AIによる真贋判定とは?効果的な画像認識技術やメリット、注意点、導入実例を徹底解説
最終更新日:2025年06月26日

- AIによる真贋判定は熟練者の経験に頼っていた鑑定業務を「標準化」し、客観的な基準で一貫した判断を可能に
- 中核となる技術は「画像認識」と「異常検知」で、製品を傷つけることなく微細な違いを検出し高精度な判定を実現
- 導入成功には、良質な学習データの確保と継続的なモデル更新が不可欠であり、AIの判断を補助する人間による確認体制も重要
ブランド品や工業製品、さらには証明書など真贋判定が求められる場面は多岐にわたります。従来は熟練者の経験に頼っていた真贋判定業務に、近年では画像認識や異常検知といったAI技術を活用する動きが加速しており、業務の効率化や判定精度の向上といったメリットが注目されています。
この記事では、真贋判定に有効なAI技術やメリット、導入時の注意点、実際の導入事例について解説します。AIで信頼性の高い判定を実現したいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
AI Marketでは
画像認識・解析に強いAI開発会社をご自分で選びたい場合はこちらで特集していますので併せてご覧ください。
目次
真贋判定とは?
真贋判定とは、対象となる製品や情報が本物であるか、それとも偽物・模造品であるかを見極める工程を指します。真贋判定の精度は、消費者の信頼確保や市場の健全性維持に直結するため重要性は年々高まっています。
従来の真贋判定は熟練の職人や専門鑑定士による目視・経験に頼るケースが多く、属人性が避けられない点が課題とされてきました。判定基準が明文化されていないことも多く、判断が一貫しないケースもあります。
こうした背景のもと、近年ではAI技術を用いた真贋判定システムの活用が進んでいます。AIによる判定は高精度かつ一貫性のある結果を導き出せるため、人的リソースに依存しない判定体制を実現することが可能です。
真贋判定が必要な分野
真贋判定は、製品やサービスの信頼性を担保するために幅広い業界で活用されています。主な分野としては、以下の通りです。
- ブランド品買取
- Eコマース・フリマ
- 美術品・骨とう品評価
- 貴金属鑑定
- 工業製品
- 医薬品・電子部品
- デジタルコンテンツ
特に需要が高いのが、ブランド品市場や美術品、ジュエリーなどの高額商品を取り扱う分野です。偽造品の流通が問題となっている現在、こうした分野では高度な真贋技術が欠かせません。
また、工業製品や電子部品などの製造業でも真贋判定のニーズは急速に拡大しています。自動車や航空機といった安全性が重要視される業界では、部品の真贋を見誤ることが重大事故につながるためです。
近年では、書類や証明書といった情報の真正性を検証するためにデジタル領域にも応用する動きが進んでいます。電子契約書やデジタル証明書の改ざん検知などにも導入され始めており、セキュリティ強化の観点でも注目されています。
なぜ今、AIによる真贋判定が求められるのか?
インターネットの普及とEC市場の拡大は、模倣品や偽造品の流通を容易にするという負の側面ももたらしました。高級ブランド品から電子部品、医薬品に至るまで、その被害は後を絶ちません。
模倣品の市場規模は世界で数千億ドルに達するとも言われ、企業の経済的損失だけでなく、ブランドイメージの低下や、消費者の安全を脅かす深刻な問題となっています。
また、近年では「ディープフェイク」に代表される、AIによって精巧に生成された偽の動画や音声が世論操作や詐欺に悪用される事例も急増しており、情報の真贋を見極めることの重要性がかつてなく高まっています。
こうした背景から、従来の専門家による目利きや物理的な鑑定手法だけでは対応が困難な課題を解決する切り札として、AIによる真贋判定技術に大きな期待が寄せられているのです。
▼累計1,000件以上の相談実績!お客様満足度96.8%!▼
真贋判定システムに効果的なAI技術
真贋判定システムにおいては、AIが大きな効果を発揮します。中でも実用性の高いのが、画像認識と異常検知の2つの技術です。
画像認識
画像認識では、対象物の形状や質感といった視覚情報をAIが解析して本物と偽物を自動で識別します。これにより、熟練者の経験に頼っていた目視検査をデジタル化し、一定の基準で一貫した判定が可能です。
製品のロゴ、縫製のパターン、素材の微細な質感、刻印のフォントといった膨大な数の特徴を学習します。人間の目では識別困難なレベルの微細な差異を捉え、高精度で真贋を判定します。
特に、ディープラーニングの一種であるCNN(畳み込みニューラルネットワーク)が広く活用されています。
撮影された画像を用いることで非接触・非破壊の検査を実現できるため、対象物を傷つけずに真贋を確認できます。さらに、カメラの設置と判定アルゴリズムの組み合わせにより、リアルタイムでの自動判定も可能です。
今後はスマートフォンを用いた現場での真贋判定への応用も期待されており、画像認識AIは真贋技術の中核を担う存在として重要性を増していくでしょう。
物体検出
物体検出は、画像の中から特定の物体(例:ブランドのロゴ、特定の部品)の位置を高速かつ正確に特定します。鑑定対象物のどの部分を重点的に見るべきかをAIが自動で判断し、判定プロセスの効率化と精度向上に貢献します。
異常検知
異常検知では、正常なデータやパターンをAIに学習させることで、それとは異なる挙動や特性を「異常」として自動的に識別できるようになります。これにより、本物の特徴から逸脱した偽物を効率的に検出することが可能です。
例えば、電子部品や精密機器の判定では、外観や寸法、素材のばらつきをAIが連続的に監視し、既知のパターンと照合することで異常を発見します。また、偽造防止加工が施されたパッケージや証明書の微細な違いにも対応可能であり、見逃しやすい異常を正確に補足できます。
異常検知は画像だけでなく、センサーやログデータと組み合わせることもでき非視覚的な情報に対しても有効です。
加えて、継続的に学習・更新が可能なため市場に流通する偽造品の進化にも対応しやすく、長期的な運用に適しています。
▼累計1,000件以上の相談実績!お客様満足度96.8%!▼
AIによる真贋判定を活用するメリット
AIを活用した真贋判定は、従来の人間による判定では難しかった精度や効率の向上を実現することが期待されています。以下では、AIの導入によって得られるメリットを解説します。
判定精度が向上する
AIを活用した真贋判定は学習データを基に膨大な特徴量を解析し、極めて高い再現性と正確性で判定を行います。これにより、判定精度を大幅に向上させることが可能です。
特に画像認識や異常検知の技術を組み合わせることで、人間の目では識別困難な微細な違いも検出できるようになります。例えば、以下の違いなどをAIは瞬時に解析し、客観的な基準に基づいて真贋を判断します。
- 偽造品の縫製のパターン
- 印字のドット配置のズレ
- 材質の反射特性の違い
AIは継続的な学習が可能であり、新たな偽造パターンが出現した場合でも、追加学習により精度の維持・向上が期待できます。
個人の感覚のばらつきを排除できる
真贋判定においては、鑑定士や検査員の経験や直感に頼っている現場が多いといえます。人間による判断は主観的な要素が入りやすく、担当者ごとの「ばらつき」が問題となることがあります。
そのため、経験年数や熟練度の違いが大きい現場では判断基準が統一されにくい傾向があるでしょう。
AIを活用することで、こうした個人差の影響を排除することが可能です。AIはあらかじめ学習させた大量のデータを基に判定を行うため、一定の基準で判定を実施できます。これにより、誰が操作しても同じ結果が得られる公平性と一貫性が保たれます。
例えば、複数拠点で同一の真贋判定を行う場合でも基準の統一が図れるため、品質管理の精度が格段に向上します。新人担当者でも熟練者と同様のレベルで判定を行えるようになることで、教育コストの削減や人的リスクの低減にもつながります。
非破壊・非接触での検査が可能
従来の真贋判定では、素材の一部を削る、分解して内部構造を確認するなど、製品に物理的な影響を与える検査が必要な場合がありました。しかし、画像認識AI技術を用いることで、対象物に直接触れないまま高精度な判定を行うことが可能です。
画像認識AIは、カメラやスキャナーで取得した外観データを解析するだけで微細な加工の違いや印字の精度、表面の質感の異常などを把握できます。これにより、商品の価値を損なうことなく鑑定や検査を行うことができ、リユース市場や高額商品を扱う分野での活用が進んでいます。
また、非接触での判定は衛生面でも有利であり、医療機器や食品関連製品など人の手を加えにくい対象であっても適応します。加えて、自動化されたライン上での検査にも適しており、生産効率を高めます。
このように、AIを用いることで製品の形状や材質を損なわずに、かつ高精度な真贋判定が実現可能です。品質保証と商品保全の両立が求められる現場において、非破壊・非接触検査は重要な手段となるでしょう。
関連記事:「非破壊検査とは?種類・メリット・5つのデメリット・AI活用事例」
属人化の解消と人材育成
熟練鑑定士の「匠の技」をAIに学習させることで、暗黙知になりがちなノウハウをデジタルデータとして蓄積・継承できます。これにより、専門家の退職による技術喪失のリスクを防ぎ、若手鑑定士の育成ツールとしても活用可能です。
真贋判定システムでAIを導入する際の注意点
真贋判定にAIを導入する際は、誤判定や学習データの確保、導入コストに注意が必要です。AI真贋判定の実用化には、適切に運用するための対策が求められます。
誤判定のリスクがある
AIは学習したデータに基づいて判定を行うため、学習データの対象外の特徴や予期せぬ入力に対しては誤った判断を下すリスクが懸念されます。偽造品の巧妙化が進む現代においては、限界を超えるケースに対処できない事例も少なくありません。
例えば、学習していない新型の偽造パターンが市場に登場した場合、AIは本物と誤認してしまう可能性があります。逆に、経年劣化や微細な仕様差がある正規品を偽物と誤判定するケースも想定されます。
AIはあくまで確率的な推論に基づいて動作しており、100%の確実性を保証するものではありません。そのため、重要な判断をAIのみに委ねるのではなく、人による最終確認や多段階の検査体制を併用することが推奨されます。
誤判定リスクを最小限に抑えるには、学習データの精度向上やAIモデルの継続的なチューニングが不可欠です。
学習データの質と量の確保
AIによる真贋判定の精度は、学習データの質と量に大きく左右されます。
AIは過去のデータをもとに特徴を学習し、判定の基準を形成していきます。そのため、学習データの限定や特定のパターンへの偏りがある場合、実運用において誤判定が生じるリスクが高まります。
特に真贋判定では、正規品だけでなく、多様な偽造品パターンを含んだデータを収集することが重要です。偽物に関しても、異なる偽造手法や複数の模倣レベルのデータが求められます。
データの収集・整備には時間とコストがかかりますが、この工程を怠ると、AIの性能を十分に引き出すことはできません。AI導入にあたっては、学習データの質と量を十分に確保する体制が不可欠です。
導入コストがかかる
AIを活用した真贋判定システムの導入には、一定のコストがかかります。AI真贋判定システムの構築から運用までには、以下の工程が必要です。
- ハードウェア・ソフトウェアの整備
- 学習データの収集・整理
- モデルの開発・検証
特に画像認識や異常検知などのAI技術を活用する場合、高性能なカメラやセンサー、処理用の計算機インフラを確保する必要があります。これに加え、AIモデルを運用するためのカスタマイズやインターフェース開発なども必要になるため、相応の初期費用が伴います。
また、AIは導入して終わりではなく、継続的な学習と更新が欠かせません。市場環境の変化に伴い偽造品の手法は高度化するため、常にモデルを最新の状態に保つ必要があり、運用体制や人材確保もコストとして発生します。
とはいえ、AIによる真贋判定は人的リソースの削減や業務の効率化、信頼性の向上といった面で高い効果をもたらします。そのため、導入前に目的やROIを明確にし、段階的な導入計画を立て、コストに見合った価値を得ることが重要です。
継続的なモデルの更新
偽造・模倣技術は日々進化しています。そのため、一度AIモデルを構築して終わりではありません。
新しい手口の模倣品が登場するたびにデータを追加学習させ、AIモデルを常に最新の状態にアップデートし続ける運用体制が不可欠です。
真贋判定にAIを導入した実例
AIによる真贋判定は、すでにさまざまな企業で実用化が進んでいます。
コメ兵:ブランド品のAI真贋判定

株式会社コメ兵は、リユース市場の信頼性向上を目的としてAIを活用した真贋判定システム「AI真贋」を開発し、2020年8月より導入を開始しました。このシステムは、年間160万点以上の商品データと熟練鑑定士の知見を組み合わせて構築されており、ブランド品を対象に約99%の精度で真贋判定を行います。
導入の背景には、偽造品の流通増加や個人間取引の拡大によるリスクの高まりがありました。コメ兵では、AIが真贋判定や型番特定を担うことでスタッフは顧客対応に注力できるようになり、サービス品質の向上にも寄与しています。
さらに、鑑定士の知識や経験をデジタル化し、継承する取り組みも進められています。これによって国内外での店舗展開や人材育成の効率化が期待されており、リユース市場全体の健全化の実現に向けた一歩となるでしょう。
ワサビ: EC 管理に高級ブランドバッグのオンデマンド鑑定を導入

株式会社ワサビは、リユース販売特化型のEC一括管理システム「WORLD SWITCH」に、AIを活用した高級ブランド品の鑑定サービスEntrupy社のEntrupyというサービスとの連携機能を追加しました。
Entrupyは、ディープラーニングと独自のマイクロ画像データベースを活用し、携帯型スキャナーとソフトウェアで製品をスキャンして真贋を判定するサービスです。ルイ・ヴィトンやシャネル、エルメスなどの高級ブランドに対応し、これまでに総額3,000万米ドル以上の在庫を鑑定してきました。
Entrupyで発行された鑑定証明書はWORLD SWITCH内の商品情報と紐づけられ、信頼性の高い商品登録が可能です。これにより、鑑定結果や証明書の写真登録が自動化され、業務の効率化を図られています。
また、Entrupyの鑑定には金銭的な補償が付帯されており、鑑定結果の信頼性がさらに向上しています。
アプレ:真贋判定技術にNECのAI技術を組み合わせた「TALグレーディングレポート発行サービス」を導入

株式会社アプレは日本電気株式会社(NEC)と共同で、高級ブランド品の真贋判定にAI技術を活用した「TALグレーディングレポート発行サービス」を開発しました。
このサービスは、アプレの真贋判定技術と、NECのAI物体指紋認証技術を組み合わせたものです。NECの「GAZIRU個体識別サービス」を活用し、商品の微細な表面の違いを識別することで個体ごとの真贋判定を可能にします。
「TALグレーディングレポート発行サービス」では、以下のような点を目的としています。
- 二次流通市場における模倣品の流通防止
- 鑑定工数の削減
- 鑑定書の信頼性向上
従来、専門家による鑑定が必要だった高級ブランド品の真贋判定を、AI技術の導入により効率化して信頼性の高いレポートを提供することで、安心・公平な取引の実現を目指しています。
このサービスは、2018年9月より提供が開始され、国内外の二次流通市場における信頼性の向上と健全な市場の発展に貢献しています。
AI真贋判定についてよくある質問まとめ
- AI真贋判定にはどのような技術が使われていますか?
主に以下の技術が効果的です。
- 画像認識: 製品のロゴや縫製、素材の質感など、人間の目では識別困難な微細な違いを検出します。
- 物体検出: 画像の中からロゴなどの特定のチェックポイントを自動で特定し、判定を効率化します。
- 異常検知: 「本物」のデータパターンから逸脱したものを「異常」として検出し、偽物を効率的に見つけ出します。
- 真贋判定とは、どのようなものですか?
製品や情報が「本物」か「偽物」かを見極める工程のことです。従来は専門家の経験に頼ることが多かったですが、客観性と一貫性を高めるためにAIの活用が進んでいます。特に、以下の分野で重要とされています。
- ブランド品や美術品
- Eコマース
- 工業製品や医薬品
- デジタルコンテンツ
- AIによる真贋判定で誤判定は起こりますか?
AIによる真贋判定でも、誤判定のリスクはゼロではありません。AIは過去の学習データを基に判定を行うため、学習していないパターンに対しては誤った判断をする可能性があります。
ただし、適切なデータを継続的に学習させることで、AIの精度は着実に向上します。
- AIで真贋判定を行うことの具体的なメリットは何ですか?
主なメリットは以下の通りです。
- 精度の向上: 人間の主観を排除し、客観的な基準で一貫した高精度な判定が可能です。
- 属人化の解消: 鑑定士ごとの判断のばらつきをなくし、品質を標準化できます。
- 非破壊・非接触検査: 製品を傷つけることなく、外観から判定できます。
- 人材育成への活用: 熟練者のノウハウをAIに学習させ、技術継承や若手育成に役立てられます。
まとめ
真贋判定の分野でのAI導入は、これまで属人的でばらつきが生じていた判断基準を標準化し、精度・効率の両面で大きな進化が実現しています。
画像認識や異常検知といった技術を活用することで、非破壊・非接触での検査が可能になり、さまざまな業界で活用が広がっています。リユース市場や製造業、さらには情報の真正性確認など、用途は今後さらに拡大するでしょう。
しかし、AIは万能ではなく、その性能は学習データの質や継続的な更新に大きく依存します。自社の製品や業務フローに最適なAIシステムを構築し、費用対効果を最大化するためには技術的な知見とビジネスへの深い理解が不可欠です。
もし、自社の模倣品対策や検品業務の課題解決に向けて、AI導入の具体的なステップや可能性をさらに詳しく知りたい場合は専門家の支援を受けることをお勧めします。
AI Marketでは

AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
𝕏:@AIMarket_jp
Youtube:@aimarket_channel
TikTok:@aimarket_jp
運営会社:BizTech株式会社
弊社代表 森下𝕏:@ymorishita
掲載記事に関するご意見・ご相談はこちら:ai-market-contents@biz-t.jp
