Agno(旧PhiData)とは?マルチAIエージェントを実現する機能・メリット・始め方を徹底紹介!
最終更新日:2025年06月11日

- Agnoは記憶・知識(RAG)・ツール連携機能を持つ自律的なAIエージェントをPythonで構築できるオープンソースフレームワーク
- 単一のエージェントだけでなく、複数のエージェントが連携する「マルチエージェントシステム」を構築でき、複雑な業務フロー全体の自動化に対応
- FastAPIとの標準連携により、開発したAIエージェントを迅速にAPI化して既存システムに組み込むことが可能
社内の独自データや外部システムと連携し、自律的にタスクをこなす「AIエージェント」は、より能動的で複雑な業務を任せられる有力な解決策です。
この記事では、こうした高度なAIエージェントをPythonで構築できるオープンソースフレームワーク「Agno(旧PhiData)」の核心的な機能から具体的な応用例、導入のメリットまで解説します。この記事を読むことで、自社の業務プロセスをいかにしてAIエージェントで自動化できるか、そしてその実現に必要な技術的要件を具体的に理解できます。
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Agno(旧PhiData)とは?
Agno(旧PhiData)は、マルチモーダルAIエージェントを簡潔なコードで構築できるPythonベースのオープンソースフレームワークです。2025年1月にのPhiDataからAgnoへリブランディングされ、特にマルチモーダル(テキスト、画像、音声など複数のデータ形式を扱う)対応や複数のAIエージェントが協調して動作するマルチエージェントシステムの構築に注力しています。
最大の特徴は、長期的な記憶・RAG・外部ツール連携・推論機能を持つエージェントを構築できる点です。
また、複数のエージェントを連携させた「エージェントチーム」や一連のタスクを自動で遂行する「エージェントワークフロー」の構築が可能です。
関連記事:「AIエージェントの開発方法・手順を解説!必要な技術やフレームワーク、注意点」
料金プラン
Agnoは、Apache 2.0ライセンスの基で提供されているオープンソース・フレームワークです。そのため、フレームワーク自体の利用は完全に無料です。
商用利用も可能です。
ただし、AIエージェントを実際に運用する際には、外部LLMのAPI利用料が必要です。
企業向けのエンタープライズプランは個別問い合わせで見積可能です。また、学生・教育者・資金が200万ドル未満のスタートアップ企業に対してプロプランを無料で提供しています。
応用例
Agnoは、柔軟かつ拡張性の高い設計により、部門に特化した業務から汎用的な業務まで幅広く応用できます。
以下が、代表的な応用例です。
- 高機能な社内ヘルプデスク: 社内規定や製品マニュアルを知識ベースとして学習させ、24時間365日、社員からの専門的な質問に根拠を持って回答
- 自律型リサーチアシスタント: 特定のテーマを指示するだけで、Web検索やニュースサイトから最新情報を自動で収集・要約し、レポートを作成
- インテリジェント営業サポート: CRMや在庫管理システムと連携し、外出先の営業担当者からの問い合わせ(顧客情報、在庫、納期など)にリアルタイムで回答し、見積もり作成まで行う
- データ分析とレポート作成の自動化: データベースに直接アクセスし、「先月の関東地域の売上トップ5製品を教えて」といった自然言語での指示を理解して、分析結果を返す
このように、業種や用途に応じて柔軟にカスタマイズできる点が、Agnoの強みです。
参考:Agno公式
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Agnoの主な機能
Agnoは、単一エージェントから複数エージェントの連携まで、業務自動化に必要な高度なAIエージェント機能を幅広く備えたプラットフォームです。ここでは、Agnoの中核となる代表的な機能を紹介します。
マルチモーダル機能
Agnoは、テキスト・画像・オーディオ・ビデオといった、複数の情報形式を統合的に扱えるマルチモーダル機能を有しています。
例えば、以下のような高度なマルチモーダル処理が、単一プラットフォーム上で完結します。
- テキストを画像で補足する説明生成
- 音声入力からの意味理解と応答生成
- 映像に基づく状況把握とレポート作成
また、マルチエージェントをチーム化することで、専門領域に特化した複合型AIシステムの構築が可能となり、開発・運用コストを削減できます。
マルチエージェントの構築
Agnoのマルチエージェント機能では、単一のエージェントでは対応が難しい複雑な業務も複数のエージェントが役割分担することで効率的に処理できます。例えば、マーケティングチームでは「市場調査担当」「SNS分析担当」「競合分析担当」といったエージェントをチーム連携させ、分析レポートの自動生成が可能です。
エージェントチームにより、人のチームで構成される企業内の業務フローをAIチーム化することができます。
さらに、アシスタント定義機能を使うことで、AIエージェントの役割、人格、指示、使用するツールや知識などを一元的に定義可能です。そうすることで、エージェントの振る舞いを明確にコントロールできます。
LLMモデルAPIを呼び出して作る最もシンプルなエージェントから、状態と決定論を備えた高等なマルチエージェントワークフローまで、ユーザーのニーズに合わせたエージェントシステムを構築可能です。
外部システムへのアクセス
Agnoのエージェントは、内部ロジックだけでなく、外部のAPIやPython関数を「ツール」として呼び出して連携できます。Web検索、データベース照会、メール送信、カレンダー登録など、具体的なアクションを実行させることができます。
以下が、アクセス可能なシステムの一例です。
カテゴリ | 代表的なツール |
---|---|
Webサイト |
|
データ |
|
Webスクレイピング |
|
ソーシャル |
|
追加のツールキット |
|
外部システムとの連携機能により、社内外の多様なデータソースを自在に統合し、業務を横断的に最適化できます。
推論
推論機能は、エージェントが応答に移る前に問題を段階的に検討できるようにする実験的な機能です。Agnoのエージェントには推論機能が搭載されており、エージェントが回答を導出する過程で、考察・検証・修正を繰り返します。
ユーザーの問いに対して即答せず、人間のような「考える」プロセスを経由することで、より一貫性と信頼性の高い応答を生成するための仕組みです。
例えば「業績が悪くなった理由は何か?」という質問に対し、Agnoのエージェントは売上の変化・コストの増加・市場の動向など、複数の観点を検討・整理したうえで、もっとも妥当性の高い回答を導き出します。
推論機能により高難度タスクや創造的な業務に対応できますが、レイテンシとコストが増加する点に注意が必要です。まだ実験的な段階にあり、期待通りに動作しない場合もあります。
知識機能(RAG)
Agnoには、ドメイン固有の知識を活用する知識機能、つまりRAGが標準搭載されています。RAGは、エージェントが実行時にナレッジベースから最新かつ関連性の高い情報を取り込み、回答の精度と信頼性を高める仕組みです。
PDF、Word、CSV、Webサイトといったドキュメントを「知識」としてエージェントに提供できます。
Agnoは非同期処理をベースに設計されており、RAGにおけるデータ検索やLLMへの問い合わせも非同期で効率的に実行されます。
例えば、新しい製品について質問されたとき、エージェントは製品マニュアルや最新のよくある質問(FAQ)を調べ、専門的かつ正確な答えを返せます。
コンテキストをベクターデータベースから取得する仕組みにより、エージェントはクエリに対してより文脈に合った応答を出せるようになります。また、AIの「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」を防ぎ、社内規定や製品マニュアルなど信頼性の高い情報源に基づいた正確な回答を保証します。
長期記憶
Agnoのエージェントには、過去のやりとりやユーザーに関する洞察や事実を「記憶」として保持する機能があります。記憶の保持方法は、以下の2種類に分けられます。
記憶種類 | 機能 |
---|---|
単一実行内のメモリ(デフォルト) | Storageを設定しない場合のデフォルトの挙動 AIエージェントのプログラムを実行している間だけチャット履歴が保持され、プログラムが終了すると失われる一時的なメモリです。 |
Storageコンポーネント | Agnoにおける永続的記憶の核心 LocalStorage(ローカルファイル)やDbStorage(データベース)を設定することで、実行状態(チャット履歴全体)を保存します。これにより、アプリケーションを再起動しても会話を継続できます。 |
Storageの活用によって、永続化された会話履歴全体をLLMに要約させ、「ユーザーはAI技術に関心がある」「前回の提案Aには乗り気でなかった」といった洞察や事実を抽出し、次の応答に活かす開発パターンを指します。
「前回の続きから話そう」といった人間同士のような自然なコミュニケーションが可能です。例えば、営業サポートエージェントでは顧客の好みや関心分野を記憶し、過去の提案を踏まえた最適な訴求が可能になります。
ハイブリッド検索
ハイブリッド検索とは、ベクトル類似度検索や従来のキーワードベース検索など複数の検索手法を組み合わせ、クエリに対して最も関連性の高い情報を取得する方法です。
Agnoはハイブリッド検索により「意味的に類似した結果」と「キーワードで完全一致する結果」を得られ、コンテキスト認識能力が向上します。
例えば「売上レポート 3月 東京支店」という曖昧な指示でも、エージェントは「売上」や「支店名」の意味を理解しつつ、正確な日付やファイル名で絞り込み、最適なデータを抽出できます。
ハイブリッド検索は、FAQ応答・自動レポート・法務文書の照会など、精度が求められる場面に特に有効です。
事前構築済みのFastAPI
Agnoでは、構築したエージェントやチーム、ワークフローを即座にAPI化するためのFastAPIルートが標準で提供されています。開発者はAPIのルーティングやリクエスト/レスポンスの処理といった面倒な定型コードを書く必要がありません。
FastAPIを活用することで、開発者は以下のようなメリットを得られます。
- 数行のコードでWebアプリや社内ツールにエージェント機能を実装
- 外部サービスとのAPI連携も容易に構築
- CI/CDパイプラインやクラウドへのデプロイとも親和性が高い
FastAPIアプリケーションは、Dockerコンテナ化が容易であり、AWS, Google Cloud, Azureといった主要なクラウドプラットフォームへのデプロイと非常に相性が良いです。
API開発の工数を大幅に削減しながら、本格的なAIソリューションの提供が可能です。
Agno UI (ユーザーインターフェース)
Agnoでは、AIエージェントと対話するための、すぐに使えるWebベースのUIコンポーネントが提供されています。StreamlitやFastAPIといったフレームワーク上に構築されており、迅速なプロトタイピングを可能にします。
開発の初期段階で、すぐに動くデモを関係者に見せることができ、フィードバックサイクルを高速化します。複雑なフロントエンド開発の手間を削減します。
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Agnoのメリット
Agnoを導入することで得られる主要なメリットを紹介します。
オープンソースゆえの柔軟性
Agnoはオープンソースで提供されているため、ソースコードを自社の業務環境に合わせて自由に導入・改修できます。そのため、外部ベンダーの更新サイクルに縛られず、以下のような柔軟な運用が可能です。
- セキュリティ要件に応じたカスタマイズが容易
- 独自の機能追加やUI設計が可能
クラウドベースのサービスに頼らず、オンプレミスや閉域環境での運用にも適しています。
オープンソースによるコストメリット
ライセンス費用が不要なため、初期投資を抑えつつAI活用の第一歩を踏み出すことができます。
軽量で高速
Agnoは、エージェントの設計において実行速度と省メモリ性を徹底的に追求しています。エージェントの実行時間は推論によって長くなるため、実行時間を最小限に抑え、メモリ使用量を削減する工夫が必要なためです。
なお、メモリの使用量はライブラリを使用することで測定できます。
また、シンプルなコードで構築できることもAgnoの軽量設計につながっています。
例えば、Web検索エージェントはわずか10行程度のコードで構築できます。開発者にとっても扱いやすく、生産性の高いプラットフォームといえます。
多様なLLMを使える自由
Agnoは、以下のような多様なLLMをサポートしています。
- OpenAI系:GPT-4o、o3-miniなど
- Google系:Gemini 2.0、Gemini 2.5など
- Anthropic系:Claude 3.5 Sonnetなど
特定のLLM(大規模言語モデル)に依存しない「モデル非依存」であるため、プロジェクトの要件に応じて最適なモデルを柔軟に選択できるのも大きな利点です。ユースケースやコスト要件に応じてモデルを柔軟に切り替えることや、同時に複数のLLMを統合的に運用することも可能です。
競合プラットフォームとの比較
Agnoとよく比較されるマルチエージェントフレームワークが、CrewAI、LangChain Agents、そしてAutoGen (Microsoft)です。以下の表に違いをまとめました。
プラットフォーム | 設計思想 | 強み | 使い分け |
---|---|---|---|
Agno | データ中心・長期記憶 |
|
|
CrewAI | 役割ベースの協調 |
|
|
LangChain Agents | AIアプリケーション開発のためのあらゆるツールが揃っているツールボックスの一機能 |
|
|
AutoGen | エージェント間の対話 |
|
|
GoogleのAgent2Agent(A2A)も、複数のエージェントが連携するシステムを構築できるという点でAgnoなどのマルチエージェントフレームワークと共通していますが、A2Aは、異なる開発元や異なるフレームワークで構築されたAIエージェント同士が共通の通信手順(プロトコル)を通じて連携・協調できるようにするための標準化された通信規約です。
一方、マルチエージェントフレームワークは、エージェント自体やマルチエージェントシステムを構築するための開発フレームワーク/ライブラリです。
Agnoの始め方
Agnoは、Pythonベースで構築されているため、Python環境があれば誰でも簡単に導入できます。Python開発者が使い慣れたパッケージ管理ツールpipを使い、コマンド一つでAgnoをインストールできます。
ただし、外部のLLM(大規模言語モデル)のAPIを呼び出して動作するため、REST APIやJSON形式のデータに関する基本的な理解が必要です。
自社のドキュメント(PDF等)を知識として活用する場合、単にファイルを指定するだけでなく、情報を効率的に検索するためのVector Databaseに関する概念的な理解が求められます。
作成したエージェントをWebサービスとして公開する際には、Agnoに標準搭載されたFastAPI連携機能を使います。これによりAPI開発の手間は大幅に削減されますが、Webサーバー(Uvicornなど)やAPIのエンドポイント、デプロイプロセスに関する基礎知識は必要となります。
Agno(旧PhiData)についてよくある質問まとめ
- Agno(旧PhiData)は社内システムと連携できますか?
はい、可能です。
Agnoは外部APIやSQL、メール、クラウドストレージなどと連携できるツール群を備えており、社内の業務システムとも柔軟に統合できます。オンプレミス環境にも対応しており、セキュリティ要件が厳しい業界でも活用できます。
- Agnoの主な機能には何がありますか?
Agnoは、高度なAIエージェントを構築するための多様な機能を標準で備えています。
- マルチモーダル機能: テキスト、画像、音声などを統合的に扱います。
- マルチエージェント構築: 複数のAIが連携し、複雑なタスクを分担して処理します。
- 外部システムへのアクセス: APIやPython関数を「ツール」として呼び出し、外部データやサービスと連携します。
- 知識機能(RAG): 社内ドキュメントなどを知識源として参照し、正確で信頼性の高い回答を生成します。
- 長期記憶: 過去の対話内容を記憶し、継続的でパーソナライズされたコミュニケーションを実現します。
- 事前構築済みのFastAPI: 開発したエージェントを即座にAPIとしてサービス化できます。
- Agno(旧PhiData)を導入するメリットは何ですか?
Agnoを導入することで、主に4つのメリットが得られます。
- オープンソースゆえの柔軟性: 自社の業務環境やセキュリティ要件に合わせて、ソースコードを自由に改修・カスタマイズできます。
- コストメリット: フレームワーク自体のライセンス費用が不要なため、初期投資を抑えてAI開発を始められます。
- 軽量で高速な動作: 実行速度と省メモリ性が追求されており、シンプルなコードで高性能なエージェントを構築できます。
- 多様なLLMを使える自由: 特定のLLMに依存しないため、OpenAI、Google、Anthropicなどからプロジェクトに最適なモデルを柔軟に選択できます。
まとめ
Agno(旧PhiData)は、
Agnoはオープンソースで強力なツールですが、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、Python開発、API連携、データベースに関する専門知識が不可欠です。単に機能を組み合わせるだけでなく、自社の業務フローやセキュリティ要件に最適化された設計・実装が求められます。
「自社のこの業務はAgnoで自動化できるか知りたい」「具体的な導入計画や開発体制について相談したい」とお考えの場合は、ぜひ一度、専門家の知見をご活用ください。
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