Anthropic社、Claudeの利用データを分析した初のAI経済指標を発表。全職種の約36%でAIが活用

Anthropic社は2025年2月10日、AIが労働市場や経済に与える影響を分析する「Anthropic Economic Index」を発表した。

同社のAIアシスタント「Claude」との数百万件の会話データを匿名化して分析した結果、現在のAI活用は主にソフトウェア開発やテクニカルライティングに集中しており、全職種の約36%で業務の4分の1以上でAIが活用されていることが判明した。

同社は分析に使用したデータセットを公開し、研究者らによる更なる分析を呼びかけている。

＜本ニュースの10秒要約＞

• 職種別のAI活用状況で、コンピューター・数学分野が37.2%と最も高く、芸術・メディア分野が10.3%で続く傾向
• AIの活用方法は、人間の能力を補完・強化するAugmentation が57%、作業を自動化するAutomation が43%の割合
• 給与帯別では中～高給与の職種でAI活用が進み、最低給与層と最高給与層では活用が限定的な二極化現象

AI活用の現状分析と職種別の特徴

米労働省のO*NETデータベースに基づき、約2万種の業務タスクを分類・分析した結果、コンピューター・数学分野が37.2%と最も高いAI活用率を示した。

次いで芸術・デザイン・スポーツ・エンターテインメント・メディア分野が10.3%、教育・図書館分野が9.3%となっている。一方、農業・漁業・林業分野は0.1%と最も低い活用率だ。

全職種の約36%で業務の4分の1以上でAIが活用されているが、業務の4分の3以上でAIを活用している職種は約4%に留まっている。

AIの活用方法と給与帯による特徴

AIの活用方法は、人間の能力を補完・強化するAugmentationが57%、作業を自動化するAutomationが43%となっている。

Augmentationは主に検証、学習支援、タスク反復の3つに分類され、特にタスク反復が31.3%と高い割合を示している。

給与帯別の分析では、プログラマーやコピーライターなど中～高給与の職種でAI活用が進む一方、シャンプー師や産科医など最低給与層と最高給与層では活用が限定的だ。

研究の限界と今後の展開

本研究には、業務目的でのAI利用か否かの判別が困難である点や、AIの出力結果の具体的な活用方法が不明である点などの制限がある。

また、Claudeが画像生成に対応していないことから、クリエイティブな用途の一部が分析対象外となっている。

Anthropic社は、これらの制限を踏まえつつ、AIと労働市場の関係性の変化を継続的に分析し、定期的にデータセットを公開していく方針だ。

AI Market の見解

本研究は、AIの実利用データに基づく大規模な労働市場分析として重要な意義を持つ。

特筆すべきは、AIが特定の職種を完全に代替するのではなく、タスクレベルで補完・強化する形で浸透している点だ。この傾向は、今後のAI開発においてhuman-in-the-loopの重要性を示唆している。

また、給与帯による活用度の二極化は、AI活用のデジタルデバイドを示唆しており、政策的な対応が必要となる可能性がある。今後は、より多様な職種でのAI活用事例の蓄積と、それに基づく具体的な政策提言が求められるだろう。

参照元：Anthropic