KPI設計事例業界別4選!設定ポイントは?AIによるインサイト分析でどう変わる?
最終更新日:2024年09月23日
大企業、中小企業を問わず、KPI(業績評価指標)を部署ごと、担当者ごとに細かく設定して生産性向上や効率的な事業拡大を目指す企業が少なくありません。しかし、設定しているKPIが本当に妥当なのか、KPIを達成したときにどれくらい効果があるのか把握したうえで設定している企業はまだ少ないようです。
そこでこの記事では、失敗しないためのKPI設定のポイント、業界別のKPI実例を紹介していきます。さらに、AIを活用して指標を設定する「インサイト分析」についても説明していきます。AIを活用することで「こんな指標があったのか!」という新たな視点から指標を設定することが可能です。
ぜひ、最後まで読んでKPIの理解を深めて、KPI見直しや業績アップにつなげてください。
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KPIとは?
KPIとはKey Performance Indicatorの略で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。最終的に達成したい目標に至るまでのプロセスにおいて、達成度合いを測る定量的な指標を表します。最終目標を達成するための「中間目標」とも言えるでしょう。
なぜKPIが必要?
個人や組織が定めた目標を達成するためには、そのプロセスの成否が非常に重要であるため、KPIという指標が重要視されています。KPIを設定することで、目標を達成するための段階や道筋を可視化できます。それで、今何を行うべきなのかがはっきりするため、目標達成に繋がるのです。
また、目標達成までが可視化されることで、その過程を評価できます。マネージメント側としても、スタッフを適正かつ公平に評価しやすくなります。社内での公正な評価によって、社員のモチベーションアップ向上につながるでしょう。
KPIの業界別具体例
適切なKPIを設定するためには、各業界の仕組み、商慣行を正しく把握する必要があります。ここでは、以下の業界で典型的なKPI実例について説明します。
- SaaS業界
- 製造業
- 物流業界
- システム開発業界
それぞれの業界について説明します。
SaaS業界のKPI
SaaS業界はKPIが重視されている業界のひとつで「SaaS KPI」と呼ばれ、広く浸透しています。SaaSはクラウドサービスとして提供されるソフトウェアなので、顧客の継続利用を前提としたビジネスモデルが特徴です。
従来の買い切り型のビジネスモデルでは、過去の売上実績から将来の売上を予測することが困難でした。一方、SaaSのビジネスモデルでは、顧客の継続率や解約率などから将来の売上の予測が可能となります。
そのためSaaS業界では、将来予測の精度を高めるために、KPIありきのビジネスとなっています。
SaaS KPIは「成長性」「効率性」「顧客継続性」の3つを重視しており、それぞれの代表的なKPI例は以下の通りです。
大目標 | KPI | 概要 |
---|---|---|
成長性 | MRR(月間定額収益) | 毎月繰り返し得られる収益(売上) |
MRR成長率 | 一定期間の間にMRRがどれだけ成長しているのか (2ヶ月目の収益 – 1ヶ月目の収益) / 1ヶ月目の収益 × 100 | |
ARR(年間定額収益) | 毎年決まって得られる収益(売上) | |
CMRR | 年間契約などの長期の契約により将来的に確約されているMRR | |
効率性 | LTV(顧客生涯価値) | 顧客との関係期間中に顧客が企業にもたらす総収益 |
CAC( 顧客獲得単価) | 新規顧客獲得にかかるコスト マーケティングや営業活動にかかる総コスト/ 獲得した新規顧客数 | |
顧客継続性 | チャーンレート (解約率) | 一定期間中に解約したユーザーの割合 |
ネットリテンションレート(売上継続率) | 1か月間に渡って顧客がサブスクリプションを継続している割合 | |
平均継続月数 | ユーザの延べ継続期間 / ユーザ数 または、1 / 退会率 |
最近では、決算資料としてKPIを開示するSaaS企業が増えています。自社のKPIと大手Saas企業を比較して、KPIの目標設定に役立てることもできます。
製造業のKPI
製造業では、生産性向上や業績改善のために、KPIを利用します。KPIで数値を見える化することでといったことがわかるようになるでしょう。
- 計画通りの生産ができているか?
- 機械設備の稼働効率は問題ないか?
- 品質を維持できているか?
自社の作業や業績を分析・把握し改善につなげていくことができるようになります。
製造業として把握していくべきKPIは、国際基準でも定められています。具体的な指標例は以下の通りです。
大目標 | KPI | 概要 |
---|---|---|
効率性 | 労働生産性 | 労働者が1時間あたりに生産する商品やサービスの数量 |
負荷度 | 労働者が受ける仕事上の心理的な負担やストレスの強さ 質問紙アンケートや面接などの質問形式、心拍数や血圧などの生理的指標を用いて測定 | |
生産量 | 指定された期間内に生産された商品やサービスの数量 | |
負荷効率 | 仕事上のストレスや負担が少ないうえで高い生産量を出せるかどうかを示す指標 単位時間あたりの生産量÷単位時間あたりの負荷度 | |
利用効率 | 生産物やサービスを生産するために使用された機械や設備の使用時間の割合 | |
設備総合効率 | 生産に必要な機能を持った設備や機械がどの程度使用され、どの程度の効率で使用されているかを示す指標 | |
正味設備効率 | 設備や機械が使用される時間に対して実際に生産される商品の数量を比較して算出 | |
設備有効性 | 設備や機械が生産に使用される時間の割合や、生産に使用される時間が適切か示す指標 利用効率、生産量、設備故障などを組み合わせることで算出 | |
工程効率 | 生産工程や業務プロセスが最大限効率的に使用されているか示す指標 生産量、負荷度、利用効率などを組み合わせることで算出 | |
品質 | 直行率 | 製造される全製品のうち一発で良品になる割合 |
工場稼働率 | 工場の生産能力に対して実際にどれくらい生産できたのかを表す指標 実際の生産数 / 生産能力 | |
不良率 | 欠陥のあったサンプル品の割合 欠陥品数 / ユニット | |
手直し率 | (欠陥品数+手直し品数)/ ユニット | |
稼働率 | 実際に稼働した時間を稼働すべき時間で割った指標 | |
能力 | 工程能力指数 | 各製造工程の工程能力 規格幅の中で生じている品質のばらつきの幅 |
在庫管理 | 在庫回転率 | 1年間に何回在庫が入れ替わったのかを表す数値 |
良品率 | 生産数に対する良品数の割合 | |
製品廃棄率 | 廃棄金額 / 売上高×100 | |
保全 | 設備負荷率 | 施設が使用できる電力の最大容量(契約電力)のうち実際に使用した割合 |
平均故障間隔 | 機械や情報システムなどにおける信頼性を表す指標 稼働していた時間の合計 / 故障回数 |
QCD(品質・コスト・納期)や製造に関わるヒト・モノ・カネを指標としたKPIを設定することで、生産性を高めることやより正確な利益の管理ができます。
物流業界のKPI
物流業界にも、SaaS業界のように「物流KPI」という独自のKPIがあります。近年、物流業界は人手不足に陥り、業務の効率化が必要不可欠になっており、そのためにKPIが注目されています。
物流KPIは、主に「コスト・生産性」「品質・サービス」「物流・配送条件」の3つの柱で成り立っています。
具体的な指標例は以下の通りです。
大目標 | KPI | 概要 |
---|---|---|
コスト・生産性 | 保管効率(充填率) | どれだけスペースを有効活用しているか示す指標 床面積当たりの保管量 |
人時生産性 | 作業者1人1時間あたりの作業量 作業量 / 作業時間数 | |
実車率 | 全走行距離に対し実際に貨物を載せた距離の割合 | |
積載率 | トラックの最大積載重量に対して実際に積載した貨物重量の割合 | |
品質・サービス | 棚卸差異 | 棚卸での帳簿上の在庫と実在庫の数の差 |
誤出荷率 | 誤出荷個数 / 出荷個数×100万 | |
クレーム発生率 | 年間クレーム発生件数 / 年間来店客数 × 100 | |
物流・配送条件 | 出荷ロット | 出荷数量の最小単位 |
納品先待機時間 | 荷主(荷物の持ち主、送り主)や物流施設の都合によってドライバーが待機している時間 |
参考:「(概要版)物流事業者におけるKPI導入の手引き」(国土交通省)
システム開発のKPI
システム開発業界では、製品の品質と納期の遵守が重要視されており、それらを管理するためにKPIが利用されています。品質とスケジュールで目標を設定し、達成度をチェックすることでスケジュールの遵守と品質の担保が可能になります。
代表的な指標例は以下の通りです。
- テスト終了件数
- エラー件数
- 標準化率
テスト終了件数を指標とすることで進捗状況を都度確認できます。そして、エラー件数や標準化率といった指標で、品質を確認しながら作業を進めることが可能です。
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KPIを設定する手順
KPIは最終目標であるKGIを達成するために設定する必要があります。①KGI(最終目標)→②KFS(重要要因)→③KPIと逆算して設定すると良いでしょう。具体的な設定手順を紹介します。
①KGIを設定する
まずはKGIを設定します。KGIは「Key Goal Indicator」の略で、日本語では「重要目標達成指標」を意味します。「売上目標」や「営業利益目標」といった組織の最終的な目標を定量的に表す指標です。KGIが決まらなければ中間目標であるKPIを立てることができません。
KGIは基本的に数字に置き換えられる目標を選ぶことが大切です。数値として明確な指標とすることで、逆算するKPIも明確になります。
②KFSを洗い出す
KFSとは「Key Factor for Success」の略で、重要成功要因を意味します。重要成功要因とは、最終目標を達成するための必要な要素のことです。KGIが売上目標であれば、KFSは「将来顧客になる可能性のある見込み顧客を増やす」といった要素があります。KGIやKPIとは異なり、多くの場合KFSは定性的です。
KFSを洗い出すことで、KGIを達成するための明確な施策を講じることができます。
③KPIを設定する
洗い出した定性的なKFSを、定量的な指標として設定するのがKPIです。
KPIを多く設定し過ぎると管理コストが膨大になり、逆に作業効率が落ちます。ですから、本当に重要なプロセスだけをKPIに設定することが大切です。
KPI設定で失敗しないための4ポイント
KPIを設定するにあたり、以下の重要なポイントがあります。
- 設定する目標は明確であるか(明確性)
- 設定する目標が数値として測定できるか(測定性)
- 設定する目標が達成できるか(達成可能性)
- 設定する目標はKGIと繋がっているか(関連性)
それぞれのポイントについて説明します。
設定する目標は明確であるか(明確性)
KPIで設定する目標は明確であることが絶対条件です。組織や部署の多くの人で同じ目標を共有し、達成を目指すことになります。設定した目標が広すぎたり曖昧すぎたりする場合、人によって解釈がバラバラになり、共通の認識を持つことが困難になるでしょう。
KPIで設定する目標を明らかで具体的なものにすることで、すべての人が現状を正確に把握できるようになり、目標達成のための行動を明確にできます。
設定する目標が数値として測定できるか(測定性)
KPIの目的はプロセスを定量的に数値化することなので、設定する目標は数値として測定可能であることが重要です。測定できなければ、目標に対する進捗状況がわからず、順調に実績をあげられているかどうか、軌道修正が必要かどうか判断できません。
目標を「件数」や「率」「回数」などの数値化しやすい指標に設定することで、パフォーマンスを評価でき目標達成に近づきます。
設定する目標が達成できるか(達成可能性)
KPIに設定する目標は達成可能であるかどうかも重要です。目標の達成は、持続可能でなければならず、非現実的な目標や到達不可能な目標であれば計画として成り立ちません。
あまりにも難易度が高すぎる目標は、目標達成のためのモチベーションを低下させることにもつながります。しかし、簡単すぎる目標だと社員の成長を促すことができません。「頑張れば達成できそう」と感じられる難易度の目標に設定することが大切です。
設定する目標はKGIと繋がっているか(関連性)
設定するKPIは最終目標であるKGIにつながっている必要があります。KPIを設定するためには、まずKGIを設定します。つまりKPIはKGIを達成するためのものでなければなりません。KGIとの関連性が低いKPIを達成したところで、業績が上がるどころか管理コストがかかるだけマイナスになる可能性もあります。
KPIを設定する際は、設定した全てのKPIとKGIの因果関係が明確であるかをチェックしましょう。
AIを用いたKPIインサイト分析とは?
AIをKPI分析に活用してインサイト分析することで、見逃していたり、想定していなかったような新たなKPIを設定することができます。インサイトは「洞察・発見・直感」のような意味を持ちます。マーケティング分野では、「消費者自身も気づいていない」購買行動の根拠や動機のこととして説明されています。
大量のデータをAIに読み込ませて機械学習させることで、人力では困難な高度な解析モデルを構築し、事業成長に影響力の高い因子=KPIを見つけることができます。社内にある大量のデータから学習をして高度な解析モデルを構築するもので、人では把握するには困難で時間のかかる大量のデータの関係性を素早く明確にすることが可能です。
KPIを設定したものの効果が実感できていない、とりあえず設定したけど実際に活かせていないといった方にAIの活用はおすすめです。
なぜ人力によるKPI設定には限界があるか?
通常KPIを設定する際は、経営者やベテラン管理者の経験から「このKGIを達成するためには、こういったKPIが有効だろう」という予測のもとに設定されます。実際の過去の経験をもとにするため、以下のようなデメリットがあります。
- 環境の変化が早い昨今では対応できていない
- 客観性に欠けるため有効かどうかの判断が難しい
- 固定観念から本質的な部分が不明瞭なままKPI分析を行なうことになる
- 社内の大量のデータを活かすことができない
社内に眠るビッグデータを分析するのであれば、AIは不可欠でしょう。人力で行うことによって、データの見落としや、恣意性が入ってしまう可能性も高くなるためです。
AIによるビッグデータ分析の仕組み、注意点についてはこちらの記事で解説していますので併せてご覧ください。
「事業を伸ばすために有効な本質的なKPIが設定できない」といった課題がある場合は、AIによるデータ解析を行うことで価値の高いインサイトを見つけられる可能性があります。
KPIについてよくある質問まとめ
- KPIを設定する際の主な手順はなんですか?
手順は以下の通りです。
- KGI(最終目標)の設定
- KFS(重要成功要因)の洗い出し
- KPIの設定
- 業界別のKPI例にはどのようなものがありますか?
業界別KPI例は以下の通りです。
- SaaS業界: MRR(月間定額収益)、チャーンレート、LTV(顧客生涯価値)
- 製造業: 労働生産性、直行率、設備総合効率、在庫回転率
- 物流業界: 保管効率、人時生産性、誤出荷率、納品先待機時間
- システム開発: テスト終了件数、エラー件数、標準化率
- AIを活用したKPIインサイト分析のメリットは何ですか?
AIを活用したKPIインサイト分析のメリットは以下の通りです。
- 大量のデータから新たなKPIを発見可能
- 人力では困難な高度な解析モデルの構築
- 環境変化への迅速な対応
- 客観的なKPI設定が可能
- 固定観念にとらわれない本質的なKPIの発見
- 社内の眠っているビッグデータの活用
まとめ
生産性向上や効率的に事業目標達成のためには、KPI分析は有効な手段ですが、正しい手順とポイントをおさえておかなければ、設定したものの十分な効果が得られないこともしばしばです。
業界の特徴などから独自のKPIが有効な場合もありますので、まずは自社の関わる業界の典型的KPIについて調査する必要があるでしょう。また、最終目標であるKGIをKPIに落とし込む際には、目標の明確性や測定性、達成可能性、KGIとの関連性といったポイントを踏まえなければなりません。
そもそも妥当なKPIなのか分析するためには、AIを用いたインサイト分析が効果的です。AIを活用することで、大量のデータを解析して、客観的で目標に沿った適切なKPIを設定することや、これまでの経験や固定観念からは得られないようなKPIを発見できるかもしれません。
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