ロボット×AIの可能性とは?どんな種類?導入事例・メリット・コスト・課題徹底解説!
最終更新日:2024年11月14日
家庭だけでなく企業においても、製造業をはじめとする各分野でロボット技術が日々研究され、AIロボットの活用が進んでいます。AIとロボットの強力な連携は来たるべきAGI(汎用人工知能)への重要な布石ともされています。
関連記事:「汎用人工知能(AGI)とは?AIの進化が必要な背景・活用分野・社会影響を解説」
人手不足への対応や生産性を向上することが重要な現代では、ロボットの活用は当たり前になってきています。最近ではAIの開発も活発になり、AIを搭載したロボットが普及してきました。家庭で音声認識を搭載したものや、自動でルートを覚えて掃除するロボットを使用している方も多いのではないでしょうか?
しかし、単なるロボットとAI搭載ロボットの違いは何でしょうか?AIを搭載することでどんなメリットがあるのでしょうか?この記事では、AIロボットのメリットや可能性、各分野で実際に研究、導入されている事例や課題について紹介していきます。
AIロボットに興味がある、導入を検討している方は、是非最後までご覧ください。
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目次
ロボットの課題は?
AIを組み込んでいない従来のロボットを導入することでも企業の生産性は向上しますが、その一方で従来のロボットには以下のような課題があります。
- ティーチングや検査・操作のための教育が必要
- 日々の点検が必要
- イレギュラーな処理が苦手
それぞれのポイントについて説明します。
ティーチングや検査・操作のための教育が必要
ロボットを動かすためには、専門のエンジニアがロボットに作業内容を覚え込ませるための「ティーチング」が必要です。異常が起きた場合には自社で検査もしなければなりません。
ティーチングや検査を行うためには専門知識や資格が必要となり、社内教育や専門講義の受講などの教育コストが発生します。また、ティーチングが終わっても、動作させるための手順や注意事項、停止した時の対処など操作する担当者の教育も必要になります。
日々の点検が必要
設備トラブルが起きないためにも、日々ロボットの点検が欠かせません。ロボットは一度不具合が起きると、製造ラインや業務の流れが止まってしまいます。突然止まってしまうことも多く、メーカーでなければ修理できないような不具合が起こることもあります。
イレギュラーな処理が苦手
ロボットはプログラムで決められた動作を実行するため、プログラムとは異なる処理が苦手です。ラインや材料の変更が生じると、0からプログラムの組み直しが必要になることも多くあります。
例えば、製造ラインに流れてくる部品を見て動きを変えるようなことはできず、人間による調整が必要になります。ロボットを止めないためには、動作を細かく定義し、イレギュラーな処理がないように人間が気をつけておかなければなりません。
ロボットにAIを組み込むメリットは?
従来のロボットには以上のような課題がありますが、AIを組み込むとどう変わるのでしょうか?以下にAIロボットのメリットを紹介します。
- 自己学習による教育コストの削減
- 故障の事前予測
- 多品種多変量処理への対応
- IoTとの連携
それぞれのポイントについて説明します。
自己学習による教育コストの削減
ロボットにAIを組み込むことで、ロボットの運用で最も大変なティーチングなどの教育コストを削減できます。AIを搭載したロボットは自己学習機能を有しており、動作を分析して最適な動きをするためのティーチングをロボット自身で行うことが可能です。
従来のようなロボットに必要なロボットティーチングのコストや、従業員がティーチングができるようになるための教育コストを大幅に削減することができるでしょう。また、自身で考えて最適な動作をするAIロボットは、覚えなければならない操作手順なども減ります。操作担当者の教育コストも減らすことができるでしょう。
故障の事前予測
AIを搭載したロボットは、動作速度や動作音、振動などの情報を収集・解析して異常を自動検出する仕組みを持っています。設備や機械が正常に動いていると思い使い続け、ある日突然動かなくなるという経験はないでしょうか?これは、異常が発生していても人間では気づくことができないからです。
AIを活用すれば、常に稼働している機器のデータを解析し続けることが可能で、予知保全と呼ばれます。小さな異常でも検知することができるため、人が点検する機会を減らすことができます。人の目では気づきにくい異常も検知しメンテナンスを行うことができるため、故障を事前に防止することが可能です。
製造業での施設や機械の予知保全について詳しく知りたい方はこちらの記事もご参考ください。
多品種多変量処理への対応
AIを搭載したロボットは、多品種多変量の作業を効率化することができます。従来のロボットは、あらかじめ大きさや形、量などが決まったものをプログラムされた通りに処理することは得意です。しかし、動きの種類、頻度、扱う対象が変動的な処理は苦手です。材料や製品などによって作業が限定されることや人間の判断が必要になるなどあまり効率的ではありません。
一方、AIを活用すればロボットが自分で判断できるようになり、人間の手助けがなくても様々なものを処理することができます。ロボットの停止する時間や人間がロボットの対応をする時間が減るので、非常に効率的に処理をすることができます。
特に、ロボットに生成AIを導入することでより柔軟かつスピーディな判断が可能になっています。
IoTとの連携
AIを搭載したロボットがIoTと連携することで、インターネット上の膨大なデータをもとに学習することができます。従来のロボットは、基本的にクローズドネットワークの中で与えられた命令を繰り返し行うことが役割でした。しかし、AIを搭載したロボットは機械が処理したデータとインターネットから得たデータを比べたり、状況に最適な判断をすることができるようになります。
AIは与えられたデータを解析して予測や判断をすることができますが、インターネットとつながることで膨大なデータを取得できるようになり、幅が大きく広がります。
AIとIoTの違い、AIとIoTを結合させる効果、導入事例を特集している記事もありますので、ぜひご参考ください。
産業別AIロボット種類7選
AIをロボットに組み込むことで、どんなことが可能になるのでしょうか?
以下の主要業界別に、AIロボットの活用種類を紹介します。
- 製造業
- 農業
- 介護
- 医療・看護
- 物流・倉庫
- 建設・建築
それぞれの業界での種類について説明します。
一言でロボットと言っても、実際に工場などでピッキングを行うようなアーム型のロボットだけでなく、配送を行う形のロボットや、飛行するドローンまで、様々なロボットがあります。
製造業
製造分野では、AIロボットの普及が最も進んでいます。元々製造ロボットが多く使われているため、それらにAIを搭載するだけで良いためです。工場の製造ラインなどで既に動いているロボットにAIを搭載し、ネットワークに接続することで質の高い製造管理が行えるようになります。
AIロボットは、作業環境や材料の状態を認識し自分で判断して動きを調整できるため、人が判断して調整することがなくなり、ブレのない高い品質の生産ができるようになります。
人員配置、外観検査など、製造業での他のAI活用事例について特集していますので併せてご覧ください。
農業
AIに管理されたドローンによる農薬や水の散布は想像しやすいでしょう。ドローンの内蔵カメラで畑の様子を撮影した画像から、AIが農作物と雑草を判断し、雑草にのみ除草剤を吹きかけるといったことも可能です。
また、これまで人間が行ってきた、ハウスの水やりや温度管理などをAI搭載のロボットが行うことで、効率的で安定した作物の管理ができます。IoTと連携すれば、気象データや予報などをもとにした判断ができ、天候に左右されやすい農業の安定性が向上するだけでなく、農家の労働環境を改善できるなど、その効果は大きいでしょう。
スマート農業・収穫予測など、農業へのAI導入事例を特集していますのでご覧ください。
介護
生活を見守るロボットがすでに実用化され、介護現場で導入されている例があります。カメラや家電機器をIoTでつなぎ、AIが監視することで生活行動に異常がないかを見守り、異常が発生すればすぐ検知し知らせるといったものです。
これまでは親族や介護職員が常に見守る必要がありましたが、AIロボットが監視することでその負担を軽減や安心を提供することができます。
送迎の自動化、見守りシステムなど、介護業界へのAI導入事例を特集していますのでご覧ください。
医療・看護
医療現場では、インフォームドコンセントをアシストするAIロボットの研究が進んでいます。インフォームドコンセントとは「患者やその家族が医療行為や治療の内容について必要かつ十分な説明を受け、十分理解した上で、患者自らの自由な意志で合意すること」です。
ロボットが医療行為や治療内容を説明し、患者や親族の反応をAIが分析して理解度を数値化します。分析結果は医師にフィードバックされ、理解が不十分である場合は、医師からさらに詳しい説明がなされます。ロボットの説明をよりわかりやすくするために、ロボットにもフィードバックをすることも検討されています。
医師が不足していると言われている中で、ロボットが医療行為や治療の内容を説明することで、現場の負担の軽減と患者の満足度向上が期待されています。
画像診断、リスク予測など、医療・介護へのAI導入事例を特集していますのでご覧ください。
物流・倉庫
AGV(無人搬送機)にAIを搭載することで、カメラの映像から人や荷物を認識して避けて進むことや、混雑状況を把握した上で効率の良いルートを計算して進むことができます。巨大な倉庫では、商品のピッキングや移動を自動で行い、最終的に商品を従業員の元まで運ぶ作業をAGVというロボットが行います。
AGVの活用事例、AIを搭載するメリットについてこちらの記事で解説しています。
従来のAGVは運ぶまでのルートが決まっていましたが、ルート上で人や荷物が検知されると止まってしまう欠点がありました。AGVにAIを搭載することで、カメラ映像から人や荷物を認識して避けて進むことができます。また、IoTと連携すれば、商品の売れ行きや出荷予定情報を取得し荷物の最適な置き場を判断することもできるでしょう。
物流予測、在庫管理、検品自動化など、物流・倉庫業界での他のAI活用事例について特集していますので併せてご覧ください。
建設・建築
建築業界では設計に3次元CADを用いるのが主流でしたが、ここ数年でBIM(Building Information Modeling)が普及し始めています。IMは直訳すると「建物を情報でモデリングする」という意味で、壁やドア、部屋などの3Dオブジェクトを組み合わせて図面を作成することができます。一度2次元の図面を作りその後3次元にする3次元CADに対して、最初から3Dのオブジェクトを組み立てていくBIMは、作業効率や修正にかかる時間を大幅に短縮できます。
このBIMとAIを連動させるシステムが開発されています。これにより設計者が敷地や建物の基本情報などを入力することで、AIが設計や施工プラン、概算コストをセットで作成できるようになり、生産性の大幅な向上が期待されています。
また、実際の施工にもAIが導入されています。施工や運転制御の精度を向上させることを目的として、複雑な作業を要するブルドーザーやダンプカーの運転をAIで自動化する研究開発が進められています。建築現場における作業は室内環境の製造ロボットなどに比べて環境条件の変化や予想外の状況が発生することが考えられるため、よりフレキシブルな自律性が求められます。
代表的な例が、鹿島建設によるAIロボットの活用です。導入後、人間では不可能であった上向溶接を可能とし、溶接の品質と性能の向上に成功しています。
自動設計、自律化ロボットなど、建築・建設業界での他のAI活用事例について特集していますので併せてご覧ください。
飲食
飲食業界では主にAIを搭載した配膳ロボットの導入が進んでいます。天井にマーカーを貼ることで自機の位置を認識し、他のロボットの位置を把握して最適なルートで移動するロボットや、マーカーが不要で3時間ほど走行すればルートを記憶するロボット、様々な感情を表現し接客を楽しませるロボットなど様々な種類のものがあります。
ドライブスルーの飲食店ではAIを搭載したボイスロボットを活用するケースもあります。チャットロボットが注文を受け、POSシステムと連携して厨房に注文を伝えることができ、受付の省力化や注文の正確さが向上するなどの効果が期待できます。
こちらの記事でロボットを含む飲食業界でのAI活用事例について説明しています。
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AIロボットの問題点とは?
各分野で様々な効果を期待してAIロボットの導入、活用が進んでいます。しかし、AIロボットの導入はいいことばかりなのでしょうか?以下のような懸念点が指摘されています。
- AIのミスは誰が責任を負うのか
- 人間がAIの決定を理解できない可能性
AIロボットの抱えるそれぞれの問題点について説明します。
AIのミスは誰が責任を負うのか
人がミスをした時は、必ずその責任を負う人がいます。しかし、AI自身が判断しミスが生じたとしても、「人」の行為を規制するために作られた現在の法律を機械であるAIに当てはめることはできません。AIによるミスの責任は誰が負うのかについては、法整備が議論されているところです。
過去にAIを搭載した自動運転車が事故を起こした事例では、以下の2種類の原因がありました。
- AIの誤認による事故
- AIが運転者(管理者)に警告などで知らせたが従わなかった
AIによる誤認は、メーカー側が「製造物責任」を負うことが考えられます。一方、運転者がAIの警告に従わない場合の事故は、運転者(管理者)の「過失」とみなされる可能性があります。
自動運転で使用されるAIの種類、これからの課題についてこちらの記事で特集していますので併せてご覧ください。
自動運転車以外の様々なロボットでも、AIの誤認によるミスはメーカー側の設計ミスなどによる責任、現場の担当者や管理者が注意を怠っていたと判断されるようなミスであれば使用する会社側の過失と考えられるでしょう。
法整備がされていない現状では、AIに全て任せるのではなく担当者や管理者が責任をもって使用することを意識しておかなければなりません。
人間がAIの決定を理解できない可能性
AIは急速に進化しており、2045年にはAIが人類を超えると言われています。ここ数年の進化度合いを考えるともっと早くその日が来るかもしれません。本当にAIが人類を超えてしまうなら、AIの判断を人が正しいと認識できないことがありえるかもしれません。
AIが進化した将来、医療ロボットが自身で考えてインフォームドコンセントを行い治療まで行ったとき、あるいは農業用ロボットが農作物に一番効果のある農薬を選択して散布することができるようになるかもしれません。その時、AIの考えたことが正しいと判断できない、AIの判断の経緯を知らない・理解できないことが起こりえます。
先ほどAIの責任性について述べましたが、AIの判断がわからないからAIの考えた通りにした結果ミスが起こった場合、それは使用者の過失となるでしょう。このようなことにならないためにも、AIを使う企業の担当者や責任者は、AIを使っていても専門知識を磨き続けることが大切です。
ロボット×AIについてよくある質問まとめ
- AIをロボットに組み込むことで得られる主なメリットは何ですか?
AIロボットの主なメリットは以下の通りです。
- 自己学習による教育コストの削減
- 故障の事前予測(予知保全)が可能
- 多品種多変量処理への対応力向上
- IoTとの連携による判断能力の拡張
- ティーチングや日々の点検の必要性減少
- イレギュラーな処理への対応力向上
- AIロボットは様々な産業でどのように活用されていますか?
産業別のAIロボット活用例は以下の通りです。
- 製造業: 自動調整による高品質生産
- 農業: ドローンによる農薬散布、ハウス管理の自動化
- 介護: 生活見守りシステム
- 医療: インフォームドコンセントのアシスト
- 物流: AGV(無人搬送機)の経路最適化
- 建設: BIMとAIの連動による設計支援、施工の自動化
- 飲食: 配膳ロボット、ドライブスルーでの注文受付
- AIロボット導入に際して考慮すべき主な課題は何ですか?
AIロボット導入の主な課題は以下の通りです。
- AIの判断ミスに対する責任の所在が不明確
- 法整備の遅れ
- 人間がAIの決定プロセスを理解できない可能性
- AIの判断を過信するリスク
- 専門知識を持つ人材の継続的な育成の必要性
- プライバシーやセキュリティへの配慮
まとめ
これまで、製造業をはじめとする様々な分野でロボットが活用されてきました。ロボットを導入することで品質の向上や省力化などの効果は大きいものですが、導入のためのティーチングや技術者による日々の点検、トラブル対応など多くのコストがかかるといった面がありました。
これらを解決できるのがAIロボットです。AIが自分で学び最適化することでのティーチングコストの削減、自己点検による人件費・故障リスクの減少が見込めます。さらに、自身で判断することで、人のサポートがなくてもロボットが仕事を完結できるようになります。
しかし、AIロボットを過信し任せきりにして、AIの判断の誤りに気づかずに重大なミスを犯してしまうことや、AIの判断が正しいのかを考えなくなり理解できる人が減ってしまうなどの課題もあります。
あくまでAIを使うのは人であり、その判断は人が必ず行うこと、AIの判断が正しいのかを見極めるための技術や知識を向上し続けることが大切です。
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