Embedding(埋め込み表現)とは?LLM・RAGでの必要性・活用事例6選・実装手順を徹底解説!
最終更新日:2024年09月19日
ChatGPTに代表されるLLM(大規模言語モデル)が広く普及したことで、自然言語処理(NLP)の技術が注目されています。
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その中でも、自然言語処理やLLMの中で特に注目を集めているのが「Embedding(埋め込み表現)」と呼ばれる技術です。言葉や画像、音声をコンピュータが理解できる形に変換するEmbeddingが、RAGによるLLMの拡張活用や、検索エンジンの精度向上などに活用されており、今後AIを導入したり開発したりする上で、Embeddingは避けては通れない技術と言えます。
この記事では、Embedding(埋め込み表現)の概要や必要性、活用事例、他のベクトル化手法との違い、実装手順を解説します。Embeddingがどんな仕組みでどんな技術なのかをまとめた内容となっているため、Embeddingを全く知らない方でも理解して頂けるでしょう。
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目次
Embedding(埋め込み表現)とは?
Embedding(エンベディング:埋め込み表現)とは、言語データや画像データ、音声データなどをコンピュータが理解しやすい数値形式に変換する手法です。具体的には、データを数値のベクトルに変換するベクトル化手法の一つを指します。自然言語処理や機械学習の分野において、重要な技術とされています。
例えば、「おはようございます」をベクトル表現では[-0.024, 0.039, 0.091, …, 0.034, -0.059, 0.027]と表し、「こんばんは」を[0.012, -0.042, 0.067, …, -0.045, 0.056, -0.033]のように表現する形です。
このように、Embeddingでベクトル化されたデータは次元空間で表現され、データ間の関係性や類似性を分析するために使用されます。EmbeddingはLLMなどの自然言語処理(NLP)の分野で広く利用されており、単語やフレーズを低次元のベクトルに変換することで、文脈や意味を正確に捉えることが可能です。
Embeddingの利点は、データの抽象的な意味を捉えることで、コンピュータが単なる文字列としてではなく、意味のある情報としてデータを扱えるようになることです。そして類似した意味を持つ単語はEmbeddingによって近接した位置に配置されるため、単語間の意味的な関連性を簡単に計算できます。
結果として、検索エンジンやチャットボットといった多様なアプリケーションで正確な処理を実現することができるようになります。
Embeddingを行う必要性
Embeddingは以下の理由で重要です。
- 意味的関連性の抽出
- 次元削減
Embeddingが自然言語処理・LLMや機械学習で必要とされている理由は、データのベクトル化によって情報を効率的に処理できる点にあります。ベクトル化されたデータはコンピュータが理解しやすくなり、さまざまなアルゴリズムを適用できるようになります。特に、テキストや音声、画像といった非構造データの変換においてEmbeddingは必要です。
自然言語処理の分野では、テキストデータをEmbeddingにより数値ベクトルとして表現することで、機械学習モデルが文脈や意味を捉えやすくなります。また、音声や画像も低次元のベクトルに集約することが可能で、モデルの学習や推論を高速化できます。
また、Embeddingを用いることで次元削減が可能となり、データ処理の効率化も期待できます。高次元データは処理が複雑で計算コストが高くなる傾向にありますが、Embeddingによって低次元に圧縮されることで、少ない計算資源でデータを分析できます。
次元削減によって、データの本質的な情報を損なわないまま、冗長な情報を削ぎ落とす効率的なデータ処理が可能で、こうした非構造データの変換や次元削減を達成するために、Embeddingは必要な技術とされています。
Embeddingの種類
種類 | 代表的なモデル | 特徴 |
---|---|---|
単語Embedding | Word2Vec GloVe ELMo FastText | 意味的に関連する単語同士を空間的に近い位置に配置します。 |
文章Embedding | Doc2Vec Universal Sentence Encoder BERT(Google) text-embedding-3(OpenAI) Embeddings(Cohere) | 文全体や段落、ドキュメントを表現し、文脈を考慮した意味的な情報を保持します。 |
画像Embedding | VGG ResNet Inception EfficientNet | 画像の視覚的特徴とセマンティック情報をキャプチャします。 画像の類似性分析、画像分類、オブジェクト検出に使われます。 |
音声Embedding | LSTM GRU | 音声データの関連機能と特性をキャプチャします 音声認識、音声分類、音楽分析に活用されます |
テキストEmbeddingが最も一般的な形式で、単語や文章を数値ベクトルに変換します。これにより、コンピュータが言語データを処理しやすくなります。特に自然言語処理(NLP)で広く使用されます。
関連性を計算するコサイン類似度とは
Embeddingで表現されたベクトルにコサイン類似度を適用することで、類似した意味を持つテキストや画像がどれほど近い位置にあるかを測定できます。コサイン類似度とは、ベクトル化されたデータの間で、その関連性や類似性を計算するために使用される手法です。
コサイン類似度では、2つのベクトルがなす角度が小さければ小さいほど、つまり値が1に近づくほど、2つのベクトルが似ていると判断されます。逆に、角度が90度に近づきコサイン値が0に近づくと、2つのベクトル間にはほとんど関連性がないと見なされます。
この計算はベクトルの大きさに影響されないため、文書や単語の頻度に依存せず純粋な方向性の類似性を測定できるのが特徴です。
Embeddingで表現されたベクトルにコサイン類似度を適用することで、類似した意味を持つテキストや画像がどれほど近い位置にあるかを測定できます。意味的に近い単語はEmbeddingによって近い位置にベクトル化され、そのコサイン類似度も高くなります。検索エンジンやテキストマイニングにおいて、意味的に関連する情報を効果的に取得することが可能です。
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Embeddingと他のベクトル化手法との違い
Embedding(埋め込み表現)は他のベクトル化と比較して、特定の目的に応じた高度な表現力を持つ点が特徴です。ここでは、一般的なベクトル化手法として知られるワンホットエンコーディング、TF-IDF(Term Frequency-Inverse Document Frequency)と比較します。
ワンホットエンコーディング
ワンホットエンコーディングとは、ダミー変数を用いてベクトル化する表現方法です。このベクトル化は1か0のフラグを作成するシンプルな手法で、特定の次元に該当するかどうかをカテゴライズします。簡潔な仕組みですが、単語間の意味的な関連性を捉えることができず、データのスパース性(疎性)も問題になります。
TF-IDF
TF-IDF(Term Frequency-Inverse Document Frequency)とは、単語の出現頻度と、その単語が文書全体でどの程度特異であるかを基に重み付けされたベクトルを生成する手法です。TF-IDFは文書の特徴を強調するのに役立ちますが、単語の意味や文脈を考慮しないケースがあるため、同義語や多義語の理解に限界があります。
上記2つの手法に対してEmbeddingの主な特徴は以下の通りです。
- 意味的関連性の保持
- 高次元のデータを低次元のベクトル空間に変換することで計算効率を向上
- 単語や文の文脈を考慮してベクトル化
- テキストだけでなく、画像や音声などの様々なタイプのデータに適用
- AIモデルとの親和性
Embeddingは他のベクトル化手法に比べて、データの意味的な関連性を深く理解できるベクトル化手法です。テキストデータを数値ベクトルに変換できるという特徴は、自然言語処理において重要な技術となっています。
Embeddingの技術的活用例6選
Embeddingはさまざまな分野で応用されています。ここでは、代表的な活用例として以下を紹介します。
LLM・RAGの中核機能
EmbeddingはLLMにおけるRAGシステムにおいて、LLMが適切なコンテキストを得るための重要な橋渡し役を果たしています。RAGは、情報検索と生成を組み合わせた手法であり、適切なEmbeddingモデルを選択し、効果的に利用することで、RAGシステムの性能を大きく向上させることができます。
LLMにおいて、Embeddingを用いて文書やクエリをベクトル化してベクトル間の類似度を計算することで、関連性の高い情報を検索することができるようになります。これにより、LLM内の大規模なデータセットから必要な情報を効率的に抽出できます。
また、RAGでは検索された情報とユーザーのクエリ(プロンプト)を組み合わせて、 適切な回答や文章を生成します。この際、Embeddingによって得られた文脈情報が活用されます。
効率的なEmbeddingモデルを選択することで、RAGシステム全体のパフォーマンスを向上させることができます。
関連記事:「RAG(検索拡張生成)とは?LLMでの活用方法・事例・メリット・導入の注意点まで徹底解説!」
テキストの生成
テキスト生成、特に自然言語処理の分野では、Embeddingを使用することでモデルが文脈を理解し、自然的で一貫性のある文章を生成できるようになります。Embeddingによって変換されたベクトルが文脈や意味の情報を保持するため、適切な単語を選択してテキストを生成することが可能です。
言語モデルにEmbeddingを利用することで、単語が持つ意味情報や文脈が考慮され、生成された文章がより自然で人間らしいものになります。
AIモデルのトレーニング
Embeddingは、AIモデルのトレーニングにおいて重要な役割を果たします。特に自然言語処理や画像認識の分野では、Embeddingを使用することでデータの特徴を効果的に抽出し、モデルの精度を向上させることが可能です。
自然言語処理を得意とする生成AIを開発する場合、Embeddingは不可欠な技術です。専門的な領域においても、Embeddingは幅広く活用されています。
AI検索の精度向上
Embeddingは、ベクトル検索を実現し、AI検索システムの精度向上にも貢献します。検索エンジンがユーザーのクエリに対して関連性の高い結果を返すためには、クエリと検索対象のデータに意味的な関連性があるかを正確に理解する必要があります。
Embeddingは単語や文章などのデータをベクトル化し、それらの意味的な近さを定量化します。これにより、ユーザーが入力したクエリと類似の意味を持つ文書や回答を高い精度で検索することが可能です。
従来のキーワードベースの検索では難しかった同義語や異なる言い回しの理解も、Embeddingを活用することで克服され、より直感的で正確な検索結果が得られます。
検索システムの精度向上は、エンタープライズサーチの分野でも活用されています。
また、画像の視覚的特徴をベクトル化し、類似画像検索や画像分類に応用されます。例えば、商品検索アプリでは、商品の画像情報をベクトル化して検索精度を向上させることができます。
音声認識の精度向上
音声データのEmbeddingは、音声認識や音声分類に利用されます。音声データを数値ベクトルに変換することで、音声の特性を捉えやすくし、認識精度を向上させます。
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多言語翻訳
Embeddingでは、各言語の単語やフレーズを適切に対応させるプロセスをサポートし多言語の翻訳も可能です。Embeddingを利用することで、異なる言語の単語を共通のベクトル空間にマッピングし、意味の類似性や文脈を理解できます。
例えば、英語の「Cat」という単語と、日本語の「猫」という単語をEmbeddingでベクトル化すると、それぞれのベクトルが近い位置に配置されるため、意味的な配置関係が明確になります。このようにして、異なる言語間で意味が一致する単語やフレーズを効果的に結びつけることができるため、多言語を翻訳できるのです。
さらに、Embeddingによって多言語モデルのトレーニングも効率的に行うことが可能で、1つのモデルで複数の言語に対応した翻訳を提供できます。複数の言語間で一貫性のある翻訳が実現され、多言語環境におけるコミュニケーションがより円滑になります。
Embeddingモデルの実装方法7ステップ
Embeddingモデルを用いたシステムの実装方法について、以下のステップで説明します。
- データの準備
Embeddingを作成するためのデータを準備します。例えば、特定のトピックに関する記事を取得し、データフレームに変換します。
この際、不要なセクション(脚注や出典など)は除外します。 - トークン数の計測
データをEmbeddingに変換する前に、テキストのトークン数を計測します。これは、モデルが処理できる最大トークン数を超えないようにするためです。 - Embeddingの作成
OpenAIのAPIなどを使用して、テキストデータからEmbeddingを作成します。モデルを指定して、テキストデータをトークン化し、Embeddingを生成します。 - ベクトルデータベースへの保存
作成したEmbeddingは、Chromaなどのベクトルデータベースに保存します。これにより、後で類似度検索などに利用できます。 - 類似度検索の実行
保存したEmbeddingを用いて、ユーザーからのクエリに対して類似度検索を行います。これにより、関連性の高い文書や情報を効率的に取得できます。
必要に応じて、モデルを特定のタスクに対してファインチューニングします。 - 評価とチューニング
生成したEmbeddingの品質を評価し、必要に応じてハイパーパラメータを調整します。評価には、類似度計算やクラスタリングなどの手法が用いられます。 - デプロイメント
最終的に、トレーニング済みのモデルをデプロイし、実際のアプリケーションで使用します。デプロイには、クラウドサービスやオンプレミスのサーバーを利用することが一般的です。
関連記事:「AI開発の基本からAIシステム構築の手順や流れを徹底解説!失敗しないための注意点も紹介」
Embeddingについてよくある質問まとめ
- Embeddingとは何ですか?
Embedding(埋め込み表現)とは、言語データや画像データをコンピュータが理解しやすい形式に変換する技術です。特に自然言語処理におけるLLM・RAGや機械学習の分野において、重要な概念とされています。
- Embedding技術はどのように活用されていますか?
Embeddingは、以下のような技術的活用がされています。
- LLM・RAGの性能向上
- テキストの生成
- 機械学習モデルのトレーニング
- AI検索の精度向上
- 多言語翻訳
- Embeddingの実装は難しいですか?初心者でも取り組めますか?
Embeddingの実装難易度は、使用するツールやライブラリによって異なります。初心者の方でも、TensorFlowやPyTorchなどの機械学習ライブラリを使用すれば、比較的簡単にEmbeddingを実装できます。
また、OpenAIのAPIなど、事前学習済みのモデルを利用することで、さらにハードルを下げることができます。ただし、効果的なEmbeddingを作成するには、データの前処理やモデルのチューニングなど、一定の知識と経験が必要です。
まずは簡単なテキスト分類タスクから始め、徐々に複雑なタスクに挑戦していくことをおすすめします。オンラインのチュートリアルや実践的な課題に取り組むことで、着実にスキルを向上させることができるでしょう。
まとめ
Embeddingは自然言語処理、特にLLMとRAGにおいて中核的概念です。言語の壁を越え、画像や音声を理解し、より賢明な検索を可能にする可能性は注目です。本記事で学んだ知識を活かし、あなたのプロジェクトやビジネスにEmbeddingを取り入れてみてはいかがでしょうか。
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