EfficientNetとは?画像分類モデルとしての特徴・活用法を徹底解説!
最終更新日:2025年01月14日
画像認識AIの導入を検討しているものの、「精度と運用コストのバランスが取れない」「システムリソースの制約が気になる」といった課題を抱えていませんか?画像認識システムの導入を検討する際、処理性能とコストの両立が大きな課題となっています。
本記事では、Googleが開発した画像分類モデルEfficientNetを徹底解説します。少ないパラメータ数で高精度な画像分類を実現するEfficientNetについて、各産業での具体的な活用事例と共に解説します。
医療現場での診断支援から製造ラインでの品質管理まで、現場の課題解決に直結する実践的な知見を提供します。特に、既存システムからの移行やコスト削減を検討されている方に、具体的な判断材料をお届けします。
関連記事:「AIで画像認識を行う方法、画像解析との相違点、AIモデルの種類」
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目次
EfficientNetとは?
EfficientNetは2019年にGoogleの研究者が開発し、公開した画像分類モデルで、少ないパラメータ数で高い精度を実現するCNN(畳み込みニューラルネットワーク)です。
従来のモデルと比較して少ないパラメータ数でありながら高精度を達成しています。例えば、EfficientNet-B7は従来のモデルと比較して、約8分の1のパラメータ数でありながら、ImageNetデータセットにおいて84.4%という高い精度を達成しています。
この高精度を実現しているのは、EfficientNetの最大の特徴的な技術であるCompound Scalingです。モデルの深さ、幅、入力画像の解像度を同時にバランスよく調整する手法です。
関連記事:「AIの画像分類に関して概要から具体的な活用シーン、画像分類する際の流れ」
参考:arXiv|EfficientNet: Rethinking Model Scaling for Convolutional Neural Networks
モデルファミリー
EfficientNetは、EfficientNet-B0からEfficientNet-B7までの8つのモデルで構成されています46。B0が最も小さい基本モデルです。
B1からB7は、B0をベースに幅(チャンネル数)、深さ(層数)、解像度を段階的にスケールアップしたモデルです。
B0やB1などの小さいモデルは、モバイルデバイスや計算資源の限られた環境に適しています。B6やB7などの大きいモデルは、高い精度が要求される場面で使用されます。
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EfficientNetの特徴
EfficientNetは従来のモデルと比較して大幅なパラメータ削減を実現しながら、高い分類精度を維持しており、クラウドからエッジデバイスまで、幅広い環境での実用的な導入が可能となっています。EfficientNetの特徴について説明します。
画像分類に特化
EfficientNetと代表的な比較対象であるResNet-50と比べると、EfficientNet-B4は同程度の計算量でありながら、ImageNetデータセットにおける分類精度(Top-1)を76.3%から82.6%へと6.3%向上させています。
さらに、高精度モデルであるEfficientNet-B7は、GPipeと同等の精度(Top-1: 84.4%、Top-5: 97.1%)を達成しながら、パラメータ数を557Mから66Mへと大幅に削減し、CPU推論速度を6.1倍向上させています。
EfficientNetの中核となる構成要素は、MBConvと呼ばれる最適化されたブロック構造です。MBConvは、以下の要素を組み合わせています。
- Inverted Residual Block:チャネル数を一度拡大してから縮小する「ボトルネック」構造を逆転させた設計
- Squeeze-and-Excitation (SE) モジュール:チャネル間の相互依存関係を学習し、重要な特徴を強調
- Depthwise Separable Convolution:通常の畳み込み演算を深さ方向の畳み込みとポイントワイズ畳み込みに分解し、パラメータ数と計算量を削減
これらの要素を組み合わせることで、計算コストを抑えながら高い表現力を実現しています。
画像認識技術は急速に進化しており、様々なモデルやサービスが登場しています。以下に、代表的な画像認識モデルとサービスを紹介します。
- U-Net:医用画像のセグメンテーションに特化したCNNアーキテクチャで、エンコーダ-デコーダ構造とスキップ接続が特徴的です。
- ResNet:深層ネットワークの学習を可能にしたモデルで、残差接続により勾配消失問題を解決しました。
- Vision Transformer:画像認識にTransformerを利用したモデル。自然言語処理で成功を収めたTransformerアーキテクチャを画像認識タスクに適用
- CLIP:画像と自然言語を組み合わせて学習する多モーダルモデルで、柔軟な画像認識タスクに対応できます。
- Amazon Rekognition:AWSが提供する画像・動画分析サービスで、物体検出や顔認識などの機能を簡単に利用できます。
- Segment Anything Model (SAM):Meta AIが開発した汎用的なセグメンテーションモデル。画像エンコーダはVision Transformer (ViT) をベースとしたアーキテクチャを採用。
転移学習における優位性
EfficientNetは転移学習においても優れた性能を示しています。
EfficientNetは、ImageNetなどの大規模データセットで事前学習されており、汎用性の高い特徴抽出器として機能するからです。また、EfficientNetファミリー(B0〜B7)から計算リソースに応じて適切なモデルを選択できます。これにより、様々な環境での転移学習が可能になります。
これにより、医療画像診断や製品検査など、専門的な画像分類タスクへの応用が容易になりました。特に、計算リソースが限られた環境でも高い性能を発揮できるため、エッジデバイスやモバイル機器での実装に適しています。
モバイル・エッジデバイスでの動作特性
モバイルデバイスやエッジコンピューティング環境において、EfficientNetは特に優れた性能を発揮します。特にB0やB1などの軽量モデルは、限られた計算リソースでも効率的に動作し、リアルタイムの画像認識や拡張現実などのアプリケーションに適しています。
さらに、Google EdgeTPU向けに最適化されたEfficientNet-EdgeTPUモデルは、従来のEfficientNet-B1やResNet、Inceptionと比較して、より高い精度と処理速度を実現しています。これにより、ドローンやロボットなどの組み込みシステムでのオンボード処理が可能となり、バッテリー消費を抑えながら高度な画像認識機能を提供できます。
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EfficientNetの画像分類における活用シーン
EfficientNetは、その高い精度と効率的な処理能力により、様々な産業分野で実用的な成果を上げており、業務改善に貢献しています。
医療:レントゲンやMRI画像の診断支援
医療分野では、EfficientNetを活用した画像診断支援システムが実用化されています。
EfficientNetは少ないパラメータ数で高い精度を達成できるため、医療画像の複雑なパターンを効率的に学習・認識できます。これにより、X線、MRI、CTスキャンなどの医療画像から腫瘍や異常を高精度で検出することが可能です。
また、EfficientNetはB0からB7までの異なるサイズのモデルを提供しており、医療機関の計算リソースに応じて適切なモデルを選択できます。これにより、小規模な診療所から大規模病院まで、幅広い医療環境での導入が可能です。
医師の診断を補助するツールとして機能し、見落としのリスクを低減させながら、診断の効率化を実現しています。特に、大量の画像データを扱う放射線科では、スクリーニング作業の負担軽減に大きく貢献しています。
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製造業:生産ラインでの外観検査
製造業では、生産ラインにおける製品の外観検査や品質管理にEfficientNetが活用されています。
EfficientNetは軽量かつ高速なため、生産ラインでのリアルタイムな画像処理が可能です。また、EfficientNetは様々な種類の製品や不良パターンに対応できる汎用性の高いモデルです。これにより、製造ラインの変更や新製品の導入時にも柔軟に対応できます。
さらに、 製造業では不良品のサンプルが少ないケースがほとんどですが、EfficientNetは転移学習を活用することで、比較的少ないデータでも高い精度を達成できます。
これにより、製品の外観検査や品質管理をスムーズに行うことができます。
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セキュリティ:顔認識技術の基盤として活用
EfficientNetを活用した顔認証システムは、AIを活用した施設のセキュリティ管理において重要な役割を果たしています。
学校や商業施設では、ライブ映像と事前登録された顔情報を照合し、不審者の早期発見や入退室管理を実現しています。リアルタイムの顔認識技術を用いて、事前に登録された不審者や要注意人物を検知し、セキュリティスタッフに通知できます。
EfficientNetの高い特徴抽出能力により、写真や動画を使った不正アクセスを防ぐこともできます。そして、EfficientNetの効率的なモデル構造により、スマートフォンなどのリソースが限られたデバイスでも高精度な顔認証が可能になっています。
関連記事:「顔認証システムについて概要や導入する際の流れや注意点に関して解説」
農業:作物の健康管理
農業分野では、EfficientNetを用いた画像認識技術により、作物の健康状態をリアルタイムでモニタリングすることが可能になっています。
IoTセンサーやドローンで撮影された画像データをAIが解析し、病害虫の早期発見や生育状況の把握を行います。例えば、ジャガイモの葉の病気を99%異常の精度で識別できるモデルが開発されています。この技術により、必要最小限の農薬使用で効果的な病害虫対策が実現され、環境負荷の低減と収穫量の安定化を同時に達成しています。
また、EfficientNetは転移学習に適しているので、比較的少ない農業特有のデータセットでも高い性能を発揮できます。
関連記事:「農業にAIを導入することに対するメリット/デメリットや、具体的な活用事例」
感情分析:リアルタイムな表情認識
感情分析の分野では、EfficientNetを用いた表情認識システムが実用化されており、特にEfficientNetV2が注目されています。EfficientNetV2を基盤とした最新の感情認識モデルは、8つの基本感情(怒り、軽蔑、嫌悪、恐れ、喜び、悲しみ、驚き、無表情)を高精度で検出できます。
特に、モバイルデバイスでのリアルタイム感情分析において、EfficientNetは処理速度と精度のバランスに優れた性能を発揮しています。この技術は、接客トレーニングやユーザー体験の向上、メンタルヘルスケアなど、幅広い分野で活用されています。
関連記事:「感情認識AIの概要を解説し、分類されたAIの種類や活用事例」
まとめ
EfficientNetは、Googleが開発した革新的な画像分類モデルで、従来モデルの8分の1という少ないパラメータ数でありながら84.4%という高精度を実現します。医療画像診断、製造ラインでの品質管理、小売業での在庫管理など、幅広い産業分野で実用的な成果を上げており、特に計算リソースが限られた環境でも高いパフォーマンスを発揮します。
ただし、実際の導入に際しては、業務プロセスの分析や適切なモデル選定など、専門的な知見が必要となります。特に、既存システムとの統合や運用体制の構築については、経験豊富なAI開発ベンダーに相談することをお勧めします。
導入をご検討の際は、業界特性を理解した専門家との協議を通じて、最適なソリューションを見出していくことが重要です。
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EfficientNetについてよくある質問まとめ
- EfficientNetの導入にはどの程度の計算リソースが必要ですか?
EfficientNetは、モデルサイズに応じてB0からB7まで選択可能で、小規模なB0モデルは5.3Mという少ないパラメータ数で77.1%の高精度を実現します。エッジデバイスやモバイル機器でも十分な性能を発揮できるため、限られた計算リソースでも効率的に運用できます。
- どのような業界での活用実績がありますか?
医療分野でのX線・MRI画像診断支援、製造業での品質管理、小売業での在庫管理システム、農業での作物健康管理など、幅広い業界で実績があります。
転移学習の性能が高いため、既存システムのデータを活用した移行が可能です。ただし、データの前処理や最適なモデル選定には専門的な知見が必要となるため、経験豊富なAI開発ベンダーとの協議をお勧めします。
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