるべきですか?
すべてを投入するのは非効率です。まずはユースケースを明確にし、頻繁に参照されるFAQや手順書などROIの高い文書から優先的に投入するのが効果的です。品質が低いデータやノイズとなるファイルは除外しましょう。
- なぜRAGではデータ選定が最も重要と言われるのですか?
RAGは検索したデータを基に回答を生成する仕組みだからです。データ品質が低いと、AIの性能に関わらず以下の問題が発生し、システムの価値を損ないます。
- 回答精度の低下: 古い・誤った情報から不正確な回答を生成する
- ユーザー満足度の低下: 的外れな回答で信頼を失う
- 運用コストの増大: ハルシネーションの確認・修正に手間がかかる
- セキュリティリスクの増大: 機密情報や個人情報を漏洩させる可能性がある
- RAGにはどのような種類のデータを取り込めますか?
大きく分けて「構造化データ」と「非構造化データ」の2種類があります。
- 構造化データ: Excel、CSV、データベースなど、行と列で整理されたデータ。在庫数や価格など、正確な数値を回答するのに適しています。
- 非構造化データ: PDFやWord、メール、チャットログなど、決まった形式のないテキスト中心のデータ。業務マニュアルの手順説明など、文脈的な質問への回答で真価を発揮します。
- RAGのデータを選ぶ際に、特に注意すべき点は何ですか?
以下の7つのポイントに注意して、データの品質を担保することが重要です。
- 事実確認: 根拠のない推測や主観を排除し、事実に基づいた情報か確認する
- 重複回避: 同じ内容の文書を排除し、検索ノイズを減らす
- 最新性の確保: 古い情報を除外し、現行のルールやプロセスに合ったデータを選ぶ
- 網羅性の担保: 特定のトピックに偏りや不足がないか確認する
- 信頼性の優先: 作成者や出所が明確な一次情報を優先する
- フォーマットの整理: AIが読みやすいようにテキストをクリーンにする
- セキュリティの確保: アクセス権限を管理し、機密情報を保護する
まとめ
RAGは、検索されたコンテンツを根拠にLLMが文章を組み立てる仕組みです。そのため、検索フェーズにおけるデータの質が出力品質を左右します。
古い・信頼性の低い情報が混在すると、LLMは誤った前提で回答を出し、ユーザー判断を誤らせます。一方、最新かつ一次情報を厳選できれば再学習なしでも高精度を維持でき、修正や法的リスクも抑制可能です。
社内に散在する膨大な情報の中から最適なデータを見極め、継続的に品質を維持していくには、専門的な知見と客観的な視点が求められます。もし、自社でのデータ選定や品質評価に課題を感じる場合は、専門家のサポートを得るのも有効な手段です。
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