watsonx Orchestrateとは?IBMのAIエージェント構築プラットフォームの機能・特徴・料金を徹底解説!
最終更新日:2025年11月06日

- watsonx Orchestrateは、ノーコードからプロコードまで対応するAIエージェント開発・運用プラットフォーム
- 日常業務を自動実行するAIチャット、Agent Builderによるエージェント設計、ADKによる高度な拡張開発を統合
- 人事・営業・調達などに対応する事前構築エージェントを提供し、即戦力として導入可能
- マルチクラウド/オンプレミス対応や評価機能、接続管理など、企業運用に必要な仕組みを完備
IBMのwatsonx Orchestrateは、ビジネス・タスクを自動化するAIエージェントをノーコード/ローコードで作成・設定・導入できるプラットフォームです。プロコード向けのAgent Development Kit(ADK)とノーコードで使えるAgent Builderを併用し、アプリ接続や知識登録、動作テスト、評価まで一貫したワークフローで運用できます。
watsonx Orchestrateを使えば、「先月のトップ5顧客の状況をまとめて、部長に送る報告メールの下書きを作っておいて」と言ったざっくりとしたな指示をチャットで投げるだけで、AIがSalesforceにアクセスし、データを抽出し、要約し、社内メールソフトを開いて下書きを作成してくれる、と言ったことも可能です。
本記事では、watsonx Orchestrateの機能・特徴・事前構築済みエージェントの例までを徹底的に解説します。
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目次
watsonx Orchestrateとは?


IBMが提供するwatsonx Orchestrateは、AIエージェントによる業務自動化プラットフォームです。メール送信やスケジュール調整、データ整理といった日常的な事務作業を、代わりに実行してくれるAIエージェントが提供されています。
IBMはこれを「デジタルレイバー(Digital Labor)」と呼んでいます。従業員一人ひとりに専属のAIアシスタントを割り当てるというコンセプトです。
ユーザーは会話的な言葉で意図を伝えるだけで、AIが必要なアプリを見極めて、複数連携しながら業務を完了できます。たとえば「今週の会議を設定して」と入力すれば、AIが予定を確認して参加者に案内を送るといった流れを自動で行います。
また、専門知識がなくてもノーコード操作で自分専用のAIアシスタントを作成でき、業務内容に合わせて動作をカスタマイズすることも可能です。すでに用意されたテンプレートを使えば、人事・営業・経理など、部門ごとのタスクをすぐに自動化できます。
RPAとの違い
RPAは「決まった手順の自動化」が得意です。例えば、「毎日9時にこのWebサイトからCSVをダウンロードし、Excelのこのセルに転記する」といった構造化された定型業務には最適です。
一方、watsonx Orchestrateは「非構造的な指示からの動的な自動化」を狙います。
- RPA: 「スクリプト(指示書)」通りに動く。指示書にないことはできない。
- Orchestrate: 「意図」を理解して動く。AIがその場で最適なスクリプトを動的に生成するイメージ。
重要なのは、ユーザーが「Salesforceを開いて、Aレポートをクリックし…」といった手順を指示する必要がない点です。AIがユーザーの「意図」を汲み取り、「手順」に自ら変換して実行するのがOrchestrateの核です。
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watsonx Orchestrateの機能・できる4つのこと
以下では、watsonx Orchestrateの主要な機能とできることを3つご紹介します。
日常業務を自動で実行するAIチャット


watsonx Orchestrateでは、ユーザーが自然な言葉で指示を入力するだけで、AIがタスクを自動的に実行します。
たとえば「会議を設定して」「請求書を作成して送って」と入力すると、AIが適切なアプリケーションを呼び出し、必要な情報をまとめて処理を完了します。これにより、反復的な作業にかかる時間を削減し、業務効率を大幅に向上させることができます。
事前に主要オフィスツールはスキルに登録済


watsonx Orchestrateでは、AIが実行できる1つの作業を定義した機能モジュールを「スキル」と呼んでいます。たとえば、「メールを送る」「会議をスケジュールする」「データをまとめる」など、人が行う具体的な作業をAIが実行するための単位がスキルです。
スキルが共有されているリポジトリ「スキルカタログ」にはSalesforceやWorkday、Slack、Microsoft Teamsなどの業務アプリと連携するためのスキルが一覧化されています。スキルカタログから必要なスキルを選び、自分やチームの環境に追加することで、チャット機能の拡張も可能です。
事前構築済みのAIエージェントも100種類以上提供されており、簡単にAIを業務に導入することができます。
ノーコードでAIエージェントを設計できるAgent Builder


より高度な業務フローを設計したい場合は、「Agent Builder(エージェント・ビルダー)」を利用します。Agent Builderは、プログラミングの知識がなくてもエージェントを作成できるノーコード開発環境です。
GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)を使って、レゴブロックのように「スキル」を組み立てます。
Agent Builderによりできるようになることは以下に挙げられます。
- エージェントプロファイルとドメイン動作を定義する
- 外部ツール、API、または内部サービスに接続する
- ドメイン知識をアップロードして設定するか、外部ソースにリンクしする
- 複数のチャネル (Teams、WhatsApp、Web など) に展開する
- プレビューでエージェントをテストおよびデバッグする
スキルの組み合わせ(スキルフロー)やタスクの順序、条件分岐などを視覚的に定義できます。
たとえば「新規顧客の登録→担当者への通知→契約書作成」という流れを、一つの自動化シナリオとして組み上げることが可能です。
プロコードによる拡張開発(ADK)
開発者は「ADK(Agent Development Kit)」を使って、コードベースでエージェントを構築・拡張することもできます。PythonベースのADKを用いて、エンジニアがコードを書いて独自の「スキル(=特注のレゴパーツ)」を作り込む方法です。
外部システムとの連携やエージェントの動作制御、評価の自動化などを実装できます。これにより、既存システムへの統合や企業独自の業務ルールを反映したエージェントを作りこむこともできます。
以下のようなニーズに応える高度な機能です。
- APIが整備されていない、社内の古い基幹システム(ERPなど)との連携
- 業界特有の複雑な業務ロジックや計算処理
- 独自の認証基盤を通す必要がある場合
また、ADKには評価のフレームワークが含まれています。エージェントのツール呼び出し精度や会話コンテキストの扱いを指標化し、テスト結果にもとづいて改善することもできます。
watsonx Orchestrateの特徴
以下では、watsonx Orchstrateの特徴をご紹介します。
ノーコードとプロコードの統合スタック


Agent Builderによるノーコードのエージェント設計とPythonベースのADK/CLIによるプロコード開発を併用でき、ビジネスユーザーと開発者の双方に適した開発体験を提供します。
以下のように、ニーズに合わせた使い方が可能です。
- スピード感を求める場合→テンプレートからの迅速なカスタマイズによるノーコード開発
- 複雑なワークフローへの対応が必要な場合→プロコード開発
また、現場がノーコードで始めた自動化プロセスを、後からIT部門がプロコードの「スキル」に差し替えて全社展開可能な堅牢なシステムに格上げすることも可能です。
マルチクラウド/オンプレ対応と導入形態
watsonx Orchestrateは、企業のIT環境やセキュリティ要件に柔軟に対応できるよう、マルチクラウド(SaaS)およびオンプレミス対応の設計が採用されています。
マルチクラウドの場合、IBM CloudまたはAWS上にフルマネージドSaaSとしてデプロイできます。すでにAWSやIBM Cloudをメイン基盤としている場合、ネットワーク設計やセキュリティポリシーを統一しやすい利点もあります。
オンプレミス (または プライベートクラウド)は、watsonxの基盤全体を自社のデータセンター内(オンプレミス)や、厳格に管理されたプライベートクラウド上に構築できます。法律や規制で、個人情報や機密データを絶対に社外(あるいは国外)に出せない金融業界や行政機関などにおすすめです。
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watsonx Orchestrateの料金
watsonx Orchestrateの提供形態はフルマネージドなマルチクラウドSaaSで、IBM Cloud、AWS、オンプレミスでのデプロイに対応しています。プランは、EssentialsとStandardの2つです。
以下の表に値段やプランごとの内容についてまとめました。
| 項目 | Essentials | Standard |
|---|---|---|
| 価格 | ¥79,700(税別)/月 | 問い合わせ |
| 主な内容 | エージェントの構築・オーケストレーション、統合カタログ、カスタムツール作成、 コアAI/LLM機能、クラウドまたはオンプレデプロイ、アドオンで事前構築済みエージェント 月間アクティブユーザー数 4,000 人(各ユーザー最大 50 件のメッセージ) 最大10 GBのドキュメント | Essentialsの全機能 高度な自動化・ワークフロー・意思決定機能、 人事/調達/販売用の事前構築エージェントを含む |
| 購入/入手 | IBM Cloudカタログ、AWSマーケットプレイス | 問い合わせ |
また、これらのプランとは別に、30日間無料でwatsonx Orchestrateを利用できる体験プランも用意されています。
上記は2025年11月時点での情報になります。随時変更の可能性があるため、詳しくは公式サイトをご確認ください。
watsonx Orchestrateの事前構築済みエージェントの例


watsonx Orchestrateでは多数の事前構築済みエージェントが提供されています。公式サイトでは、人事・調達・営業の事前構築エージェントが紹介されています。
上記の画像は人事エージェント画面で、昇進の手続きを進めている場面になります。こののちに、簡単なGUI上の操作でメールの送信までを簡単に行う様子が動画で紹介されています。
また、営業マネージャー向けAIエージェントのガイド付きデモが用意されています。英語のガイドではありますが、実際に操作している気分を味わいながらデモを確認できます。
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watsonx Orchestrateについてよくある質問まとめ
- watsonx Orchestrateとは?
watsonx Orchestrateは、AIエージェント開発・運用プラットフォームです。
事務処理、営業サポート、人事・採用、調達管理など幅広い業務をAIエージェントによって支援します。
事前に構築されたエージェントをAIチャットで活用できるだけでなく、ノーコードからプロコードまで柔軟性の高いエージェント開発も可能です。
- 他のアプリケーションと連携できますか?
はい。Salesforce、Workday、Slack、Microsoft Teamsなど、主要なビジネスアプリケーションと連携できます。
これらは「スキルカタログ」から追加でき、必要なタスクに応じて組み合わせて利用することが可能です。
- watsonx Orchestrateの導入・運用上の特徴は何ですか?
以下の2点が大きな特徴です。
- 統合スタック: 現場担当者による迅速なノーコード開発と、IT部門による堅牢なプロコード開発を併用・移行できます。
- 柔軟な導入形態: スピード重視のSaaS版(IBM Cloud/AWS)と、セキュリティ重視のオンプレミス版(自社データセンター)を選択できます。
- watsonx Orchestrateの主な機能や、できることは何ですか?
以下の4点が主な機能です。
- 自然言語のチャットで指示するだけで、AIが業務を自動実行します。
- Salesforce、Slack、Teamsなど主要な業務アプリと連携する「スキル」が事前に用意されています。
- 「Agent Builder」を使い、プログラミング不要(ノーコード)で独自のAIアシスタントを設計できます。
- 「ADK(Agent Development Kit)」を使い、エンジニアがPythonで自社システムとの複雑な連携(プロコード)を開発できます。
まとめ
watsonx Orchestrateは、すぐに使える事前構築済みのAIチャット、そしてノーコードとプロコードを統合した開発スタックにより、反復タスクから複合業務まで幅広い自動化を可能にします。
役割に基づく運用とガイド付きUIで導入・活用の学習コストを抑えつつ、マルチクラウド/オンプレ対応や評価機能、接続管理などの運用要素も提供されます。現場の業務担当者がノーコードで迅速にAIエージェントを構築できる一方、開発者がプロコード(ADK)で複雑な基幹システム連携を作り込める「ハイブリッド」な構造が実用的な特徴と言えます。
しかし、その真価を発揮させるには、Salesforceのような標準SaaSとの連携だけでなく、自社独自の業務フローや古い基幹システム(ERP)とどう連携させるか、あるいはオンプレミス版でどうセキュリティ要件を満たすか、といった技術的な評価が不可欠です。
導入を具体的に検討するフェーズでは、自社の環境で本当に機能するのか、必要な開発コストはどれくらいかを見積もるために専門家の知見を活用することをお勧めします。


AI Market 運営、BizTech株式会社 代表取締役|2021年にサービス提供を開始したAI Marketのコンサルタントとしても、お客様に寄り添いながら、お客様の課題ヒアリングや企業のご紹介を実施しています。これまでにLLM・RAGを始め、画像認識、データ分析等、1,000件を超える様々なAI導入相談に対応。AI Marketの記事では、AIに関する情報をわかりやすくお伝えしています。
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