伊藤園と富士通、AI画像解析による茶葉の摘採時期判断技術を開発
最終更新日:2022年05月13日
株式会社伊藤園と富士通株式会社は、AI画像解析により茶葉(茶芽)の摘採時期を簡便に判断する技術を共同開発し、伊藤園が展開する茶産地育成事業の契約産地にて試験運用を開始すると発表しました。
本技術は、伊藤園の茶栽培に関する知見と富士通の画像解析技術およびAIの機械学習を組み合わせて共同開発した画像認識アルゴリズムによって、スマートフォンで撮影した摘採(収穫)前の茶葉の画像をクラウド上でAI解析し、摘採時期の判断指標となるアミノ酸量や繊維量を推定する技術とのことです。
本試験運用では、2022年の新茶摘採から開始し、画像認識アルゴリズムの正確性や実用性を検証します。
これによって、生産者の高齢化や後継者不足における茶農業への新規参入の障壁課題を解決し、茶農業の生産力向上と持続性を両立することに寄与していくとのことです。
両社は、茶葉の摘採時期を簡便に判断することができる本技術の確立に向けて協働し、2023年の新茶摘採から契約産地で本格展開を目指します。
また今後も、安心・安全で高品質な緑茶原料の安定生産、茶生産者の労務負担軽減や品質の向上に寄与する技術開発などにより、持続可能な農業の推進に貢献していくとのことです。
<本ニュースの10秒要約>
伊藤園と富士通が、茶葉の摘採時期を簡単に判断する技術を共同開発し実証実験を開始 本技術は、スマートフォンで撮影した茶葉の画像から、AIによる画像解析を通してアミノ酸量や繊維量などを推定 伊藤園は茶栽培における知見の提供、富士通はAI画像解析技術を提供
実施背景
伊藤園は、独自の持続可能な農業モデルである「茶産地育成事業」を通じて、茶をはじめとした農業の課題の一つである「雇用の創出と就農者の若返り」に対して、技術支援による解決を目指しています。
茶葉は、摘採する時期が遅れると収穫量は多くなる一方で品質が低下するため、日々変化する茶葉の生育状況から最適な摘採時期を判断するために、生産者の長年の経験から得られるノウハウや、茶葉を採取・乾燥・粉砕したうえで専用機器で分析して見極める方法が一般的となっています。
しかし、生産者の後継者育成や新規参入に際しては、摘採時期の判断は容易ではなく、生産力向上と持続性を両立するうえでの課題となっています。
そこで両社は、茶生産者の後継者育成や新規参入におけるハードルである「茶葉の摘採時期の判断」を簡便化するAI画像解析技術を共同開発し、伊藤園の契約産地での試験運用を開始するとのことです。
共同開発および試験運用の概要
株式会社富士通鹿児島インフォネットの保有する画像解析技術(注1)と、富士通のAIの機械学習を活用し、これらに加え伊藤園の茶栽培に関する知見を組み合わせることで、摘採前の茶葉画像からアミノ酸量や繊維量などを推定する画像認識アルゴリズムを共同開発しました。
画像認識アルゴリズムの開発については、約2年をかけて契約産地の一部で撮影した約4,000枚の茶葉の画像をもとに、色味調整など加工を施した合計約8,500枚の画像を用いてAI学習を行ったとのことです。
本画像認識アルゴリズムの正確性や実用性を検証するため、2022年の新茶摘採から撮影対象地域などを拡大し、現場での実証による試験運用を行い、2023年から契約産地での本格展開を目指すとしています。
注1 富士通鹿児島インフォネットの保有する画像解析技術:
畑で撮影された作物の画像を、日時、場所、生育段階といった情報を元に整理し、ディープラーニングで特徴と作物の成分値を組み合わせた推定モデルを作成。さらに色彩(Hue)、明度(Saturation)、彩度(Value・Brightness)といったHSVの観点で、チューニングなど推定値の精度向上させる手法であるTTA(Test-Time Augmentation)を用いて解析する技術です。
AI画像解析による茶葉の摘採時期判断技術の特長
本技術は、茶畑で茶葉をスマートフォンで撮影するだけでアミノ酸量と繊維量を推定することができ、茶葉の摘採時期を簡便に判断することができます。
伊藤園は、画像から推定するアミノ酸量と繊維量による品質と収穫量の関係性などの茶栽培に関する全般の知見を提供し、富士通は、画像解析技術およびAIの機械学習を組み合わせた画像認識アルゴリズムの作成技術を提供します。
両社は今回開発した技術をはじめとして、今後も、安心・安全で高品質な緑茶原料の安定調達と日本農業が抱える課題に対して支援・解決ができる技術を開発し、「持続可能な農業」の推進に貢献していくとしています。
参照元:PR TIMES
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