生成AIの機密情報漏洩リスクはRAGで解決できる?メリットや強化策を徹底紹介!
最終更新日:2025年10月22日

- 従来の生成AIは、入力・データ送信・AIの学習・出力の各段階で、機密情報が意図せず漏洩するリスク
- RAG(検索拡張生成)は、AIに機密情報を「学習」させず、安全な社内データベースから都度「検索・参照」させる
- アクセス制御が可能なシステム選定、入力ルールの整備、データガバナンス体制の構築などでセキュリティを強化
生成AIを自社の機密データと連携させて活用したい。そう考えながらも、入力した情報が外部に漏れたり、AIの学習に使われたりするリスクを懸念し、本格的な導入に踏み出せない企業は少なくありません。
特にクラウド型の生成AIサービスでは、入力データが外部サーバーで処理されることから、顧客情報や営業情報の流出を不安視する声も少なくありません。
こうした中で注目されているのが、社内データベースを活用して安全に生成AIを運用できるRAG(検索拡張生成)です。
本記事では、RAGの導入によって情報漏えいリスクを軽減できる仕組みを解説します。さらに、RAGを導入するメリット、そして導入後に安全性を確保するために不可欠なセキュリティ強化策(システム選定やガバナンス)まで事業判断に必要なポイントをご紹介します。
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目次
生成AIの機密情報に関する課題
以下では、私たちが普段使うChatGPTのような生成AIサービスの機密情報に関する課題に焦点を当てて解説します。
プロンプト入力による情報漏洩
ユーザーが生成AIに社内資料や顧客情報をプロンプト上で入力した場合、外部に漏れるリスクがあります。
生成AIは入力されたテキストをもとに回答を生成するため、システム上では一時的に情報を保持・解析するプロセスが発生します。蓄積された情報は、ユーザーの入力内容が学習やモデル改善に活用され、他のユーザーへの回答に間接的に反映されることがあります。
実際、従業員が誤ってシステムのコード情報をプロンプトに入力し、学習データとして保存され、問題となった事例もありました。
つまり、プロンプト入力による情報漏えいは、従業員の入力行動を起因とする人的リスクといえます。運用ルールや利用環境を適切に設計しなければ、組織全体の情報セキュリティを脅かすことになりかねません。
入力データの外部送信リスク
生成AIには、提供元(ベンダー)側のデータ管理や運用体制に起因する漏えいリスクもあります。
生成AIを利用する際、ユーザーが入力した社内文書や顧客データは、ベンダーが管理するクラウドサーバー上に保存されることが一般的です。たとえ学習に使われないAPI経由(例: OpenAI API)であっても、それは変わりません。
ベンダー側の管理体制やデータ保存方針が不透明な場合、第三者による不正アクセスやデータの二次利用が生じるリスクが懸念されます。
そのため、ビジネスで活用する場合はオンプレミス環境や社内専用の生成AIを活用し、外部サーバーにデータを送信しない設計が不可欠です。
学習データへの情報混入
生成AIモデルのファインチューニングを行う際、機密情報を学習データとして与えると、再利用や再出力の対象になるリスクがあります。
一度学習に組み込まれた情報は削除が難しく、他のユーザーへの回答やモデル更新時に社内情報が意図せず出力される可能性が高まります。
このようなリスクは、生成AIの「精度向上」を目的とした正当な取り組みの中でも発生し得るため十分な注意が必要です。
生成AIの精度向上と情報保護を両立するには、学習データの取り扱い方針を明確に定義し、管理体制を整えることが重要です。
出力内容からの情報漏洩
生成AIにはユーザーからのフィードバックを取り入れる仕組みがあり、過去の会話履歴や他のユーザーからの入力内容をもとに回答を生成する場合があります。その際、生成AIが他の入力情報や内部データを誤って参照すると、意図せず機密情報が出力されます。
例えば、同一システム上で複数部署が利用している場合に、他部署のやり取りに含まれていた顧客情報や契約内容が生成結果に混入するケースが考えられます。
このような出力経由での漏えいは、ユーザーが意図していないため発見しにくく、外部送信よりも発見が遅れやすい点に注意が必要です。
そのため、生成AIを安全に運用するためには、「入力時の対策」だけでなく、「出力時の制御」も同様に重視する必要があります。例えば、会話履歴の共有を制限する設計や、RAGのように回答生成時に参照範囲を社内データベースのみに限定する構成が有効です。
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RAGで機密情報漏洩リスクを軽減できる仕組み
RAGは、AIモデル(LLM)本体に機密情報を一切学習させず、自社の安全なデータベースから関連情報だけを検索してきてAIに回答させる仕組み です。以下では、RAGが機密情報漏えいリスクを軽減できる仕組みについて詳しく紹介します。
AIモデル自体に社内データが取り込まれない
RAGは、社内データをAIモデルに直接学習させるのではなく、必要なときにのみ参照する構造を採用しています。
従来の「ファインチューニング(追加学習)」がAIモデル自体を社内データで賢くする(=モデルに知識を埋め込む)のに対し、RAGはAIモデルを「何も知らない(だが賢い)頭脳」としてそのまま使います。必要な知識は「その場限りのカンニングペーパー」として外部から与えます。
具体的には、RAGは回答を生成する際、あらかじめ指定された社内サーバーや専用データベースに保存された安全な情報を検索し、その検索結果をもとに生成を行います。
いずれのプロセスでも、AIモデル自体が社内データを恒常的に保持することがなく、一時的な参照として利用されるため、外部への情報流出リスクが大幅に低減されます。
加えて、アクセス権限を設定すると、部署・職位ごとに参照可能な情報を制御できるため、内部からの情報漏えい対策にも有効です。
学習データへの反映がない
RAGでは、AIモデルが社内データベースを一時的に参照するのみで、検索結果を学習や記憶として保持する処理が行われません。つまり、AIが参照した内容を知識として内部へ蓄積することや、他のユーザーへの回答生成に再利用されることがありません。
またRAGのアーキテクチャ上、学習データと参照データが明確に分離されています。
このような構造上の仕組みから、AIの学習サイクルに社内情報が混入するリスクを構造的に排除できます。
RAGはAIの「情報の利用」と「情報の記憶」を明確に分けることで学習データへの情報混入を構造的に防ぎ、安全性を確保しています。
オンプレミスでの実行
RAGシステムは、機密情報がインターネットに出ない閉域網に構築できます。
ベクトルデータベースは、当然ながら自社のオンプレミスサーバーや、クラウド(AWS, Azure, GCP)上のVPC(仮想プライベートクラウド)内に設置します。
AIモデル(LLM)自体も、オープンソースLLM(例: Llamaシリーズ)を自社サーバーで動かすか、あるいは Azure OpenAI Service や Amazon Bedrock といった主要クラウドサービスが提供する「VPC内でAIモデルを呼び出せるセキュアなオプション」を利用できます。
これにより、ユーザーの質問、検索される社内データやAIによる回答生成プロセスも、すべてが自社の管理するセキュアなネットワーク内で完結し、機密データが一切外部に出ない構成が実現可能です。
RAGで機密情報を扱うメリット
本章では、RAGで機密情報を扱うメリットについて紹介します。
機密情報を外部に出さずに活用できる
RAGを自社環境に構築すれば、機密文書を安全に管理しつつ、外部に情報を出さずにAIが社内データを参照して回答を生成できます。
そのため、法務・研究開発・顧客サポートなど、機密情報を多く扱う部門でも安心してAIの導入できます。例えば、以下のような機密情報の活用が可能です。
- 法務部門:契約書の条項検索や過去案件との比較をAIが即時に提示し、リーガルチェックを効率化
- 研究開発部門:過去の実験データや技術報告書をAIが横断的に参照し、重複研究やミスを防止
- 顧客サポート部門:顧客対応履歴や社内FAQをもとに、高精度な回答を実現
RAGは社内データを守りながら安全に運用できるため、従来生成AIが参入できなかったビジネス領域でも業務効率化を推進します。
法令・規制への対応が容易
RAGは「検索参照型」の仕組みを採用しているため、生成AIにデータを直接学習させる必要がありません。
そのため、AI活用時に問題となりやすい個人情報保護法やGDPRへの抵触リスクを大幅に低減できます。また、NDA(秘密保持契約)対象データも外部に送信せず、社内で安全に処理できるため、契約上の守秘義務にも確実に対応できます。
したがって、RAGを導入すると法的リスクを回避しながら安全にAIを活用できるため、金融や医療などコンプライアンス要件が特に厳格な業種でも安心して導入可能です。
社員教育やナレッジ共有に有効
社員は、RAGを通じて機密情報を含む社内データにアクセスしながらも、外部への情報漏えいを心配することなく業務を遂行できます。
そのため、社員研修やナレッジ醸成において以下のような活用が可能です。
- 新人教育で社外秘資料に基づいた回答を安全に提示
- 専門部署のノウハウを全社で共有し、問い合わせ対応の品質を均一化
- 営業やカスタマーサポートの属人化を防ぎ、知識を組織的に再利用・継承
RAGを導入することで、社内情報を安全に使える資産へと変え、組織全体の知識循環と教育体制を強化できます。
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RAG使用時のセキュリティ強化策
社内専用のRAG環境を構築する場合は、技術的・運用的な両面から安全性を確保する必要があります。以下では、RAG運用において重視すべき代表的なセキュリティ強化策を紹介します。
セキュリティに強いシステム選定
RAGを導入する際に特に重要なのは、自社のセキュリティ要件を満たすRAGシステムの選定です。
以下が、具体的な選定基準です。
- データ保管場所:機密情報を国内または自社指定のサーバーに保存できるか
- アクセス制御と権限管理の仕組み
- 監査・ログ管理機能:アクセス履歴や操作内容を自動記録し、不正利用を検知できるログ管理機能を標準搭載しているか
- ガードレール・フィルタリング機能
- オンプレミス型やプライベートクラウド型
例えば、AWSのAmazon Bedrockでは、個人を特定できる情報などを自動的に検出し、マスク処理を行う「ガードレール」機能を備えています。こうした機能を活用することで、人為的なミスによる情報漏えいリスクを事前に防げます。
セキュリティを前提としたRAG基盤の採用は、あらゆるビジネスシーンにおいてRAG活用の安全性と信頼性を確保する上で欠かせません。
プロンプト入力時のルール整備
いくら高セキュアなRAGを導入しても、従業員が不用意に機密情報を入力すると他のユーザーの回答生成時に使用され、簡単に漏えいするリスクがあります。
そのため、RAGの運用開始前には、プロンプトの入力ルールを明確に定めることが不可欠です。
以下が、特に整備しておくべきルールです。
- 入力禁止情報リストの策定と共有:顧客名や契約書原文、未公開の研究データなどの入力を禁止するルールを明文化し、社内で共有
- 個人情報・顧客データの匿名化
- 入力内容のレビュー体制
高リスク情報を扱う部署では、RAGへの入力前に管理者が確認できる承認フローを設定することが重要です。
プロンプトのルール整備は「人」に起因するリスクを抑えるためのセキュリティ対策として、RAG運用の安全性を支えます。
不適切な出力の防止策
RAGでも、出力内容に誤って機密情報が含まれるリスクはゼロになりません。例えば、プロンプトインジェクションにより外部から不正な指示が埋め込まれると、AIが内部データを参照し、機密情報を意図せず出力する恐れがあります。
そのため導入前には、出力段階での安全対策を施し、AIが誤って機密情報を出さない仕組みを技術的に補強することが重要です。
具体的な防止策は、以下のとおりです。
- データフィルタリング:AIに入力される前に禁止情報を検知・ブロックし、危険な情報がRAGの検索対象や生成プロセスに入る前に遮断
- 監査ログ自動保存:誰が・いつ・どの情報を利用したかを記録し、追跡・監査できる状態を維持
- マスク処理自動化:個人情報や顧客データを自動で匿名化してRAGに渡す仕組みを整備し、人為的な入力ミスや判断漏れを防止
- 出力値の無害化:回答における機密情報の有無を自動チェックし、該当する場合は伏字に変換して出力することで誤出力を防止
- プロンプトインジェクション対策:入力内容の検証や指示内容の制限などを実施
これらの仕組みを多層的に組み合わせることで、AIの出力経由で発生する情報漏えいリスクを構造的に抑止できます。
データガバナンス体制の構築
RAG導入後、長期的に安全性を維持するためには、データガバナンス体制の構築が必要です。
以下が、具体的なポイントです。
- 定期的なセキュリティ監査とシステム評価を実施し、脆弱性や設定ミスを早期に発見
- 利用ログ・アクセス履歴を監視するモニタリング体制を整え、異常行動を即時検知
- 機密情報の取り扱いに関する社員教育を年に1回以上実施し、情報リテラシーを継続的に向上
- インシデント対応プロセスを事前に整備し、漏えい発生時に迅速かつ的確に対応
上記を徹底することで、悪意あるユーザーが、AIを騙すような特殊な質問(プロンプト)を送り込むことで、システムが想定していない動作を引き起こさせようとするプロンプトインジェクション攻撃に対する耐性を上げることができます。
AIが社内の重要データにアクセスする仕組みである以上、セキュリティや運用ルールの実効性を常に確認する必要があります。そのため、データガバナンス体制は一度構築して終わりではなく、定期的な点検と改善を繰り返すことが大切です。
RAGと機密情報漏えいリスクについてよくある質問まとめ
- RAGを導入すれば、機密情報の漏洩リスクは完全になくなりますか?
完全にゼロにすることは難しいですが、RAGを導入することで外部送信や学習データへの混入といった主要なリスクを大幅に軽減できます。
RAG環境自体の安全性を高めるため、以下の4つの対策が重要です。
- システム選定: アクセス制御やガードレール機能(不適切情報のマスクなど)を備えた、セキュリティに強いRAG基盤を選ぶこと。
- ルール整備: プロンプトへの入力禁止情報リストを策定・共有するなど、人的ミスを防ぐ運用ルールを定めること。
- 出力防止策: プロンプトインジェクション対策や、回答に含まれる機密情報を自動でマスク(伏字化)する技術的な仕組みを導入すること。
- ガバナンス体制: 定期的な監査、利用ログの監視、継続的な社員教育など、データを管理・監督する体制を構築すること。
- 既存の生成AIシステムをRAG対応に変更できますか?
可能です。
既存の生成AIにRAGモジュール(検索・参照機能)を追加することで、社内データを安全に扱えるようになります。ただし、データベース構築や権限管理などの設計が重要なため、専門知識を持つベンダーへの相談をおすすめします。
- RAGはどのようにして機密情報の漏洩リスクを減らすのですか?
RAGは、AIモデルに機密情報を「学習」させず、必要な時だけ安全な社内データベースから情報を「検索・参照」する仕組みを採用しているためです。具体的には以下の特徴があります。
- AIモデル自体に社内データが取り込まれません(データとモデルの分離)。
- AIが参照した情報を学習データとして保持・再利用しません。
- オンプレミスやVPC(仮想プライベートクラウド)など、閉域網での実行が可能です。
まとめ
RAGは、社内データを外部に送信せず、安全なデータベースから必要な情報のみを参照して回答を生成する仕組みにより、生成AIの機密情報漏えいリスクを回避できます。
そのため、契約書管理や医療診断、研究開発など、従来は機密性の高さから生成AIの活用が難しかった業務領域においても、情報を保護しつつAI活用の推進が可能です。
また、導入時にセキュリティに強いRAGシステムを選定し、入力ルールや運用体制を整備することで漏洩リスクをさらに抑えられます。
自社の複雑なセキュリティ要件を満たしつつ、RAGのメリットを最大限に引き出す環境を構築するには、技術的な知見と業務プロセスの両面を深く理解した専門家の支援が有効です。安全なAI活用の第一歩として、まずは専門家へのご相談をご検討ください。

AI Market 運営、BizTech株式会社 代表取締役|2021年にサービス提供を開始したAI Marketのコンサルタントとしても、お客様に寄り添いながら、お客様の課題ヒアリングや企業のご紹介を実施しています。これまでにLLM・RAGを始め、画像認識、データ分析等、1,000件を超える様々なAI導入相談に対応。AI Marketの記事では、AIに関する情報をわかりやすくお伝えしています。
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