大阪大学産業科学研究所と凸版印刷、「リアルタイムAI技術」に関する共同研究を開始
最終更新日:2022年05月27日
大阪大学産業科学研究所と、凸版印刷株式会社は、「リアルタイムAI技術」の社会実装に向けた共同研究を、2022年5月より開始すると発表した。
「リアルタイムAI技術」とは、産業科学研究所 産業科学AIセンターの櫻井研究室(教授:櫻井 保志)が研究を進めている独自のAIアルゴリズムであり、工場等の生産現場におけるIoT機器や、ヘルスケア機器のセンサから収集されるような、連続的な時系列データを、「リアルタイムで解析し、複数のAIモデルを切り替えながら、その先の状況を予測・推論することが可能なAI」を言う。
この「リアルタイムAI技術」の活用によって、環境変化や外的要因を受けやすい個体差/個人差がある事象に対しても、高速で高精度な予測が可能となる。
今回両社は、この「リアルタイムAI技術」の社会実装を推進するため、第一弾として、凸版印刷の生産現場における設備コンディション予測や、リアルタイムに取得された生体データから明らかにできる個人の健康や心理状態予測サービスの開発に向けた技術検証を行うという。
目次
<本ニュースの10秒要約>
大阪大学産業科学研究所と凸版印刷が、「リアルタイムAI技術」の共同研究を開始 リアルタイムAIの特徴として、時系列データの解析の自動化、新規モデルのリアルタイム作成が可能 第一弾として、製造現場で取得するデータを解析し、設備の異常検知、稼働率低下等を予測し、事前検知する
取組概要・背景
近年、政府が主導するSociety5.0によるデータ利活用により、国/地方公共団体/教育機関/民間企業が、AI/ビッグデータを活用した様々な取り組みを加速させている。
一方で、機械学習に代表される一般的なAIでは、膨大なデータの学習と、それを元にしたAIモデルの再構築に時間を要するため、生産現場や個々人の生活データといった環境変化や外的要因を受けやすい個体差/個人差がある事象の予知/予兆検知を行うには、計算コストや精度の面から、すべてを対応することは難しいという課題があった。
このような課題を受け、櫻井研究室と凸版印刷は、櫻井研究室が研究を進める、時系列ビッグデータを高精度でリアルタイムに要因分析し、将来予測をする「リアルタイムAI技術」を活用した共同研究を開始した。工場での設備異常の予兆検知や個人の健康や心理状態の予想といった要因分析を、自動且つリアルタイムで実施するサービスの開発によって、「リアルタイムAI技術」の社会実装を目指すとしている。
共同研究の内容
設備コンディションの予測及び予知保全の技術適用方法の確立
製造設備から取得される稼働データの時系列傾向から、設備コンディションを分析/予測するAIモデルの開発を推進する。このAIモデルが設備コンディションの異常(設備の不具合)に起因する稼働率低下や良品率低下の予兆を事前に検知することで、今まで解決できなかった生産プロセスの改善に寄与することを目指す。
まずは、凸版印刷の生産工程におけるリアルタイムAIの最適化アルゴリズムを共同開発して、工場内に導入する。そして将来的にはスマートファクトリー関連事業への導入を目指す。
生体データを活用したパーソナライズされたサービス開発への技術適用の評価・検証
日々の行動データやウェアラブル端末から取得される生体データを活用し、個人の健康状態や心理状態の推移を予測することで、利用者の健康管理や顧客接点強化を支援するAIモデルの開発を目指す。例えば、健康管理支援の1つとして介護施設などで入居者の睡眠傾向の推移の確認と覚醒タイミングの事前検知ができることで、より利用者個人のタイミングに合わせた適切なケアが実現する。
「リアルタイムAI技術」の特徴
時系列ビッグデータの解析の自動化が可能
ビッグデータ解析はデータ量の多さから、人力によるデータパターンの抽出や分類など、前処理の負荷が高いとされている。一方で「リアルタイムAI技術」は、それらの作業を自動化できることから、細かなチューニングなく、重要な情報の抽出が可能となる。この技術を生産設備の状態把握に適応した場合、事前把握が困難な設備故障や不良要因における時系列特徴を素早く発見することが可能となる。
外的要因・個体差に適応力のあるモデルの実現が可能
「リアルタイムAI技術」は、入力データに応じて予測モデルを切り替えて、未知のデータパターンが入力された場合は、新たなモデル作成をリアルタイムで行う事が可能。これによって、設備稼働データや生体データを始めとした外的要因を受けやすく、偏差が大きくなりやすいデータが入力された場合であっても、その状態に合わせて、継続して精度を保ちながら将来予測をすることができるという。
今後の目標
凸版印刷と大阪大学産業科学研究所は、スマートファクトリーやヘルスケア領域での「リアルタイムAI技術」の研究開発を進め、2024年度の事業/サービス化を目指す。そして「リアルタイムAI技術」を社会実装することで、豊かで安全/安心な社会の実現を目指すとしている。
参照元:PRTIMES
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